夜。本日の分の仕事をすっかりと片付けたおじいちゃんは消灯と戸締りを確認して廊下を歩く。いつも付き添っているウォースパイトもこの時間までは一緒にはいない。念願のタコが食べられるとあってか、心なしかおじいちゃんの顔に浮かぶ笑みはいつもよりも深く見える。
いったいどんな料理が食べられるのか期待に胸を膨らませながらおじいちゃんは重桜寮の扉を開ける。するとまっていましたと言わんばかりに赤城と加賀がおじいちゃんを出迎えた。
「指揮官様、お待ちしておりましたわ。今夜のお食事は僭越ながら私もお手伝いさせていただきましたのよ」
「皆、もうそろそろ食堂に集まるだろう。指揮官、お疲れ様」
「気を遣わせてしまってすまないね、赤城、加賀。何か変わったことは?」
「平和そのものだ。あの陽動作戦いらい出撃らしい出撃もないのだから当然だな」
他愛もない話をしながらおじいちゃんたちは食堂へと向かう。今はロイヤル所属とはいえ、生まれも育ちも重桜なおじいちゃんにはやはり重桜の雰囲気があっているのだろう。
加賀が食堂の扉を開けると視線が注がれる。数人から遅い、腹が減ったというクレームがあったが、おじいちゃんはそれを笑い飛ばすと彼の指定席へと腰かける。
彼の指定席は扉から一番近い角の席、末席だ。そしてその横には当然といったように綾波が腰かけている。彼が重桜に所属していた時からおじいちゃんに従ってくれている初期艦だ。
「さて、ご飯にしましょう」
にこにことした笑顔で愛宕が言うと、いただきますの声が食堂に響く。そして和やかな喧騒が周囲を包む。
おじいちゃんは食事を見やる。なるほどタコが食べたいというリクエストはしっかりと聞き入れてくれたようで、タコと里芋の煮物がおかずのようだ。そして、身を大きく切ったタコ飯が茶碗によそわれている。刺身でもから揚げでもなく、タコ飯と煮物というのがニクい。
「綾波、最近どうだね? あまり部屋から出てこないと聞いたが」
「ロング・アイランドに新しいゲームを教えてもらったのです。しばらくそればかりしていたので」
「ピコピコも良いが、たまには日光を浴びないと体に悪いよ」
「ピコピコじゃないのです。日光は部屋に差し込むのを浴びているのです」
「まったく。昔はこんな子じゃなかったのになあ」
互いに軽口をたたきあいながら二人は食事を続ける。初期艦の綾波にはさすがの赤城も強く出られないようで、口惜し気に二人の様子を見つめていたが加賀と蒼龍が赤城の注意をそらして何とか平和を維持していた。