以下の問いに答えなさい。
『冠位十二階が制定されたのは西暦( )年である』
姫路瑞希の答え
『603』
教師のコメント
正解です。
岡崎大悟の答え
『603』
教師のコメント
簡単過ぎましたかね。
坂本雄二の答え
『603』
教師のコメント
一体どうしたのですか? 驚いたことに正解です。
吉井明久の答え
『603』
教師のコメント
君の名前を見ただけでバツをつけた先生を許してください。
ーー明久視点ーー
「それじゃ、僕らはこれで!」
試合も終わったので、罵声が飛んでくる前に教室に戻ることにする。
「明久。なかなかの機転であったな」
「‥‥‥‥‥作戦勝ち」
「ありがとう。皆の協力があったおかげだよ」
これで残るは決勝戦のみ。あと一つ勝てば目的は達成される。姫路さんの転校を阻止することが出来るんだ。
「‥‥‥‥‥(チョンチョン)」
「ん? どったのムッツリーニ?」
「‥‥‥‥‥雄二と同志は、あのままで?」
「え? 別にいいんじゃない? 良い機会だし、雄二も大悟も素直になるべきだとーー」
「‥‥‥‥‥一服盛って持ち帰ろうとしてる」
ムッツリーニが指差した方を見ると、そこには虚ろな目をしてタキシードに着替えている雄二と大悟だった。
「き、霧島さん! 雄二には決勝もあるから薬は許して!」
「あ、姉上も待つのじゃ! まだ大悟には中華喫茶の仕事が残っておる!」
その後、二人が取り乱してきたけど、僕が雄二の腹を殴り、ムッツリーニが大悟に改造スタンガンを押し当てて冷水に浸けたらなんとか正気を取り戻してくれた。
ーーー
ーー大悟視点ーー
霧島達との試合から何故か記憶がすっとび、意識が戻った時には既に試合終了しており、俺達はFクラスへと戻り始めていた。明久曰く、どうやら試合は勝ったようで良かった。
ただ、どうして俺に詳しいことを教えてくれないんだろうか? あと優子の俺を見る目がいつも以上に恍惚としていたんだが?
「ところで姫路や島田は教室にいるのか?」
「え? まだ確認してないけど、いるんじゃないの?」
この時間は姫路や島田や葉月ちゃんや
すると、突然俺達の前に同志が駆け寄ってきた。そして一言、
「‥‥‥‥‥ウェイトレスとメイドが連れていかれた」
ーーー
ーーFクラスにてーー
「こりゃあどういう事だぁ!?」
目の前に広がる悲惨な光景を見て俺は叫んだ。
テーブルや椅子は倒され、インテリアや飲茶用のお椀や器は無惨にも破壊されていて、床にその破片が散らばっていた。
当然客は一人もおらず、閑散としている。現場にリアルタイムでいた同志の話によると、突然教室にチンピラ達が押し入り、あれよあれよと姫路達と何故か一緒にいた霧島と優子を連れ去っていったらしい。
そしてこの荒らされ様はヤツらが暴力的方法を使って争ったことに他ならない。
「須川ぁ! 何があったのか説明しろや!」
俺は目の前の須川達にそう思わず強く尋ねる。俺達がいない間、中華喫茶の責任者は須川に任せていたので、確実に知ってるはずだ。
「違うんだ兄貴! 話を聞いてくれ! 俺はその時材料を取りに空き教室にいたんだ! 責任ならこのチンピラにすぐ負けた横溝にある!」
「はぁ!? お前クラスメートを売る気かクソ野郎! 兄貴、それだったら福村だってチンピラを見た瞬間逃げ出したんだ! 一番のクズはこいつなんだ!」
「な、横溝貴様! ち、違うんだ兄貴! 俺は急に腹が痛くなってトイレに行ったんだ! 決して逃げたワケじゃない! それよりも、チンピラに見逃して貰うよう頭を下げた近藤にこそーー」
「ゴチャゴチャうるせぇんだよ馬鹿共が!!! 言い訳してんじゃねえ!!」
俺はそう声を荒げながら須川のすぐ横の壁を蹴りつけ、大きなヒビを入れてしまった。
「たかがチンピラ風情に女奪われやがって、それで苦し紛れの戯れ言か? お前らそれでも男かこの野郎! 恥を知りやがれ!」
『『『うぐっ!?』』』
会話からも分かる通り、何の躊躇いもなくクラスメートを売るあたり、やっぱりコイツらは性根が腐ってるクズの集まりだな。
「罰として、ダイゴブックスはお前らの予約受注はしばらく受け付けない!!」
『『『そんなっ!? それだけはお許しを!!』』』
「黙れカス共! お前らの意見は聞かん!!」
『『『嫌だぁぁぁぁああああ!!』』』
須川達の悲痛な声。だが俺は一度言ったことは撤回しない。チンピラに負けたことはまぁ仕方ない。喧嘩には強さの良し悪しがあるからな。だが自分の不都合な事実をやも自分は悪くないと言い逃れをしようとしたその態度が頂けない。少し頭冷やして反省しろ。
「落ち着け大悟、これは予想の範疇だ」
俺の肩にポンと手を置いて雄二が言う。
「どういうこと、雄二?」
「多分もうそろそろ仕掛けてくるだろうとは思っていた。俺や明久と直接やりあっても勝ち目は無く、更にこっちには大悟という後ろ楯がある以上、当然と言えば当然の判断だな」
恐らく直接やりあうというのは喧嘩のことだろう。確かに雄二が言わずもがなであり、明久は一年の頃、とある理由で殴り合いの喧嘩をした時にコイツにらセンスはあるなと思った為、あの程度のチンピラごときなら余裕だろう。
「そうなれば、向こうはまた午前中の時みたいに回りくどい方法を使うことは簡単に予測が出来る。それが今回はウェイトレスを拐うってやり方なだけだ」
「随分と物騒な予想をしてたんだね」
確かに、この中華喫茶は味以外にもチャイナドレス見たさに足を運ぶ客も多い。姫路達がいるといないとでは売り上げに大きな違いが生じるのは確実。そこを狙ってきたというわけか。
これも竹原の指示によるものなら、流石に容認は出来ねえ。自分の学校の生徒、しかも女子を私利私欲の為に巻き込むなんてのは教師としても、人間としても逸脱した行動だからだ。
「ていうか、なんで優子達までここにいたんだ?」
「流石にそれは分からねぇ‥‥‥それよりもまずは姫路達がどこに連れていかれたかだ」
「‥‥‥‥‥行き先は分かる」
と、同志が取り出したのは何かの機械。
「何これ? ラジオみたいに見えるけど」
「‥‥‥‥‥盗聴の受信機」
「オーケー。敢えて何で持っているのかは聞かないよ」
そんなものを持っているなんて、流石同志だ。盗撮カメラやマイクを学校の至る所に隠しているムッツリ商会ならば、そんなものは当たり前の常備品なんだろうな。
「さて、場所がわかるなら簡単だ。かる~くお姫様達を助け出すとしましょうか、王子様達?」
「そのニヤついた目付きは気に入らないけど、今回は雄二に感謝しておくよ。姫路さんたちに何かあったら、正直召喚大会どころの騒ぎじゃないからね」
「そうだな。調子に乗ったヤツらに正義の鉄拳をーーー」
いや、待てよ? チンピラ達はチャイナドレスを着たヤツラは全員拐ったんだよな? ということはそこには葉月ちゃんも当然含まれるよな?
となれば、今葉月ちゃんは無理矢理連れ拐われるという体験をして凄く怯えている筈だ。誰かが助けに来てくれることを心から願っている。そんな中で俺がカッコよく登場すればどうなるかーー
『俺達はロリコンです』
『これから君にエロいことをします』
「い、いやぁ‥‥‥誰かぁ、助けてぇ‥‥‥」
「待てぇぇいいっ!!!」
『だ、誰だ貴様は!?』
「葉月ちゃんは俺が守る!!!!」
「だ、大悟お兄様‥‥‥っ!」
そして俺がチンピラ共を軽く撃退してーー
「うわぁぁん! 大悟お兄様ぁー!! 葉月怖かったですー!!」
「もう大丈夫だよ。葉月ちゃんが無事で何よりさ」
「大悟お兄様‥‥‥その、葉月。お礼がしたいですっ」
「なんだい?」
「葉月のことを‥‥‥メチャクチャにして欲しいんですっ!」
「葉月ちゃん‥‥‥」
「葉月、岡崎! アンタ達とってもお似合いよ! 姉としてとっても嬉しいわ!」
「えへへ‥‥‥愛してるですっ、大悟お兄様♥」
~~true end~~
「最高ですやんっ!!!」
「うわっ! ビックリした!」
「なんだ大悟! 急に大声出すんじゃねぇよ!」
これもう確定の流れ来ましたわ!! 最早俺の考えに一切の死角ナシ!! このまま行けば葉月ちゃんは俺にメロメロというワケだぁっ!!
「任せとけ雄二、俺の名誉にかけて、確実に姫様達を救いだしてご覧に入れよう」
「お、おぅ‥‥‥頼んだぞ」
「てか、どうして君はそんなにニヤニヤしているんだい?」
これが笑わずにいられるか。何せ女子小学生のイチャラブ展開が待っているというのにっ!
「‥‥‥と、とにかく、まずはあいつらを助け出そう。ムッツリーニはタイミングを見て裏から姫路達を助けてやってくれ」
「‥‥‥‥‥分かった」
「大悟は先に潜入してチンピラどもを混乱させろ。そしたら明久を援護してやれ。最悪半殺しにしてもいい」
当然だ。葉月ちゃんを泣かせるようなゴミは全員ぶっ殺す。
「雄二、僕らはどうするの?」
「王子様の役目は昔から決まっているだろう?」
茶目っ気たっぷりの雄二の目が明久を見る。
「お姫様をさらった悪者を退治することさ」
ーーー
ーー明久視点ーー
『さてどうする? 坂本とーー吉井だったか? そいつら、この人質を盾にして呼び出すか?』
『待て。吉井ってのは知らないが、坂本は下手に手を出すとまずい。今はあまり聞かないが、中学時代は相当鳴らしていたらしいからな』
『坂本って、まさかあの坂本か?』
『ああ。しかも噂によると、あの岡崎までバックにいるらしい』
『マジかよ!? 岡崎っていやあここら一帯で最強って言われてた‥‥‥アイツ、少年院から出てきたのか』
『できれば事を構えたくはないんだが‥‥‥』
ムッツリーニから案内されたのは、文月学園から歩いて五分程度のカラオケボックス。そこのパーティー用の部屋に姫路さんたちは連れていかれたらしい。そしてムッツリーニの持っていた受信機から音楽に混じってそんな会話が聞こえてきた。
依頼って言ってたけど、他にも関係者がいるってことなのかな?
(雄二、この連中って)
(ああ。恐らくあいつらも黒幕から依頼された他校の生徒だろうな。これであの時の推測が事実に近づいた‥‥‥)
(え? 何か言った?)
(なんでもねぇ。それよりも、ヤツラから目を離すなよ)
『お、お姉ちゃん‥‥‥』
『アンタたち! いい加減葉月を放しなさいよ!』
『お姉ちゃん、だってさ! かっわいぃー!』
『ギャはははは!』
チンピラ達はウェイトレス達を簡単に拉致出来て安心したのか、下衆びた笑いが聞こえてくる。吐き気すら覚える外道の数は十人ってところか? 上等だ。今すぐ黙らせてやる。
(待て、明久。勝手に行動するな。気持ちは分かるが、まずは人質の救出が先だ。ムッツリーニと大悟が上手くやるまで待っていろ)
(‥‥‥分かったよ)
雄二の言う通り、ここはじっと我慢しよう。僕らの出番はそれからだ。
『‥‥‥灰皿をお取替え致します』
『お待たせしましたー。こちらご注文のラーメン二つになりまーす』
『あ、どもー』
そして新たに聞こえる二つの声。どうやら大悟とムッツリーニが潜入に成功したようだ。
『で、このオネーチャンたちどうする? ヤっちゃっていいの?』
『だったら俺はコッチの巨乳チャンがいいなー!』
『あっ! ズリー! それなら俺二番ね!』
『なら俺はコッチの双子ちゃんかなー! たっぷり楽しめそうだしなー!』
パーティールームの中からは下品な声が響き渡る。
『あ、あのっ! 葉月ちゃんを放して、私達を帰らせてください!』
『それはオネーチャン達の頑張り次第だよな?』
くっ! 何をやってるんだ大悟! 早くしないと姫路さんたちが!
『ちょ、ちょっと! 気安く触らないでっ!』
『っ! 痛ってーなこのアマ!!』
『きゃっ!?』
『‥‥‥優子!』
『姉上っ!』
パァン、という何かを強烈にはたいた音と木下さんの悲鳴。そして遅れて何かにゴンとぶつかる音。まさか‥‥‥アイツらっ!
『やっ! さ、触らないでーー』
『ちょっと、やめなさいよ!』
『あーもう。うっせぇ女だな!』
『きゃぁっ!』
ドン! ガシャァァン!!
「っ!!」
何かを突き飛ばした音と美波の悲鳴。何かがテーブルを巻き込んで倒れたような音。
それを聞いた瞬間ーー僕の中で何かがトんだ。
(おい、明久!)
雄二の静止を振り切り、僕はドアを開け放って目的の部屋に入る。そして中の様子を確n
「くたばりやがれこのゴミクズ野郎があぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁああああ!!!!」
「ぐべらぁっ!!?」
‥‥‥しようとすると、目の前では、カラオケ店の制服を着た大悟が、チンピラに強烈な右ストレートをかましていた。それにより壁に叩きつけられたそのチンピラは顔面が崩壊し一撃でノックアウトになっていた。
「ヤスオ!? テメェいきなりなにしやがぶべぇっ!?」
「‥‥‥‥‥同志直伝、恋のミラクル☆殴殺アタック」
白目を剥いて倒れるチンピラ。その後ろにはクリスタルの灰皿を振り切ったポーズで立っていたムッツリーニがいた。うわぁ痛そう。
とりあえず僕は改めて部屋の様子を確認する。
「よ、吉井君?」
「アキ‥‥‥」
部屋には身を縮めている姫路さんと、尻餅を付いている美波。そして少し奥には木下さんをかばうように秀吉と霧島さんがいた。しかも木下さんは少し口から血が出ていて、おでこに傷を作っていた。
中では大体予想通りの光景が展開されていた。
「お邪魔しまーす!!」
「あぁ!? 誰だテメ「死にくされやぁぁっ!」ほごあぁぁぁっ!」
丁度目の前にいたチンピラの股間を思い切り蹴り上げる。相手はその一撃だけで白目を向いて失神した。
「てっ、てめぇ! 何しやがる!」
ゴキッという鈍い音と共に感じられる衝撃。口の中が切れたのか、血の味が広がる。ーーけど、それがどうした!
「イィッシャァァーー!」
「ごぶぁぁっ!」
お返しのハイキックをお見舞いしてやる。
「ったく‥‥‥少しは我慢しろってんだよ。明久、大悟」
そして僕に続いて部屋に入ってきた雄二。これでメンツは全員揃った。
「すまねぇ雄二。ついカッとなっちまったぜ」
「僕もだよ。でもしょうがないよね」
「コイツ、吉井って野郎だ! それに坂本と岡崎までいんじゃねえか!」
「なんでこの場所が分かったんだ!?」
明らかに狼狽える様子を見せたチンピラご一行。僕はともかく雄二と大悟はその腕っぷしで広く名を知らしめた存在だ、無理もないだろう。
これで形勢は完全にこちらが有利になった。けど許すつもりも手を抜くつもりもない。
「さて、と‥‥‥テメェら! よくも美波に手をあげてくれたな! 全員ぶち殺してやる!」
やったのはどいつだ? 美波の近くにいるやつか? それとも‥‥‥まぁいいか。わからないなら全員殴れば良いだけだ!
「でも来てるんなら丁度いい! こうなったら全員ぶち殺せ!」
「たった三人で調子くれやがって!」
「舐めてんのか!」
テーブルを蹴散らし、残りの男が群がってくる。数では向こうに軍配があるが、気力ならこっちの方が断然上だ。
「‥‥‥調子くれるだと? テメェら‥‥‥ふざけんじゃねえぞ!! よくも優子の顔をぶん殴ってくれたな!! 全員この場で血反吐吐くまでぶちのめす!! 覚悟出来てんだろうなぁ!? このゴミ共がぁ!!」
「「「「っ!?」」」」
大悟のドスの効いた一喝はその場にいた全員をビビらせた。それもその筈、今の大悟が纏っている雰囲気はいつもの感じとは大きくかけ離れている。
鼻息は荒く、目つきは雄二なんか比べ物にならないくらい鋭い。それでいて表情は『憤怒』という感情で染まっている。いつものキモオタ感はどこにもない。僕と雄二はすぐに察した。
大悟は今ーー怒っている。それも今まで見たことないくらいに、木下さんに手をあげたという事実と、それをしたチンピラ達に対して、完全にキレていた。
「大悟‥‥‥」
「大悟兄‥‥‥」
「なんだそりゃあ!? カッコつけてんじゃねぇぞ岡崎!!」
「そういやテメェと坂本には中学時代散々やられたっけな! ここでその借りを返してやるよ!」
と、先程ハイキックを食らわせたチンピラの一人が立ち上がって大悟の顔を殴った。拳は完全に大悟の顔面にクリーンヒットし、それに続き他の連中も後ろや横から次々と攻撃を仕掛ける。
「大悟! お前らっーー!」
僕が大悟に複数で畳み掛けるチンピラに向かおうとすると、
「鬱陶しいんじゃぁ!!」
「げぶっ!」
最初に向かっていった相手は顔面に拳を叩き込まれていた。多分鼻の骨折れたな。
「この雑魚共がぁっ!!」
「ぶべらぁっ!」
続いて他のヤツにローキックを見舞う。あ、今度は顔面に膝が入った。
「はっ、流石だな大悟! 全く衰えてねぇじゃねえか! ーーオラァッ!」
雄二が感心しながら別のヤツに拳を叩き込む。
「な、なんだよコイツら‥‥‥」
「ば、化け物じゃねぇか‥‥‥」
二人を見て連中が浮き足立つ。これならいけるか‥‥‥?
「ま、待て! 坂本、岡崎よぉ。このお嬢ちゃん達がどうなってもいいのかァ?」
向こうの一人が葉月ちゃんと天ちゃんを羽交い締めにしていた。女の子に、しかも小学生と中学生になんてことをしやがるんだ!
「いいか? 大人しくしていろよ? さもないと、ヒデェ傷を「テメェ何気安く俺の葉月ちゃんに触れてんじゃゴルゥゥウアアァァァ!!!!」ほぶぅっ!?」
呆気なく大悟の高速パンチで崩れ落ちた外道。確かに宣言通り酷い傷を負ったように見える。有言実行とは見上げた根性だ。
「大悟お兄様!」
「大悟兄!」
解放された葉月ちゃんと天ちゃんは大悟に抱きつく。よっぽど怖かったのか、葉月ちゃんは少し涙ぐんでいた。でも大悟、葉月ちゃんは美波の妹だよ?
「もう心配ねぇ、島田、天達を頼む!」
「うん、ありがとう、岡崎! 葉月、天ちゃん! 今のうちにーー」
「逃がすかぁ!」
チンピラが人質を逃がすまいと立ち塞がる。
「おいおい、お前らの相手はこっちの筈だろーーうがっ!」
「ふぐっ!」
けど、雄二がそれを無理矢理引き戻しそのまま鳩尾に拳を叩き込む。
「吉井君っ!」
すると、姫路さんが腕を広げて駆け寄ってくる。もしやーーこれはチャンスかっ!?
「姫路さーーぐぶぁっ!」
「オラァッ!」
腕を広げて姫路さんが来るのを構えていたら、ドンと来たのはチンピラのパンチだった。
よくも! 千載一遇のチャンスをぉぉっ!!
「‥‥‥‥‥!!」
「な、なんだコイツ? 血の涙流してるぞ‥‥‥?」
「姫路さん、ちょっと待ってて! コイツをシバき倒した後でもう一度ーー」
「姫路に島田! お前達もムッツリーニと一緒に学校に戻っていろ!」
「‥‥‥‥‥こっち(クイックイッ)」
「雄二! キサマまで僕の邪魔をするのか!」
けれどその判断は正しいから反対出来ない。
「霧島、秀吉。優子を頼む。ーーてか、何で秀吉は縛られてんだ?」
「姉上に縛られた時の縄が残っておっての‥‥‥それに何故か儂だけ随分と尻を撫でられたのじゃが、済まぬが外してくれぬか?」
「へいよ‥‥‥面倒だからちぎっちまうか(ブチッ)。そんじゃ頼むわ」
「うん‥‥‥分かった」
「大悟、お主も気をつけるのじゃぞ‥‥‥といっても、お主なら余計な心配じゃろうがな」
「分かってるじゃねぇか相棒。優子‥‥‥ちゃんと額の傷は手当てしとけよ」
「大悟‥‥‥うん」
そうして、誘拐された女性(秀吉)達は全員逃げ出すことに成功した。あとはこのチンピラ共を全員ぶっ飛ばすだけなのだがーー。
「くはははは! それにしても丁度いいストレス発散の相手ができたな! 生まれてきたことをこれでもかってぐらい後悔させてやるぜぇぇっ!! そうだろ大悟!?」
「当然だ。コイツらは女に手ぇあげるクズだからな! なら容赦なんざ要らねぇ!! お前ら骨も残らねぇと思いやがれぇぇっ!!」
「こ、これが岡崎と坂本‥‥‥!」
「悪鬼羅刹と閻魔大王の噂は本当だったか‥‥‥!」
悪魔の様な表情を浮かべる雄二と大悟。今まさに『悪鬼羅刹』と『閻魔大王』が復活した瞬間だ。
霧島さん達にいろいろ追い詰められ、ストレスが溜まっている雄二と、女性に手をあげるという愚行を目撃して怒っている大悟と喧嘩するなんて、この連中は御愁傷様としか言い様がない。多分大悟の方は手加減しないと思うので病院送りは確実だろう。ま、自業自得だから僕は何も言わないけどね。
ーーー
ーー優子視点ーー
あの時。
『くたばりやがれこのゴミクズ野郎があぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁああああ!!!!』
聞き覚えのある声、本来ならこんな所にいる筈のない、アタシが好きな男の声。
怖かった。アタシはただ、代表と一緒にアイツの所へ行こうとしただけなのに、アイツに会いたかっただけなのに、ガラの悪い男達に捕まって、どこかへ連れてかれてーーそして殴られて、どうしようもなく怖かった。泣きはしなかったけど、無意識に震えて、目を瞑って耐えるしかなかった。
まるでーー一年半前の『あの時』の様だった。怖くて、何も出来なくて、ただただ目の前に迫る恐怖に怯えるしかなかった。
けど、再び目を開けたら、そこにはアタシの大切な人がいた。何故かカラオケ店の店員の格好をしたそいつはアタシを殴った男を逆に殴り返していた。
まるで二次元小説の中に出てくる主人公がヒロインを助け出すように、そいつは颯爽と仲間を連れて現れた。怖くて震えてたアタシの前に立って、そいつは男達にこう言い放ったんだ。
『よくも優子の顔をぶん殴ってくれたな!! 全員この場で血反吐吐くまでぶちのめす!! 覚悟出来てんだろうなぁ!? このゴミ共がぁ!!』
久しぶりに聞いた、アイツの怒りの叫び。それは自分のことでは無く、アタシを傷つけた連中に対する怒りだったんだと分かる。木下優子という人間を守る為に、アイツは怒ってたんだ。
ああ、そうだ。コイツは昔から何も変わってない。アタシや秀吉、それに他の人達の為に平気で自分の身を張って、平気で泥を被る人間、どうしようもなく馬鹿で、滑稽でーーーカッコよくて、強くて、どうしようもなくなるほど、アタシの大切なヤツ。
あの時もそうだった。アイツはアタシの為にーー自分を犠牲にした。
ああ。もうアタシはおかしくなっているんだ。こんな状況で改めて自覚させられるなんて、でも、代表が坂本君に対してそうであるように、アタシももう、押さえきれなくなってるんだ。あの時、大悟がアタシに言った台詞は、アタシ自身にも言えるーー
アタシはーーこの世の何よりも、岡崎大悟という男が、好きで好きでたまらないんだ。
ーーー
ーー大悟視点ーー
誘拐騒ぎも無事終了し、俺と秀吉は散らかされた喫茶店の後片付けをしていた。明久と雄二は『学園長に話がある』とのことで別の空き教室へと行くらしい。
ちなみに姫路達は先に帰った。
「ったく、あの連中。相当派手に荒らしやがって、これ結構値段すんだぞ?」
「そうじゃのう。せっかく凛花さんに用意して貰ったというのに、これでは会わせる顔がないわい」
そう愚痴を言いながら割られたお椀を見る。捨てるヤツだったから良かったが、もし店のモンをこうしちまったら、おそらくジャーマンスープレックスからの四の字固めをされるとこだっただろうな。
「はぁー、にしても腹減ったなぁ。秀吉、帰りになんか食ってこうぜ」
「そうじゃの。儂も今日は色々あって空腹じゃわい。それでどこへ行くのじゃ?」
「それなんだけどよ、丁度近くに旨いお好み焼き屋を見つけたんだよ。値段もリーズナブルだし、量も結構ーー」
ガラッ
「‥‥‥岡崎、木下、ちょっと」
突然教室の扉が開き、澄んだ声で霧島が入ってきた。
「ん? なんだ、霧島じゃねえか。雄二なら今いねぇぞ?」
「何か儂らに用かの、霧島よ?」
俺らがそう聞くと、霧島は少し間を置いて、言った。
「違う。用事があるのは岡崎達‥‥‥今日の優子のことで少し」
「「っ?」」
声にもならない声で反応する俺と秀吉。
「‥‥‥優子がどうしたんだ?」
「‥‥‥連れてかれた時の優子、明らかにおかしかった。凄く怯えてたし、ずっと震えてた。いつもの優子ならそこまでにはならない」
「‥‥‥何を言っとるのじゃ霧島よ? 考えすぎでは」
「‥‥‥なら、なんでそこまで狼狽えてるの?」
「っ! ‥‥‥それは」
秀吉が言葉に詰まる。
「あの時、まるで‥‥‥優子はあの怖さを前から知ってたような怖がり方をしていた」
「「っ!?」」
霧島の言葉に俺達は動揺した。あの秀吉でさえも表情がそのまま出ている。そんな俺達を見て、霧島は何かを感じ取ったのか、俺達の目をはっきり見て、こう言った。
「岡崎、木下‥‥‥教えてほしい。過去に優子に‥‥‥一体何があったの?」
今回そんなにボケが無いような気がするなぁ‥‥‥。
それではまた次回
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
-
入れろ、絶対に
-
別に入れなくてもいいよ