おじいちゃんといっしょ
アズールレーン陣営のとある母港では、一人の老人が執務に励んでいる。慎重に書類を読み込む目元には深く笑い皺が刻み込まれ、フレームの細い老眼鏡をかけた彼はまさしく「おじいちゃん」という表現がぴったりで、枯れ枝のような細い指が巧みにペンを操って書類に何かを書き込んでいる。
そんな「おじいちゃん」の前に、コトリと控えめな音を立てて紅茶が差し出される。
彼の管轄する母港の現在の秘書艦の一人、ウォースパイトのものだ。
「毎日精が出るわね。そろそろ休憩にしない?」
「あぁ、ありがとう……夢中になっていたよ。気を遣わせてしまったね」
老眼鏡を押し上げ、おじいちゃんはにこりと柔和に笑う。それにつられるようにして「オールド・レディ」たるウォースパイトも笑った。
彼女はこの母港の古参の一人で、現在のところ最長の秘書艦歴をもっている。先日秘書艦に複数を指名できるようになった後では、その豊富な経験を活かして「先輩の秘書艦」として事務教育係も担当してもらっているのだ。
おじいちゃんは付箋にメモを取って書類に張り付け、そしてスペースを確保すると紅茶に口をつける。同じようにしてウォースパイトも紅茶を飲み始めた。沈黙が部屋を包むが決して不快な感じではない。以前とある艦が冗談めかして言った「熟年夫婦みたい」という言葉を思い出して、おじいちゃんはくすりと笑った。
「そういえば、今回の秘書艦は誰だったかね?」
「あら、もう記憶力が衰えちゃったのね。かわいそうに……」
あまりにも辛辣な言葉だが、おじいちゃんはにこにこと笑ったまま首を横に振った。
「失礼な……。しっかりと覚えているよ。テラー、飛龍、アリゾナ、そして君、ウォースパイトだ」
この母港の秘書艦制度は少し特殊で、ある程度の期間で未経験の艦を中心としたローテーションを組んで回している。できるだけ風通しの良い環境を、ということで陣営の垣根を取っ払い、指揮官との交流を狙ってのものである。ただしウォースパイトだけは固定で、未経験の艦は彼女に倣い秘書艦として経験を積んでいく。
「ところで指揮官、昨日の夕食は覚えているかしら?」
ウォースパイトがいたずらっぽく問いかけると、おじいちゃんの顔から笑みがゆっくりと消え、不安げな表情が浮かぶ。
「え、ええと……白米に焼き鮭に……」
指折り数えて思い出し、なんとか続きを絞り出すとウォースパイトはからからと笑い、それにつられるようにしておじいちゃんも笑った。
おじいちゃんの人物像とか過去を詳しく知りたいですか?
-
知りたい
-
知りたくない