リディという若い指揮官は嵐のような男だ。
挨拶もそこそこに演習を行い、敗れたというのに晴れ晴れとした様子でおじいちゃんの艦隊に対して目をキラキラと輝かせてあれがすごいこれがすごいといった感想を口にする。
もちろん自分の艦隊に対してもフォローは忘れず、あれをこうしたらもっとよかった、とかあの時の攻撃は完璧だったと熱意をもって艦隊をほめたたえている。きっと部下をほめて伸ばすタイプなのだろう。うらやましい限りだ。
「あぁよかった。これで安心して先生に出撃を依頼できます。何せウチの上層部は重桜出身の先生のことを快く思っていない人もいますので」
リディはそういった後で意地悪気ににやりと微笑み、おじいちゃんに、わざと周りのKAN-SENたちにも聞こえるように話しかける。
「でも、ぼくらは別です。あなたの教え子はみな貴方を尊敬してますよ」
その言葉におじいちゃんはいつものような笑みを湛えたままだ。
「ちょっと待って。いきなりすぎて話が見えないわ。私たちはあなたのことさえ知らないんだもの」
ウォースパイトが言うと、リディはきょとんとしたように口をつぐむ。そして自分の嵐のような行動を思い出したのかわずかに赤面した。
「あぁ、ええと、失礼しました。ロイヤル海軍所属の『リディ・フロスト』です。階級は准将で、先生の教え子の一人です。今回は先生のお力をお借りしたくお邪魔いたしました」
准将、という言葉におじいちゃんの艦隊の面々はたまらず顔を見合わせる。目の前の嵐のような男が将官だなんておもいもしなかったのだろう。目の前の反応にも慣れっこなのか気にせずにリディは用件を切り出す。
「ユニオンを中心として北方連合領域のセイレーン『要塞』に攻撃を仕掛けようとしています。同じアズールレーンという同盟である以上、ロイヤルとしても傍観はできません。しかし我々が出しゃばりすぎてユニオンの面目をつぶすのも好ましくありません。なので、先生、あなたには作戦領域外での陽動を行っていただきたいのです」
先ほどの子供っぽさはどこへやら、リディはそう述べる。おじいちゃんは笑みを浮かべたまま、二つ返事で承諾した。
「ありがとうございます。『ユニオン及び北方連合によるセイレーン要塞攻落のための陽動作戦』、作戦名『ファイアフライ』を開始します。本作戦の全指揮権及び命令系統を先生にお任せします。必要であれば要塞攻落に参加しているユニオン、北方連合とも協力をしてください」
「了解」
おじいちゃんは空気が切り裂かれる音さえ聞こえそうなくらい鋭く敬礼する。負けじとリディ准将も返礼した。