バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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清涼祭アンケート

学園祭の出し物を決める為のアンケートについて答えなさい。
『喫茶店を経営する場合、接客において大切だと思うことはなんですか?』


姫路瑞希の答え
『お客さんに喜んで貰えるように笑顔で礼儀正しく接すること』

教師のコメント
いかにも姫路さんらしい真面目かつ優しい答えですね。


岡崎大悟&土屋康太&吉井明久の答え
『ドジっ子属性とご奉仕(二つの意味)の精神とラッキースケベ』

教師のコメント
実に欲望に忠実な回答ですね。とりあえずこのアンケート用紙は西村先生に渡しておくことにしましょう。



第二十一問 食い物粗末にすんじゃねえ!

ーー大悟視点ーー

 

 

「兄貴! 二番テーブルに肉まんと餡まん、それと胡麻団子が二つずつ注文入りました!」

「大悟よ! 四番テーブルにも胡麻団子を三つ追加で注文じゃぞい!」

「分かった! 同志! 蒸しの残り時間は!?」

「‥‥‥‥‥あと三分四十二秒、胡麻団子の方は丁度揚がった」

「サンキュー! 須川! 烏龍茶の方はどうだ!?」

「こっちも今淹れ終わった! 任せてくれ兄貴!」

 

 

厨房では次々と注文が舞い込み、俺、ムッツリーニ、須川が忙しなく動いていた。

遂に清涼祭が始まり、明久達と姫路達が試験召喚大会に向かった後、俺達Fクラスの中華喫茶店は瞬く間に賑わいを見せていた。

 

 

『ねぇねぇ! ここの胡麻団子めっちゃ美味しくない!?』

『うん! 肉まんもスッゴくジューシーだし、餡まんも適度な甘さだし、まるで本場のお店みたい!』

『烏龍茶も本格的だし、内装も綺麗だしね。Fクラスの設備は酷いって聞いてたけど、そんなこと全然ないじゃん!』

『しかもあの接待してくれた娘、すっげぇタイプだぜ!』

『けど、ここって中華喫茶だよな? ヨーロピアンってなんだ?』

 

 

ホールから聞こえてくる客の声。どうやらお気に召してくれたようで良かった。

まだ大盛況というワケでは無いが、中華喫茶という物珍しさと腕によりをかけて用意した設備や飲茶と烏龍茶、オマケに秀吉という看板娘による接客が評判を呼んだのか、結構な数のテーブルを用意したにも関わらず、ほぼ満席状態だ。

ムッツリーニと須川は、流石発案者と立候補者ってだけあって腕前は申し分ない。決して俺の邪魔をしないようにしながらも、的確なサポートをしてくれている。おかげで仕事もスピーディーだ。

 

「よし! 出だしは順調だ! どんどん作って運べよ!」

「うむ。これなら口コミで集客もバッチリじゃの」

「ま、ホントなら姫路達にも手伝って貰いたかったがな。けど、秀吉というFクラスのアイドルこと秀吉がいりゃあどうってこたぁねぇさ! ガッハッハ!」

 

ま、ホントなら秀吉にチャイナ服でも着て貰いたいところなんだがな。

 

「‥‥‥大悟よ。どうしてお主といい明久達といい、儂を女扱いするのじゃ?」

「「「‥‥‥‥‥???」」」

「いや、どうしてそこで全員が『何かおかしいのか?』みたいな顔をして首を傾げるのじゃ‥‥‥」

 

そう言って溜め息をつく秀吉。全く、秀吉も少しは鏡を見て自分の容姿を確認しろってんだ。

もう姉の優子よりも可愛ーーおっと、寒気がしたのでこれ以上はやめとこう。

 

「心配するな秀吉。お前のことを女なんて思ってる筈かねぇだろう? 何年お前の親友やってると思ってんだ?」

「大悟‥‥‥」

「お前は‥‥‥『男の娘』だぜ☆」

「そ、そうか。ならよいーーってじゃから! 儂はそんな新しい性別でも無いと言うとろうが!」

「「‥‥‥‥‥(キラーン☆)」」

「お主らも笑顔でグーサインをするでない!」

 

秀吉のノリツッコミ、可愛い。

 

「まぁそう怒るなって。ほれ、胡麻団子出来たぞ。持ってってくれ」

「むぅ‥‥‥まだ納得がいかぬが、仕方あるまい‥‥‥」

「しっかし、案外客は来るもんなんだなー。まだ一日目だっつうのによ」

「そうじゃの。じゃが、この調子ならかなりの売上が期待出来るぞい」

「これなら少しは設備の改修費用にもなるかもしれねぇな。うし、ちょっとトイレに行ってくら。少し持ち場を離れるがいいか?」

「大丈夫じゃ。おそらく明久達ももうじき戻ってくると思うしの」

「ま、何かあったら呼べよ。つっても、まさか一日目早々に問題なんて起きるワケでもねぇよな」

「そんなワケなかろう。心配しすぎじゃ」

 

俺と秀吉はアッハッハ、と笑う。ま、今の所厨房にもホールにも問題はねぇし、大丈夫だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー男子トイレーー

 

「大悟よ。早速問題が起きてしもうた」

「えっ!? ちょっと秀吉! ここ男子トイレだぞ!?」

 

トイレで用を足していると、秀吉が慌ててやって来た。

 

「秀吉、人が用を足してる時に急に扉を開けるなんて失礼だぞ?」

「あ、それは済まぬのーーって儂は男じゃ! いや、そんなことはどうでもよい。トラブル発生じゃ」

「えぇ‥‥‥早すぎなぁい?」

 

俺は用を足し終え、手を洗う。

 

「んで、なにがあったんだ?」

「うむ、少々面倒な客がおっての、いわゆるクレーマーというものじゃ」

「そうか。んで、どこのどいつだ?」

「それが、うちの学校の三年なのじゃ」

 

おいおい、よりにもよって三年かよ。わざわざこんな所まで来てなんのつもりだ?

 

「分かった。俺が何とかしよう。相手が手を出してくる場合もあるから、クラスの連中は下がらせとけよ」

「うむ、了解した」

「それに、最近こっちの準備が忙しくてろくにアニメも見れなかったからストレス溜まってんだ。いいサンドバッグにでもなってくれっとありがてぇな」

「‥‥‥あまりやり過ぎるでないぞ?」

 

ったく、開始早々これとは、先が思いやられるぜ。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「オイオイ! 何だよこの烏龍茶、虫が入ってんじゃねえかよ!」

「まったく、責任者出てこいよ! この店は客に虫入りのモン出すってのか!?」

 

廊下にまで響く程のデカイ罵声が聞こえる。扉を開けて中に入ると、椅子に偉そうにふんぞり返って騒いでいるヤツらがいた。

 

「む。あの連中じゃな」

「アイツらか。ったく、絵に書いたような小物だな」

 

騒いでいるのは文月の制服を着た男二人組。

一人は普通の体型をしたモヒカン頭、もう一人は丸坊主の男だ。そして周りの床には割れた陶器が散らばり、胡麻団子や烏龍茶が無惨な姿と化している。そしてそこにはこっからでも見えるほど大きな虫の死骸が落ちていた。

 

「ムッツリーニ、どういうことだ?」

 

厨房から何事かと出てきたムッツリーニに詳細を訊く。

 

「本当に虫が入っちまったのか?」

「‥‥‥‥‥いや、アイツらがこっそり入れていた。証拠のカメラもある」

 

やっぱりな。ただの難癖野郎共だったか。大体そんなデケェ虫が入ってりゃこっちも気付くに決まってるだろうが。

 

『うわ‥‥‥マジで虫が入ってんじゃん‥‥‥』

『学園祭とは言っても、一応食べ物のお店なのに‥‥‥』

『食欲無くなっちゃったね‥‥‥別のところ行こう‥‥‥』

 

しかし、客はそれを見て次々と席を立ってしまう。マズいな。一刻も早く手を打たねぇと。

 

「まあいい。んじゃ、ちょっくら黙らせに行ってくるか。秀吉は他の客の対応を頼むぜ」

「うむ、承知した」

 

そして、準備運動とばかりに首と拳をポキポキと鳴らしながら、そいつらの下へ歩み寄ろうとすると、

 

 

 

 

「うるせぇな糞餓鬼共。折角の飯と茶が不味くなるだろうが」

 

 

 

 

と、そいつらに一言発して立ち上がった一人の女性客がいた。

 

「さっきから猿みたいにギャアギャア騒ぎやがって。他の客に迷惑かかってんのがわかんねぇのか、あぁ!?」

 

そう言ってズンズンと二人の目の前に歩みよったその女性。

年は二十代前半くらいで赤い髪を後ろで一つに縛り、二人の先輩に対して全く臆する様子を見せず、逆に鋭い眼光で睨み返し、煙草を加えながら三年共を見下ろしていた。

 

ーーあれ? あの人って‥‥‥まさか。

 

「? どうしたのじゃ、大悟ーーーあっ」

「‥‥‥‥‥っ、(ピクッ)」

 

どうやら秀吉もムッツリーニも気づいたようだ。よし、俺の出番は要らなくなったな。

 

「あぁ? なんだよアンタ! 関係ねぇだろ!?」

「喚くな。テメェらこそ折角いい気分でティータイムしてたってのにその雰囲気を台無しにしやがって、何様のつもりだよこのカス野郎共」

「か、カスだとっ!? こっちはその食い物に虫なんて入れられたんたぞ! 黙ってられるワケねぇだろうが!」

「‥‥‥‥‥」

 

と思っていると、怒鳴り散らす三年共を他所に、その女性は床に落ちていた虫をしゃがんで観察するように見る。どうやら烏龍茶に入っていた虫は作り物では無く、本物らしかった。

 

「‥‥‥ちょっと取り除きさえすれば、この胡麻団子も烏龍茶も飲めたんじゃねえのかよ」

「あぁ!? 何言ってやがる! んなもん食えるワケブゴオッ!?」

「黙れハゲ」

 

その坊主頭の先輩は、言い終える前にその女性から思い切り股間を蹴り飛ばされていた。うわぁ痛そう。

 

「なんだ、餓鬼の分際でアタシに文句でも垂れようってのか? こっちは二日酔いでイラついてんだよ」

「いや‥‥‥文句も何も、今ツレが金的攻撃をされたんだが‥‥‥」

 

蹴られていないソフトモヒカンの先輩が女性の突然の行動に驚いている。無理もない。いきなり友人の股間が女性に蹴りつけられれば誰だってそうなる。

 

「おい、立てよ。まだ話は終わってねぇぞ」

「ふ、ふざけんなよこのアマ‥‥‥! 女だと思ってつけあがりやがふぎゃあっ!」

「それが年上に対する口の聞き方か? 教育がなってねぇんだなぁ?」

 

股間を押さえて悶絶しているところに容赦なく、今度は顎に向かって蹴りをぶちこんだ。

 

「ま、待ってくれ! 謝ります! この夏川を好きなだけボコって構わないので俺は勘弁して下さい!」

「ちょ、ちょっと待てや常村! お前、自分だけ助かろうってのか!?」

 

慌てている坊主頭の夏川と呼ばれた男。ソフトモヒカンの常村って方は勝ち目が無いことを悟ったのか、必死に頭を下げていた。覚えにくいから常夏コンビとでも呼ぶとするか。

 

「ハァ? そっちから吹っ掛けといてなんだそりゃ? イキってんじゃねぇぞ糞餓鬼風情が」

 

そう言って、坊主頭の夏川の胸ぐらを掴んで捲し立てた。その様子に他の客もビビっているのが分かる。

 

「‥‥‥くっ、こんなことして、ただで済むと思うなよ。すぐに教師陣に全部報告して‥‥‥」

「やってみろよ。そっちがそうでるなら、アタシもコレ、そん時に先公共に伝えさせて貰うわ」

 

と言って、女性が手に持っていた物、携帯電話を見せつける。

 

「悪ぃけど、テメェ達がここに入ってきた時からの行動、全部録画させて貰ったから」

「「なっ!?」」

 

常夏コンビが目を見開く。

 

「ま、お前らが本当に『何もしてない』ならこんなもん録られたところで問題はねぇなぁ? なんでそんなに動揺してんだ? それとも‥‥‥ここに見られたら困る映像でも入ってんのかなぁ?」

「「‥‥‥‥‥」」

「おい、さっきまでの威勢はどうしたコラ? 違うんだろ? ほら、アタシに言い返してみろよ。まさかとは思うが‥‥‥ここまで騒ぎ立てといて『今までの事は全部僕達がやりました』なんて‥‥‥今更舐めた真似ほざきやがるワケはねぇんだろうなぁっ!?」

「「‥‥‥‥‥っ!!」」

 

女性の迫力ある言葉に常夏コンビは悔しそうに押し黙る。反論は無く、気まずそうな表情をしてる、つまりそれは女性の言葉通りであり、その携帯のカメラには自分達にとって不都合なものが映っていることを示す決定的な証拠に他ならない。

そんな様子から、他の客も段々と感づき始めていた。

 

『確かに‥‥‥あそこだけ虫が入ってるなんて、おかしいよね‥‥‥』

『それにこんなに綺麗に掃除されてるんだもん、虫が出るなんて信じられない‥‥‥』

『じゃあ、あのお姉さんの言う通り、やっぱりあの二人が‥‥‥?』

『うーわ、しかもあれ三年生だろ? 信じらんねぇ‥‥‥』

 

客の疑いの目は次々と常夏コンビに向けられる。

 

「テメェら、見たところ三年だろ? ってことは今年大学受験か。じゃあこんなもんが学校側に出回ったらよぉ、立場的にも色々やべぇんじゃねぇのか? それとも、これを動画サイトにでも載っけて拡散させるのも面白ぇなぁ?」

「‥‥‥アンタ、いい大人の癖に脅しかよ?」

「先にカマかけてきたのはどっちだよ? それに脅し? 違うな。これは『勧告』だ。お前ら餓鬼共とは『行動力』も『言葉の責任力』も『経験』も違う。大人舐めてんじゃねぇぞ」

 

女性の力強い言葉に再び黙り込む常夏コンビ。

それほどまでに、残された映像というのは時に大きな抑止力となる。 

少なくとも、今回の件を学校側に報告されればヤツらは、自分達より下の学年にわざわざ喧嘩を吹っ掛けたのにも関わらず撃退されたというなんとも情けない事実によって狭い立場を強いられるだろう。

そしてこのネットワークが普及した現代なら、こんな行為はすぐに日本、いや、世界中にすぐさま広まり、炎上は勿論のこと、個人情報の特定までされるだろう。そしたらヤツらの人生はバッドエンドだ。

 

「‥‥‥ま、別にアタシにとっちゃテメェらの人生なんざどうだっていい。けど、そっちが大人しく引き下がって周りの客に不快な思いさせたこと謝罪するってんなら、こっちもこの映像は消してやるよ。どうする?」

 

にっこりと笑みを浮かべながらそう二人に訊く。

もちろん、常夏コンビには残された道など一つしかないし、立場的にも向こうの方が上なのは流石に分かっているだろう。

 

「‥‥‥分かりました」

 

モヒカンが観念してそう言い、坊主頭もそれに頷く。

そして女性はそれを見て、携帯電話をポチポチと操作した。恐らく動画を削除しているのだろう。

 

「‥‥‥うし、削除完了っと。よし、お前らーー」

 

ガシッ

 

「「え?」」

 

 

 

「死ねゴラァァァアアアッ!!!」

「「げぶるぁぅ!!?」」

 

 

 

女性は常夏コンビの腰をそれぞれの腕で抱え込み、勢いよくジャーマンスープレックスを決めた。

脳天から叩きつけられた為、そのまま常夏コンビは物言わぬ屍になったのでした。

 

「馬鹿が‥‥‥アタシは一度も、許すなんて言った覚えはねぇぞ。食い物粗末にしやがって‥‥‥料理人の前でそれをするって事が、自殺に等しい行為だってことをよく覚えておきやがれ、イキリ小僧共が‥‥‥ヒック」

 

そう気絶した常夏コンビに吐き捨てる。そしてその女性は他の客の方を向き、ペコリと頭を下げた。

 

「あー‥‥‥一般の皆々様、生徒の皆々様。このような騒動とお目汚し、大変申し訳ございませんでした。ですがご覧の通り、原因は彼らの自作自演である事が判明致しましたので、ご安心してお食事の方を引き続きお楽しみ頂けると幸いでございます」

 

先程とは打って変わって丁寧な言葉で謝罪する女性。すると、一部始終を見ていた客達は一斉にその女性に向かって拍手と声援を送った。

 

『すごーい! かっこよかったよー!』

『こっちこそ、ありがとうございます!』

『しかもよく見たら、すっげぇ美人ですね!』

『抱いてほしい‥‥‥』

 

「あー、ども、どうもー。畜生‥‥‥酔いざめが悪ぃな。また後で家に帰って呑み直しだ」

 

まあ、これなら客も減ることは無いだろう。一安心といったところか。

しっかし、あの人は本当に容赦なくやるよな‥‥‥そう思いながら、俺は溜息をついてその女性のもとまで歩き出す。それに秀吉とムッツリーニも続いた。

 

「ったく、相変わらずやり方が無茶苦茶なんだよーーー母さん」

「これはまた随分と、ド派手な登場の仕方じゃのう、凛花さん」

「‥‥‥‥‥流石としか言いようがない」

「おお、アタシの可愛い息子の大悟! それに秀吉! ムッツリーニもいるじゃねえか! なんだよもう、いるんなら早く教えろよ! こちとらお前らが何処にいるのかってずっと探してたんだからよ! アッハッハ!! ヒック!」

 

 

そう言ってその女性ーーいや、俺の母さんこと『岡崎凛花』は加えていた煙草をふかしつつ、大きく口を開けて笑った。

あぁ、来ちゃったか‥‥‥ウチのトラブルメーカーにして最強のお人が。こりゃまた一段と騒がしくなりそうだなぁ‥‥‥。

 

 

(ていうか母さん、酒臭っ!)

(さっきまで呑んでたんじゃろうな‥‥‥)

(‥‥‥‥‥大酒豪)

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

ーー明久視点ーー

 

 

「さっきの決着をつけるぞクソ野郎!」

「それはこっちの台詞だよバカ野郎!」

 

 

召喚大会の一回戦。試合は無事に僕らの勝利に終わり、今は雄二と友情の確認という名の殴り合いをしていた。

 

「明久に雄二。殴り合いなぞしておらんで、急いで教室に来てくれんかの?」

「あれ? 喫茶店で何があったの?」

「いや、単純にかなりの客が入ってきて人手不足なのじゃ。まぁ、少しいざこざもあったがの」

「いざこざ? クレームでもきたとか?」

「左様じゃ。三年の生徒が難癖をつけてきての、まぁ、それは何とかなったのじゃがな」

 

何とか? 大悟がぶちのめしでもしたのかな?

 

「難癖か‥‥‥教室の設備が汚いとかはないだろうし、多分料理か茶の中に異物が入ってるとかそんなモンだろ」

「雄二の言う通りじゃ」

「ま、大方Fクラスの出し物程度で人気が出ることが気にくわないとかだろうな」

 

全く、学校の中じゃ一番大人の癖に、やってることが小さいなぁ。

 

「そういうことなら雄二や大悟にお任せだよね。目には目を、チンピラにはチンピラをだね!」

 

実際に雄二と大悟は腕っぷしもあるし、こういう場合にはうってつけだ。

 

「ま、大悟がぶちのめしたんだったら、もう二度とそんな真似はしねぇと思うが‥‥‥」

「そうだね。仮にやり返してきたとしても、またブッ飛ばされるだけだもんね」

 

あっはっは、と雄二と笑いあう。全く、大悟にやられるなんて可哀想な先輩達だなぁ。

 

 

「いや? 大悟はなにもしとらぬぞ?」

「「‥‥‥えっ?」」

 

 

秀吉の言葉に思わずポカンとなる僕と雄二。

 

「大悟は何もしてないって‥‥‥どういうこと、秀吉?」

「実はのう‥‥‥三年生達を蹴散らしたのは、大悟じゃなくて、その‥‥‥凛花さんなんじゃ」

「え? 凛花さんって、まさか‥‥‥」

「うむ、大悟の母親じゃ」

 

 

「「何ぃぃいいいいっ!!!?」」

 

 

僕と雄二は同時に驚愕の声を上げた。な、何故凛花さんがウチのクラスに? い、いや、確かに清涼祭は一般解放だし、設備を提供してくれたのはあの人だから来ても何にもおかしくはないけど、よりによって何故凛花さんが!?

 

「ま、まずいよ雄二! 早くFクラスに戻らないと!」

「分かってる。けどまさか、よりにもよって中華喫茶にあの凛花さんが来るとはな‥‥‥このまま何も起こらねぇ筈がねぇ」

 

雄二が珍しく焦燥感を漂わせた表情になる。それは僕も同様だ。何故なら秀吉を含め僕達は、あの人がどんな人間かを知っているから。

 

「あ、アキ、坂本。どうしたの?」

 

そんな時、後ろから女子の声が聞こえてきた。

 

「あ、おかえり。美波に姫路さん。一回戦はどうだった?」

「はいっ。なんとか勝てました」

 

姫路さんがVサインをしている。そんなに勝負にこだわる性格じゃなかったと思うけど、今回は場合が場合だ。勝ちにこだわるのは当然だろう。

 

「そんなことより、何かあったの? 随分焦っているみたいだったけど」

「ああ、うん。それなんだけどねーー」

 

僕は二人に、今あったことを全て話した。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「ーーーってことなんだ」

 

僕はFクラスに向かうため歩きながら、美波と姫路さんに説明した。

 

「へぇー、岡崎のお母さんが来てるんだ」

「でも凄いんですね。三年生の先輩方を倒しちゃうなんて、凄い腕っぷしです」

 

それぞれの反応を見せる二人。

 

「まぁ、伊達に大悟っていう男を育て上げた人間じゃねぇんだよな、凛花さんは」

「それに‥‥‥あの人を見れば、あぁ‥‥‥子は親に似るんだなぁ、って思うよ」

「どういうこと?」

「実は‥‥‥大悟のお母さんは、かなり特殊でね、なんていうか‥‥‥珍妙というか、自由人というか‥‥‥いい意味でも悪い意味でも行動が読めない人なんだよね‥‥‥」

「大悟の奇行が可愛く見えるぐらい、カオスな人なんだよな‥‥‥」

 

なにせあの大悟が『あの人は色んな意味でイカれてる。デカい人間ってのは常識はずれって言うだろ? まさに母さんがそれなんだよ』って言うぐらいだから。僕もそう思うし。

でも根本的には、面倒見のいい姉御肌って感じなんだけどね。

 

「あ、アキと坂本がそこまで言うなんて、どれだけヤバい人なの‥‥‥?」

「お、恐ろしくはありますけど、とっても気になります‥‥‥」

「あー‥‥‥、なんだ。姫路と島田が思ってるよりも相当な人だからな。っと、着いたか」

「うおっ! 凄い盛り上がってるね!」

 

廊下からでも分かるくらいの賑わい。まだ清涼祭がスタートしてからそんなに時間は経っていないにも関わらず、凄い数のお客さんが入ってるのが分かる。

どうやら、綺麗な店内と飲茶と烏龍茶の美味しさが評判になったからなんだろう。

 

「どうやらかなり口コミで広まったようでな。さっきからずっとこの調子じゃ。それで流石に人手が足りなくての」

「うん、分かった。次の試合までまだ時間はあるから僕達も手伝うよ」

「ああ。それに、凛花さんの行動も気になるしな‥‥‥何も起こってなきゃいいが」

「う、ウチ、ちゃんと挨拶出来るかな‥‥‥?」

「怖い人じゃないと良いんですけど‥‥‥き、緊張します‥‥‥」

 

そして、僕らはFクラスの店内へと入る。するとーーー

 

 

 

「おらホールの餓鬼共! 客を長く待たせるのは店としての恥だからな! スピーディーかつ正確に動きやがれ!!」

『はい!! 姐さん!!』

「大悟ぉ! ムッツリーニィ! テメェらもてきぱき動けよ!! ミスしたらまとめてブッ飛ばすかんな!」

「んなこと分かってるよぉ!! 母さん!」

「‥‥‥‥‥承知っ!」

 

 

 

ーーー何故か凛花さんが、厨房に立ってクラスメート達を叱咤激励していた。

 

 

「ーーーん? おぉ、明久ァ! 雄二ィ! テメェらもこっち来て手伝いやがれ! 人手が足らねえんだ! モタモタすんじゃねえ!!」

「え? あっ、はい! 今行きます!」

「わ、分かりました!」

 

 

そして僕らも、凛花さんに言われて急いで厨房へと向かった。秀吉も急いでお客さんの接待に行った。

 

 

「あ、あれがまさか‥‥‥」

「岡崎君の、お母さん‥‥‥?」

 

 

 




書くこと無いので妄想コーナー。 


ーーオタクとゲーマーと捻くれ復讐者による人理修復の旅ーー


「さて、それでは君の仲間となるサーヴァントを召喚して貰うけど‥‥‥準備はいいかな?」
「おい、ロマニっつったか。それは別に構わねぇけど、美少女サーヴァントが来なかったらすぐさま自害させっからな」
「えぇ‥‥‥岡崎、流石にそれは止めようよ」
「そうですよ、せっかく岡崎先輩の為に来てくれるんですから‥‥‥」
「うるせぇ藤丸この野郎! お前にはマシュっていう後輩属性マシマシの美少女キャラがいるからそんなこと言えんだよ!」

俺はそう藤丸に罵声を浴びせる。クソ! 突然連れてこられたかと思ったら『もうすぐ人理終わっちゃうからそれを阻止すんの手伝ってくれない?』だと!? 最高な展開じゃねえか!

「ほら岡崎君。喧嘩なら後にしてくれたまえ。もう時間がないんだから」
「おっと、失礼。んじゃ、早速始めっかーー」

俺は自分の右手を目の前の魔方陣に翳し、詠唱を唱える。

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

すると、どこからか風が吹き、魔方陣の上に小さな魔力の渦が産まれる。そして俺の右手の甲には、マスターの証である令呪が刻まれた。

「ーーーーAnfang《セット》」

「ーーーー告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

詠唱が続くと、それに呼応するかのように、風は強くなり、空気が一変する。
そして、その場にいた大悟以外の者には分かった。この膨大とも言うべき魔力の渦が表すものーーーそれは、大英雄の召喚を意味していた。

「この魔力量‥‥‥強い‥‥‥って、あれ!?」
「どうしたのですか、ドクター!?」
「‥‥‥いや、それが‥‥‥」

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よーーー!!」


詠唱が終わると同時に、その場は閃光に包まれる。俺は思わず目を閉じてしまった。
そして、光が止むとーーそこには大悟の召喚に応じて現れたサーヴァントが立っていたのだが、


「‥‥‥あぁ?」
「えぇ!?」
「そ、そんな馬鹿な‥‥‥」
「これは‥‥‥中々面白い結果になったねぇ」


全員が驚く。無理もない、何故ならそこにいた英霊《サーヴァント》が‥‥‥一人ではなく、『二人もいた』からだ。


「‥‥‥アーチャー・インフェルノ。戦働きのため、参りました。仮の名にございます。ええ、真名ではありません。貴方が、私の主君様でしょうか?」
「‥‥‥サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上しました‥‥‥なんですか、その顔は? さ、契約書です」


これは、キモオタとゲーマーと捻くれ者によるドタバタ人理修復コメディである。


やる気があれば続くかもしれません。

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ

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