バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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清涼祭 アンケート

学園祭の出し物を決める為のアンケートにご協力下さい。
『あなたが今欲しいものはなんですか?』


姫路瑞希
『クラスメートとの思い出』

教師のコメント
なるほど。お客さんとの思い出になるような、そういった出し物でも良いかもしれませんね。写真館とかも候補になり得ると覚えておきます。


土屋康太の答え
『Hなーー成人向けの写真集』

教師のコメント
書き直したことに意味があるのでしょうか。


岡崎大悟の答え
『二次元世界への移動手段』

教師のコメント
いい加減目を覚ましましょう。


吉井明久の答え
『カロリー』

教師のコメント
この回答に君の生命の危機が感じられます。



清涼祭編
第十七問 恋のミルキィ☆打法


なぁ皆、突然だが、一つ質問させてほしい。皆は『文化祭』という単語についてどう思う?

学生生活で最大のイベント? クラスの催し物が楽しい? 気になったあの子に勇気を出して告白する為の絶好のチャンスの場? それぞれ思ったことはあるだろう。

けどな、この岡崎大悟から言わせれば、あれほどしょうもない学校行事がほかにあるだろうか? まず想像してみてくれ。

 

体育祭はどうだろう? クラスが一丸となって優勝という確固たる目的に向かって汗を流して戦い合う。いいじゃないか。

修学旅行はどうだろう? クラスメートと未開の土地へと赴くワクワクさがあり、同じ釜の飯を食い同じ布団で寝ることで友情が深まり、班行動では強調性やチームをまとめあげるリーダー能力が培われる。素晴らしいじゃないか。

いやいや、卒業式はどうだろう? 立つ鳥跡を濁さずという言葉があるように、お世話になった学校に今までの感謝の意を評し、新たな旅立ちの門出を祝う。感動的じゃないか。

 

このように、学校行事というのはそれぞれ何かの『目的』があり、それによって得られる『経験値』が確立されているものであるのが普通だ。

だが‥‥‥文化祭に関してはそれがない!

なんか目的も曖昧なまま行われ、中途半端な出し物の為に夜遅くまで残って準備をし、かといっていざ始まってみるとやってることは祭の出店と変わらない! 大学の学祭なら有名人とか来るからまだしも、高校の文化祭なんて来るのはせいぜい友達くらいだ! 友達と遊びたいけど自分は店番をやらなきゃいけないからそれも出来ない! そんでよく分からんうちに終わって、残ってるのは疲れきった後の大片付け! しかも儲けは全部学校に徴収される! 自分達が限られた準備時間でどれだけ成果を残しても、最後に笑うのは学校の偉いヤツだけなんだ! これを理不尽と言わずなんと言う!?

 

けど、俺だって思ったさ! いや! もしかしたら学園アニメでよくある、滅茶苦茶可愛い女の子とあんなことやこんなことが起きるんじゃないかって! でもそんなこと全然ないし、仮にいたとしてもそいつはリア充かヤリ○ンだ!! 何が青春だ! 下らねぇ! 

 

つまり、文化祭とは『過程に対しての結果が伴わな過ぎる時間の無駄とも言える行事』だと俺は断言する! それかリア充どもの楽しそうな光景を見させられる地獄の時間でもいいぞ!

だから俺は、文化祭なんて行事に全く興味も熱意も無い。そうーーー

 

 

 

 

「行くぜぇ! 明久!」

「勝負だ、大悟!」

「見せてやるぜ! 俺の恋のミルキィ☆打法!」

 

 

 

 

ーーーだから俺達Fクラスは、文化祭の準備もせずに校庭で野球をして遊んでいる。

 

「八月のシン○レラナインを完走したこの俺に勝てると思うなよ!」

「言ったな! こうなれば意地でも打たせるもんか!」

 

そして俺は、バッターボックスに立ちバットを構える。明久の投球の速さはそこそこだが、変化球が上手い。だから馬鹿正直にストレートを投げてくる確率は低いな。

ここはカーブを警戒して打つ位置をもう少しーー

 

「貴様ら、学園祭の準備をサボって何をしているか!」

「ヤバい! 鉄人だ!」

 

校舎の方から、そんな怒声と共に俺達の担任である鉄人が俺達目掛けて走ってくるのが見えた。瞬間、俺達は捕まらないように一気にバラバラになって逃走した。

 

「吉井! 貴様がサボりの主犯か!」

「ち、違います! どうしていつも僕を目の仇にするんですか!?」

 

おー、流石趣味がトライアスロンの人間だ。段々と明久との距離を詰めてきている。この隙に俺はさっさと逃げーー

 

「アイツらなんです! あの坂本雄二と岡崎大悟が野球を提案したんです!」

 

なっ! あの野郎! 俺達を売りやがったな! まあ野球をしようって言ったのはホントだがな。だって八月のシンデレラナ○ン見てたらやりたくなったんだもん。

すると、雄二が俺に視線で何かを訴えてきた。ええとなになにーー

 

『明久に 伝えろ フォークを 鉄人の 股間に』 

 

俺はそのサインに頷き、明久に同じように目で訴えた。

 

『明久を 鉄人の 股間に』

「どういうこと!? どうして鉄人の股間にダイブしなきゃいけないの!? 単純に僕がそっち系なヤツだと思われるだけだよね!?」

 

わり、間違ったわ。てへぺろ。

 

「とにかく、即刻全員教室へ戻れ! この時期になってもまだ出し物が決まっていないなんて、うちのクラスだけだぞ!」

 

鉄人の耳に響く恫喝によって、俺の恋のミルキィ☆打法のお披露目はお預けとなった。

 

 

ーーー

 

 

「さて。そろそろ春の学園祭の出し物を決めなくちゃならない時期が来たんだがーー」

 

Fクラスに戻り、教壇に立った雄二が、床にござを敷いて座る俺らを見下ろしてそう宣言してきた。

 

「取り敢えず、議事進行並びに実行委員として誰かを任命する。そいつに全権を委ねるので、後はそいつに任せる」

 

心底どうでも良さそうな態度を取る雄二。多分学園祭に全く興味も無いんだろうな。

けど、正直なところ俺だって興味どころかやる気など全く無い。だいたい学園祭でやる催し物なんざたかが知れてる。そんなところに時間を割く位なら溜まりに溜まってる依頼品をやった方が断然良い。

 

「吉井君。坂本君って学園祭はあまり好きじゃないんですか?」

「うーん、見た感じ楽しみにしているってことは無さそうだね。興味があるならもっと率先して動いている筈だから」

「そうなんですか‥‥‥寂しいです‥‥‥」

 

隣からそんな明久と姫路の会話が聞こえる。どうやら姫路は学園祭を楽しみにしているみたいだな。

 

「大悟よ。お主は学園祭は楽しみではないのか?」

 

そう思っていると、別のところから声が。その方を振り向くと、Fクラスのアイドルこと俺の相棒、木下秀吉が俺にそう言っていたのが見えた。

 

「あぁ。雄二と同じく、面倒くせぇの一言に尽きるよ」

 

俺はそう言って大きい欠伸をする。授業が潰れるのは単純に嬉しいが、学園祭で特にやりたいこともないしな。

 

「むぅ‥‥‥大悟は昔から興味の無いことにはとことん無頓着じゃのう」

「まぁな。やりたきゃ勝手にやってくれって感じだ。それによぉ、その日は俺の崇拝する『アニソンのクイーン』こと、水樹カヤ様のライブがあるんだよぉ!! 畜生めぇ‥‥‥カヤ様のライブを見逃さなくてはならないなんてファンとして、いや! 人間として末代までの屈辱だっ!!」

「大悟。段ボールが潰れておるぞ」

 

おっと、つい感極まってミカン箱を殴って潰してしまったか、後で段ボールを申請しとこう。

 

「じゃが、大悟は高校生活初の文化祭じゃろう? 儂は大悟とようやく学生としての思い出作りが出来ると思って楽しみにしてるのじゃがな」

「えっ‥‥‥それってまさか、遠回しに俺に対する告白!?」

「そんな訳なかろう。話が飛躍しすぎじゃ」

「ほらぁー! また振られたぁー! やっぱり学園祭なんざ録なことがねぇ!!」

「振られたってなんじゃ!? 儂は男じゃと言うとろうが! ミカン箱を無理矢理引きちぎるのをやめい!」

 

母さん。俺は人生で二度も秀吉に振られました。もう生きていける気がしません。

 

「はぁ。とにかくせっかくの学園祭なのじゃから、大悟も楽しんではどうじゃという話じゃ」

「楽しむねぇ‥‥‥」

「それに、お主は料理の腕も服飾技術も高いのじゃから、それを遺憾なく披露する絶好の機会じゃと思うぞ?」

「‥‥‥何だかなぁ。いまいち気乗りしねぇなぁ」

 

それに、現在のFクラスはAクラスとの試召戦争に負けたおかげで前より設備が更にボロくなっている。卓袱台はミカン箱に、座布団は傷んだござに交換されていて、もう教室って言わなきゃ分からないレベルにまで下げられてしまった。

そんな環境の中で、まともなクラスの出し物が出来るとは思えないのだ。

 

「んじゃ、学園祭実行委員は島田ということでいいか?」

「え? ウチがやるの?」

 

不意に耳に飛び込んできた雄二の台詞。それに目を白黒させている島田。

 

「う~ん‥‥‥、ウチは召喚大会に出るから、ちょっと困るかな」

 

ここ文月学園には、『試験召喚システム』という世界的にも注目されているシステムを導入している。それで今年はその試験召喚システムを一般的にお披露目する場を設ける企画として『試験召喚大会』と呼ばれるイベントを発案したらしい。

けどそれって要は俺達みたいな馬鹿な生徒にとっては、自分の低い点数を見せ物にされた挙げ句、高得点者の引き立て役にされるだけだから何の得も無いんだよな。

 

「雄二。実行委員なら美波より姫路さんの方が適任じゃないの?」

「え? 私ですか?」

「いや、姫路には無理だな。多分全員の意見を聞いているうちにタイムアップになる」

 

だろうな。俺もそう思う。

 

「それにね、アキ。瑞希も大会に出るのよ」

「え? そうなの?」

「はい。美波ちゃんと組んで出場するつもりなんです」

「へぇ。学校の宣伝みたいな行司なのに。二人とも物好きだなぁ」

「ウチは瑞希に誘われてなんだけどね。瑞希ってば、お父さんを見返したいって言って聞かないんだから」

「お父さんを見返す?」

「うん。家で色々言われたんだって。『Fクラスのことをバカにされたんです! 許せません!』って怒ってるの」

 

ほぉ。あの姫路が怒るほどとは、どれだけ俺達は酷い言われ方をしたんだろうか。 

だが、その父親の気持ちも分からなくはない。客観的に見れば、俺達は学生において必要不可欠な勉学を疎かにした連中ばかりで構成されたクラスだからな。しかも姫路は本来Aクラスにいる筈の人間だから、父親から見て余計に良い印象は抱かないだろう。

 

 

「だって、皆のことを何も分かってないのに、Fクラスっていう理由だけで馬鹿にするんですよ? 許せませんっ」

「‥‥‥‥‥」

 

 

いや、姫路すまん。皆をよく知ってる俺でも、Fクラスは馬鹿の集まりだと思う。

 

「だからFクラスのウチと組んで、召喚大会で優勝してお父さんの鼻をあかそうってワケ」

「そうだったんだ。確かに姫路さんと美波が組めば、優勝もあり得ない話じゃないもんね」

 

「三人とも。こっちの話を続けていいか?」

 

話の路線が逸れてしまいそうなるのを、雄二が止める。

 

「あ、ゴメン雄二。美波が実行委員になる話だったよね?」

「だからウチは召喚大会に出るって言ってるのに」

「なら、サポートとして副実行委員を選出しよう。それなら良いだろ?」

 

そう言って、雄二がチラッと明久の方を見る。ああ、アイツやっぱり明久に面倒事をやらせようとしてるな。

 

「ん~‥‥‥そうね、その副実行委員次第でやってもいいけど‥‥‥」

「そうか。では、皆に候補となるヤツを挙げてもらおう。その中から島田が二人を選んで決戦投票にすればいいだろう」

 

皆もいいな、と雄二がクラスの連中に告げると、教室内からちらほらと推薦の声が聞こえてきた。

 

 

『吉井が適任だと思う』

『坂本がやるべきじゃないか?』

『いや、ここは我らが兄貴の出番じゃないか?』

『姫路さんと結婚したい』

『ここは須川にやってもらった方が』

 

 

誰だ、俺を推薦しようとしているヤツは。それといい加減姫路にラブコールを送ってるヤツ、諦めろ。

 

「儂は明久が適任じゃと思うがの」

 

すると、隣で秀吉が明久に一票を投じた。

 

「って、秀吉。僕もそういう面倒な役は、できればパスしたいな~なんて」

「それは大悟含め皆が思っていることじゃ。ならば適任の者がやってくれた方が良いじゃろう?」

「むぅ‥‥‥。それはそうだけど‥‥‥」

 

明久は何か言いたそうな表情をしていたが、秀吉の的を得た発言に言い返すことが出来なかった様だ。

 

「よし、じゃあ島田。今挙がった連中から二人を決めてくれ」

「そうね~。それじゃ‥‥‥」

 

 

『候補①‥‥‥吉井』

『候補②‥‥‥明久』

 

 

「さて、この二人からどちらが良いか、選んでくれ」

「ねぇ雄二。明らかに美波の候補の挙げ方はおかしいと思わない?」

 

全くだ。やれやれ‥‥‥ここは俺が助言してやるか。

 

「島田、それは間違っているぞ。俺が書き直してやる」

 

俺はよっこらせ、と立ち上がり、教壇に向かい島田からチョークを借りる。

そして、島田の書いた所に新たに付け加えた。

 

 

『候補①‥‥‥吉井(バカ)』

『候補②‥‥‥明久(アホ)』

『候補③‥‥‥観察処分者(よしいあきひさ)』

 

 

「これでよし」

「あ、確かにそうね。ありがとう、岡崎」

「なに、気にするな」

「ねぇ? 僕には余計に間違いが増えたように思えるんだけど?」

 

明久が何か言ってるが無視し、俺は自分の席に戻った。

 

『どうする? どれが良いと思う?』

『そうだなぁ‥‥‥。全員クズには変わりないんだが‥‥‥』

「こらぁっ! 真面目に悩んでいるフリをするんじゃない! あと、平然とクラスメートをクズ呼ばわりするなんて、君らは人間のクズだ!」

 

という訳で、結局多数決関係なく、副実行委員は明久に決定した。

 

「ほらほら、アキ。前に出て議事をやらないと」

「なんだか僕はいつもこんな貧乏くじを引かされている気がするよ‥‥‥」

 

そして、明久は渋々席を立って前に出てくる。それと入れ替わりで全身から面倒臭いですオーラを発した雄二が気だるげに席へと戻っていった。

 

「それじゃ、ちゃっちゃと決めるわよ。クラスの出し物でやりたいものがあれば挙手してもらえる?」

 

島田がそう告げると、数人が手を挙げた。

 

「はい、土屋」

「‥‥‥‥‥(スクッ)」

 

立ち上がったのは、三次元のエキスパートこと俺の同志、ムッツリーニだ。

 

「‥‥‥‥‥写真館」

「‥‥‥土屋の言う写真館って、かなり危険な予感がするんだけど」

 

島田が思い切り嫌そうな顔をする。

確かに女子から見ればムッツリーニの写真は好まれるものでは無いが、男子にとってはその写真館は宝の山だろうな。ま、俺は二次元派だから何とも思わないがな!

 

「アキ、一応意見だから黒板に書いてもらえる?」

「あいよー」

 

【候補① 写真館『秘密の覗き部屋』】

 

 

いや、書き方よ。

 

「次。はい、横溝」

「メイド喫茶ーーと言いたいけど、流石に使い古されているし、兄貴の前でそう易々とメイドをやるワケにはいかないので、ここは斬新にウェディング喫茶を提案します」

 

ほほう、横溝よ。よくわかっているじゃないか。勿論俺は学園祭程度でやるメイドなど認めるつもりはないからな。アキバの本物のメイドさん達とたかが思い出作りでやる似非メイドではご奉仕の精神が違うのだよ! ご奉仕の!

 

「ウェディング喫茶? それってどういうの?」

「別に普通の喫茶店だけど、ウェイトレスがウェディングドレスを着ているんだ」

 

ほー、なかなか面白いじゃないか。つまりウェディングドレスを着た秀吉が接客をしてくれるのか‥‥‥イイネ!

 

『斬新ではあるな』

『憧れる女子も多そうだ』

『でも、ウェディングドレスって動きにくくないか?』

『流石に兄貴やムッツリーニでも調達は至難だと思うぞ?』

『それに、男は嫌がらないか? 人生の墓場、とか言うくらいだしな』

 

そんな意見に、クラスの中が少しざわめく。確かにウェディングドレスは作れないこともないが今からだと間に合うかどうか分からない。何せ女性が最も輝くとされる衣装だからな。ムッツリーニと協力しても人数分は厳しい。

 

「ほら、アキ。今の意見を黒板に書いて」

「あ、うん」

 

【候補② ウェディング喫茶『人生の墓場』】

 

 

いやだから書き方よ。

 

「さて、他に意見はーーはい、須川」

「俺は中華喫茶を提案する」

「中華喫茶? チャイナドレスでも着せようっていうの?」

「いや、違う。俺の提案する中華喫茶は本格的なウーロン茶と簡単な飲茶を出す店だ。そうやってイロモノ的な格好をして稼ごうってワケじゃない。そもそも、食の起源は中国にあるという言葉からもわかるように、こと『食べる』という文化に対しては中華ほど奥の深いジャンルはない。近年、ヨーロピアン文化による中華料理の淘汰が世間では見られるが、本来食というものはーー」

 

やけに須川が熱弁を振るっているな。中華に対して相当なこだわりがあるのだろうか。

 

「アキ。それじゃ、須川の意見も黒板に書いてくれる?」

「りょ、了解」

 

【候補③ 中華喫茶『ヨーロピアン』】

 

 

オイ。明久のヤツ、話理解出来てないだろ。

 

「皆、清涼祭の出し物は決まったか?」

 

教室の扉がガラガラと音を立てて開き、筋骨隆々のチンパンジーこと鉄人が現れた。

 

「今のところ、候補は黒板に書いてある三つです」

 

島田がそう言うと、鉄人はゆっくりと黒板に視線を向けた。

 

 

【候補① 写真館『秘密の覗き部屋』】

【候補② ウェディング喫茶『人生の墓場』】

【候補③ 中華喫茶『ヨーロピアン』】

 

 

「‥‥‥補習の時間を倍にした方が良いかも知れんな」

 

呆れながら鉄人がそう呟いた。あ、これ俺達完全に馬鹿だと思われたわ。

 

『せ、先生! それは違うんです!』

『そうです! それは吉井が勝手に書いたんです!』

『僕らがバカなわけじゃありません!』

 

「馬鹿者! みっともない言い訳をするな!」

 

鉄人の一喝で、思わず背筋が伸びる連中。流石に鉄人といえども、明久だけに責任を押し付けようとするヤツらを見て怒ってーー

 

「先生は、バカな吉井を選んだこと自体が頭の悪い行動だと言っているんだ!」

 

ーーどうしよう。反論の余地もない。

 

「まったくお前らは‥‥‥。少しは真面目にやったらどうだ? 稼ぎを出してクラスの設備を向上させようとか、そういった気持ちすらないのか?」

 

その鉄人の一言を聞いて、クラスの連中の目の色が変わった。

 

『そうか! その手があったか!』

『なにも試召戦争だけが設備向上のチャンスじゃないよな!』

『いい加減この設備にも我慢の限界だ!』

 

一気に活気づいた教室内。そして様々な意見が飛び交う。

 

『やっぱり、中華喫茶の方がいいんじゃないか?』

『お化け屋敷の方が絶対ウケると思う』

『簡単なカジノを作ろう』

『焼きとうもろこしを売ろう』

『こうなったら兄貴に頼み込んでダイゴブックス主催の同人誌即売会はどうだろう』

 

流石はFクラス。個性派集団の集まりだけあってどんどん意見がバラバラになっていき、島田が苦い表情になる。

本来ならクラスを纏める役目を持つ雄二の出番なのだろうが、ヤツは全く学園祭に興味が無いからな。現にそこでミカン箱に突っ伏して寝てるし、期待は出来ないな。

あぁ、俺も早く帰ってエロゲー攻略の続きやりてぇな。

 

「あぁ! もう! とにかく静かにして! このままじゃ決まりそうにないから、店はさっき挙がった候補の中から選ぶからね!」

 

やがて業を煮やしたのか、島田が無理矢理話を纏めた。そして手早く多数決を取っていく。

結局、俺達の出し物は中華喫茶に決まった。

 

「Fクラスの出し物は中華喫茶にします! 全員、協力するように!」

 

『はーい』

 

気の抜けた返事が響く。これで一応学園祭の方向性は決まっただろう。

 

「秀吉。俺は便所に行ってくる。なんかあったら教えてくれ」

「む? 分かったのじゃ」

 

そう秀吉に告げて、俺はFクラスの教室を出ていった。

 

 

 

ーーー

 

 

「あー、すっきりしたー」

 

便所を終えて、Fクラスへと戻ろうとすると、

 

 

 

 

「‥‥‥岡崎、ちょっと」

「んあ?」

 

 

 

 

丁度Aクラスの前を通りかかろうとした所で、誰かに呼び止められた。

誰だ、と思い振り向くと、そこには学年首席の霧島翔子が立っていた。

 

「なんだ霧島。俺に何か用か?」

「‥‥‥実は、岡崎にお願いがある」

 

お願い? また雄二とのいちゃラブ同人誌を描いてくれとかか? 

そう思い、俺は霧島に内容を問い質した。

 

「お願い? なんだ?」

「実は‥‥‥清涼祭の出し物で、Aクラスはメイド喫茶に決まった」

「メイド喫茶だと? それがどうした」

「でも‥‥‥クラス内であまりメイドについて詳しい人がいなくて困ってる。そこで、岡崎にメイド喫茶について教えて貰おうっていう話になった。だから岡崎ーー」

 

 

「ーー私達に、メイド喫茶というものを教えてほしい」

 

 

 

なん‥‥‥だと? 俺に‥‥‥メイドを教えてくれ、だと?

 

 

「‥‥‥予算は?」

「全部、学校が負担してくれる」

「‥‥‥時間は?」

「高橋先生にお願いして、六時間目の時間を空けてもらった。だから今からFクラスに行くつもりだった」

「‥‥‥報酬は?」

「‥‥‥用意してある。もし必要なら岡崎の要望にも応えるつもり」

 

 

‥‥‥‥‥ほう? 

 

 

「‥‥‥良いだろう。案内したまえ」

「分かった‥‥‥こっち」

 

 

そして俺は霧島に連れられ、Fクラスに戻ることは無くAクラスへと向かい、六時間目の時間を目一杯使って俺は、Aクラス生徒全員の前でメイド喫茶とは、そしてメイドとは何かという特別講義を行うこととなった。

 

え? 中華喫茶? 知らんなぁ! それよりもこっちの方が大事だ!

 

 




今回から清涼祭編です! 

木下優子さんのヤンデレは物語進行につれ少しずつ書いていこうかな?

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ
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