バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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バカテスト 化学

問 以下の問いに答えなさい。

『調理の為に火にかける鍋を製作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、調理を始めると問題が発生した。この時の問題点とマグネシウムの代わりに用いるべき金属合金の例を一つあげなさい』



姫路瑞希の答え

『問題点・・マグネシウムは炎にかけると激しく酸素と反応する為危険であるという点。』
『合金の例・・ジュラルミン』

教師のコメント

正解です。合金なので『鉄』では駄目という引っかけ問題なのですが、姫路さんは引っ掛かりませんでしたね。


土屋康太の答え

『問題点・・ガス代を払っていなかったこと』

教師のコメント

そこは問題じゃありません。


吉井明久の答え

『合金の例・・未来合金(←すごく強い)』

教師のコメント

すごく強いと言われても。


岡崎大悟の答え

『問題点・・カレーを作ろうと思ったら間違えてビーフシチューの素を買ってきてしまったこと』
『合金の例・・賢者の宝石(←めるたんの世界で用いられ、全ての魔法のエネルギーの元となる宝石、それは魔法の素だけでなく様々な道具への加工も可能であり、それで鍋を作れば絶対に溶解しない最強の鍋が出来上がる)』

教師のコメント

どこから指摘すればいいのか分かりません。


打倒Aクラス編
第一問 馬鹿の周りにはバカが集う


俺が文月学園に編入してから初めての春が訪れた。

校舎へと続く坂道を俺は悠々自適に歩き、その両脇には桜が満開に咲き誇っている。いやー、これこそ春って感じだな。

アニメやゲームならここら辺で曲がり角から女の子とぶつかって「いたた・・ごめんなさい」という台詞と転んだ拍子にその女の子のパンツを見てしまうというラッキーな展開がお約束なんだがね。

 

 

「岡崎、遅刻だぞ」

 

 

と、校門の玄関の前で低い声で止められた。女の子なんていなかったんや。

 

 

「おはようございます。西む……あ、鉄人先生」

「おい、何故逆に言い直したんだ。ちゃんと名前で呼べといつも言っているだろう」

「おっと、これは失礼しました。西村鉄人」

「違う、訂正はしろと言ったがそういう事じゃない」

 

 

 浅黒い肌に筋肉質な体つき、短髪といかにもスポーツマンといった風貌をしたこの男は西村教諭、通称鉄人。由来は彼の趣味がトライアスロンなのと、人間離れした生命力かららしい。

 まあ、確かに冬でも半袖でいたときはマジかと思ったけど。

 生徒指導ということもあり、生徒からは恐れられているが俺は別にそうは思わない。むしろ学校にはこんな先生もいても良いと思ってる。ま、何度も色んなモン没収されてるけど。

 

 

「いやー、すみません。昨日はどうしても徹夜で……」

「なんだ、また夜更かししてアニメを見ていたのか。お前のその趣味を否定はしないがな、学業に支障が出る様では困るぞ」

「大丈夫ですよ先生。そこのメリハリはきっちりつけているつもりですから。勉強と趣味を両立させてこその学生でしょ」

「そう思ってるなら遅刻の常習犯になるな。俺の教師生活の中で遅刻届の数が三桁を超えた奴はお前だけだ」

「成る程、つまり俺はオンリーワンな存在という事ですね?悪い気はしませんな」

「どや顔で言うな馬鹿者。一応お前は『特別監視対象生』なんだからな。まあいい……ほれ、振り分け試験の結果だ。受けとれ」

「あざっす」

 

 

 西村教諭が箱から封筒を取り出し俺に渡す。そこの宛名には『岡崎大悟』と名前がでかでかと書いてあった。

 

 この文月学園にはクラスがそれぞれAからFまで六クラスあり、二年生からは成績順でクラスが分けられる。アルファベットの早い所から段々と振り分けられるので、頭が良ければAクラス、悪ければFクラス。

 

つまり、Aクラス=天才、Fクラス=馬鹿という方程式になっているのだ。まあ、流石にFクラスは無いだろう……。

 

 

「でも、わざわざこんなやり方しなくても張り出すなり一斉に渡すなりしてもいいんじゃないっすか?そっちの方が先生も楽でしょう?」

「そう思ってるのなら騒ぎを起こすな。確かにお前はこの半年間ちゃんと学校に通って勉強もしっかりやっている様だが、何度も生徒指導室に呼ばれる様な真似はするんじゃない。只でさえ吉井と坂本という悩みの種があるというのにお前まで加われば面倒なんだ」

「え?俺ってアイツ等と同じ部類なんすか?」

 

 

なんて失礼な。と思いながら俺は封筒をあける。ここには自分がこれから一年間所属するクラスが記されている。さてさて、俺はどのクラスになるのやら・・

 

 

「……岡崎、今だから言うがな。この半年間お前の事を見てきて『ひょっとすると、岡崎はオタクなんじゃないか』という疑いを抱いていたんだ」

「まあ、何を言うんですか先生。俺はごく普通の学生じゃないっすか。ここに来てから問題事も騒ぎも起こして無いですよ?」

「ならお前の今までの行動はなんだ。突然校内放送でアニソンを流したりテストの裏にアニメのイラストを書いてそのまま提出したり反省文は何故かオリジナルのライトノベルになってたり猥褻な本や映像を作って生徒に販売したり勝手に体育館で男女コスプレコンテストを開催したりとな。その質実剛健とした見た目から想像もつかん事をやらかしてくれたものだ。正直吉井達よりも酷いんじゃないかと思っていた」

 

 

なんという事だろう。まさか俺があの馬鹿の代名詞と呼ばれる明久以下の存在と見られるとは。訴訟も辞さない。

 

 

「先生、それは心外ですよ。これらはあくまでも皆に二次元の良さを理解して欲しいが故の行動なんです。決して皆に迷惑はかけていませんし、一部の生徒からは大好評なんですよ?」

「その発言が正にそうだろうが……はぁ、だが悲しいことにお前のそう言った所は認めている、俺を含めた教師全員がな。そして今回の振り分け試験の内容を見て、俺はようやく理解したよ」

 

 

 

 開いた封筒の中に入っていた紙には、Fという文字と、めちゃくちゃ頑張りましょうという印鑑が押されていた。

 

 

 

 

「岡崎大悟……お前は紛れようも無い真性のオタク馬鹿だ」

 

 

 

 

こうして、俺の最低クラスでの生活が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

「な、なんだこの教室は……」

 

 二年生のクラスがある三階へと向かった俺は唖然とした。何故ならすぐ目の前にあったのは普通の何倍もあろうかという教室だからだ。

 

「こ、これがAクラス、天才達の集う場所か……」

 

 黒板の代わりにあるのは大きなプラズマディスプレイ、ノートパソコン、個人用のエアコン、冷蔵庫、リクライニングシート、そして天井にはバカでかいシャンデリア・・もうここ教室ってよりホテルだろ。

 くそぅ・・ここならのんびり紅茶を飲みながら優雅な一時(アニメ観賞)も可能じゃないか・・羨ましすぎる。

 

 

「でも、Aクラスでこの設備なんだ。幾ら最低クラスとはいえ、普通の学校よりは設備は整っているんじゃないか?」

 

 

そんな若干の期待を抱え、俺は自分のクラスへと向かった。

 

 

 

『大悟、Aクラスじゃなかったんだ……』

 

 

 

 

 ―――Fクラス前

 

 

 ……………嘘やろ?

 

 

 二年F組と書かれたボロボロの木製プレートの前で俺は戸惑っていた。いや、なんだこの外観は?ボロボロじゃねえか、本当にここさっきのAクラスと同じ施設なの?家畜小屋かな?気づかぬ内に俺は空間転移でもしたのかな?

 

 

「幾ら馬鹿の集まるクラスとはいえ……ここまでかよ」

 

 

 中に入ると、もっと酷い光景だった。

 かび臭い教室、薄汚れたちゃぶ台に継ぎ接ぎだらけの座布団、隙間風が吹きまくる窓。ここは江戸時代か?もうこれ教室じゃなくて廃屋だろ。マジか、この一年間ここで過ごさなきゃならないのか。まあ、俺は拾って貰った身だからな、そんなずかずかと文句は言えない。

 

 

「よう、お前もFクラスか、大悟」

「あ?ああ……雄二か」

 

 

 教壇に立ち、俺に話しかけてきたチンピラ風の見た目をしたコイツはダチの一人、坂本雄二だ。

 

 

「そう言うお前もFクラスなのか、意外だな。てか何で教壇に立ってんだよ?」

「ああ、俺がFクラス代表だからな。試しに立ってみた。宜しくな、大悟……いや『兄貴』って呼んだ方がいいか?」

「やめろ、お前はそんなキャラじゃねえだろうが。あと俺を兄貴と読んでいいのは俺を慕う幼女か女子中学生(二次元に限る)だけだ!侮るな!」

「そう照れるなって―――ん、大悟、何か落としたぞ」

 

 

 雄二はそう言って俺の鞄から落ちた物を拾い上げる。

 

 

 パサッ

 

 

『坂本雄二が霧島翔子に獣のような表情で襲いかかろうとする表紙の同人誌』

 

 

「……おい大悟、なんだこれは?」

「ん?おおそれか。どうだ雄二、これはまだどこにも出回っていない出来立てほやほやの新作でな。中々の出来だと思わないか? 特にこの霧島がアヘ顔でよがってるシーンなんかはおすすめで―――」

 

 スッ……

 

 ビリビリビリビリッ!!←雄二によって同人誌が破かれた音

 

 

「なんて恐ろしい物を描いてやがんだお前はぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ノォオオオオオーウ!!!!???」

 

 

 雄二は無情にも、俺が端正込めて造り上げた代物を目の前で破り捨てやがった。

 

 

「貴様ァァァァ!!よくもこの俺の至極の逸品をぉぉぉぉぉ!!」

「黙れ!大悟テメェ!!俺の知らねぇとこでとんでもねえモン作りやがって!!」

 

 

とんでもない物だと!?これは俺が書いた中でもかなりの傑作『雄二×翔子 ~獣と化した幼なじみ~(本人からの依頼作)』だぞ!しかも今回は今までよりもかなり濃密な内容に仕上げてきたというのにっ……!!

 

 

「何故だ!俺の作品のどこが気に入らないというんだ!?」

「全部だ!もうどっから説明していいのか分からねぇぐらい全部だ!しかもヤケに上手く描きやがって!それが更に拍車をかけて腹立たしいんだよボケ!」

「だからといって破くこたぁねえだろ!!人のモン破り捨てるなんてお前は鬼か!?悪魔か!?それともなんだ!やっぱり明久とのカップリングの方が良いってのかこのホモ野郎!!」

「おい待て!何でそこで明久が出てくるんだ!?どっちも嫌に決まってんだろうが!悪寒と吐き気と嫌悪感しか感じねぇよ!」

 

 

 そう言って俺と雄二は互いに胸ぐらを掴んで睨み合う。この野郎……! こうなったら本当に明久×雄二で描いて全クラスにばら蒔いてやろうか。そして女子間でのコイツの渾名を『攻めの坂本』にしてやる!

 

 

「全く、お主等は朝から騒がしいのう。雄二、大悟」

「おぉ、秀吉じゃねえか。お前もFクラスか?」

 

 

 俺と雄二の間に入ってきた可愛いコイツは木下秀吉。男子でもなく女子でもない新たなる性別、『秀吉』『男の娘』という部類に属する稀少な存在だ。そして何気に俺とは中学からの付き合いがあったりする。俺とは違い華奢で綺麗な声と見た目をしているが、一番仲が良い奴だ。可愛い。

 そして、岡崎大悟主催『男女混合コスプレコンテスト』において男子部門、女子部門、秀吉部門において三冠を取った逸材でもある。

 

 

「うむ、大悟と同じクラスになるのは中学以来じゃの。儂も嬉しく思うぞ。これから一年間宜しく頼むぞい」

「おう、宜しくな相棒!これでより一層お前を題材にしたエロ同じ―――作品が捗るぜ!」

「待て、早速聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がするのじゃが」

「気にするな。それより秀吉、ムッツリーニはいないのか?」

「ムッツリーニならそこにおるぞ?」

 

 

 秀吉が指差した先には、黙々と一眼レフカメラを操作している小柄な男子生徒がいた。俺はそいつのもとへ向かう。

 

 

「よお、お前もFクラスだったみてぇだな。ムッツリーニ」

「……………大悟」

 

 

 カメラから俺へと視線を変えたこの男は、俺の悪友の一人、土屋康太。またの名を寡黙なる性職者(ムッツリーニ)。その名の通り寡黙で無愛想だがその膨大な知識量と行動力からエロに関して右に出る者はいないと称される程のムッツリスケベ野郎だ。

 

 

「……………流石に、保健体育だけじゃ無理だった。」

「だろうな。ま、今年から一緒のクラスになれて俺は嬉しいぜ。宜しくな」

「……………こちらこそ、宜しく(コクリ)」

 

 

 さて、軽い挨拶を終えたところで本題に入るとしよう。

 

 

「早速だがムッツリーニ、約束のブツだ。きっちり耳揃えて用意させて貰ったぜ」

「……………流石大悟。相変わらずの良質さ。それで―――」

「おう、今回は新春特別価格で三割引だ」

「……………承認(ニヤッ)」

 

 

 俺はムッツリーニにアキバで収穫したメイドのオリジナル写真集を袋に閉じて渡し、報酬金を受け取った。

 

 

「……………ちなみに、次回はいつ頃になる?」

「すぐ―――といきてぇ所だがそうもいかねえ。何せこれまでに製本の依頼が殺到しててな。出来上がるのは早くても一週間はかかりそうだ」

「……………仕方ない。大悟の作品にはそれほどの価値がある。それまでにこっちも相応の物を用意しておく」

「サンキュー、お前のその秀逸な写真が俺の作品製作の原動力だからな。それに俺はあくまで金や名声が目的じゃねえ、皆に二次元の素晴らしさを知って欲しいからやってんだ。そんでその実現にはお前の存在が必要不可欠なんだよ。これからも頼むぜ、ムッツリーニ」

「……………こちらこそ。大悟……お前は最高だ」

 

 

 そして、俺とムッツリーニは固い握手を交わす。やはり持つべきものはダチだな。

 俺とムッツリーニは協定を結んでおり、俺がコスプレイヤーやメイド等の写真、オリジナルの二次元の女の子のイラストを提供する代わりに、ムッツリーニの自慢の写真を安く買い付ける。そして俺がそれを元にイラスト集やその人物をモデルとした同人誌を作り、販売する。その売り上げの何割かをムッツリーニに譲渡する。

 これが、ムッツリーニが運営する『ムッツリ商会』と俺の『ダイゴブックス』間で行われている取引の内容だ。

 

 

「なんじゃ?またいやらしい事でも企んでおるのか、お主等」

「……………いやらしい事なんて何もない」

「そうだぞ秀吉。これは男同士の会話なんだから秀吉が聞いては駄目だ」

「大悟、昔からずっと言っとるが儂は男じゃぞ。お主のよく言う男の娘なんぞではないからの?」

「何いってんだ!それはあくまでも戸籍上の話だろ!」

「いや待て大悟!事実でも儂は男じゃからな!?」

 

 

 と言って俺の言葉を否定する。全く、どうしてそこまで自分を男と言い張るのだろうか。そろそろ本当の自分に気づいてもいい頃だろうに。

 どうやら秀吉には親友として後で男の娘についてのレクチャーをする必要がありそうだ。

 

 

「全く……大悟は良い意味でも悪い意味でも昔から変わっておらぬの」

「コイツは妄想力と二次元に対する執念はムッツリーニ以上だからな。とても少年院帰りとは思えねえ」

「……………人は見かけによらない。」

「そう褒めるな褒めるな、照れるだろ?」

「ま、要はただの馬鹿なアニメオタクだけどな」

「おう雄二、俺の必殺恋のミラクル☆ボディブロー受けてみるか?」

「やめい大悟。む、そういえばまだ明久が来とらんようじゃが・・。」

 

 

 秀吉の言葉に俺も気づく。よくよく見ればまだ俺達を軽く凌駕するほどのバカ野郎、吉井明久の姿が無いじゃないか。奴がFクラス以外に配属される事は絶対に無いので、多分まだ来てないだけだろう。

 

 全く、進級初日から遅刻なんてしょうがない奴だな←遅刻回数三桁の男

 

 

「……お、あれは明久じゃねえか?」

 

 

 雄二が窓の外を見てそう言った。見てみると明久が鉄人に振り分け試験の結果を貰い、地面に伏せている姿があった。

 

 

「あの調子じゃ、アイツもFクラスだな。」

「俺は信じてたぜ。明久はここ以外ありえねぇ」

「……………流石、馬鹿の象徴」

「まあ、予想通りじゃの」

 

 

 確かに俺達はFクラスの人間、つまり馬鹿だ。だが、どんなものにも優劣があるように上には上がいる。

 馬鹿の中でも馬鹿の最上位(キング・オブ・バカ)、それが吉井明久なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 暫くすると、ガラッと扉が開いた。

 

 

「すみません、ちょっと遅れちゃいましたっ♪」

「早く座れ、このウジ虫野郎」

「……なにやってんの、雄二?」

「先生が遅れているらしいから代わりに教壇に立ってみた」

 

 

 そんな茶目っ気のある声で入室してきたのは、文月においての馬鹿の象徴であり代表格の男、吉井明久だ。

 

 

「おせぇぞ、明久」

「大悟! 大悟もFクラスだったんだね?」

「おう、宜しくな明久……そんでだ」

 

 

『秀吉が『ピー!』して『バキューン!』して『自主規制』してるイラスト(R18)』

 

 

「価格は半額にするが?」

「買ったァァァァ!!!」

 

俺は明久に写真を渡し、五百円を受け取った。

 

「おぉぉ……流石だよ大悟!なんて素晴らしい作品なんだ!僕は君と同じクラスになれることを誇りに思うよ!」

「俺もだ明久。これからも御贔屓に頼むぜ」

「大悟!?さらっと今とんでもない物が見えたのじゃが!?」

 

 そして俺と明久がお互い笑顔でサムズアップをしていると、不意に後ろから声が聞こえてきた。

 

「えーと、ちょっと通して貰えますか?それと席について下さい。ホームルームを始めますので」

 

 そう言われ、俺と明久は席?につく。 

 

「えー、おはようございます。F組担任の福原慎です。宜しくお願いします」

 

 先生は薄汚れた黒板に名前を書こうとしたが、やめた。え? チョークもねえの? もうそれ学業に支障出るだろ。

 

「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されていますか?不備があれば申し出てください」

 

 すると、クラスメートの不満が一気に飛び出す。

 

 

「せんせー、俺の座布団に綿が殆ど入ってないですー」

「あー、はい。我慢してください」

「先生、俺の卓袱台の脚が折れています」

「木工用ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」 

「センセ、窓が割れていて風が寒いんですけど」

「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」

 

 

 何これ、さっきのAクラスとの差が絶望的過ぎて笑いも起きないんだが。俺の行ってた少年院でも流石にここまでじゃなかったぞ。

 でも、あの婆さんが言ってたな。ここはどれだけ勉学を積んだかで学生生活の良し悪しが決まる場所だと。確かに、努力して結果を出した奴にはそれに見合った環境が与えられるのは至極当然だ。それをしなかった俺等にはこの程度が相応しいという事か。

 

 

「では、自己紹介でも始めましょうか。廊下側の人からお願いします。」

 

 指名を受けて、生徒達が次々と自己紹介を始めた。

 

「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」

 

 俺の親友であり絶世の美人こと木下秀吉。

 

「……………土屋康太」

 

 趣味は盗撮と性教育の参考書採集。ムッツリーニこと土屋康太。

 

 にしてもここは男ばっかりか。畜生!これじゃ俺が長年追い求めてきたハーレム学生生活なんて夢のまた夢じゃねえか!

 

「島田美波です。ドイツ育ちなので日本語は会話は出来るけど読み書きが苦手です。趣味は……吉井明久を殴ることです☆」

「誰だっ!?恐ろしくピンポイントかつ危険な趣味を持つ奴は!」

「はろはろー。吉井、今年もよろしくね」

 

 おっと、どうやら女子がいたようだ。ドイツ育ちの帰国子女である島田美波だ。去年はクラスが別で、彼女は勉強が出来るとおもっていたのでこれは以外だ。

 ……そういや何度か俺に男にも通用する寝技を教えて欲しいと言われたがそういう事か。明久も大変だな。でも暴力系貧乳女子というのは二次元においてセオリーな存在。嫌いじゃないぜ。

 

 さて、次は俺か。面倒だしちゃちゃっと済ませるとしよう。

 

 

「岡崎大悟だ。一年間宜しく頼むぜ。」

 

 

 簡単に自己紹介を済ませ俺は座る。オイ、あちらこちらから『兄貴・・』という声が聞こえる。やめろ、俺は男、しかも三次元なんかに兄貴なんて呼ばれたくない。

 

 そして次はいよいよ明久の番だ。

 

 

「えーっと、吉井明久です。気軽に『ダーリン』って呼んで下さいねっ♪」

 

 

 

 

 

『ダァァーーリィーーン!!!』

 

 

 

 

 

 野太い声で最愛の男性という単語の大合唱。想像以上に不快だな。

 

「―――失礼。忘れてください。とにかく宜しくお願い致します。」

 

作り笑いをしながら席につく明久。……今のお前の心情が手に取るように分かるぞ。そうだよな。大勢の男共にマジな声のトーンで『ダーリン』なんて言われりゃあ吐きたくもなるわ。Fクラス恐るべし。

 

 その後も自己紹介は続く。やがてもうすぐ全員の紹介も佳境に差し掛かろうという時―――

 

 

 

 ガラッ

 

 

 

「あの、遅れて、すみま、せん……」

 

『え?』

 

 

 教室の扉が突然開き、息を切らしながら一人の女子生徒が入ってきた。

 

 

「丁度良かったです。今自己紹介をしている所なので姫路さんもお願いします」

 

「は、はい!あの……」

 

 

 

 

「姫路瑞希といいます。宜しくお願いします……」

 

 

 

 ……………うっそーん。

 

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございます。それではまた次回

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ

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