――蝶は守る。最愛の家族を、目の前で失った人々を。



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書くの難しいですね、それとタイトル考えるのも。

※捏造設定、誤字脱字は友達。それでもいい方はお読みください。




第0話 

「とっととくたばれ糞野郎」

右手に乗る鬼の生首に笑顔でそう言い暗い闇の中に落とす。

死んだ、一人闇の中で蝶――胡蝶しのぶは実感する。

 

後悔はなかった、と言えば噓になる。

もう少し、カナヲと話をすればよかったかもしれない、今になって後悔する。

でももう遅いのだ。

 

「私はこれからどうなるんでしょうか?」

 

その疑問は闇にかき消され聞く者はいない。ましてやその問いに答える者も。

しのぶは自分の滑稽さに思わず笑い、重くなってきた瞼を下ろし闇に体を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

蟲柱、胡蝶しのぶは死んだ、はずだった―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――しのぶ」

 

声が聞こえる、泣きたくなるほど懐かしい声。

腕の中で死んでしまったはずの、最愛の姉の声。

 

「しのぶ…もうっ…」

 

また名前を呼ばれ、頭にポンと手が置かれる。

重い瞼をあげて、呼ばれた方へと目を向ける。

ぼやける視界が完全に重なり、瞳は声の主をはっきりと捉えた。

 

「ねえ‥さん…?」

 

小柄な少女――胡蝶しのぶはその言葉と共に勢いよく体を起こす。

目の前にいる姉――胡蝶カナエと後ろの台所で微笑む両親の存在に驚きを隠せないのか口をパクパクと開閉させる。

その挙動にカナエは口元に手を当てて微笑み、しのぶに優しく問いかける。

 

「何か怖い夢でも見たの?」

 

しのぶはフルフルと首を横に振り、カナエの方に手を伸ばして手をぎゅっと掴む。

その様子に驚くがカナエは握り返し優しく笑う。

しのぶに何度も見せた嘘偽りのない姉の笑顔。

その笑顔を見てしのぶは確信する、本物の姉だと。だがそんなことはあり得ないと否定する。

カナエは約二年前にしのぶの腕の中で息絶えたのだから。

なら目の前にいるのは…?しのぶは脳をフル回転させある考えに辿り着く。

 

鬼が見せている夢の世界。

 

それがたどり着いた答え。だがそんなはずがないとまたしのぶは否定する。

私はあの時、糞野郎(童磨)と共に死んだのだ、死体も残らなかった私に鬼が血鬼術をかけれるはずがないのだ。ならばここはどこなのか、と考察に浸っているしのぶに喋らなくなって心配になったカナエはしのぶに声を掛ける。

 

「しのぶ?そろそろ夕飯よ、考え事なら後にしましょう?」

 

いいか、夢でも。姉と、家族と過ごせるなら。

 

「わかった、姉さん」

 

しのぶは久しぶりに心からの、嘘偽りの無い笑顔を見せた。

 

***

 

ご飯がおいしいと感じたのは久しいかもしれない。

 

と、しのぶは家族で食卓を囲みながら思った。

別にアオイが作るご飯がまずかったというわけではない『私が味を感じなかった』それだけだ。

高濃度の藤の毒を摂取してから私は味という味を感じなくなった、味覚が機能しなくなったのだ。

今の私は毒を摂取しているわけではないので味を明確に感じられる。

八年、九年ぶりに食べる母の作ったご飯は美味しかった、それ以外に言葉が出なかった。

 

「しのぶ、もう遅いから寝ましょうか」

 

カナエはそう声を掛けて、立ち上がる。

楽しい時間が過ぎるのは早いのか、そう思いながらしのぶは立ち上がってカナエを追いかけて寝室に行った。布団に入って眠気があと少しで来る、というとき鬼と戦うときのような不安感と悪寒に襲われてしのぶは飛び起きる。

 

「(夢でこんな悪寒を感じるだろうか?そもそもここが夢ならもう覚めてもいい時間。ここが現実なら、また鬼が家を襲うことだって…)」

 

小さい衝撃でカナエがつられて起きる。だらだらと汗をかき息を荒くする妹を不審感を抱き声を掛けるが大丈夫と言ってしのぶはぎこちなく笑う。

その時しのぶはかすかに悲鳴を聞いた。

 

「ね、姉さん。私、夜風に当たってくるわ」

 

飛び出したい気持ちをグッと抑えて、平然を装って自然に寝室を出た。

足音を立てないように廊下を抜けて台所に向かい、包丁を掴み横に置いてある革製の鞘に入れて玄関を出る。

 

「(私たちの平穏を壊した、あの鬼かもしれない)」

 

薄暗い森の中を一人、雨でぬかるんだ泥道を歩いていく。

 

***

 

見つけた。

森の中、月の光が当たる場所で人を喰らう鬼がいた。

人が何人か山積みになっており、そこからはかすかに呼吸の音がする。

鮮度が大事だと思って半殺しで放っておくとは…、しのぶの怒りは頂点に達していた。その怒りを爆発させないようにしのぶは人を食べるのに夢中になって気付いていない鬼に凛とした声で話しかけた。

 

「貴方は、今まで人を何人喰らいましたか?」

 

振り返り私を認識した鬼の顔には見覚えがあった、あの時の鬼だ。そう確信して飛びかかりそうになるがグッと堪える。

 

「んあァ?テメェ鬼を知ってるのかァ?」

「知ってますよ、だから聞いてるんですよ。何人喰らったかを」

「…十四、十五、十六、十七。そこのやつらも入れて十六、お前を入れて十七だァ!」

 

そう言って飛び掛かってくる鬼にしのぶは嘆息を吐き、包丁を鞘から抜いて腰を落として刀を構えるかのように構え、体から余分な力を抜く。

ふぅぅぅぅ、息を鋭く、深く、それでいて静かに吐いて吸い込む。

 

これが対抗できる唯一の技。

 

――全集中

 

しのぶの気配が変わり、鬼は気圧され後退る。

 

――蟲の呼吸

 

強く、強く地面を踏み込む。

 

――蜈蚣ノ舞

 

まるでムカデのように左右にうねって動く。

 

――百足蛇腹

 

その動きに追い付けず、身体のあらゆるところから鮮血を上げる。が、日輪刀でもない、藤の花の毒もない、頸も落とせていない、鬼を殺せるはずが無かった。

 

「はァ、はァ…っ」

 

息をする度、肺に説明し難い痛みが何度も、何度も走ってしのぶは後悔する。

 

「(やっぱり辛い…)」

 

後悔先立たず、しのぶの身体はどんどんと重くなる。

 

「(すぐには殺さず、少しずつ痛めつけてやらァ)」

 

鬼は地面を割るかの如く強く踏み込んだ。

先に攻撃を繰り出したのは鬼、鋭く尖った爪を生かした連続攻撃。

周りの一般人から見れば、残像が見えるほどの速度で振るわれる腕をしのぶは全て見切っていた。だが見切っているだけでは意味が無かった。見切るだけの力と、その攻撃を避ける力の二つが必要なのだ。しのぶは見切る力はあった、だが避ける力が無かった。

蟲柱であったときの容量で体を動かしたため鍛練もしていない身体が追い付かず、身体にいくつもの傷がはしり少量血が溢れ出る。

傷をつけれたことで勢いに乗った鬼が攻撃を更に繰り出す。

 

「(体は覚えてる…けど体が思うように動かないッ!)」

 

悪態をつきたい気持ちを抑えて爪の攻撃を避ける、ではなく防ぐに変更する。

刀身が短いため扱いにくいが防いでいくうちに扱いに慣れる。

相手の関節の動きや呼吸の仕方、心拍、足運び、それらすべてを頭に叩き込んで相手の癖を掴む。

 

「(息を二度吸うとき攻撃が速くなってその後の攻撃は少し遅くなる、そこが狙い目)」

 

「(とか思ってんだろぉ…!)」

 

だがそれを読んだかのように鬼は息を二度吸わなくなった。しのぶは小さく舌打ちをして焦り始める。

 

「(やばい、身体が言うこと聞かなくなってきた)」

 

所詮は子供の体、体力は全くと言っていいほど無いのだ。それを頭の隅に入れ込んでいた自分を恨みながらしのぶは強行手段に出た。

 

「(動けなくなる前に、使ってやるッ!)」

 

あまりにも無謀な策だった。足を止めれば倒れそうな体を無理やりに動かして、深く息を吐いて吸う。

 

――全集中 蟲の呼吸 蜂牙ノ舞

 

強く、骨が軋む音がするぐらい踏み込んで鬼に向かって包丁を握った手を突き出す。

 

――真靡き

 

切先が鬼の頭を捉えて頭蓋をも貫く。

包丁を抜くと同時に鬼を蹴り上げて、宙に浮かせる。

 

――蜻蛉ノ舞

 

腕を引き絞って宙に浮く無防備な鬼に狙いを合わせる。

 

――複眼六角

 

瞬きの間に打ち込まれる六連撃の突き、それを真正面から喰らった鬼だが徐々にだが再生していく。

肺に走る痛みを我慢するようにはを食いしばって身体全体に酸素を送るために何度も呼吸をする。

鬼から距離を取りながらしのぶは攻撃を繰り出すため、鬼に向かって走り出す。

 

 

その小さな二つの瞳には僅かな闘気と覚悟が宿っていた。

 

 

***

 

あれから半刻経った今も尚しのぶは呼吸法を使っている。

酷使しすぎた肺はもうボロボロで呼吸する度、激痛が体全体に走っているがしのぶが止まることはない。何度も鬼に立ち向かって吹き飛ばされ、爪で体を抉られ、しのぶ自身もボロボロだ。だが、しのぶの心はまだ折れていないし、しのぶは鬼に勝とうとしているわけでもない。しのぶはただ、鬼が家に向かう未来を知っているからそれを阻止しようと動いているだけ。つまり、家族を守る為にしのぶは時間を稼いでいるだけでしかない。

 

「早く諦めたらどうだァ!テメェの剣技がすごかろうと俺には効かねェんだよォ!」

 

体全体が麻痺し、眩暈がし、頭痛が襲い、しのぶは遂に構えを崩した。

鬼の攻撃を紙一重で躱したしのぶだったが地面に倒れこみ、動けなくなっていた。

指一本すら動かず、足掻くことも許されず、ただ死を待つのみ。

鬼の爪がしのぶの無防備な体に当たり抉る寸前、鬼の身体が横から来た何者かに吹き飛ばされた。

しのぶは驚愕に体を包まれながら声を出し、名前を呼んだ。

 

「姉、さん」

 

そこに立つのは土埃にまみれたカナエが立っていた。よほど急いできたのだろう、空気を貪るように呼吸を繰り返している。しのぶの方に駆け寄りぎゅっと抱きしめる。

 

「馬鹿ッ、無理して!…大丈夫よ、もうすぐ()()()が来てくれるから…」

 

あの人、という言葉に首を傾げるがそれどころではない。

 

「ハァーッ、お願い…逃げて」

「いや、そんなのできない」

「それじゃあ私が…」

 

助けた意味が無くなってしまう、という言葉をしのぶは姉の後ろに迫った鬼を捉えた瞬間飲み込み、ぎりぃと歯を噛む。

 

「(動け、動け動け動け!鬼に姉さんが殺される!!)」

 

姉の抱擁からするりと蛇のように抜け出して、小さく気合を入れて向かってくる鬼へと切先を向けて踏み込む。

 

「(もう、死なせないと決めた)」

 

――全集中

 

鬼は呼吸にも気付かず馬鹿正直に突っ込む。

 

――蟲の呼吸

 

強く、静かに踏み込む。

 

――蝶ノ舞  

 

まるで蝶が宙を舞うように、美しく、儚く。

 

――戯れ

 

誰もが見とれるような美しい剣技。

カナエは目を見開き剣技の美しさに見惚れていた。

鬼は膝をつくがすぐに立ち上がり意味の分からないことを喚きながらまた体を崩したしのぶに飛び掛かる。

カナエはあらん限りの声で叫んだ。

 

「助けてください、()()()()()ッ!!」

 

しのぶの背中に迫った鬼の頸がぐちゃりと潰れた。

 

――南無阿弥陀仏

 

その優しさと少しばかり怒気が混じった声と共に。

声が耳に届いた瞬間姉の言葉を理解し、しのぶは地面に向かってふっと微笑み意識を手放した。

 

***

 

何も無い漆黒に包まれた空間で目を覚ます。

目の前にいるのは死んだはずの糞野郎(童磨)がいた。

 

「いい夢だったかなぁ?」

 

そう言い、にたぁと気持ち悪く嗤う童磨にしのぶは後退って童磨に問う。

 

「貴方、夢を見せる血鬼術だったんですか?」

「いや、違うよ」

「そうですか、じゃあ…」

 

 

―――用は無いので

 

―――もう一回死んでどうぞ

 

 

腰に携えてあった刀を即座に抜いてしのぶは童磨の頭を一寸の狂いなく貫いた。

刹那、漆黒が光に塗りつぶされしのぶは目を細める。

 

その時しのぶの瞳は悪い笑みを浮かべる童磨を確かに捉えていた。

 

***

 

「ん…」

目を開けるとそこは蝶屋敷の見慣れた天井――そんなことは無く、真っ白い天井が広がっていた。

何度か瞬きを繰り返しゆっくりと体を起こして、しのぶは声を漏らした。

 

「あれは、夢か否か…。というか私はなんで生きているんでしょうか?」

 

自身の身体を触って確認する、子供の姿のままだった。

しのぶはそんな自分を見て仮説を二つ、立てた。

 

一つ、まだ夢の中。

一つ、過去に逆行したか。

 

二つ目の仮説が立った理由はしのぶが一度逆行の小説を読んだことがあったからだ。我ながら運がいいのか悪いのかとわからないなしのぶは思いながらも思考を止めることはなく、考察に浸る。

 

童磨以外に血鬼術を使った鬼があの戦闘の場にいた?いや、そんなことはない。というかそんなことがあっても死んだ者には見せることなんてできないだろうし…相打ちだったし…

 

と、考え込むしのぶに横から抱き着く者がいた。

 

「しのぶッ!」

「え、」

 

いきなり抱き着かれしのぶは目を見開くがすぐに穏やかな目に変わる。

 

「生きててくれてよかった…。()()()も目を覚まさないなんて思わなくて…しのぶが死んでしまうかと思って…うぅ…」

 

何かが決壊したかの如く号泣するカナエ。

現状把握は後でもいいか、その考えに至りしのぶは号泣する姉の背中を摩り姉が泣き止むまで宥めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉さん、二ヶ月間にあったことを教えてほしい、です」

 

カナエはしのぶの口調に違和感を覚えつつも二ヶ月間の説明を始めた。

 

まずしのぶは真っ先にここが現実世界であるということを理解した。理由は簡単でしのぶが耳したこともないような情報が大量に出たからだ。

血鬼術ならばしのぶの記憶を使って世界を構築する為、知らない情報が出ることはないのだ。

しのぶは新入隊士だった頃、一度夢を見せる鬼と戦っている。鬼は自身の血鬼術のことをぺらぺらと喋ったのだ、その情報が役に立つとは思ってもいなかったようだが。

そしてしのぶを除く胡蝶一家は行冥に鬼のことやそれを狩る鬼狩りのこと等、色々と話をされたらしい。それとしのぶたちがいるところはは鬼殺隊が経営する病院の一角であることも。

 

しのぶはある程度、いやほとんど把握していた内容だったのでそこは聞き流しあることを聞いた。

 

家を出るときに悲鳴嶼さんと会ったのか、と。

 

その問いにカナエは首を振った。

 

「しのぶのことを追いかける前に家が鬼に襲われたの」

 

その返答にしのぶは顔を蒼くしカナエの存在を確かめるかのように手を握る。その手を笑顔で握り返し言葉を続けた。

 

「襲われたって言っても傷はつられてないわ。悲鳴嶼さんすぐに到着して助けてくれたの。それで…」

 

しのぶは安堵を混じらせた息を吐き、続く言葉を待つ。

 

「母さんたちが悲鳴嶼さんと話をしてる時にしのぶのことを思い出して、足跡を追って…」

 

言葉を詰まらせたのでしのぶは話を中断して、話を変えた。

 

「姉さんは鬼のこと、どう思う?」

「どうって…、悲しい生き物だと思ったわ」

「…そっか」

 

沈黙が二人を包み微妙な空気になった時、病室にある男が顔を出した。

 

「カナエよ、妹は目を覚ましたか…?」

「はい、ついさっき起きましたよ!」

 

カナエが元気よく返して行冥は常日頃から流している涙を一瞬止めてにっこりと笑った。

 

「話をしておこう…」

「あ、それなら私がしたので大丈夫ですよ」

「そうか、ならば一つ聞いておこう」

 

行冥はカナエを部屋に出るよう促して、見えない目でしのぶをしっかりと見て問う。

 

――これからどうするつもりだ?鬼殺隊に入隊するか、家族と共に静かに暮らすか。

 

その質問にしのぶは当たり前のように答える。行冥は驚きはしたが覚悟をしっかりと受け止め

「また来る」そう言い残して病室から姿を消した。

行冥と入れ替わりで戻ってきたカナエにしのぶは言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉さん、私―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これは頑張る話ですよ、しのぶが。

私の気力と需要があれば続く。

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