おじいちゃん指揮官による母港運営記   作:喜多見 健

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ファイアフライ作戦②

 周囲の海域の安全を確認した艦隊一行は少しばかりの休息をとった後で再び陽動のために動き出していた。やはりというべきか、セイレーン側も北方連合の要塞を攻撃している本体の対応に忙しいのだろう。相も変わらずセイレーンの姿はなく量産型だけが進路を遮る。上空から周囲の索敵と艦隊の支援を行っていたおじいちゃんの無線に少女の声が割り込んだ。

 

「こちらはセイレーン要塞攻落作戦中のUSSサラトガ。貴隊の所属を述べよ」

 

 幼げなその声色には緊張感が混じる。だがこちらの艦隊は暢気なもので、特にレキシントンは笑顔さえ浮かべて妹の声に反応した。通信に答えるのは指揮官であるおじいちゃんだ。

 

「こちらロイヤルネイビー。『ファイアフライ作戦』の総指揮をとっている」

 

 いつもの温和な声とは裏腹におじいちゃんの声色も緊張を孕む。一言でも間違えればこちらに砲弾が飛んでくる。幸いにもファイアフライ作戦の内容は伝わっていたようで、サラトガの声色は幾分かほっとしたようにおちついた。

 

「あぁ! あなたが『あの』おじいちゃん指揮官なのね! 作戦を手伝ってくれてありがとう!」

 

 「あの」というのがどういう意図を孕んでいるのかおじいちゃんは少しばかり気になったようだがそんなことを訪ねている場合ではない。

 

「何をすればいい?」

 

 険しい声色で問うが、サラトガはけらけらと笑う。

 

「もうすぐ海域の掃討もできそうだから今のところは特にお願いはないかな。今後は今日みたいな感じで敵を引き付けてくれるとサラトガちゃんうれしくなっちゃう」

 

「了解。海域を確保でき次第帰還する。気を付けて」

 

 眼下の艦隊はすでに敵のほとんどを撃滅している。おじいちゃんはサラトガとの交信を終えて残存勢力の掃討に思考を巡らせる。

 

 だが現場を知っているほうが強い。おじいちゃんがあれこれ作戦を考えている間に彼女たちは完璧に作戦を遂行していた。

 

 レキシントンの支援砲撃が必死に砲撃を行う敵艦に突き刺さり、イラストリアスの艦載機がおじいちゃんのすぐそばを飛びぬけて敵艦載機を撃墜する。ウォースパイトの砲撃が敵主力に命中したのか、爆発が起こる。そんな状況でも愛宕は爆炎の中に飛び込み、残存する敵艦を一切の躊躇なく破壊してゆく。

 

 プリンツ・オイゲンと綾波はそんな愛宕の戦い方をつぶさに観察していた。

 

 遠距離からは榴弾を叩き込み、近距離では雷撃し、雷撃が不発になるであろう至近距離では白刃で息の根を止める。おおよそ完璧ともいえる攻撃の方法だ。

 

 最後の一隻から今際の言葉のように砲弾が愛宕めがけて放たれるが、その砲弾も愛宕によって切り裂かれ、決して直撃することはない。

 

 母港では決して見せないような、感情さえも凍り付いた表情のまま愛宕は最後の敵に向けて砲撃する。当然のように砲弾が敵艦にめり込み、爆発した。

 

「作戦……完了っと。指揮官のおかげね」

 

 愛宕はいつものように笑う。でも目元だけは決して笑っていない。綾波とプリンツ・オイゲンはその笑みを見て、同時に同じ感想を抱く。

 

 彼女は間違いなく狂っているんだ、と。

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