以下の問いに答えなさい。
『PKOとは何か、説明しなさい』
姫路瑞希の答え
『Peace-Keeping Operations(平和維持活動)の略
国連の勧告のもとに、加盟各国によって行われる平和維持活動のこと』
教師のコメント
そうですね。豆知識ですが、United Nations Operationsとも呼ばれたりします。余裕があれば覚えておくと良いでしょう。
岡崎大悟の答え
『Peaceful Knock-Out(めるたんの必殺技)の略
最後の勧告に従わない悪い敵さんに対し、平和を願うめるたんの優しい心と魔法を纏った拳によって相手の頭部を粉砕して一撃解決を狙う。またこれは魔力を多く消費するごとに威力を増し、岩を砕き、地鳴りを起こすことも可能』
教師のコメント
その技は決して平和的ではないでしょう。
土屋康太の答え
『Pants Koshi-tsuki Oppaiの略
世界中のスリーサイズを規定する下着メーカー団体のこと』
教師のコメント
君は世界の平和をなんだと思っているのですか。
吉井明久の答え
『パウエル・金本・岡田 の略』
教師のコメント
それはセ界の平和を守る人達です。
ーー明久視点ーー
『いやー、美味しかったねー』
『うん、また明日も来ようかなー?』
『値段もリーズナブルだし、学園祭のレベルとは思えなかったもんなー』
「ありがとうごさいましたー」
そんな感想を次々に言いながら、帰っていくお客さん。満足してくれたようで何よりだ。
ピークが過ぎたのか、息つく暇もなかった程に忙しかった僕らFクラスの中華喫茶も徐々に落ち着きを取り戻し、店内にいるお客さんもまばらになっていった。
「だあー‥‥‥疲れたぜコンチクショー‥‥‥」
「まさか、ここまで客が来るとはな‥‥‥」
「‥‥‥‥‥予想外」
厨房では、大悟、雄二、ムッツリーニが壁にもたれかかっている。あの体力自慢の雄二や大悟がここまでになるとは思わなかったけど、想像以上の集客にずっと僕を含め皆、動きっぱなしだっから仕方ない。
でも、初日からこの盛況ぶりなら、総合売り上げにもかなり期待が出来ること間違いなしだ。
「おう! お前らお疲れさん! ほれ! んなとこで突っ立ってねえでこっち来い! どうせ材料の仕込みしないと店開けられねえからもう休憩でいいだろ? 大悟?」
「まあ、そうなるな。ていうか、一日分の材料を用意したのに数時間で使いきるか?」
「何言ってんだ。余るより使いきっちまった方が良いに決まってんだろ! それに、後でまたあの親父共に持ってこさせっから構わねぇだろ?」
そう言ってあっはっは、と豪快に笑う凛花さん。その表情と態度からは疲れといった様子が全く見られない。
息子の大悟でさえあんななのに‥‥‥鉄人に負けない位の体力の持ち主だな。
ーーー
「さて、Fクラスの生徒諸君! 知ってるヤツは知ってると思うが殆どが初めましてだろうから、改めて自己紹介させて貰うよ。アタシの名前は岡崎凛花、この大悟の母親さ。よろしく頼むよ! あっはっは!」
椅子に座って足を組み、笑いながらクラスメートに挨拶をする凛花さん。その男勝りな態度と言葉づかいとは真逆に、アイドルやモデル負けの美貌とスタイルの持ち主で、そこに限っては大悟と血の繋がりが全く想像出来ない人だ。
そして、凛花さんを初めて見たら、誰もが思うであろうことが一つある。
『お、おい‥‥‥あれが兄貴の母親だって‥‥‥!?』
『な、なんだあの美貌は!? 学年首席や木下姉妹に匹敵するぞ!』
『しかもスタイル抜群だなんて‥‥‥惚れるっ!』
「お、岡崎のお母さんって、若すぎない!?」
「と、とても子供を産んでるなんて思えません‥‥‥!」
皆の言う通り、母親というよりは年の離れた姉‥‥‥いや、大悟の妹と言っても不自然に思えないほど、綺麗かつ可愛さのある風貌をしているのだ。
「あ、あのっ! すいません!」
そんな中、クラスメートの一人が手を挙げる。
「あぁ? なんだ?」
「年はおいくつなんですか?」
流石欲望に忠実な連中だ。普通そんな質問を初対面の女性にはしない。けれど、恐らくそれは姫路さんや美波含め全員が思ってることだろう。
「あっはっは! いきなりそこ突いちゃうかー、大悟から聞いてた通りFの連中だな!」
けど、そんな聞き方によっては失礼ともとれる質問に対しても全く物怖じせずに笑い飛ばしている。そんな器量のデカさは大悟そっくりだ。
「えーっと‥‥‥アタシの年齢か。大悟、アタシ何歳だっけ?」
「今年で三十路だろ?」
「ってことは、今は二十九だな!」
『‥‥‥‥‥えぇぇぇぇええええええーーっ!!!?』
その衝撃の事実に、全員が驚愕の声をあげる。
『嘘だろ! てことはまだ二十代!?』
『う、うちの母親と全然ちげぇ!』
『俺の姉と歳が一緒だなんて‥‥‥』
「ちょ、ちょっと待ってください! それじゃあ、岡崎君のことを何歳で出産されたんですか!?」
「あ? あー‥‥‥確か、アタシが中一か中二の頃だから‥‥‥十三歳の時だな」
『何ぃぃぃいいいいいいいいいっ!!!?』
再び声をあげるFクラスの連中。けど、僕も凛花さんから初めてその事を聞いた時には思わず思考が暫く停止してしまった。
だって普通に考えれば、凛花さんは中学生にあがったばかりの頃に妊娠と出産というものを経験している。中学生といえば思春期真っ只中で青春を謳歌している筈なのに、子供を産んであまつさえそれを自分の力で育てるなんてのは普通に生活してればまずあり得ないし、並大抵の精神力と度胸がなければ無理だろう。だからああやってずっと笑顔でいるけど、凛花さんは僕らが思っている以上に壮絶な人生を歩んでいるのは明白だ。
「だから、アタシがお前らぐらいの時にはばっちし子育てしてたってことだ! 中学生にして母親ってどこのアニメの話だってんだよ! あっはっは!」
『さ、流石兄貴を産み出した人だ‥‥‥レベルが違いすぎる』
『最早尊敬の域に値するぜ‥‥‥』
「いやー、にしてもあん時は大変だったなー。相手の男はビビって逃げちまうし、親からは勘当されちまったしなー。ま、妊娠しちまったもんはしゃあねえし、アタシが男を見る目が無かったってだけの話だ! だからお前らも、アタシみたいにならねぇように、もし彼女とヤる時にはちゃんとゴムつけろよ! 万が一って時もあるからな!」
凛花さん。ここのクラスはその行為どころか、その相手すらもいない連中の集まりなのでその心配は無いと思います。
でも、思春期の男達に対してよくなんの恥ずかしげもなくそんなことが言えるものだ。やっぱり大悟に似ているなぁ。
「‥‥‥あ? よく見りゃ女子もいるじゃねえか。男ばっかだと思ってたが、意外だな」
そう言って、美波と姫路さんの方に視線を向ける凛花さん。
「お前ら、名前はなんてんだ?」
「あ、はい。申し遅れてすいません。私は姫路瑞希といいます。岡崎君とは一年生からのクラスメートです」
「ウチは島田美波です。岡崎とは今年からクラスメートです」
「ほー、瑞希に美波か。はじめまして、これからよろしくな」
終始笑顔で応対する凛花さん。こういう友好的なところはちゃんとしてるのに、それが霞んで見える程の性格の強さがあるんだよな‥‥‥。
「そういや、母さんは何しに来たんだ? 今日は店は休みじゃないだろ?」
「おう。だからこれからアタシは店に戻らなきゃならねえ。けど、そういやアタシ今まで文月の行事になーんも参加してなかったからな。大悟がちゃんと学校生活を送れてんのか様子見も兼ねて来たんだよ。でも、見た感じ心配はねぇみたいだな。安心したよ」
「そうだったのか。わざわざありがとな。てか母さん‥‥‥まさかとは思うけど、さっきまで呑んでたのか?」
「おう。ほんの小一時間前まで居酒屋で酔い潰れてたよ。んで着替えんのもめんどくせーし、長居するワケでもねーからこのまま行っちゃえ! って思ってなーーーあ、そうだ! 大悟ぉ!!」
すると、突然凛花さんが血相を変えて大悟の顔面を鷲掴みにした。
「えっ!? ちょっ! いきなりなんだよ!?」
「お前よぉ! アタシが楽しみに冷蔵庫にとっといたプリン食っただろぉ!?」
「はぁ!? プリンってなにーーあ、あれ母さんのだったのか!? ご、ごめんなさい! まさか母さんの物だとはーー」
「ほぉー‥‥‥? おもわなかったとでも言うのか?」
「いや、ちょっとは思ったけどよ、『どうせ酔い潰れて忘れてるだろうし、まぁ大丈夫だろ』と思ってあぁぁああ嘘です!! 待ってくれ母さん! 死ぬ! 頭蓋骨が死んじゃう! 土下座でもなんでもするからアイアンクローは止めてくれぇぇえええ!」
「黙れこの馬鹿野郎! 人の楽しみ奪いやがって! 歯ぁ食い縛れやぁっ!!」
そのまま凛花さんは大悟の腰に両腕を回して抱え込み、そのまま勢いよくバックドロップを決めた。
「げぶるぉっ!!?」
大悟はそのまま気を失ったのか、その場で動かなくなった。けれど、まさかプリン一つで実の息子に対してあんな大技を容赦なくかけるなんて、流石凛花さん。
大悟の化け物じみた生命力の強さは、ここにあったんだなぁ、と思わざるを得ない。
「全く、相変わらず賑やかじゃのう。凛花さんは」
「流石、岡崎大悟っていう人間を作り上げた人なだけはあるよな」
「‥‥‥‥‥技のかけ方も完璧」
「何て言うか‥‥‥岡崎以上に凄い人ね。子は親に似るっていうけど‥‥‥親も子に似るのね」
「予想以上でビックリしました‥‥‥でも、とっても楽しくて良い人そうですね」
皆が口々にそう言う。けど確かに大悟と凛花さんのやり取りを見ていると、本当に家族としての仲が良いんだなって思う。
『アキ君? 歯を食い縛って下さい?』
‥‥‥それに、凛花さんの行動が、何故か他人事のように思えないんだよなぁ‥‥‥。
ーーー
凛花さんが帰って少しした後、僕と雄二は召喚大会の二回戦へと向かっていた。
ちなみに大悟は起こすのが面倒だったからそのままにしておいた。まあ、喫茶店の方は材料の仕込みが終わるまで営業出来ないらしいし、ほっといてもそのうちに復活するよね。
「で、二回戦の相手はどんな連中?」
特設ステージに向かいながら、隣を歩く雄二に聞く。
喫茶店の方が忙しかった為に、二回戦の相手を調べる暇さえなかった。弱そうな相手だといいんだけど。
「対戦表を見た限りだと、勝ち上がってきそうなのはーーお、予想通りだ」
雄二の目線を追う。すると、その先には僕らを待ち構えている対戦相手の姿があった。
「あれ? 誰かと思えばBクラスとCクラスの代表カップルじゃないか」
「よ、吉井に坂本!? お前らが相手か!」
ステージの向こうから僕らを見て顔が引き攣っているのは、前回の試召戦争で大変お世話になったBクラス代表の根本君と、先日の女子更衣室の時にお世話になったCクラス代表の小山さんだった。
「どうしたの根本君。Fクラスの変態バカトリオのうちの二人が相手なんだから、この勝負は貰ったようなものじゃない」
バカに加えて変態とは酷い言い様だ。でも、正面切って悪口を言ってくるなんて、小山さんは相変わらず性格が悪いな。大悟が嫌うのも分かる気がする。
そしてその彼氏があの根本君だもんな‥‥‥嫌なカップルだ。
「それでは、試験召喚大会二回戦を始めてください」
立会人の遠藤先生が、そう宣言すると、僕らはそれぞれ召喚獣を喚び出した。
「「「「試獣召喚《サモン》!」」」」
Bクラス 根本恭二 199点
& &
Cクラス 小山友香 165点
英語W VS
Fクラス 坂本雄二 73点
&
Fクラス 吉井明久 59点
流石はBクラスとCクラスの代表コンビ。点数も立派なもんだ。それに対して僕と雄二の点数はかなり見劣りしてしまっている。
でも、特に問題はない。何故わざわざ雄二がこの試合にこんな科目を選んだのか。それはハナから、根本君達相手に正々堂々と戦う気が無いからだ。
「じゃあ雄二、例のモノを」
「おう。これのことだろう?」
そう言って雄二が取り出したのは、ダイゴブックスとムッツリ商会によって生み出された根本恭二コスプレ個人写真集『ダイゴブックス&ムッツリ商会Presents ~生まれ変わった私を見て! 男子高校生のヒ・ミ・ツ♪~』だ。正直、見てと言われても見たくはないけど‥‥‥。
「そ、それは‥‥‥!」
予想通り、根本君の表情が凍る。
これはこの間のBクラスとの試召戦争で負けた根本君を大悟が脅迫してコスプレをさせ、ムッツリーニが撮影した、彼の女装コスプレ写真集だ。どうやら雄二はそれを大悟から買い取っていたようだ。その時は何でそんなものを‥‥‥、と思ったけど、この時の為だったと分かった。
できれば墓場まで持っていきたい汚点だろうけど、姫路さんの気持ちを弄んだ罰だ。手加減はしない!
「さて根本君。この写真集をバラ撒かれたくなかったらーー」
「おいおい明久。交渉の相手が違うぞ?」
「え? そうなの?」
でも、根本君以外に誰を交渉させるんだろう?
「おい、根本の彼女だかCクラス代表だかゲロ吐きまくったクラスのヒステリー女だか知らんが、そこの女」
「誰がヒステリー女よ! 大体あれは全部あのキモオタが描いた汚物(船越女史のイラスト)のせいじゃない!」
どっちも流石に言い過ぎじゃないかな?
「まあまあ落ち着け。そんなことより、これを見てみろ」
「‥‥‥何よ」
睨む小山さんを前に、雄二は写真集の一ページ目を捲る。そこにはゴスロリ衣装を着て恥ずかしげにポーズを取っている根本君が、遠目のアングルで写っていた。
「さ、坂本! わかった! 降参する! だからその写真だけは‥‥‥!」
「明久、根本を押さえろ」
「ん、了解」
雄二の指示通り、写真集を奪おうとする根本君を羽交い締めにする。
「よしよし。さて、Cクラス代表。この写真集が見たかったら、俺達に負けるんだ」
「さ、坂本っ! お前は鬼か!?」
根本君が泣きそうな声を出す。これには流石に僕も同情してしまいそうになる。あくまでも『しまいそう』なだけだけど。
でも、この交渉だと、根本君は問答無用で負けてしまう上に大悟厳選の際どいコスプレ写真集を彼女(?)に見られてしまう。最悪に最悪の上塗りだ。
「‥‥‥気に食わないけど、いいわ。私達の負けよ」
「交渉成立、だな」
悪役の笑みを浮かべる雄二。かくして、写真集は小山さんの手に渡ることになった。
「ゆ、友香!? 頼む! それだけは見ないでくれ!」
根本君の懇願も虚しく、小山さんは写真集を開いてマジマジと観ている。
「明久。勝負はついた。戻るぞ」
「そうだね。それじゃ遠藤先生。僕らの勝ちということで」
脇から写真集を覗き込んでいる遠藤先生に声をかけておく。
「あ、はい! 坂本君と吉井君の勝利です!」
よし、これで三回戦進出決定だ。良かった良かった。
『‥‥‥別れましょう』
『ちょ、ちょっと待ってくれ! これには事情が‥‥‥!』
去り際に聞こえてきた会話は気にしないでおこう。
ーーー
ーー大悟視点ーー
「あぁー‥‥‥クソッタレ。頭痛ぇ‥‥‥」
俺は自分を襲う頭痛に耐えながら、校内を適当に散歩していた。どうやら母さんは俺をノックダウンさせた後、そのまま店があるから帰ったようだ。ったく、いくらこっちが悪いとはいえ、プリン一つで息子にバックドロップかけるか普通? ホント、変な所でガキだよなあの人も‥‥‥。
「さてと、追加の材料が届くまで暇だな‥‥‥つっても他のクラスの出し物にゃ興味ねぇし‥‥‥」
「あっ、いたですっ! オタクのお兄ちゃん!」
「あー、でも腹へったな。近くの屋台で何か買ってくか‥‥‥?」
「あれ? 聞こえないのですか‥‥‥? オタクのお兄ちゃん!」
「いや、Aクラスの視察に行くか? 監督兼指導者としてちゃんと俺の教えに沿ったメイドが出来ているのか心配だからな。霧島はともかく、優子がな‥‥‥」
「オタクのお兄ちゃんってば!」
「よし! そうと決まれば早速ーー」
「オタクのお兄ちゃん!!」
「あ?」
なにやら声が聞こえる。下の方を向くと、そこにはちょこんと幼女がいた。
赤い髪に腰まで伸びたツインテールに、グリーンアイが特徴的な子だ。
「もう! 葉月がずっとオタクのお兄ちゃんって呼んでるのに、オタクのお兄ちゃんは全然気づいてくれないなんて酷いですよっ!」
「はぁ? あー‥‥‥ちょっと待て。いきなり過ぎて俺の思考が追い付いていない」
プンプンと頬を膨らませる幼女。デュフフ、可愛いでこざる。お持ち帰りしたーーじゃなくて、誰だこの子は? 実に悲しいことに俺には妹なんていないし、俺の事をオタクなんて堂々いう女の子なんざいるわけーーあっ。
「‥‥‥ああ! よく見りゃあの時のぬいぐるみの子じゃねえか! 確か名前は、葉月ちゃんだったな!」
「そうですっ! オタクのお兄ちゃんっ!」
思い出した。確か俺が出所してすぐに葉月ちゃんと会って、お姉ちゃんにあげる為のぬいぐるみをチンピラカップルに取られた挙げ句殴られたって言ってたから俺がそのゴミをぶちのめしたんだった。
そうだ! しかもそん時に俺にめるたんのストラップをくれたんだった! そ、そんな大恩人を忘れるなんて俺のクズ野郎!
「どうだった? あの時のぬいぐるみは喜んで貰えたかい?」
「はいっ! お姉ちゃんもとっても喜んでくれました! オタクのお兄ちゃんのおかげですっ!」
「ははっ、そう言って貰えるとは嬉しいねぇ。しかし、葉月ちゃんも見ない間に成長したな。お兄ちゃんは感激だ」
「本当ですか!? 葉月、とっても嬉しいですっ!」
そう言って、眩しいくらいの笑顔で俺の腰に突進、もとい頭突きをしてきた。うん、可愛い。でもこの威力‥‥‥この子、世界を狙えるぞっ!
「そうですっ! オタクのお兄ちゃん! 葉月のこと、肩車してくださいっ!」
「肩車? なんでだ?」
「葉月、今まで誰かに肩車をさせてもらったことがなくて‥‥‥オタクのお兄ちゃん。背もおっきいですし‥‥‥駄目ですか?」
おっと、幼女の頼みとあらば、断るのは紳士として恥ずべき行為ですな。
「なんだ、そんな事か。別に構わねぇぞ? よっこらしょっと」
「うわーっ! 高いですっ! 葉月、感激ですっ!」
キャッキャと嬉しそうに俺の頭の上ではしゃぐ葉月ちゃん。うんうん、幼女が喜んでいる姿を見るのは二次元、三次元関係なく感無量なものですねぇ。いやー乱世乱世!
あと出来ればあまりリーゼントを掴まないでほしい。これセットすんのだいぶ時間かかるから。
「そういや、今日は葉月ちゃんは何をしに来たんだ?」
「あ、実は葉月。お姉ちゃんに会いに着たのと、もう一人お兄ちゃんを探しているんですっ」
「ほー、葉月ちゃんのお姉ちゃんはこの学校なのか? それと、葉月ちゃんには兄貴もいたんだな?」
そういや、葉月ちゃんの雰囲気‥‥‥どっかで見たことあるんだよな‥‥‥。
「んで、どんなお兄ちゃんなんだ?」
「えっと‥‥‥バカなお兄ちゃんですっ!」
なんて不名誉な特徴だろうか。だが、バカなお兄ちゃんか‥‥‥やべぇ、Fクラスしか出てこねぇ!
「あぁー‥‥‥他に何か特徴はあるか?」
「えーっと、その‥‥‥すっごくバカなお兄ちゃんなんですっ!」
「明久か」
よし確定キタコレ。俺の知ってるなかで群を抜く馬鹿といえば明久しかいないからな。
「よし、じゃあお兄ちゃんがそのバカなお兄ちゃんの所まで案内してあげよう」
「本当ですかっ! ありがとうですっ!」
「‥‥‥でも、お兄ちゃんからも一つ頼みがあるんだ」
「なんですか?」
「俺のことは『オタクのお兄ちゃん』じゃなく、『大悟お兄様』と呼んで欲しいんだ」
「分かりましたっ! 大悟お兄様っ!」
言ってやったぜ。
俺の長年の野望『妹属性を持つ幼女に、お兄様と呼ばれる事』が叶う日が遂に来たのだ! し、しかしなんというクリティカルヒットなんだ‥‥‥!? いや! 気をしっかり持つんだ岡崎大悟! お前は折角のチャンスをフイにするつもりか!
「よし、それじゃあ行くか、葉月ちゃん」
「はいっ、ですっ! 大悟お兄様っ!」
あぁ~、心がピョンピョンするんじゃあ~。この前防犯ブザーを鳴らした女子小学生は俺のことをゴミを見るような目で見てたからな。あれはあれで興奮したが、やっぱりこういった幼女は素晴らしい!
もういっそのことこのままお持ち帰りして俺が本当の葉月ちゃんのお兄様になってやろうかな。
「あ、そういえば大悟お兄様」
「なんだい? 葉月ちゃん。大悟お兄様だよ、あっはっは」
「さっきから葉月達の後ろでトゲトゲのバットを持って立ってるお姉ちゃんは誰ですか?」
‥‥‥‥‥え?
チラッ
「‥‥‥大悟、なぁにその子?‥‥‥まさか、浮気カナァ? カナァ?」
グシャアッ!
ーーー
「‥‥‥‥‥?(キョロキョロ)」
「どうしたのじゃ、ムッツリーニ?」
「‥‥‥‥‥今、悲鳴が聞こえたような気がした」
「悲鳴じゃと? 儂には聞こえなかったが、にしても大悟のヤツ、どこへいってしもうたのじゃろうか?」
さて、簡単ではありますが大悟のお母さん登場です。大悟のお母さんという存在なのでハチャメチャな人物にしようと思いました。
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
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入れろ、絶対に
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別に入れなくてもいいよ