バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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清涼祭 アンケート

学園祭の出し物を決める為のアンケートにご協力下さい。
『喫茶店を経営する場合、ウェイトレスのリーダーはどのように選ぶべきですか?
【①可愛らしさ ②統率力 ③行動力 ④その他( )】
また、その時のリーダーの候補も挙げてください』


土屋康太の答え
『【①可愛らしさ】 候補‥‥‥姫路瑞希&島田美波』

教師のコメント
甲乙つけがたいといったところでしょうかね。


吉井明久の答え
『【①可愛らしさ】 候補‥‥‥姫路ーー、木下ーー、島田美波』

教師のコメント
用紙についている血痕が気になるところです。


姫路瑞希の答え
『【①可愛らしさ ③行動力】 候補‥‥‥吉井明久』

教師のコメント
ある意味一番度肝を抜かれた回答でした。


岡崎大悟の答え
『【④その他(マイハニー)】 候補‥‥‥木下優子』

坂本雄二の答え
『【④その他(結婚相手)】 候補‥‥‥霧島翔子』

教師のコメント
どうしてAクラスの木下さんと霧島さんが用紙を持ってきてくれたのでしょうか。



第二十三問 実妹が可愛いのは二次元だけだ!

ーー明久視点ーー

 

 

「あ、あの、葉月はお兄ちゃんを探しているんですっ」

「お兄ちゃん? 名前はなんて言うんだ?」

「あぅ‥‥‥。わからないです‥‥‥それよりも大悟お兄様、頭から血が出てるですよ?」

「あっはっは、気にしないでいい。いつものことさ」

 

大悟がFクラスに戻ってくると、何故か小学生くらいの女の子を肩車して連れていた。それにぞろぞろと群がるクラスメート達。最初は『遂に犯罪に手を染めてしまったのか‥‥‥』と思い警察に通報しようとしたけど、どうやら普通にFクラスまでその子を案内してあげていたようだった。

けど、どうして大悟は誰かに散々鈍器のようなもので殴られた挙げ句顔面を踏みつけられたボロ雑巾みたいな状態になっているんだろうか。

 

「よし、じゃあ葉月ちゃん。そのお兄ちゃんの特徴をもう一回言ってみようか? せーのっ」

「はいっ、すっごくバカなお兄ちゃんなんですっ!」

「「「「「吉井しかいないな」」」」」

 

僕の方に一斉に集まる視線。やだな、泣いてないよ?

 

「全く失礼な! 僕に小さな女の子の知り合いなんていないよ! 絶対に人違いーー」

「あっ! バカなお兄ちゃんだっ!」

 

いきなり抱きつかれた。

 

「絶対に何だって? 明久」

「‥‥‥人違いだと、いいなぁ‥‥‥」

 

最近、皆が僕のことをバカっていうから、本当に自分がバカだと思うようになってきたじゃないか。

 

「って、キミは誰? 見たところ小学生だけど、僕にそんな歳の知り合いはいないよ?」

「え? お兄ちゃん‥‥‥。知らないって、ひどい‥‥‥」

 

女の子の表情が歪む。あ、マズい! 泣かせちゃったかも!?

 

「明久。俺の前で幼女を泣かせるたぁいい度胸だな。野郎共、構えろ」

『『『了解しました。異端者を排除します。』』』

 

手の甲をポキポキと鳴らす大悟。ヤバい! このままだと僕は大悟率いるクラスメートに八つ裂きにされて魚の餌にされてしまう! なんとかしないと!

 

「バカなお兄ちゃんのバカぁっ! バカなお兄ちゃんに会いたくて、葉月、一生懸命『バカなお兄ちゃんを知りませんか』って聞きながら来たのに、あんまりですーっ!」

「明久、最期の情けだ。自分の罪をじっくりと悔い改めてから死ね」

『『『異端者には死の鉄槌を。それが我等異端審問会の血の掟也』』』

「明久ーーじゃなくて、バカなお兄ちゃんがバカでごめんな?」

「そうじゃな。バカなお兄ちゃんはバカなのじゃ。許してやってくれんかのう?」

「‥‥‥‥‥お詫びとして明久の右手をプレゼントする」

 

なんだろう。この子と一緒に僕まで泣きたくなってきたよ。

 

「でもでも、バカなお兄ちゃん、葉月と結婚の約束もしたのにーー」

「瑞希!」

「美波ちゃん!」

「「殺るわよ!」」

「ごぶあっ!?」

 

突如首筋に激痛が! なんだ!? 何が起こったんだ!?

 

「瑞希。そのまま首を真後ろに捻って。ウチは膝を逆方向に曲げるから」

「こ、こうですか?」

 

いかん。殺されかねん。

 

「ちょっと待って! 結婚の約束なんて、僕は全然ーー」

「ふえぇぇんっ! 酷いですっ! ファーストキスもあげたのにーっ!」

 

「明久、幼女汚シタ。ブチ殺ス」

「待ちなさい岡崎。そのノコギリでアキの顔の皮膚を剥ぎ取るのは最後よ。坂本は包丁を持ってきて。五本あれば足りると思う」

「吉井君。そんな悪いことをするのはこの口ですか?」

「お願いひまふっ! はなひを聞いてくらはいっ!」

 

いつも優しい姫路さんまで! しかも他の連中も鉈やらチェーンソーやらを持ち出してるし! こんな扱いはあんまりだ!

 

「仕方ないわね。二本刺したら聞いてあげるからちょっと待ってなさい」

「あのね、美波。包丁って一本でも刺さったら致命傷なんだよ?」

 

美波に足りないのは日本語力だけじゃないと思う。

 

「あ、お姉ちゃん。遊びに来たよっ!」

 

お姉ちゃん‥‥‥葉月ちゃん‥‥‥ファーストキス‥‥‥

 

「ああっ! あのときのぬいぐるみの子か!」

 

思い出した! そういえば、前に小さな女の子がお姉ちゃんにプレゼントをしたいけどお金が足りない、なんて哀しそうにしてたから手伝ってあげたんだっけ。あげたのは確かノインちゃんのぬいぐるみだっけかな。その後観察処分者になったりして色々と忙しかったから、すっかり忘れていたよ。

 

「ぬいぐるみの子じゃないです。葉月ですっ」

「そっか、葉月ちゃんか。久しぶりだね。元気だった?」

「はいですっ!」

「あれ? 葉月とアキって知り合いなの?」

「うん。去年ちょっとね。美波こそ葉月ちゃんのこと知ってるの?」

「知ってるも何も、ウチの妹だもの」

「へ?」

 

マジマジと葉月ちゃんの顔を見る。言われてみると、確かに似ている‥‥‥。元気そうな雰囲気とか、ちょっと勝気な目の当たりとか。

 

「そんな‥‥‥ずるいです‥‥‥。吉井君はどうして美波ちゃんとは家族ぐるみの付き合いなんですか? 私はまだ両親にも会ってもらって無いのに‥‥‥。もしかして、実はもう『お義兄ちゃん』になっちゃってたり‥‥‥」

 

姫路さんは何を言っているんだろう? 最近、彼女もたまに壊れているような気がする。

 

「‥‥‥‥‥」

「ん? どうしたの、大悟?」

「‥‥‥クラスメートの女子の妹だと‥‥‥まるでエロゲーの隠しルートじゃないかっ! 難易度が高すぎるだろっ! いや、葉月ちゃんは三次元には希少価値ともいえる存在だ。ならコスプレくらいなら土下座で‥‥‥」

 

このキモオタは一体葉月ちゃんに何をさせるつもりなんだろうか。

 

「あれ? でも、どうして葉月ちゃんと大悟が知り合いなの?」

「あ? まあ、色々あったんだよ」

「オタクのお兄ちゃーーじゃなくて、大悟お兄様が葉月のノインちゃんを取り返してくれたんですっ! だから大悟お兄様は葉月のヒーローなんですっ!」

「取り返した? どういうこと?」

 

僕がそう大悟に訊くと、その時の経緯を説明してくれた。

話によると、僕が葉月ちゃんにノインちゃんのぬいぐるみをあげた後、チンピラカップルど出くわしてしまい、ぬいぐるみを取られた挙げ句暴力を振るわれたらしい。

そこに偶然少年院からの帰りで通りかかった大悟が事情を聞いて激怒し、葉月ちゃんを殴ったチンピラカップルの男の方をボコボコにしてぬいぐるみを取り返し、無事葉月ちゃんに返したと。

 

「そんな事があったのね‥‥‥あの時、なんで葉月が右頬を怪我してたんだろうって思ったけど、これではっきりしたわ」

「でも、そいつらも酷いことするよね。こんな幼い葉月ちゃんを殴り付けるなんて‥‥‥許せない!」

「アキ‥‥‥」

 

思わず言葉に熱が入る。多分僕が大悟の立場にいても同じことをしていたに違いないだろう。でも、見ず知らずの子供の為にそこまでやるなんて、見かけとは裏腹にやっぱり大悟は優しい性格の持ち主だ。だからやっぱり、僕はコイツが少年院に入るような存在じゃないとーー

 

「アキがそう言ってくれて、私も嬉しいわ。それに岡崎、今更だけど葉月を助けてくれてありがとう。姉として礼を言わせて」

「僕からも、ありがとう。大悟」

「おいおい、別に礼を言われることはやってねぇよ。それに、女子小学生という存在は二次元三次元関係なく世界の宝だからな。それを汚すやつなど俺が許さん!」

「大悟‥‥‥」

「そしてその後はその女子小学生と人目につかない場所であんなことやそんなことをしてメチャクチャにしたりされたりするのさ!」

「台無しだよっ! 僕の感動を返せ!」

「葉月に変なことしたら許さないからね!」

 

訂正。やっぱりコイツは未来の子供達を守るためにも社会から抹消しておくべきだ。

 

「大体、大悟にだってちゃんと妹の天ちゃんがいるじゃないか。それで満足したらいいんじゃないの?」

「明久、お前は馬鹿か? 実の妹で興奮するなんざ二次元だけの話だ。三次元の妹なんざウザったいだけなんだよ。葉月ちゃんみたいな素直な子ならともかく、アイツはただのーー」

 

 

ガラガラガラ

 

 

『すいませーん! Fクラスってここですか?』

 

 

と、突然元気な声と共にFクラスの扉が開かれる。そしてそこから教室内へと入ってきたのはセーラー服姿をした中学生くらいの可愛らしい女の子だった。

 

「ん? あ、あれは確か‥‥‥」

「これまた、意外な子が来たのぅ」

「‥‥‥‥‥(ピクッ)」

 

真っ先にその子に気づく雄二と秀吉とムッツリーニ。僕もすぐにその子が誰なのかに気づいた。

 

『うん? これは可愛いお客さんだね』

『いらっしゃいませ、お嬢さん』

『おや、あまり見ない女の子だね? お兄さんと付き合わないかい?』

 

すると、先程まで僕を撲殺しようとしたクラスメート達がキラリと歯を輝かせてその女の子を出迎えていた。あっという間にクラスの野郎共に囲まれたその子。

 

「あのっ、それで私のお兄ちゃんはどこにいますか?」

『お兄ちゃん? このクラスにお兄ちゃんがいるのかい? それは聞き捨てならないね』

『なんて羨ましいんだ‥‥‥』

『そいつを殺して化けの皮を被って俺が君のお兄ちゃんになりたい』

 

よく初対面の女子中学生の前でそんな事が言えるものだ。ある意味コイツらには恥じらいというものが欠落しているんだろうな。

と、傍らで思っていると、

 

「あ! いた、大悟兄! 遊びに来たよっ!」

「げっ!? 天!? なんで母さんに続いてお前までここにいるんだっ!?」

 

すると、その子‥‥‥大悟の実の妹さんである、岡崎天(そら)ちゃんは大悟の姿を見つけると一目散に駆け寄っていった。

 

「もうっ、大悟兄ってば、どうして学園祭があるってあたしに教えてくれなかったの!? もしかして天のこと嫌いなの!? そんな酷いことすると泣いちゃうよ!?」

「いや、だって別にお前に来て貰いたいワケでもねーし。」

「あー! そういうこと言うなんて大悟兄嫌いっ! もっと兄らしく妹に優しくしろー! 拗ねるぞー! ふてくされるぞー!」

「‥‥‥チッ、面倒くせぇヤツだな。はいはい、よく来たな。天」

「ふふん、最初から大悟兄はそう言えば良いのです。全くツンデレなんだからなぁ♪」

「よし、天。今から拳骨するから頭出せ」

「やーだー! ごめんなさーいー!」

「おい、ジタバタすんじゃーーはっ!?」

 

『総員。構え』

『『『はっ!』』』

 

殺気再び。瞬く間に取り囲まれた大悟。そして鈍器を構える野郎共達。

 

「待て貴様ら! これは大きな誤解だ!」

『兄貴、残念だ。貴方は俺達の希望だと思っていたのに、失望したよ』

『こんなにも可愛らしい女子と交流を持っていたなんて、異端審問会の血の盟約に背きましたね、兄貴』

『どうやら兄貴には再教育の必要があるようだ』

「落ち着け! いいか、まず天は俺と血が繋がった実の妹だ! それに忘れたか!? 俺は二次元を愛する男だぞ! お前らの思うような関係なんぞあるわけがなかろうが!」

『『『はっはっは、それがどうしたぁあっ!!』』』

 

いや、そこって大事な部分だと思うけど。後大悟。君さっき葉月ちゃんに何かしようとしてたよね?

 

『いや、待つんだ諸君』

『会長! どうして止めるんですか!?』

『よく考えてもみろ。わざわざ兄貴が妹さんを連れてきたんだぞ? つまりそれは、我々に妹さんを紹介するためじゃないだろうか?』

『『『っ!?』』』

『というわけで、君の名前を聞かせて貰ってもいいかな?』

「えっと、岡崎天です。大悟兄とは二歳違いの中学三年生です」

『なるほど、じゃあ岡崎天さん。彼氏はいるかな?』

「彼氏ですか? いたこと無いですね」

 

『初めまして、僕は兄貴の親友の須川亮と言います』

『天ちゃん。偶然だね、この僕、横溝浩二にも今恋人がいないんだ』

『携帯電話の番号を教えてくれたら、僕がお小遣いをあげるよ?』

義兄(アニキ)! 俺、天ちゃんのこと一生かけて幸せにしてみせる!』

 

「あ、あのー‥‥‥急にそんなこと言われても困ると言いますか‥‥‥」

 

あはは、と苦笑いをしてそう答える天ちゃん。

 

「それに、私には大悟兄がいますから♪」

 

『死刑』

『『『イエッサー!』』』

「サラダバー!!」

『しまった! 兄貴が窓から飛び降りて校庭に逃げたぞ!』

『こうなったら兄貴は最早我々の味方では無い! 反逆者だ! 即刻見つけ出して異端審問会にかけろ! 主力部隊は俺に続け! 残りは船越先生のところに向かえ! 人生の墓場と三次元の恐怖というものを教えてやるんだ!』

『『『了解!!』』』

 

そして、窓から逃げた大悟を追って須川君達はぞろぞろと出ていった。

 

「あはは♪ Fクラスって面白い♪ 来て良かったなぁ」

 

それを見てクスッと笑みを浮かべる天ちゃん。なんていうか、うちのクラスの悪評が広まっただけのような気がするけどね。

 

「よう、お前も来たのか、大悟妹」

「よく来てくれたね。天ちゃん」

「あ、雄二さん! それに明久さん! 秀吉姉! ムッツリーニさんも!」

「待つのじゃ! なぜ儂だけ姉呼びなのじゃ!?」

 

雄二が天ちゃんに話しかけると、天ちゃんは僕らの所に近づいてきた。

 

「どうです? 中華喫茶の方は上手くいってますか?」

「うん。おかげさまで繁盛してるよ。凛花さんも手伝ってくれたしね」

「それなら良かったです。お母さんちょっとやり過ぎな時もあるから‥‥‥迷惑とかかけなかったですか?」

「いや、そんなことはない。むしろ俺達がいない時に店の方を無償で手伝ってくれたんだ。感謝するのはこっちの方だ」

「うむ、雄二の言う通りじゃ」

「‥‥‥‥‥(コクコク)」

「そうですか。それを聞いて安心しました♪」

 

笑顔を見せる天ちゃん。なんていうか、小動物みたいで和むなぁ。

 

「う、嘘でしょ!? この子があの岡崎の妹!? 全然違うじゃない! 凛花さんといい、どんなDNAをしていればそうなるの‥‥‥?」

「何て言うか‥‥‥美人の凛花さんとはまた違って凄く可愛いです‥‥‥」

「お姉ちゃん、とっても可愛いですっ!」

 

美波と姫路さんと葉月ちゃんが天ちゃんを見て口々に言う。確かに、天ちゃんは本当にあのブサイクでキモオタな大悟と血が繋がっているとは思えないほど可愛い。例えるなら秀吉と姫路さんを足して二で割ったようなあどけない顔立ちをしている。身長はムッツリーニよりも小さく、姫路さんに似たふわふわっとした雰囲気がある。

それにしても、本当に岡崎家の女性って美人揃いだなぁ‥‥‥唯一の男がクズなのに。

 

「えっと、姫路さんに島田さんですよね? それに、葉月ちゃんだったかな? 大悟兄がお世話になってます。アタシは妹の天って言います。よろしくお願いします」

「あっ、こちらこそよろしくね。天ちゃん」

「分からない事があったら何でもウチらに訊いてね」

「よろしくお願いしますですっ!」

 

ペコリとお辞儀をする天ちゃんに対して同じ様に返す三人。

大悟と違って礼儀正しいなぁ。まだ中学生なのに。

 

「じゃあ、突然なんですけど、お近づきのしるしに二人にプレゼントがあります」

「「プレゼント?」」

「はい。用意するのでちょっと待ってて下さいね」

 

そう言うと突然天ちゃんは壇上に向かい、チョークを持って壁のクロスを捲り、黒板何かを描き始めた。しかもその手は止まることなく何かのイラストだろうか? を段々と描き進めていく。

あれ? この光景、前にも見たことあるような‥‥‥?

 

 

 

「ーーーよし! 出来ましたっ! 岡崎天、渾身の一作ですっ!」

 

 

 

数分後、描き終えた天ちゃんが満足げに頷きながら描いた内容を皆に見せる。

 

 

 

 

描かれていたのはーー僕らしき人物がスクール水着を着ているイラスト(R18)。

 

 

 

 

「いやぁぁぁあああああーーっ!!」

 

見た瞬間、僕は膝から崩れ落ちた。

 

「おぉ‥‥‥コイツは凄いな‥‥‥描かれてるのは明久なのに全く気持ち悪さを感じねぇ」

「ふむ、細部まで明久そっくりに描かれておるのう。それも全く違和感を感じさせぬ画力‥‥‥見事じゃ」

「‥‥‥‥‥同志と同じ血が流れてるだけのことはある」

 

やめて三人とも! そんな真面目な目で評価しながら僕の汚れた姿を見ないでぇっ!! 

 

「どうですか? 喜んで頂けました?」

「天ちゃんっ! アウト! これは完全にアウトだ! 内容もそうだけどどうして姫路さん達への贈り物が僕のスクール水着イラストなのっ!?」

「あれ? 駄目でしたか? はっ! ‥‥‥まさか、スクール水着よりもビキニの方がお好みでしたか?」

「違うんだ! 水着の種類云々以前に性別と格好が伴っていないんだ! 秀吉じゃあるまいし、せめてちゃんとした服装を着せてよ!?」

「待て! 何故そこで儂の名前が出てくるのじゃ!?」

「何を言ってるんですか! 明久さんにまともな服なんて着せたら魅力が落ちちゃうじゃないですか! それに前に大悟兄も言ってました。『明久ほど露出高めの女装イラストの二次元モデルに相応しい人間はいない』って。実際あたしもそう思いますし、姫路さんと島田さんにはこれが一番喜ばれると思ったんですよ! それに、二次元風の明久さんって可愛くないですか!? あぁ! やっぱり二次元って最高ですよねっ! あたしも二次元に生まれたかったっ!」

 

笑顔でとんでもないことを暴露する天ちゃん。取り敢えず大悟は後でたっぷりシバいた後に校舎裏の庭にでも埋めておくとして、誤算だった。まさか、天ちゃんも大悟と同じ部類の思考を持つ人間だったとは。流石、あのキモオタの妹なだけはある。と、兎に角! あのイラストを急いで消さないと! 姫路さんと美波はまだしも、葉月ちゃんはまだこの世界に踏み込ませちゃいけない!

 

「ま、待ってください明久君!」

「アキ! まさかアンタあのイラスト消すつもりじゃないでしょうね!?」

 

すると、突然姫路さんと美波に呼び止められる。

 

「何故止めるんだ二人とも! 僕にはあの見るに絶えない悪夢を視界から完全に消し去らなくちゃならないんだ!」

「そんな、悪夢なんかじゃないですよっ! とっても可愛いじゃないですか! 特にあの綺麗な体のラインとか鎖骨が凄く色っぽくて!」

「そ、そうよっ! それに、せっかく天ちゃんが私達の為に描いてくれたんだから、消すなんて失礼よっ!」

「わぁー、天お姉ちゃんとっても絵が上手ですっ」

 

何故だ!? 一体何が二人をそこまで突き動かすんだ!? まさか、僕に長く辱しめを受けさせようとしているのか!? そんなのあんまりだ! 僕が一体何をしたっていうんだ!?

 

「じゃあ、そろそろ消しますけどいいですかー?」

「「待って(下さいっ)! 今すぐ写真に収める(ます)からっ!」」

 

ガラッ!

 

「落ち着くのじゃ明久! 飛び降りなんて早まった真似をするでない!」

「放すんだ秀吉! もう僕はこれから生きていける気がしないんだっ!」

 

 

どうやら僕は姫路さんと美波に酷く嫌われているんだろうな。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

「ところで、さっきから思ってたんだが、やけに閑散としていないか?」

「そういえばそうだね」

 

雄二の言葉に僕が同意するように頷く。

現在時刻はお昼前。今は食材の仕込み中だから一旦ストップしてるけど、さっきまでの繁盛ぶりなら、少しくらい客足が来てもいい筈なのに、外にお客さんの姿どころか気配すら無かった。

 

「そういえば、あたしここに来るまでに変な噂を聞きましたよ」

「噂だと? どんな内容なんだ、大悟妹?」

「なんか、Fクラスの中華喫茶は料理に虫を出すから行かない方がいいって」

「あっ、それ葉月も同じことを聞いたですっ」

「虫ってことは、先程凛花さんにやられた三年生の仕業じゃろうか?」

 

この教室は今は設備は豪華だし、掃除もしっかりしている。だから汚いとかって悪評が流れることは無いと思う。ということは、午前中に凛花さんにブチのめされた人達しかいないだろう。

 

「ふむ‥‥‥。例の連中の妨害が続いてるんだろうな。探し出してブチのめすか」

「うーん‥‥‥。でも、どうしてそこまで僕達を目の敵にするのかな?」

「どうだかな。ひとまず様子を見に行く必要があるな」

「そうだね。少なくとも、噂がどこから流れてどこまで拡がっているのかを確認しないと」

「それで大悟妹にチビッ子、その噂はどこで聞いたんだ?」

「あー、それでしたら可愛い衣装を着た女の子達がたくさんいる店ーー」

 

「なんだって!? 雄二、それはすぐに向かわないと!」

「そうだな明久! 我がクラスの成功のために、低いアングルから綿密に調査しないとな!」

 

聞いた瞬間全力ダッシュ。

喫茶店は姫路さんの転校に関わる大事なことだ! 後悔のないように全力を尽くしておきたい!

 

「アキ、最低」 

「吉井君、酷いです‥‥‥」 

「お兄ちゃんのバカ!」

 

背後からの罵倒も気にならないほどに、僕の心は踊っていた。

 

 

 

  

 

 

 

「‥‥‥でもあそこって、優子姉がいたクラスだったんだよなぁ。でもあの紫の髪の女の人も可愛かったなぁ」

 

 

 

 

 

 




ということでまたオリキャラ、大悟の妹こと天ちゃんの登場です。

個人的には一番好きなキャラになりつつあります。

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ

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