問 以下の問に答えなさい。
『冬の大三角形と呼ばれる恒星を答えなさい』
姫路瑞希の答え
『シリウス プロキオン ベテルギウス』
教師のコメント
正解です。
岡崎大悟の答え
『餃子 便座 正座』
教師のコメント
答え方に若干古臭さを感じます。
吉井明久の答え
『トライアングルスター!!』
教師のコメント
漫画の技名みたいですね。
―――side明久
木下さんの鉄拳によって動かぬ屍と化した大悟。それを踏みつける木下さん。あの大悟を一撃でノックアウトするなんて‥‥‥とても秀吉のお姉さんとは思えない程の豪腕だ。
けどあれは完全に大悟の自業自得だし、文句どころか同情の念も沸かない。
「ごめんね愛子。この馬鹿が迷惑かけて」
「ううん。ボクは大丈夫だよ。けど‥‥‥予想以上の人で驚いたなぁ、あはは‥‥‥」
見てみると、被害者である工藤さんはまだ若干の苦笑いを浮かべている。そりゃあ初対面の相手にいきなり土下座されて体操着を着てくださいなんて懇願されれば誰だってそうなるよね。
それにしても、肉食系女子をも黙らせる程の大悟の二次元愛‥‥‥恐ろしい。流石は女子小学生に防犯ブザーを鳴らされるほどの男だ。
「‥‥‥明久。取り敢えずあのキモオタを回収してきてくれ」
「了解」
僕は試合場所の中心で寝っ転がっている大悟を自陣まで引きずり、適当なところにぶん投げておいた。白目剥いてるけど、しばらくすれば目が覚めるよね。
「‥‥‥‥‥(ムクッ、ドバドバ)」
すると、今まで鼻血を出して倒れていたムッツリーニがよろよろと立ち上がった。顔を血で真っ赤に染めながら。
「大丈夫なの? ムッツリーニ。その鼻血の量‥‥‥」
「‥‥‥‥‥このくらい、同志の二次元イラストの破壊力に比べれば‥‥‥っ」
確かにそれは僕もそう思う。
「そろそろ召喚を開始して下さい」
「はい‥‥‥試獣召喚《サモン》っと」
「‥‥‥‥‥試獣召喚《サモン》」
召喚呪文に合わせて、二人に似た召喚獣が、それぞれ武器を手に持って出現する。ムッツリーニはBクラス戦でも見せた小太刀の二刀流。一方工藤さんは、
「なんだあの巨大な斧は!?」
見るからに破壊力抜群の巨大な斧。オマケに例の腕輪までしている。ヤバい! かなり強いぞ!
「こほん‥‥‥気を取り直して、実践派と理論派、どっちが強いか見せてあげるよ」
工藤さんが艶っぽく笑いかけるのと同時に、腕輪を光らせながら召喚獣が動いた。
巨大な斧に雷光をまとわせ、ありえないスピードでムッツリーニの召喚獣に詰め寄る。
「それじゃ、バイバイ。ムッツリーニくん!」
そして、豪腕で斧を振るう。これはとても避けられる攻撃じゃない!
「ムッツリーニっ!」
斧が召喚獣を両断するーーーと思った直後。
「‥‥‥‥‥加速」
突如ムッツリーニの腕輪が輝き、彼の召喚獣の姿がブレた。
「‥‥‥え?」
工藤さんの戸惑う顔。僕にも状況がよく分からない。気がついた時にはムッツリーニの召喚獣は相手の射程外にいたのだから。
「‥‥‥‥‥加速、終了」
ボソリと、ムッツリーニが呟く。
一呼吸置いて、工藤さんの召喚獣が全身から血を噴き出して倒れた。
Aクラス 工藤愛子 446点
保健体育 VS
Fクラス 土屋康太 572点
つ、強い! 下手をすると僕の総合科目並の点数だ!
「Bクラス戦の時は出来がイマイチだったらしいからな」
雄二が驚く僕に説明してくれる。本気を出せばこんなに凄かったのか!
「そ、そんな‥‥‥! この、ボクが‥‥‥!」
工藤さんが床に膝をつく。相当ショックみたいだ。
「これで三対一ですね。次の方は?」
高橋先生は淡々と作業を進める。自分のクラスが負けても気にならないのかな?
「あ、は、はいっ。私ですっ」
こちらからは当然姫路さんが出る。唯一Fクラスにいながら、Aクラスとまともに戦える人材だ。
「それなら僕が相手をしよう」
Aクラスから歩み出たのはーー久保利光!
「やはり来たか、学年次席」
そう。彼の名は久保利光。
姫路さんに次ぐ学年三位の実力の持ち主で、振り分け試験を姫路さんがリタイアした今、彼は僕らの学年で次席の座にいる。
「ここが一番の心配どころだ」
雄二がそう言ったのには理由がある。久保君の実力は姫路さんとほぼ互角。総合科目の点数差にして20点程度しかない。
姫路さんが連戦で疲れている今、負ける可能性は否定できない‥‥‥!
「科目はどうしますか?」
高橋先生が二人に声をかける。もちろん、次の科目選択権は僕らにある。
「総合科目でお願いします」
すると、勝手に久保君が答えていた。
「ちょっと待った! 何を勝手にーー」
「構いません」
「姫路さん?」
クレームをつけようとする僕を止める姫路さん。大丈夫なんだろうか?
「それでは、試合開始!」
高橋先生が同じように操作を行い、召喚フィールドが展開される。
そして、それぞれの召喚獣が喚び出されーー速攻で決着がついた。
Aクラス 久保利光 3997点
総合科目 VS
Fクラス 姫路瑞希 4409点
『マ、マジか!?』
『いつの間にこんな実力を!?』
『この点数、霧島翔子に匹敵するぞ‥‥‥!』
教室の至る所から驚きの声があがる。点数差400オーバー!? 姫路さんが強いのは知ってたけどこれは尋常じゃない!
「ぐっ‥‥‥! 姫路さん、どうやってそんなに強くなったんだ‥‥‥?」
久保君が悔しそうに姫路さんに尋ねる。つい最近までは互角に等しかった実力がここまで差がついているのだ。気になるのは当然だろう。
「‥‥‥私、このクラスの皆が好きなんです。人の為に一生懸命な皆のいる、このクラスが」
「Fクラスが好き?」
「はい。だから、頑張れるんです」
姫路さんの優しい台詞。
そっか。姫路さん、Fクラスが好きなのか。こんな頭の悪い男だらけのクラスが。その中には僕も含まれているわけで、そう思うととても温かい気持ちになってくる。
「これで三対二ですね。次の人どうぞ」
高橋先生にも若干の表情の変化が見られた。多分僕達FクラスがAクラスとここまで渡り合っていることに戸惑いを感じているのだろう。
そして、いよいよこの時が来た。召喚獣を用いての最後の戦い。Fクラスからはあの男がーーー
「‥‥‥‥‥(チーン)」
あ、そういえばまだ気絶してたんだ。試合展開が早すぎてそのことをすっかり忘れてた。
「おーい、大悟。次は君の番なんだから起きて」
「‥‥‥‥‥」
「大悟! 大悟ー!!」
「‥‥‥‥‥」
駄目だ。体を揺すっても顔にビンタをくらわしても全く起きる気配がない。けれど大悟が試合に出ないとこちらの負けはほぼ確定だ。どうすれば‥‥‥
「どうした? 明久」
「あ、雄二。それが大悟が気絶したまま起きないんだ。どうしよう?」
「なんだと? しゃあねぇなあ‥‥‥」
すると、雄二が大悟の耳元に顔を近づけた。何をするつもりだろうか?
「起きろ大悟。めるたんが『大悟お兄ちゃん頑張って!』って言ってたぞ」
「何ぃぃいいっ!!?」
雄二の言葉と共にバッと目を覚ました大悟。あれで起きるんだ‥‥‥でも前に比べてあんまり不思議に思わなくなってる自分がいる。慣れてきたのかな?
「雄二! どこだ!? めるたんはどこにいる!?」
「めるたんなら魔法の国に帰ったぞ。ほれ、次はお前の番なんだからとっとと行ってこい」
「何!? まさか! 俺なんかの為にわざわざ魔法の国から来てくれたのか!? なんて健気で優しい子なんだ‥‥‥よっしゃあ! そう思ったら断然やる気が出てきたぜぇえええ!!!」
‥‥‥最近雄二も大悟の扱いに慣れてきているなぁ。まあ、元に戻ったんならそれでいいんだけど。
「頼んだよ、大悟」
「任せとけ! 俺のハートは今!! 愛の力で真っ赤に燃えあがっているぜ!! 見ていてくれ!! めるたぁぁああん!!!」
そして、大悟は戦いの場へと向かっていく。
現在の戦況は三対二。最後の雄二に繋げる為にはこれ以上の負けは許されない。思わず僕にも緊張感が走る。
「大丈夫かな、大悟‥‥‥」
「心配すんな明久。アイツは普段はキモオタだが、いざというときはやる男だ。俺達は黙ってヤツの戦いを見届ければいい」
「雄二‥‥‥」
雄二の力強い言葉。
そうだ。雄二の言う通りだ。大悟はこんな大事な場面で負けるようなヤツじゃないことは、これまでの戦いを見ていれば一目瞭然じゃないか。これまで何度も大悟に助けられたし、大悟がいなかったら乗りこえられないことだってあった。彼の強さは僕達Fクラスが一番よく知っている。
なら今の僕達に出来ることは、彼の勝利を信じて待つことだけなんだ。ムッツリーニと姫路さんが繋いでくれたバトンを、大悟は必ず雄二へと繋いでくれる。
「頑張れ‥‥‥大悟‥‥‥」
ーーー
―――side大悟
「しゃあっ!! 行くぜ!!」
俺は気合いの声を上げて戦いへと臨む。最早一敗も許されない状況。いつも以上に気を引き締めて挑まなくてはならない。ここまで繋いでくれた明久達の為にも、応援してくれてるFクラスの為にも、そして‥‥‥めるたんの為にも! 俺は負けられねぇ!!
「じゃあ、アタシが行くわね」
そう言ってAクラスから現れたのは、
「やっぱりお前か‥‥‥優子」
「ええ。まさかFクラスがここまでやるとは思わなかったわ。大悟」
秀吉の姉であり、俺の腐れ縁でもある女、木下優子だった。
「それでは、科目は何にしますか?」
「そうねーーそれじゃあ、世界史で勝負しましょう?」
「何だと?」
優子の言葉に俺は疑問を覚えた。本来ならこっちの科目選択権なのだが、わざわざ向こうから提案してきたのはありがたい。どっちみち世界史を選ぶつもりだったからな。
だが社会科目、特に歴史は俺の得意分野だ。それは中学からの付き合いがある優子も当然知っている筈。そして俺が理系科目がクソ雑魚ナメクジなことも知っている筈だ。
なのに何故俺の得意科目を選択したんだ? そう思っていると、
「勘違いしないでね、大悟」
優子が俺の名を呼ぶ。
「貴方が社会科目が得意なのは知ってるわ。けどね、私達Aクラスには、学園の治安と品格を守る義務があるの。一学期早々、なんの努力もせずに試験召喚戦争をやらかして、その上Aクラスに挑もうとした馬鹿への制裁措置よ。大悟達にとっては、豪華な設備を奪う為の戦いなのだろうけど、私達は違うわ」
成る程な。世界史を選んだのは敢えてこっちの得意科目で勝負して圧倒的な力の差を見せつける。そうして自分達は最強なんだと知らしめるつもりーー所謂『見せしめ』ってやつか。
「ほう‥‥‥相変わらず責任感の強ぇヤツだな。でも一つ、お前の言ってる事には間違いがあるな、優子」
「‥‥‥間違い?」
俺の言葉に疑問を持つ優子。やれやれ、と俺は溜め息を吐く。
「別に俺達は、なんの努力もしてこなかった訳じゃねぇ。確かにお前達Aクラスに比べりゃあ学力は低いかも知れねぇな。けど、それならそれなりの戦い方ってもんがあるんだよ」
現に俺達は、普通に考えれば勝てないと言われてきた上位クラス二組を降している。それは雄二の知略が、ムッツリーニの行動力が、秀吉の演技力が、姫路の努力が、明久のど根性があったから出来たこと。決して戦争とは、学力だけでは決まらないことを俺達は証明して見せてきたのだ。
「ふん、言ってなさい。どっちにしろ、私がここで勝てば良い話だもの」
「ハハッ! 言うじゃねえか。お前が俺に今までこの科目で勝った事があるか?」
「それはどうかしら? 貴方が少年院に入ってる間に私は努力を重ねてきた。疑うなら、自分の目で確かめて見ることね」
随分と余裕な態度を見せる優子。余程自信があるのか。
「それでは、召喚を開始してください」
高橋先生がそう言って、世界史の召喚用フィールドを展開する。
「いくわよ‥‥‥試獣召喚《サモン》!」
優子が召喚獣を喚び出す。頑丈そうな銀の鎧に大きなランスを持った、西洋の騎士を思わせる見た目だ。オマケに腕には金の腕輪を装着していた。
「‥‥‥試獣召喚《サモン》!」
続いて俺も召喚獣を喚び出す。大きな金棒に和装束と、最早見慣れたスタイル。そして左手首には例の腕輪を装着してる。
そして、少し時間を置いて、召喚獣の強さを表す点数が表示された。
「優子。どうせだから教えてやるぜ。お前のその台詞なぁーーー」
Aクラス 木下優子 418点
世界史 VS
Fクラス 岡崎大悟 607点
「ーー負けフラグそのものだって事をよぉ!」
『な、なんだあの点数!!?』
『Fクラスにあんな点数が取れるヤツがいたのか!?』
『もう、霧島翔子以上‥‥‥いや、担当教師並じゃないか!?』
『オタクの癖に!』
Aクラスの方から驚きの声があがる。オタクは余計だこの野郎!
「凄い! 倍近い点数差があるよ!」
「ああ、これなら間違いなくいける」
まあいい。この点数なら勝てる。早速暴れるとするーーーって何ぃっ!?
「先手必勝よ!」
召喚獣が金棒を振り上げた瞬間、優子の召喚獣がランスを構え、物凄いスピードで迫ってくる。
「くそったれ!」
「まだよ!」
ランスが突き出されるも間一髪金棒で防ぐ。しかし優子の召喚獣は再びランスで攻撃を仕掛けてきて、俺の召喚獣に反撃に転じる隙を与えてくれなかった。
チッ‥‥‥これじゃあ防戦一方になっちまう。
「クソッ‥‥‥離れろやぁ!!」
俺は何とか金棒を振り上げ、優子の召喚獣を吹っ飛ばそうとする。しかし、
「甘いのよ!」
ヒュンッ!!
「んだとっ!?」
驚いた。なんと優子の召喚獣は、素早いスピードで俺の召喚獣の金棒を避けたのだ。
これがAクラス‥‥‥エリートが操る召喚獣の力だってのかよ!?
「言ったでしょ‥‥‥努力を重ねてきたって!」
「やるじゃねえか! 優子!」
そして、遂に優子の召喚獣のランスが俺の召喚獣の肩辺りに直撃した。
Aクラス 木下優子 418点
世界史 VS
Fクラス 岡崎大悟 501点
くっ! 致命傷じゃないが、肩に当たっただけでこの威力か。侮れねえなぁ‥‥‥。
「ゆ、雄二! なんで!? 大悟の方が点数は高い筈なのに!?」
「チッ‥‥‥木下姉め。大悟の召喚獣の弱点を的確に突いてきてやがる」
「弱点‥‥‥?」
「そうよ。大悟、アンタの召喚獣の戦いは見させてもらったわ」
俺の召喚獣に連続で攻撃を与え続けながら、優子は不敵な笑みを浮かべる。
「アンタの召喚獣。確かにとてつもない力を持っているわね。一気に敵の召喚獣をまとめて倒す程の威力に加えて軽々と敵を吹っ飛ばせるパワー‥‥‥けどその代わりスピードと精密な動きが出来ていなかった。しかも攻撃は大振りな金棒によるもの。なら、その間を狙っていけばいいだけの話よ」
成る程‥‥‥確かに俺の召喚獣は近距離パワー型だ。ごり押しだけならあの姫路をも圧倒出来る力を持つ。
だが俺の召喚獣はスピードも遅い上に小回りが効かない。だから金棒を構えてから攻撃に転ずるまでに数秒のタイムラグがある。つまりその間は無防備状態になってしまう為、相手の行動を許してしまうという欠点があったのだ。
「大悟。アンタは今まで格下の相手とばかり戦ってきたから、その弱点に気づけなかったのでしょう?」
「‥‥‥‥‥」
「その表情、図星みたいね」
優子の言葉に間違いは無かった。
言われれば確かにDクラス戦の時は相手がびびっていたのと秀吉のフォローがあったからだし、Bクラス戦の時には相手のチームプレーが出来ていなかったからこそ俺は難なく勝ってきた。
けど今はそうはいかない。冷静になって、的確に俺の召喚獣の弱点を突いてくるとは‥‥‥皮肉にも俺が先程優子に言った『それなりの戦い方』を逆にされるなんてなーー
ーー油断していたのは、俺の方だったのか。
「いくら強大なパワーでも当たらなかったら意味は無いわ。その隙を狙っていけば、いずれ崩れていくわ!」
「‥‥‥やっぱお前はすげぇよ。流石Aクラスだけのことはある! 認めるぜ! お前は‥‥‥強い!」
ガァアン! ドォオンッ! ブゥウンッ!
力任せに金棒を振り回すが、優子の召喚獣には全く当たらない。先程からずっと空を切っている。
しかも優子の召喚獣のランスは射程距離が長く、確実に隙を突かれて攻撃をくらい続けていた。
「あら、大悟にそんなことを言われるなんてね。なんならこのまま敗けを認める?」
「ふざけんな。お前は知ってんだろ? 俺は絶対に、敵にへりくだるような無様な真似はしねぇヤツだってな」
「‥‥‥そうね。アンタは昔から、そういうヤツだったわね。なら、ここで終わりにしましょう!」
優子が叫ぶと同時に、召喚獣のランスが突き出される。狙いは俺の召喚獣の胸元。召喚獣とて人間と根底は同じ、心臓部位をやられれば即死まっしぐらだ。
だが、優子は知らない。いや、この場にいる全員が知らないだろう。
俺の腕輪のーーー『能力』をな。
「見せてやるぜ‥‥‥俺の、切り札っ!!!」
そして、優子の召喚獣が、俺の召喚獣を胴体を貫くーーー
「変身っ!!!」
瞬間、掛け声と共に俺の召喚獣の腕輪が光る。すると、俺の召喚獣が巨大な咆哮をあげた。
『グゥゥゥゥゥオオオオオオオオオオッ!!!!』
それは凄まじい衝撃波を生み出し、優子の召喚獣を吹っ飛ばした。
「えっ!?」
勝利を確信していたであろう優子が、間の抜けた声を出す。
当然だ。とどめに行ったつもりが、逆に押し返されてしまったのだから。
しかし、これでは終わらない。俺の召喚獣は咆哮をあげなから巨大化していき、その姿を変えていく。
虎の様に鋭い爪と幾重にも生え揃った牙、大蛇の様な巨大な体躯に美しい碧鱗。見るものを全て射殺すかのような恐ろしい眼。神々しさを感じさせる角と髭。
そう、俺の召喚獣は空想上の怪物ーーー巨大な龍の姿へと変貌した。
『ヴォォォォオオオオオオオオオッ‥‥‥‥!!!!』
『な、なんだありゃああ!!?』
『ば、化け物だぁぁあああっ!!!』
Aクラス、Fクラス関係なく、教室中から聞こえる悲鳴に近い声。そりゃあ、いきなり召喚獣が龍になったらそりゃそうなるわな。
「な、何が起こってるの、大悟!?」
「こ、これは‥‥‥まさか、大悟の腕輪の能力なのか!?」
後ろで静かに戦いを観戦していた雄二と明久も思わず驚きの声を出す。
「ああ。これが俺の腕輪の能力ーー『変身』だ」
そう。俺だけに与えられた腕輪には、世界史で500点以上を取ったときに発動できる特殊能力が備わっており、変身前の点数分の秒数だけ、召喚獣が龍に姿を変える事が出来る。その代わりに時間切れになると大幅に点数を消費し、使用者自身の俺もフィードバックとして立ち上がれない程の疲労感に襲われる。
この能力を使ったのはBクラス戦の時以来だ。あの時は多人数だったのと、腕輪の能力を試す目的で使ったがな。けどこれ副作用もかなりあるから、正直あんまり使いたくねぇんだよな。けどそうもいってられねえか。
「す、すげぇ‥‥‥」
「これが大悟の召喚獣の本当の力‥‥‥」
「ま、その代わり、本来の腕輪と違って一戦に一回しか使えねえけどな。諸刃の剣ってヤツだ」
「な、何よこれ‥‥‥こんなのアリ!?」
龍に変わった俺の召喚獣を見てそう声を荒げる優子。明らかに狼狽えている様子が一目瞭然だが、だからといって手加減は出来ない。
ここで負ければ今までのことが全部水の泡になっちまうんだ。卑怯とでもチートでも何でも好きなように言いやがれ! これが俺のーー岡崎大悟が勝ち取った力だ!
「それじゃあいくぞぉおお‥‥‥優子ぉ!!」
すると、龍となった俺の召喚獣は大きく口を開いた。そしてその中から巨大な火の玉が燃え上がる。後は‥‥‥放つだけだ!
「なっ何!?」
優子は急いで召喚獣を操作しようとするが、時すでに遅し。こっちはもう準備完了だ!
「恋のっ!! バーニング☆ブレェェェエエエス!!!」
俺の合図と共に、龍はその火の玉を思い切り火炎放射の様に吐き出し、優子の召喚獣を包み込む。
教室が一瞬、強い光で満たされる。圧倒的火力で放たれた炎は容赦なく優子の召喚獣を焼きつくし、やがて灰すらも残さない程に消し去った。
Aクラス 木下優子 DEAD
世界史 VS
Fクラス 岡崎大悟 217点
ふぅ‥‥‥大分削られたな。優子のヤツ、本当に強かった‥‥‥。
「勝者、Fクラス!」
高橋先生が俺の勝利をコールすると、世界史の召喚フィールドと共に龍も消えていった。
『うぉぉおおーーーっ!!』
『すげぇよ兄貴!!』
『やっぱ俺達の兄貴は最強だぁあーー!!』
『兄貴バンザーイ!!』
そして一気に沸き立つFクラス生徒達。これで三勝三敗。俺の役目はこれで終わりだ。
「ははっ、やったぜ‥‥‥下克上、成功だ‥‥‥やったよめるたんっ!」
腕輪の能力の副作用により、全身に疲労感がフィードバックとして現れる。それにより俺はその場に倒れ込んでしまった。
「大悟!?」
「どうした、大悟!?」
「‥‥‥‥‥!(タタタッ)」
突然俺が倒れたことに驚いたのか、明久と雄二、ムッツリーニが俺のもとまで駆け寄ってきた。
「はぁ‥‥はぁ‥‥‥心配すんな。これは腕輪の副作用なだけだ。そのうち元に戻る‥‥‥」
「そうか、それならいい。けど‥‥‥よくやった大悟。まさかあんな能力があったとはな。流石は兄貴と呼ばれるだけの男だ、お前は!」
「うん! 雄二の言う通りだよ、大悟! 本当にお疲れ様!」
「‥‥‥‥‥大健闘(グッ)」
「言ったろうが、俺に‥‥‥任せろってよ。雄二‥‥‥後は、頼んだぞ」
「ああ。任せろ」
ぐっと互いに手を握り、戦いのバトンを託す。
そして俺は、そのまま明久とムッツリーニに肩を担がれながら、自陣へと戻っていった。
ーーー
「‥‥‥ごめん、代表。負けちゃった‥‥‥‥うぐっ!」
「‥‥‥優子。大丈夫。泣かなくていい」
「でも‥‥‥っ!」
「相手が悪かっただけ‥‥‥だから気にしないで。優子の分まで、私が頑張るからーー」
「ーー私の望みも、優子の望みも絶対に叶えてみせるから」
いやー、気づいたら投稿初めてから一ヶ月経っているんですね。時の流れは早いなーと感じます。
さて、大悟の腕輪の能力ですが、どうせならハイリスクハイリターンにしようと思ってこうなりました。け、決してワンピースのカイドウにハマったとかそう言うわけじゃないんだからねっ!
次回、Aクラス編最終回です。
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
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入れろ、絶対に
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別に入れなくてもいいよ