問 以下の問いに答えなさい。
『ベンゼンの化学式を書きなさい』
姫路瑞希の答え
『C₆H₆』
教師のコメント
簡単でしたかね。
土屋康太の答え
『ベン+ゼン=ベンゼン』
教師のコメント
君は化学をなめていませんか。
岡崎大悟の答え
『なんか凄い物質+とても素晴らしい物質=ベンゼン』
教師のコメント
コメントどころかツッコミのしようもありません。
吉井明久の答え
『B-E-N-Z-E-N』
教師のコメント
後で土屋君と岡崎君と一緒に職員室に来るように。
―――side大悟
「なあ雄二。次はどこを攻めるつもりだ?」
激動の昼食タイムが終わって、今は午後のティータイム中。
特に俺と秀吉は皆以上にお茶を飲む。なんかお茶には殺菌作用が含まれてるらしいからな。クソッタレ。まさか完璧ヒロイン系美少女だと思ってた姫路がまさか必殺仕事人だったとはな‥‥‥。
ちなみに昼食を食べられなかった島田と姫路にはジャンケンで負けた明久がおにぎりを奢ってた。ざまあみやがれ!
「次は、Bクラスを攻める予定だ」
一息ついた後、雄二はそう言った。
「どうしてBクラスなの? 目標はAクラスなんでしょう?」
「正直に言おう。どんな作戦でも、うちの戦力じゃAクラスには勝てやしない」
「はっきり言うんだな。雄二」
とはいえ、無理もないだろう。俺も雄二の意見には賛同する。
文月学園はAからFの6つのクラスで構成されているが、その中でもAクラスは別格だ。奴等は勉強という人間が忌み嫌うものに対して血の滲むような努力を重ねてきた。そして今の豪華設備を手に入れている。
つまり俺達、何の努力もしてなかった馬鹿の集まりであるFクラスとは勉強にかける熱意や取り組み方が違いすぎる。まさに天と地ほどの差といっていいだろう。
「じゃあどうすんだ? まさか今更無理だからやめようなんて舐めた真似はしねぇよな?」
「当然だ。確かにクラス単位ではどうやっても勝てない、それは明白だ。だから俺達は、Aクラスとの一騎討ちに持ち込むつもりだ。」
「一騎討ち? でもそれとBクラスがどう関係するのさ?」
明久が首を傾げる。でもそれは俺も聞きたい。
「明久。試召戦争で負けた場合の設備はどうなるか知っているな?」
「え? も、もちろん!」
「なら言ってみろ」
顔を見ると「ヤバい、どうしよう」といった表情をする明久。やっぱり知らなかったのか‥‥‥俺もだけど。
すると、姫路がこそっと明久に耳打ちするのが見えた。助け舟のつもりだろう。
「設備のランクを落とされるんだよね?」
「‥‥‥まあいい。つまり、BクラスならCクラスの設備に落とされるわけだ」
「そうか、覚えた」
「お前も知らなかったのか‥‥‥なら、上位クラスが負けた場合は?」
「「悔しい」」
「ムッツリーニ、ペンチ二つ」
雄二がムッツリーニにペンチを要求。何故だ? 間違ってはいないだろう?
「吉井君。岡崎君。負けたら相手クラスと設備が入れ替えられちゃうんですよ」
姫路のフォローが入った。
「つまり、俺達に負けたクラスは最低設備になるってわけか」
「ああ。そのシステムを利用して、交渉をする」
「交渉、ですか?」
「Bクラスをやったら、設備を入れ替えない代わりにAクラスへと攻め込むよう交渉する。設備を入れ替えたらFクラスだが、Aクラスに負けるだけならCクラス設備で済むからな。まずうまくいくだろう」
「ふんふん。それで?」
「それをネタにAクラスと交渉する。『Bクラスの勝負直後に攻め込むぞ』といった具合にな」
「成る程。それならAクラスには一騎討ちを断ることは出来ないってことになるな」
一騎討ちを断ればBクラス、Fクラスと連戦をしなければならなくなる。いくらAクラスでも二クラスを連続で相手取るのはキツいだろう。それに奴らにとっては格下との戦い、Bクラスはまだしも、俺達ごときを相手にするのかと思って戦闘意欲は下がる筈だ。
反対に俺達は不満という原動力を糧にし、体力と行動力にステータスを全振りしてるような人間の集まり。モチベーションの差は歴然だろう。
なんせ勝てばあの豪華な最新型のノートパソコンが手に入るんだ! うっひょう! これでダイゴブックスは更なる発展を遂げる事間違い無しだ!
「でも雄二、そもそも一騎討ちでAクラスに勝てるの? いくらこっちには姫路さんがいるっていってもさ」
「恐らく、姫路がFクラスという情報は既に出回ってるだろうな。」
「そのへんに関しては考えがある。心配するな、明久、大悟」
随分と自信満々だが雄二。そう言う奴ってのはな、大抵予想とは逆の運命を辿るんだぞ?
「とにかくBクラスをやるぞ。細かいことはその後に教えてやる」
「ふーん。ま、考えがあるならいいけど」
「で、明久」
「ん?」
「今日のテストが終わったら、Bクラスに宣戦布告してこい」
「断る。次は大悟が行けばいいじゃないか」
流石にDクラスの時の二の舞は踏みたくないのか、きっぱりと断る明久。だが悪いな。俺だってお断りだ。
「やれやれ、なら三人でジャンケンして決めないか」
「おい、なんで俺まで」
「ジャンケン? OK。それなら乗った」
「チッ‥‥‥しゃあねえな」
「よし、負けた奴が行く、で良いな?」
雄二に俺と明久はコクリと頷いて返した。
「ただのジャンケンでもつまらないし、心理戦ありでいこう」
「わかった。それなら、僕はグーを出すよ」
ジャンケンの構えを取りながら雄二と俺に告げる。成る程‥‥‥心理戦か‥‥‥心理戦‥‥‥
「そうか、それなら俺はーー明久がグーを出さなかったら、明久をぶち殺す」
「えっ!?」
「ほほう、じゃあ俺は明久がグー以外を出したら、明久の顔面を蹴り潰す」
「ちょっ!? ちょっとタンマ! なにその心理せーー」
「「行くぞ、ジャンケン」」
「わぁぁっ!」
パー(雄二) パー(俺) グー(明久)
「決まりだな」
「明久、任せたぜ」
「絶対に嫌だ!」
「なんだ? まさか明久、Dクラスの奴らにボコられた事を引きずってるのか?」
俺がそう訊くと、明久は頷く。やれやれ、しょうがないやつだ。
「あのな明久。ここだけの話だが、Bクラスには美少年好きが多いんだ。なんせ明久関係のグッズ依頼の約半数の割合がBクラスの奴らで占められてる。つまり何が言いたいか分かるな、オーケー?」
「オーケー! それなら確かに大丈夫だねっ!」
前々から思ってたけどコイツホントちょろいな。
「でも大悟、コイツ不細工だぞ?」
溜め息混じりに雄二がそう呟いた。前々から思ってたけど雄二って明久に対してドストレートに暴言吐くよな。
「失礼な! 365度どこから見ても美少年じゃないか!」
「5度多いぞ」
「実質5度じゃな」
「やーい! お前の顔面、おっ化け屋ー敷っ!」
「3人なんて嫌いだっ!」
結局、明久が宣戦布告をすることに決定し、昼休みの会議はお開きとなり、再びテスト漬けの午後が始まった。
「岡崎君。さっきの吉井君のグッズがBクラスで人気って本当なんですか?」
「あ? そんなもん嘘に決まってるだろ。ま、あんなもんに騙されるのなんて明久ぐらいだろうがな」
「そ、そうですか‥‥‥(ホッ、よ、良かったですっ。)」
「?」
ーーー
「‥‥‥言い訳を聞こうか」
午後のテストも無事終了し、放課後。
Bクラスに宣戦布告をしに行っていた明久がDクラスの時よりもボッコボコにされて帰ってきた。結果は‥‥‥まあそうなるわな。
「予想通りだ」
「騙されたお前が悪い」
「くきぃー! 殺す! 殺しきるーっ!」
そう言ってまずは俺に飛びかかってきた明久。
「マジカル☆アタック」
「ぐほぉっ!?」
そんな明久の鳩尾に、軽くパンチを入れてそのまま地に沈めた。
「俺は先に帰ってるぞ。明日も午前中はテストなんだから、あんまり寝てるんじゃないぞ」
そう爽やかに言い残して教室をさっさと出ていく雄二。
「じゃ、俺も帰るかな。お前ら、帰りにラーメンでも食っていかないか?」
「うむ、今日はうちの親も用事で家におらぬからの。たまにはいいじゃろう」
「‥‥‥‥‥(コクッ)」
「うぅ‥‥‥腹が‥‥‥」
「悪かったから早く立てよ明久。ラーメン奢ってやるからさ」
「言ったな大悟! こうなったら腹いせに大悟の財布を空にするまで食べまくってやるっ!」
明久はそう言ってふらふらと立ち上がる。ま、今は財布は暖かいし、それくらいならやってやるとするか。感謝しろよ明久。
すると、まだ姫路が教室に残っているのが見えた。なにやら周りをキョロキョロしている。
「姫路、どうした? 無くし物か?」
「え? あ、ちょっとどこかにいってしまって‥‥‥」
「なら、俺達も手伝おうか?」
「い、いえ‥‥‥大丈夫ですよ。ありがとうございます、岡崎君」
「そうか、ならまた明日な」
そう言って俺達は、姫路を残して教室を後にした。
ーーー
「‥‥‥だぁ、眠い」
俺は猛烈な睡魔に襲われ、卓袱台に突っ伏していた。
「どうした、寝不足か、大悟?」
「ああ‥‥‥昨日は色々やることがあってな。あんま寝てねぇんだ」
「ちなみになにしてたの?」
「エロゲの攻略。後もう少しでメインヒロインとのイチャラブハッピーエンドだったんだ」
「うん。僕の予想よりだいぶ下らない事だった」
下らないとは失礼な。『Blood school ~僕の学園生活がハーレムと血みどろだった件~』はエロゲ界隈の中でもトゥルーエンドまでの道のりが最難関と言われた作品だぞ。
何度俺がゲームの中でヒロインの女の子達に、選択肢をミスって惨殺されたと思っているんだ。一晩であんなに死ぬとは思わなかった。全くヤンデレって怖いよね。
それに他にも依頼品の仕上げや結局昨日の昼間に出来なかったDクラス戦の報酬のエロイラストのコピー、録り溜めしておいたアニメの観賞、筋トレもしてて実質寝てないに等しい。それに昨日の夜から何故か腹が痛むんだ。姫路の弁当のせいか?
それに加えて今日は朝からずっと補給試験。ただでさえ睡眠不足と腹痛でヤバいのに更にテストという追い討ちをかけられ、もうクタクタだ。
「だが、大悟のイラストのおかげでクラスの士気は確実に上がってるぞ」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってる」
見ると、俺のイラストを持っている連中の目は闘志に道溢れていた。もちろん全員に描いた訳ではなく、Dクラス戦でちゃんと結果を残した奴限定だ。そういう約束だからな。そのため持っていない連中は悔しさに涙を流してる。
ちなみに姫路には平賀を倒したMVP賞として明久の特製タペストリーを無償でプレゼントした。その隣で島田は不満げな顔をしている。
「この調子で、Bクラスの時も頼むな」
「ああ、分かったよ」
「ねえ大悟、僕の分は?」
「あ? 雄二、コイツなんかしたっけ?」
「勝利の為に船越女史に貞操を捧げようとしたな」
「それは違うだろ! 全部二人と須川君が仕組んだことじゃないか!」
「ったく、しゃあねぇなあ‥‥‥」
俺は鞄から一枚の紙を取り出して明久に渡す。
「ほらよ」
「やったー!ありがーー」
『船越女史の想像全裸イラスト(ムッツリ商会協賛)』
「イヤァァァアアアアアーーー!!!!」
明久はそれを見た途端、叫びながら掃除用具入れに逃げ込んでしまった。よほどトラウマになったのだろう。明久をからかうつもりで作ったのだが、流石にやりすぎたか。でも反省も後悔もしてない。
「それよりも雄二、午後のBクラス戦にはどんな作戦を立てたんだ?」
「ああ、今回の戦闘は敵を教室に押し込むことが重要になるからな。だから開戦直後には姫路に前線で指揮を取ってもらう。他の連中はそのサポートだ」
「じゃあ、俺もそこに加わるのか?」
「いや、大悟は今回、俺の護衛に回ってくれ。お前は社会科目なら無敵だが、他だと明久レベルの雑魚だからな。そこを突かれて戦死にでもなられたら困る」
「そうか、分かった」
確かに、そっちの方が無駄に戦闘回数を増やして点数を消費することもないか。
すると、雄二は教壇の上に立ち、教卓に手を叩きつけて皆の視線を集中させた。
「さて皆、総合科目テストご苦労だった。午後からはBクラスとの試召戦争に突入する予定だが、殺る気は充分か?」
『おおーっ!』
一向に下がらない皆のモチベーション。こんな狭く汚い教室に押し込められた男達の気概は生半可じゃないという事のようだ。
「今回の戦闘は敵を教室に押し込むことが重要になる。その為、開戦直後の渡り廊下戦は絶対に負けるわけにはいかない。もし負けたら連帯責任として今回の大悟のイラストは無しだと思え!」
『おおーっ!』
「そこで、前線部隊は姫路瑞希に指揮を取ってもらう。野郎共、きっちり死んでこい!」
「が、頑張りますっ」
『うおおーっ!』
姫路と戦えるのもあってか、野郎共の士気は最高潮に達しようとしていた。
今回は廊下での戦闘で勝ちにいくつもりらしいから、戦力もFクラスの51人中40人を注ぎ込む。つまり大規模な戦いが待っている。
キーンコーンカーンコーン
そして、昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。
「よし、行ってこい! 目指すはシステムデスクだ!」
『サー、イエッサー!』
「今回も魂のこもった力作を用意して貴様らの帰りを待つ! 野郎共! 敵に向かって全速前進だぁぁああ!!」
『ヒアー、ウィーゴー!!』
そして、明久と姫路、島田を含むクラスメート40人は教室から勢いよく飛び出していった。
「さて、俺は少し暇だから漫画でも読むか‥‥‥」
『いたぞ、Bクラスだ!』
『高橋先生を連れているぞ!』
『生かして帰すなぁーっ!』
なんか廊下から物騒な台詞が聞こえるが、まあ大丈夫だろう。俺は敵から雄二を守ることが役目だから。暫くはここに敵が来るなんてことは無いからな。
ーーー
『み、皆さん、頑張ってくださいー』
『やったるでぇーっ!』
『姫路さんサイコーッ!』
暫く漫画に集中しているとそんな声が廊下から聞こえてくる。向こうはどうやら頑張っているようだ。だが俺にとってはそんなことはどうでもいい!
そんな‥‥‥まさか新たなめるたんの敵が生き別れのお姉さんだったなんて‥‥‥!? クソッタレ! 家族思いの優しいめるたんにとってそれがどんなに衝撃で苦痛なことか‥‥‥作者は一体何を考えているんだ! この鬼畜め!
しかも正体がわかった所でページが終ってやがる!
「グググ‥‥‥楽しませてくれるじゃねえか。これだからめるたんはやめられねぇなあ!」
そう言って俺は漫画を閉じる。今教室に残っているのは俺、雄二、ムッツリーニ、他Fクラス数名だ。雄二曰く、俺は完全なる護衛、ムッツリーニは作戦においての重要な要らしい。そして今ムッツリーニは戦場の様子を監視カメラと盗聴機で監視していた。
「ムッツリーニ、戦況はどうよ?」
「‥‥‥こちらが優勢、戦力は減っているが、順調に進んでいる」
「だが、やっぱり実力が違いすぎるな。いくらこっちに姫路がいるとはいえ、このままじゃ他連中が戦死になるのは時間の問題か。一度点数の少ない前線部隊の奴らを下がらせて補充試験に当たらせろ。その間は中堅部隊が前線に立って持ちこたえさせる。それに、出来るだけ採点が速い先生を連れてくのを忘れるなと通達しろ」
「分かった!」
ふむ、確か前線部隊には明久と島田がいた筈だ。今回はFクラスは数学を主力を武器にしているから、勉強が出来る姫路と数学が得意な島田はそう簡単にやられはしないだろう。明久は‥‥‥あぁ、まあ頑張れ。
「そういや雄二。Bクラスの代表ってどんな奴なんだ?」
「あぁ、それなんだがな、あの根本らしい」
「根本‥‥‥チッ、アイツか」
その名前を聞いた途端に俺は舌打ちをして拒否反応を示す。根本恭二という男は良い評判を聞かないことで有名だ。カンニングの常連だとか、勝負事で卑怯な手を使いまくるとか‥‥‥とにかくズル賢くて陰湿、目的の為なら手段を選ばないなんとも聞くだけでムカつく男だ。
一度アイツに言葉巧みに色々誘われたが『俺はお前みたいに自分の欲だけで人を顎で使おうとする奴が一番嫌いなんだよ、とっとと失せろ』って追い返してやった。
「なんだ、何かあったのか?」
「別に何もねえよ。ただ奴が代表をやってるクラスとなりゃあ、このまままともに勝負をするのかと思っただけだ」
俺がそう言うと、Fクラスじゃない誰かが教室に入ってきた。
「ここにクラス代表の坂本雄二はいるか?」
「俺ならここにいるが、どうした?」
「BクラスとFクラスで協定を結びたいという申し出があった。近くの空き教室まで来てくれるか?」
「協定か‥‥‥分かった。だが念のため何人かを一緒に連れていく」
「いいだろう、じゃあ案内するからついてこい」
「ああ。ムッツリーニ、大悟、行くぞ」
「‥‥‥‥‥(コクリ)」
「分かった」
そして、俺は重たい腰を上げて、雄二達と共にそいつの後をついていった。
Bクラス戦、始まりました。
あと気づいたら評価のバーが赤くなってました。ワァオ!
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
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入れろ、絶対に
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別に入れなくてもいいよ