問 以下の問に答えなさい
『人が生きていく上で必要となる五大栄養素を全て書きなさい』
姫路瑞希の答え
『①脂質 ②炭水化物 ③タンパク質 ④ビタミン ⑤ミネラル』
教師のコメント
流石は姫路さん。優秀ですね。
吉井明久の答え
『①砂糖 ②塩 ③水道水 ④雨水 ⑤湧き水』
教師のコメント
それで生きていけるのは君だけです。
岡崎大悟の答え
『①ヤンデレ幼なじみ系美少女 ②俺をお兄ちゃんと慕う女の子(幼稚園生から中学二年生ぐらいまでが好ましい) ③ロリ魔法少女 ④ドジッ娘メイド ⑤ツンデレ系女王様』
教師のコメント
君には後で補習時間を設けた方が良いかも知れませんね。
土屋康太の答え
『初潮年齢が十歳未満の時は早発月経という。また、十五歳になっても初潮がない時を遅発月経、さらに十八歳になっても初潮がない時を原発性無月経といい‥‥‥』
教師のコメント
保健体育のテストは一時間前に終わりました。
―――side大悟
激戦を繰り広げたBクラスとの戦争、そして根本の撮影会も無事終了した。
その後俺と明久は壁を破壊した罰として職員室で教師陣から親身な指導を受け、その後はまさかの補習室送りにされ、鉄人監修のもと、問題集をひたすらにやらされるという苦行をさせられた。
おかげでまた今期覇権アニメを見逃した‥‥‥もう俺、メンタルズタボロです。
「大変だ! 兄貴がまた泡吹いて倒れたぞ!」
「急いで魔法少女の弟子めるたんのドラマCDを耳元で流せ!」
「あぁ‥‥‥見えるぜ。ガキの頃に亡くなったお婆ちゃんが手招きしてらぁなぁ‥‥‥」
「駄目だ! ドラマCDが無いぞ! ああ! 兄貴の顔がみるみるうちに真っ青に!?」
「来世は‥‥‥めるたんの息子として、生まれてきますように‥‥‥」
「「「兄貴ぃぃいいいーー!!!」」」
ーーー
そんなこんなで点数補給の為のテストを受け終え、更に二日後の朝。
いよいよ俺達は最後の砦であり最大の難敵、Aクラスとの戦争を残すのみとなった。
「まずは皆に礼を言いたい。周りの連中には不可能だと言われていたにも関わらずここまで来れたのは、他でもない皆の協力があってのことだ。感謝している」
雄二は壇上に上がり、開口一番にそう礼を言った。
「ゆ、雄二、どうしたのさ。らしくないよ?」
「ああ。自分でもそう思う。だが、これは偽らざる俺の気持ちだ」
確かに雄二の作戦や戦略はとても良かった。だが、チームというのは司令塔だけでは動かないように、Fクラス全員が団結し、断固たる決意を持って挑んだからこそ、ここまで来ることが出来た。雄二もそれは分かっているようだ。
「ここまで来た以上、絶対にAクラスにも勝ちたい。勝って、生き残るには勉強すればいいってもんじゃないという現実を、教師どもに突きつけるんだ!」
『おおーっ!』
『そうだーっ!』
『勉強だけじゃねぇんだーっ!』
雄二の言葉に、皆の気持ちが一つになっている。昔ながらのスポ根漫画のようでいいじゃないか。
「皆ありがとう。そして残るAクラスだが、これは一騎討ちで決着をつけたいと考えている」
今回の戦い方は少し特殊で、クラス単位ではなく、一騎討ちによる勝負。
俺や明久達は事前にそのことを聞いていたから驚かないが、他の連中はかなり驚いていた。
『どういうことだ?』
『誰と誰が一騎討ちをするんだ?』
『それで本当に勝てるのか?』
「落ち着いてくれ。それを今から説明する」
雄二がバンバン、と机を叩いて皆を静まらせる。
「やるのは当然、俺と翔子だ」
Aクラス代表の霧島とFクラス代表の雄二。クラスを代表して戦うのだから当然といえば当然だろう。
だが相手は学年主席、二学年トップの成績を誇るヤツだ。正攻法じゃ勝ち目は無いに等しい。だが雄二の顔は至極普通だ。何かいつも通り策でもあるんだろうか?
「いやいや、霧島さんに馬鹿の雄二が勝てるわけなぁぁっ!?」
明久の頬を雄二が投げたカッターの刃がかすめた。
「次は耳だ」
友達に向かって平気で‥‥‥坂本雄二、恐ろしい子!!
「まぁ、確かに明久の言う通り確かに翔子は強い。まともにやりあえば勝ち目はないかも知れない」
「なら別にカッター投げなくても良かったじゃないか!」
「だが、それはDクラス戦もBクラス戦も同じだっただろう? まともにやりあえば俺達に勝ち目は無かった」
確かに、常識的に考えれば勝ち目は無い。だが俺達Fクラスはそんな当たり前な事を全て打ち破ってきた。学力が無いからこそ、知識や戦略を張りめに張り巡らせ、勝利をもぎ取る。それがFクラスの戦い方であり、強みなのだ。
それに、どっかの可愛い巫女さんもこう言ってただろ?「ここでは常識に囚われていてはいけないのです!」ってな!
「今回だって同じだ。俺は翔子に勝ち、FクラスはAクラスを手に入れる。俺達の勝ちは揺るがない。だから俺を信じて任せてくれ。過去に神童とまで言われた力を、今皆に見せてやる」
『おおぉーーーっ!!』
皆の考えは一つのようだ。全員が雄二を信じている。勿論俺もな。
「それで、具体的なやり方だが‥‥‥一騎討ちではフィールドを限定するつもりだ」
「フィールド? 何の教科でやるつもりじゃ?」
「日本史だ」
「日本史だと? 霧島は日本史が苦手だとでもいうのかよ?」
「いや、そうじゃない。敢えて内容を限定する。レベルは小学生程度、方式は百点満点の上限あり、召喚獣勝負ではなく純粋な点数勝負とする」
ふむ。小学生程度で上限がありときたか。そうするとどちらも満点は確定だから、注意力とケアレスミスの有無がかなり重要になってくるな。
それならあの学年主席の霧島にも勝てる可能性があるわけか。
「でも、同点だったら、きっと延長戦だよ? そうなったら問題のレベルもあげられちゃうだろうし、ブランクのある雄二には厳しくない?」
「確かに明久の言う通りじゃ」
「おいおい、あまり俺を舐めるなよ? いくらなんでも、そこまで運に頼りきったやり方を作戦などと言うものか」
「?? それなら、霧島さんの集中を乱す方法でも知っているとか?」
「いいや。アイツなら集中なんてしていなくとも、小学生レベルのテスト程度なら何の問題もないだろう」
そりゃあそうだろう。そんなもんで集中力が途切れるようなら学年主席になんぞなれるわけがないからな。
「雄二、いい加減くどいぞ。そろそろ理由を教えろ」
「おっと、済まないな。俺がこのやり方を採った理由は一つ。ある問題が出れば、アイツは確実に間違えると知っているからだ」
ある間違える問題だと? なんだそれは?
「その問題はーー『大化の改新』」
大化の改新‥‥‥日本史を勉強する上では基本中の基本とも言えるべき出来事だ。分かりやすく説明するなら、当時莫大な権力を握っていた豪族、蘇我氏。そしてその時の大臣であった蘇我蝦夷・入鹿親子を中大兄皇子と中臣鎌足が殺害し、その後彼等が中心となって始められた改革の事を指す。
「大化の改新か‥‥‥誰が何をしたのか説明しろ、とかか?」
「いや、そんな掘り下げた問題じゃない。もっと単純な問いだ」
「単純にいうとーー何年に起きた、とかかのう?」
「おっ。ビンゴだ秀吉。その年号を問う問題が出たら、俺達の勝ちだ」
大化の改新の年号ねぇ‥‥‥そんなクソ簡単な問題をあの霧島が間違えるとは思えねぇがな。
「大悟。大化の改新が起きたのは何年だ?」
「645年だろ? 覚え方としては『大化の改新 虫殺(645)し イルカ(入鹿)を先に殺しちゃう』だな」
周りからおぉ‥‥‥、という声が上がる。
「そう、645年だ。こんな簡単な問題は明久ですら間違えない」
「ま、基礎的な問題だしな‥‥‥って明久。何でお前下向いて涙流してんだ?」
「お願い‥‥‥僕を‥‥‥見ないで‥‥‥」
「だが、翔子は間違える。これは確実だ。そうしたら俺達の勝ち。晴れてこの教室とおさらばって寸法だ」
ふーん。そういうことね。理解した。
「あの、坂本君」
「ん? なんだ姫路」
「霧島さんとは、その‥‥‥仲が良いんですか?」
「ああ。アイツとは幼なじみだ」
「総員、狙えぇっ!」
「なっ!? 何故明久の号令で皆が急に上履きを構える!?」
「黙れ、男の敵! Aクラスの前に貴様を殺す!」
「俺が一体何をしたと!?」
あーあ。このクラスでそんな事言ったらこうなるのに。雄二は馬鹿だな。才色兼備で誰もが憧れる女子が実は幼なじみだったなんて、全男子が一度は夢見るシチュエーションだというのに。
それに俺は霧島とは多少付き合いがあるからな。だから雄二と幼なじみだってことも知ってる。
「遺言はそれだけか? ‥‥‥待つんだ須川君。靴下はまだ早い。それは押さえつけた後で口に押し込むものだ」
「了解です隊長」
「ちょっと待て! だったら大悟も同じだ! コイツは秀吉と同じ中学出身だ! ということは姉の木下優子とも繋がりがあるぞ!」
雄二が俺を指差すと共に一斉に俺に視線を向ける馬鹿共。チッ、俺を巻き添えにするつもりか。
「成る程、確かにそれも一理ある。大悟、そうなの?」
「フッ、確かに俺は秀吉とその姉、優子と同じ中学だ。けど甘いな雄二ーー」
サッ! ←(制服の中に着ていためるたんのTシャツをさらけ出す)
バッ! ←(鞄から美少女アニメのグッズを取り出す)
「ーー何故なら! 俺は二次元を愛する男! 俺の彼女はお前らとは次元が違うわあぁっ!!」
「「「「無罪」」」」
「何いぃっ!?」
そう言ってカッターやシャーペンを収める明久達。残念だったな雄二よ。お前の企みは失敗に終わったようだぜ。
「あの、吉井君」
「ん? なに、姫路さん」
「吉井君は霧島さんが好みなんですか?」
「そりゃあ、まぁ。美人だし」
「‥‥‥‥‥」
「え? なんで姫路さんは僕に向かって攻撃態勢を取るの!? それと美波、どうして君は僕に向かって教卓なんて危険なものを投げようとしているの!?」
うん。島田も姫路も、段々とFクラスの雰囲気に馴染んできているようで良かった。
「まぁまぁ。落ち着くのじゃ皆の衆」
「む。秀吉は雄二が憎くないの?」
「冷静になって考えてみるが良い。相手はあの霧島翔子じゃぞ? 男である雄二に興味があるとは思えんじゃろうが」
‥‥‥お、おう。そう‥‥‥だな。まあ、教える必要はねぇか。
「むしろ、興味があるとすれば‥‥‥」
「‥‥‥そうだね」
「な、なんですか? もしかして私、何かしましたか?」
明久達の視線が姫路に集中する。ふむ、『姫路×霧島』か‥‥‥イケるっ!
「とにかく、俺と翔子は幼なじみで、小さい頃に間違えて嘘を教えていたんだ。アイツは一度覚えたことは忘れないほど頭が良い。だから今、学年トップの座にいる」
一度覚えたことは忘れない超記憶力。だが今回はそれが逆に足枷となる。
「俺はそれを利用して勝つ。そうしたら俺達の机はーー」
『システムデスクだ!』
ーーー
「すっげぇ‥‥‥」
Aクラスに入って一番最初に出たのがその言葉だった。俺は一度Aクラスの中を外から眺めたことはあるが、やはり実際に入ると迫力が違う。
まるで高級ホテルのロビーのような内装に豪華なシャンデリア。黒板の代わりに設置されていた巨大スクリーン、こんなばかでかい画面でアニメなんて見たら何倍も楽しめるだろうな。羨ましいっ!
そして生徒一人ずつに並べられたシステムデスクに最新型のノートパソコン。高級リクライニングシート。小型冷蔵庫まで‥‥‥もうここ勉強するところじゃねぇだろ。
「これがAクラス‥‥‥凄すぎない?」
「うむ。まさに高級ホテルと言っても過言では無いのう‥‥‥」
「‥‥‥‥‥(コクコク)」
やはり皆、この教室に驚きを隠せないようだ。無理もない。
「ふっ、僕が学園生活を送るには、相応しい設備じゃないか」
「そうだな。俺の青春が薔薇色学園生活まっしぐらだぜ」
「お前ら、よくそんな馬鹿丸出しな発言が出来るな」
失礼な。明久はともかく、この俺がこんな素晴らしい教室に相応しくないヤツだとでもいうのか?
「見てよアキ! フリードリンクにお菓子が食べ放題よ!」
興奮が抑えきれないのか、子供のようにはしゃぎながらそう言う島田。それを見た明久は全く‥‥‥、とため息を吐いた。やれやれ、島田もまだまだ幼いな。
「ふっ、美波。駄目じゃないか。そんなことでいちいち驚いているようじゃ、足元を見られるよ?
もっと僕達みたいに堂々としていなきゃ、ねぇ大悟?」
「その通り。人間は常に平常心、何事にも動じない強い心を持つべきだ」
「お菓子をポケットに詰め込みまくってるヤツとさっきからウエハースチョコを食べまくってるヤツが何言ってるのよ」
「つくづく発言と行動が伴わぬ男達じゃのう‥‥‥」
い、いや違うぞ? これはちょっと腹が減っただけで別に『魔法少女の弟子めるたん ~ウエハースチョコ イチゴ味~』に付いてくるオリジナルブロマイドカードが欲しいわけじゃないんだからなっ!
‥‥‥あぁっ! 畜生! またシークレットじゃないっ!
「おい、そこの馬鹿共。いい加減戻ってこい。本題に入るぞ」
雄二にそう言われて、俺と明久は渋々ヤツのもとまで戻った。
仕方ない。残りは責任をもって俺が処分することにしよう。決して泥棒とかじゃないからな?
「というわけで、俺達Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に一騎討ちを申し込む」
「一騎討ち?」
試験召喚戦争恒例の宣戦布告。
今回は代表である雄二を筆頭に俺、明久、姫路、島田、秀吉にムッツリーニとFクラスの主戦力陣が揃い踏みしていた。
ちなみに毎回こんな感じだったら明久はボコられずに済んだのでは? と思ったのは内緒な?
「うーん、何が狙いなの?」
現在雄二と交渉のテーブルについているのは秀吉ーーの双子の姉であり、俺もよく知ってるヤツ、木下優子だ。
見た目はまんま秀吉を女にしたような感じで、こんな事を言うのもあれだが滅茶苦茶可愛い。ま、性格は若干癖があるんだけどな。
「もちろん俺達Fクラスの勝利が狙いだ」
そう言う雄二に対し、訝しむ優子。まあ無理もない。
優子達からしたら俺達は下位クラス、それも最底辺のFクラスの俺達が、二学年のトップに君臨する霧島に挑むなんてまずあり得ない事だからな。絶対何か企んでいると思われても何も不思議じゃない。
「面倒な試召戦争を手軽に終わらせることが出来るのはありがたいけどね、だからと言ってわざわざリスクを冒す必要も無いかな」
「賢明な判断だな」
予想通りの返事が返ってきたところで、ここからが雄二の交渉術の見せ所だ。
優子はちょっとやそっとじゃぶれないヤツなんだが、お手並み拝見だな。
「ところで、Cクラスの連中との試召戦争はどうだった?」
「時間は取られたけど、それだけだったよ? 何の問題もなし」
秀吉の挑発に乗って、Aクラスに乗り込んだCクラス。その勝負は半日で決着がつき、今CクラスはDクラスと同等の設備で授業を受けているらしい。はっ! ざまーみろ小山! テメェの悔しそうな顔が面白くてしょうがねぇぜ!
「なら、Bクラスとやりあう気はあるか?」
「Bクラスって‥‥‥、昨日来てたあの‥‥‥」
Bクラスと聞いて、分かりやすく拒否反応を示す優子。大方根本のゴスロリ姿を想像したんだな。
俺とムッツリーニ監修の下、素晴らしい出来に仕上がったと思ったんだが、優子には喜んで貰えなかったようだ。
「ああ。アレが代表をやっていたクラスだ。幸い宣戦布告はまだされていないようだが、さてさて。どうなることやら」
「でも、BクラスはFクラスと戦争したから、三ヶ月の準備期間を取らない限り試召戦争は出来ないはずだよね?」
優子の言葉通り、戦争に敗北したクラスは三ヶ月の準備期間を経ないと宣戦布告が出来ない。これは試召戦争の泥沼化を防ぐ目的があるらしい。
「知ってるだろ? 実情はどうあれ、あの戦争は『和平交渉にて終結』ってなっていることを。規約的にはなんの問題もない。‥‥‥Bクラスだけじゃなくて、Dクラスもな」
何故雄二が戦いに勝っても設備をそのままにしていたのか。それは相手を自分達にとって有利な状況に置かせる為だ。もしAクラスがこの申し出を断れば、すぐさまBクラスとDクラスに攻め込ませるよう仕向ける。そうなればいくらAクラスとて立て続けに戦えばいずれ敗北するからな。
つまり雄二は、否応なしにAクラス一騎討ちを受けさせようとしているのだ。
「‥‥‥それって、脅迫?」
「人聞きが悪い。ただのお願いだよ」
いや、今はお前が悪役だ。雄二よ。
「うーん‥‥‥わかったよ。何を企んでいるのか知らないけど、代表が負けるなんてあり得ないからね。その提案受けるよ」
「え? 本当?」
「だって、あんな気持ち悪い格好した代表のいるクラスと戦争なんて嫌だもん‥‥‥」
「なんだと!? 優子お前! 俺とムッツリーニが吐き気を堪え、端正込めて作り上げたモンに対するその侮辱! 許せん!」
「大悟。少し黙ってろ」
雄二にあっさりと止められた。やはり、真の芸術というものは一般人には理解されないものなのか‥‥‥大悟さんショック。
「その代わり、こっちからも提案させて? 代表同士の一騎討ちじゃなくて、そうだね、互いに七人ずつ選んで、一騎討ち七回で四回勝った方の勝ち、っていうのなら受けてもいいよ」
「なるほど。こっちから姫路が出てくる可能性を警戒しているんだな?」
「うん。多分大丈夫だと思うけど、代表が調子悪くて姫路さんの調子が良かったら、ってことも考えられるし‥‥‥それに、そっちにはある意味姫路さんよりも注意しないといけないヤツがいるもん」
そう言って優子は今日初めて俺と視線を合わせた。俺は正直この優子の目が苦手だ。まるで俺の考えや本心を全部見透かされるような感じがしやがるし、ずっと見詰められると妙な悪寒が走るんだよな‥‥‥何なんだろうな。
「大悟。アンタの社会科目の成績の高さは中学時代から私が一番よく知ってるわ。今までの戦いも大健闘だったらしいじゃない」
「別に、大健闘ってほどでもねぇよ。全部俺だけで出来たんじゃねえ。明久や雄二、それに他の奴等がいなきゃ成し遂げられなかったもんばっかりだからな」
「謙遜しなくて良いわよ。大悟は強い。正直大悟がFクラスにいるなんて思わなかったもの‥‥‥」
「‥‥‥‥‥ホント、なんで大悟がFクラスなんかに‥‥‥っ!」
優子がボソッと何か呟いた様だが、何を言ったのかよく聞き取れなかった。
「あ? なんか言ったか、優子?」
「な、なんでも無いわ。とにかく、そっちに大悟や姫路さんがいる以上、用心するに越したことはないのよ」
「安心してくれ。うちからは俺が出る」
「無理だよ。その言葉を鵜呑みには出来ない。これは競争じゃなくて戦争だからね」
「そうか。それならその条件を呑んでも良い。けど、勝負する内容はこちらで決めさせて貰う。そのくらいのハンデはあってもいいはずだ」
「え? うーん‥‥‥」
悩むように考え始める優子。クラスを代表しての交渉だからな。この会話によっては仲間全員の立場が一変しちまう可能性があるからな。それに優子はかなりの慎重派だ。こうなるのも無理はない。
流石に科目選択権はこちらが欲しいところだが、果たして承諾を得られるか。
「‥‥‥受けてもいい」
突如聞こえた、静かで澄んだ声色。
その声の主はAクラス代表、学年首席の霧島翔子だった。
物静かなヤツだとは思っていたが、まさか気配すら感じさせずに近くまで迫るとは‥‥‥コイツ、出来る!
「‥‥‥雄二の提案を受けてもいい」
「あれ? 代表。いいの?」
「‥‥‥その代わり、条件がある」
「条件?」
「‥‥‥うん」
雄二がそう訊き返すと、霧島は突然隣に立っている姫路を値踏みするかのようにじっくりと観察し、再び雄二に向かって言い放った。
「‥‥‥負けた方は何でも一つ言うことを聞く」
‥‥‥ほほう? 何でも、だと?
「‥‥‥‥(カチャカチャ)」
「‥‥‥‥(バサバサッ)」
「ムッツリーニ、大悟! まだコスプレと撮影の準備は早いよ! というか、負ける気満々じゃないか!」
明久が通用しながら俺とムッツリーニにそう言う。おっと、俺としたことがつい早とちりしてしまったようだぜ。
「‥‥‥‥‥岡崎」
「よっ、霧島」
ふと、霧島と目が合う。
俺は霧島とは初めましてでは無く、そこそこの付き合いがあり、よく彼女の手助けをしたりもする。
その報酬として、コスプレのモデルやらなんやらをやってもらっているんだよな。だって清楚系黒髪美人だぜ!? 二次元じゃマイナーだけど三次元じゃ絶滅危惧種なんだぜ!? ならほっとかない理由がねぇよなぁ!?
「あれ? 代表。大悟のこと知ってるの?」
「うん‥‥‥岡崎は私のことを手伝ってくれる、オタクだけどいい人」
「‥‥‥ふーん。ま、いいや。じゃ、こうしよう? 勝負内容は七つの内四つは、そっちに決めさせてあげる。三つはうちで決めさせて?」
優子からようやく妥協案が得られた。
どうやらコイツは相手が俺達Fだろうと、一切手を抜く気は無いらしい。こうなってくると優子はこれ以上の妥協は許してくれないだろうな。ここらで話を纏めた方が良さそうだ。
「交渉成立だな」
「ゆ、雄二! 何を勝手に! まだ姫路さんが了承してないじゃないか!」
「心配すんな。絶対に姫路に迷惑はかけない」
自信満々な雄二の台詞。そこまで勝利を確信してるのか。
「‥‥‥勝負はいつ?」
「そうだな。十時からでいいか?」
「‥‥‥分かった」
霧島は静かに頷いた。
「よし。交渉は成立だ。一旦教室に帰るぞ」
「おう」
「‥‥‥‥‥」
そして、俺達は教室に戻ろうとする。さてと、余ったウエハースをクラスの奴等にでも分けてやるか‥‥‥。
「‥‥‥ちょっと待って」
「ん? なんだ、木下姉」
「さっきの代表の条件‥‥‥そこにもう一つ加えて貰いたいことがあるの」
「‥‥‥優子?」
「‥‥‥負けた方は何でも『一つ』じゃなくて『二つ』、いうことを聞いて貰うわ」
さて、いよいよ次回から対Aクラス戦です!!
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
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入れろ、絶対に
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別に入れなくてもいいよ