それでは最後に、頭の体操として一風変わった英語のクイズをどうぞ。
【➀】と【➁】に当てはまる語を答えてください。
『マザー(母)から【➀】を取ったら【➁】(他人)です』
姫路瑞希の答え
『マザー(母)から【Ⅿ】を取ったら【other】(他人)です』
教師のコメント
その通りです。Motherから『Ⅿ』がなくなるとother(他人)という単語になります。こういった関連付けによる覚え方も知っておくと便利でしょう。
土屋康太の答え
『マザー(母)から【Ⅿ】をとったら【S】(他人)です』
教師のコメント
土屋君のお母さんが『ⅯS』でも『SⅯ』でも、先生はリアクションに困ります。
吉井明久の答え
『マザー(母)から【お金】を取ったら【親子の縁を切られるの】(他人)です』
教師のコメント
英語関係ないじゃないですか。
岡崎大悟の答え
『マザー(母)から【お酒】を取ったら【実の息子関係なく容赦なくぶっ飛ばされるの】(他人)です』
教師のコメント
君とお母さんとの親子関係が心配になりました。
ーー大悟視点ーー
『坂本・吉井ペアの勝利です!』
「ぃぃぃよっしゃぁああー!!」
アナウンサーが勝ち名乗りをあげると、明久の歓喜の叫びと観客の歓声が一気に会場中を包み込んだ。そりゃあそうだ。はたから見れば誰もが常夏コンビの勝利を考えていたのにも関わらず、後輩に、しかも学園最底辺の二人が正々堂々と戦い、見事観衆たちの予想を大きく覆したのだ。盛り上がらないワケがない。
当の俺も思わず声をあげてしまいそうになるくらい喜びに満ち溢れていた。
「まさか‥‥‥本当に優勝してしまうとは‥‥‥!」
「なんという大番狂わせ‥‥‥! 信じられませんわ‥‥‥!」
流石に高城さんも小暮さんも予想外だったのか、かなり驚いているようだ。
「ははは、どうですか二人共。確かに俺達はアンタら三年から見たら掃き溜めのような存在かもしれねぇ。けどな、その代わりに俺たちは掃き溜めであるが故の『勝ちへの執念』と『バカゆえの諦めの悪さ』に関しちゃどこにも負けねぇ。ああいうバカってのはな、普通のヤツらと違って『あんなに実力差があって勝てるわけがない』という概念は持ち合わせちゃいない。ただただ学力という一つの道筋しか知らねぇお利口さん共とは『気概』が違うのさ」
俺は自信満々かつ淡々とそう二人に言い放つ。
「それにな、高城さん。アンタはさっき明久がなんでこんな大舞台に立とうと思ったのかと言ってたな? そんなん簡単な話だよーー」
「ーーアイツはな、テメェの守りたいモンの為に動いてるだけだ」
そう、何故明久が召喚大会への参加を決意したか。それは学校存続の危機だとか、設備の改修だとかも勿論だが、大元の理由は‥‥‥姫路なのだ。
召喚大会で優勝すれば、ババァの失態を隠す代わりに設備の改修を承諾してくれる。そうすれば姫路は今よりももっといい環境で過ごすことができる。そして転校の件も、自分たちが優勝して、Fクラスの存在意義を父親に見せつければ、その考えを改めるかもしれない。
そう、明久の今回の行動は殆ど、姫路の事を一番に考えての行動なのだ。そうじゃなければあのバカがここまで躍起になることはない。だからこそ俺や雄二は学園祭に真面目に取り組む事を決めたのだ。まぁ、俺や雄二は
「観察処分者? Fクラス? んなもんアイツには関係ねぇ。誰になんと蔑まれようが悪く言われようが、明久は決して折れたりしねぇ。例え絶望的な状況にいようが、少しでも可能性があるならそれに向かってがむしゃらに突き進む‥‥‥それが『吉井明久』って男なんだよ」
正直、自分でも何言ってんだかと思う。だが不思議ともうそれを受け入れている自分がいるのも確かだ。
俺も雄二も、秀吉も同志も‥‥‥気づかぬうちにあのバカに洗脳されてんのかな。
「‥‥‥成程、どうやら私は彼のことを過小評価し過ぎていたようですね」
「あ?」
「岡崎君。先程の私の発言ですが、訂正させて頂きたい。彼は私の思っていたよりも素晴らしい生徒のようだ。先程のアナウンサーの方同様、私もFクラスだからなどいう考えは、改めなければならないようですね」
「ほう、それはまた随分と持ち上げるんだな?」
「いえいえ、岡崎君も知っているでしょう? 私は騙されやすい人間ではありますがつまらない噓がつける人間でもありません。ですからこれは紛れもない本心ですよ。吉井明久君‥‥‥彼は優勝するに相応しい人間のようだ」
「‥‥‥そうかい。ま、そう思ってくれたんなら俺からは特に何も言えねぇわ。それにアンタらも、ちゃんと自分のクラスの手綱くらいしっかり引いとけな?」
そして、俺はゆっくりと立ち上がる。明久と雄二の優勝が決まった今、もうここに用はない。恐らくこれでFクラスのことはかなり認知されたことだろう。中華喫茶の方も忙しくなるに違いない。
「んじゃ、俺は喫茶店の方があるんで戻りますわ。高城さん、小暮さん、もし暇があるならFクラスに足を運んでくれよ? アンタの憧れの姫路もチャイナ服で働いてっからよ」
「ええ、是非ともそうさせてもらいましょうか」
「学生最後の学園祭に素晴らしいものを見せていただきましたわ。感謝致します、岡崎君」
「それは俺じゃなく明久と雄二に言うこったな。そんじゃ」
そして、二人に軽い挨拶をして俺は会場から出ていった。
そしてそのまま廊下を歩いていると、丁度試合を終えた明久と雄二と出くわした。
「「「‥‥‥‥‥」」」
何も言わない。いや、何かを言う必要などなかった。
色々言いたいことがあったはずなのだが、こいつらの表情を見た瞬間、それは全て杞憂と化したのだ。
そして、俺はゆっくりと両手を上げる。それに応じるように明久と雄二もそれぞれ片腕をあげーー
パァンッ!!
俺たちは一斉に、ハイタッチを交わした。
この喧嘩、俺たちの完全勝利だ。
ーーー
ーー明久視点ーー
『ただいまの時刻をもって、清涼祭の一般公開を終了しました。各生徒は速やかに撤収作業を行ってください』
「お、終わった‥‥‥」
「さすがに疲れたのう‥‥‥」
「まさかここまで客が増えたとはな‥‥‥」
「‥‥‥‥‥(コクコク)」
放送を聞いた途端、足から力が抜けていく。
試合終了後、僕らの中華喫茶は優勝の影響もあり、お客さんが嵐のように舞い込んできた。怒涛の勢いでやってくるお客さんを案内してはさばいて、さばいては案内して。ここまでウェイターが疲れる仕事だとは思わなかった。
「あそこまで忙しいなんて、ウチの店の繫忙期並じゃねぇかクソッタレ‥‥‥」
隣では大悟が深く椅子に腰かけている。僕も相当疲れたけど、コイツやムッツリーニは息つく暇もなくずっと押し寄せる注文に対応してたんだ。体力自慢の大悟でもかなりキツかっただろう。
「そう言えば、姫路さんのお父さんはどうしたんだろう?」
「ん? なんだ、お義父さんが心配なのか?」
「なっ!? べ、別にそういうわけじゃなくて!」
「後夜祭の後で話をしに行くと言っておったのう。おそらく結論はその時じゃな」
秀吉が返事をしてくれる。そっか、まだわからないのか。大丈夫だとは思うけど、少し不安だな‥‥‥。
それにしても、さっき姫路さんが言っていたお話って何なんだろう?
「じゃ、ウチらは着替えてくるわ」
「えぇっ!? どうして!?」
若干沈んでいるところに、更にご無体なお言葉。
「どうして、って言われても‥‥‥恥ずかしいからに決まっているでしょ?」
「すいません。すぐ戻りますので」
「待って! 二人とも考え直すんだ! カムバァーック!」
僕の必死の説得も虚しく、姫路さんと美波は無情にも去って行ってしまった。非常に残念だ。
因みに葉月ちゃんはそのままの格好で帰っていった。それについていこうとした馬鹿もいた。隣にいるやつだけど。
「‥‥‥明久、心配するな」
「え? 大悟‥‥‥」
サッ(姫路さんと美波のチャイナ服イラスト『着崩し&上目遣いバージョン』)
「俺からの優勝祝いだ」
「大悟ぉぉおおおおーーっ!!」
凄い! いつの間にこんなイラストを作っていたなんて! しかもカラーバージョンじゃないか!
馬鹿にしてごめんよ大悟! やっぱり君は最高の友達だ!
「ふむ、ならばワシもーー」
「「「っ!?」」」
そう言って立ち上がろうとした秀吉。そうはさせない!
「させるかぁっ! せめて秀吉だけは着替えさせない!」
「そうだっ! そんな無情な真似は相棒にはさせるわけにいかねぇ!」
「‥‥‥‥‥(フルフル)」
「なっ!? 何をするのじゃお主ら!」
疲れた身体に鞭打って秀吉の足にタックル。そしてもう片方の足にはムッツリーニが。後ろからは大悟が秀吉の両腕をがっちりとホールド。
どうやら考えていることは同じなようだ。
「おいお前ら。遊んでないで学園長室に行くぞ」
そんな僕らを呆れたような目で見ているのは疲れを感じさせないタフなクラス代表。
雄二の言う通り、腕輪は僕らなら問題なく作動するとはいえ、一応約束だ。最低限必要な報告くらいはしておかないといけないし。
「ならちょっと待っておれ、すぐに着替えを」
「NO着替え! お前はそのまま行くんだよ秀吉!」
「なっ! は、放すのじゃ大悟! 下ろすのじゃー!」
そう言って大悟は秀吉の身体を右腕で抱きかかえる。うーむ、今だけあの大悟のパワーが羨ましい。
けど流石大悟だ。僕ら愛好家の在り方をきちんと心得ている。
「もういい秀吉。お前はそのままの格好で来い。コイツらを説得するのも面倒だ」
「やれやれ‥‥‥。仕方ないのう。着替えは後回しじゃ」
「よし。ほら大悟。放してやれ」
「分かった」
「全く。ワシのこんな姿を見てもなんの足しにもならんじゃろうに‥‥‥」
決してそんな事はないと思う。
ーーー
「失礼しまーす」
「邪魔するぞ」
「どもー」
ノックと挨拶をして学園長室の扉を開ける。
「お主ら、全く敬意を払っておらん気がするのじゃが‥‥‥」
「そう? きちんとノックをして挨拶したけど?」
それにコイツらよりはマシなはずだ。
「アタシは前に返事を待つようにいったはずだがねぇ」
「あ、学園長。優勝の報告に来ました」
「言われなくてもわかっているよ。アンタたちに賞状を渡したのは誰だと思ってるんだい?」
相変わらず遠慮のないババァだ。少しは相手に気を遣うことを覚えた方がいいと思う。
「それで、白金の腕輪は返却した方がいいですか?」
実は白金の腕輪は、高得点を叩き出した時に出てくる金の指輪とは違って、召喚者自身が装備するものなのだ。
「いや、それは後でいいさね。どうせすぐに不具合は直せないんだ」
「あ、そうだったんですか。じゃあしばらくは僕らが持っていていいって事ですか?」
「ああ、それで構わないよ」
そうか、それならありがたく使わせてもらうことにしよう。確か僕の腕輪は、召喚獣を同時召喚出来るタイプのやつだからかなり使い勝手が良いに違いないだろうな。
「‥‥‥ん? おい雄二、さっきからどうしたんだ?」
見ると、雄二がまた何かを考えるような仕草を見せている。この部屋で考え事をするのが好きなんだろうか?
なにかブツブツ独り言を言ってるようだけど放っておこう。どうせ説明してもらわないとわからないし。
「そういえば、なんであいつらは俺たちがババァとつながっていると知っていたんだ‥‥‥?」
「なぁ明久。とっとと用件済ましちまえよ。この後後夜祭もあるんだろうが」
「そうだね。じゃあ、これと交換条件で設備の改修を承諾してくれる取引をーー」
「待て明久! その話はマズい!」
「「え?」」
雄二が急に真剣な表情で怒鳴りだしたため、思わず大悟と間抜けた声を出す。
「おい雄二、いきなり何だってんだ?」
「‥‥‥‥‥盗聴の気配」
「クソっ! やっぱりか!」
ムッツリーニの言葉を受け、雄二が駆け出して扉を開け放つ。すると、複数の足音が遠ざかっていくのが伝わってきた。
「あいつら‥‥‥! 追うぞ明久! 大悟!」
「ちょっ‥‥‥雄二、どういうこと!?」
「盗聴だ! あの連中、この部屋に盗聴器を仕掛けてやがったんだ!」
「何だって!?」
「てことは、今までの会話も全部筒抜けだったのか!?」
「ああ、間違いない! もしも録音なんてされていたら、相当マズいことになる!」
そんなの冗談じゃない! もしこれまでのことが公になったら今までの苦労が水の泡だ! 学園の信用は地に落ち、存続自体が危険に晒される! そうなったら姫路さんどころか全員が転校だ! なんとしてでも証拠を隠滅しないと!
「とにかく急ぐぞ! 秀吉とムッツリーニも協力してくれ!」
「うむ!」
「‥‥‥‥‥(コクリ)」
五人揃って学園長室を飛び出す。おそらく盗聴をしていたのはあの常夏コンビだろう。あれだけやられたのにまだ懲りないのだろうか。
一人ずつで万が一返り討ちに遭うとまずいという事で、ここからは二手に分かれて行動することにした。
「秀吉、同志! 連中は昨日母さんにボコボコにされた二人組だ! 分かるか!?」
「なるほど、あやつらじゃな! 了解じゃ! ワシとムッツリーニは外を探す!」
そうか。家に帰ってコピーでもされたら厄介だから、まずは学校の出口から潰していくのか。
「‥‥‥‥‥明久」
「ん?」
「‥‥‥‥‥これを」
そう言ってムッツリーニが手渡してきたのは、彼の愛用の双眼鏡だった。
「‥‥‥‥‥予備」
「サンキュー、ムッツリーニ!」
「‥‥‥‥‥この学校は気に入っている」
それは僕も同意見だ。だからこそ僕らはこうして奔走している。学園を潰させない為にも。
「相棒! 見つけたら俺の携帯に連絡を入れろ!」
「了解じゃ、相棒!」
そして、屋外組と屋内組に分かれて、校内を走り回る。本当にここ二日間は学校内を走ってばかりだ。
ーーー
ーー大悟視点ーー
「明久! 大悟! まずは放送室を押さえるぞ!」
「オーケー!」
「了解だ!」
まずは最も危険な放送室を選んだ雄二。確かにあそこは仕入れた情報を暴露するのにうってつけだ。そうなりゃあ録音された本体機器を回収しても無意味だ。確実に押さえるべきか。
~ 放送室 ~
「ガサ入れチェックの時間だオラァ!」
「邪魔するぞ!」
「な、なんだお前ら!?」
「雄二、大悟! ここにいるのは煙草吸ってるバカだけだし、置いてあるのは学園祭で密かに取引されていたアダルトDVDくらいだ!」
「何だこりゃあ!? 亀甲縛りの結び方がちげぇじゃねぇか! 監督は素人かコンチクショウ!」
「とりあえず煙草とDVDを押収して先を急ぐぞ!」
「そうだね! 校則違反だもんね!」
「おいお前ら! こんなもん見るくらいなら俺がもっと良作を用意してやる! もし所望するなら後日改めて俺の所まで来い!」
「ど、どろぼう! 泥棒!」
~ 廊下 ~
「あれ? アキに坂本に岡崎。そんなに急いでどうしたの?」
「ごめん美波! ちょっと先を急ぐんでまた後で!」
「あ、おいバカ! お前DVD落としたぞ!」
「なっ!? しまった!」
「アキ、何か落としたわよ? えーっと、『女子高生緊縛物語』。‥‥‥何コレ?」
「逃げよう二人とも! なんだか美波を中心に闘気の渦が見えるんだ!」
「待ちなさい! アンタなんでこんなものを持ってるのよ!」
「「明久が欲しそうにしてたから譲った!」」
「余計な事を言うな貴様ら‥‥‥ってひぃいっ!? 追ってきたぁ!」
~ 二-A教室前 ~
「‥‥‥雄二」
「翔子! 悪いが今はお前に構っていられない!」
「‥‥‥大丈夫。市役所くらい一人で行ける。婚姻届を出すだけだから」
「そうか! なら何も問題は無いな!」
「ちょっと待て! 問題大ありだ! 大体俺はそんなものに判を押した覚えはないぞ!?」
「雄二! 大悟! ここにはいないから先を急ごう!」
「待て二人とも! こっちはこっちで大変なことになっているんだ!」
「それじゃあまたね、霧島さん!」
「邪魔して悪かったな!」
「待て! 頼むから待ってくれ!」
~ 再び廊下 ~
「ダイゴー? ドウシテニゲルノカナー? ナニヲカクシテルノカナァァァ? ウワキカナァ?」
「走れお前ら! 捕まったら挽き肉にされるぞぉ!」
「うわぁっ!? 大悟! 木下さんがナイフを十本くらい持ち出してるんだけど!?」
「まさかあれを投げる気なのか!? そんな芸当がーー」
ヒュゥン!! ザクッ
「「「‥‥‥逃げろぉぉぉおおおおお!!!!」」」
「ソッカァ、アタシトオニゴッコガシタイノネ? ジャアサンニンマトメテツカマエテアゲルワネェ? トクにダイゴニハタップリオシオキシナイトネ♪」
「「「うわあああああああああああ!!!!」」」
ーーー
結局、校舎を一階から四階まで探したが、肝心の常夏コンビは見つからなかった。それどころか、何故か俺が明久と雄二の三人で逃避行を図ろうとしているというふざけた誤解が生じ、霧島と島田にまで俺たちは追いかけられる羽目になった。
「畜生! 全然見つからねぇな‥‥‥」
「マズいな‥‥‥。随分時間をロスした」
「そうだね。あいつら一体どこにーーん?」
「どうした明久ーーなんだありゃ?」
明久の視線を追ってみると、そこには見慣れないものが置いてあった。
「ああ、ただの打ち上げ花火じゃねぇか」
「あ、恒例の締めに使うヤツ? へぇ~。こんなところに保管していたんだ」
「花火は一応火薬の塊だからな。寸前まで火の気のないところに保管しておくのが鉄則だ」
「ほー、そうなのか。しっかし花火まで用意してやがるとは、ホントに金はあるんだな」
「感心している場合か? それよりも早く常夏コンビをーー」
すると、俺のポケットから無機質な着信音が響いた。携帯電話だ。
「俺だ、秀吉か?」
『うむ。見つけたぞい、さすがはムッツリーニじゃ。遠くまで見ておる』
「ナイスだぜ! そんで、連中はどこにいやがる!?」
『新校舎の屋上じゃ』
「お前ら! ヤツらは新校舎の屋上だ!」
俺がそう叫ぶと、明久は同志から借りた双眼鏡で屋上を覗く。
「あ、本当だ! 確かにいる!」
「明久! 俺にも見せろ!」
明久は双眼鏡を雄二に渡す。しかし、屋上か‥‥‥そこまでは探していなかった。
「やべぇ! あいつら、屋上の放送機器を準備していやがる!」
「「なんだって!?」」
つまり、後夜祭用の放送機器を使って流すつもりか!
「秀吉! お前たちは今どこだ!」
『部室棟じゃ』
部室棟だと、それじゃあダメだ。そこから屋上までは走っても五分はかかっちまう! けれど今俺達がいるこの場所からでも同じくらいはかかる。だが向こうは今すぐにでも放送を始めようとしているし、このままじゃ間に合わねぇ! 着いた頃には全てが終わりだ!
どうすればいい、最悪アイツらごと倒すやり方でも構わない。ここからでもあの放送を止めるためにはどうすれば
ーーふと、先程の打ち上げ花火が目に入った。
「‥‥‥おい。明久、雄二」
「‥‥‥やっぱり大悟もそう考えるか」
「‥‥‥それしか方法はないもんね」
「ああ、どうせこのままじゃ俺たちは終わりだ。ならいっちょド派手にかましてやるのも悪かねぇ」
「それじゃあ雄二、よろしく」
「了解だ。ーー
そして悪戯な笑みを浮かべる俺たち。さぁ、パーティーの始まりだ。
アイツらにはいっちょ、地獄を見てもらうとしよう。
ーーー
「夏川、そっちの準備は大丈夫か?」
「大丈夫だ。へへっ。これが流れりゃ俺たちの逆転勝利だな」
「そうだな。これで受験勉強なんかしなくてもーーおぉぉぉっ!?」
「なんだよ常村。何をそんなに驚いてーーゲェッ!? マジかよぉっ!?」
「とにかく伏せろぉぉっ!!」
ドォン!パラパラパラ
「どうだ大悟! 当たったか!?」
「いや、外したぞ明久! もうちょい下を狙え!」
双眼鏡を覗き込みながら、そう明久に指示する。チッ! 避けやがったか! 無駄な足掻きを!
現在、俺たち三人を中心に試験召喚フィールドが展開されており、物理干渉が可能な明久の召喚獣が、打ち上げ花火を屋上めがけて投げつけている。
無論、こんなことを教師が承認するワケはない。じゃあなぜフィールドが出ているのかというと、雄二が身につけているもう一つの腕輪によるものだ。
「オッケー、もうちょい下だね!」
「いけ明久! 点火だっ!」
「了解!」
「「「フォイヤー!!」」」
ヒュ~‥‥‥ ドォン!
「よっしゃ! スピーカーが粉々に破壊されたぜ!」
これが俺たち三人の最終手段。名付けて恋のバーニングフラワー☆アタックだ!
「よし! 後は放送機材だけだ! さっきよりも右に一撃くれてやれ! ビスマルクちゃんのように!」
「おうっ!」
俺の指示通り、明久は召喚獣の方向を右に修正する。物に触れられる明久の召喚獣は、こういう時は本当に役立つ。
そしてもう一発、召喚獣は花火をしっかりと構えた。
「いく大悟! 雄二!」
「「おうっ!」」
「「「フォイヤー!!」」
三人の声と共に、花火を思い切り投げつける明久の召喚獣。そのまま花火は綺麗な放射線を描きながら屋上へと向かっていき、見事放送機材に命中した。これでもうヤツらはなにもできまい!
「雄二、一応目的は果たしたがどうする? まだやるか?」
「そうか、それじゃあ最後に常夏コンビに一発ブチ込んでトンズラするか」
「そうだね。やっぱり悪は徹底的に殲滅しないとね」
その通り、悪は可能性から根絶やしにせにゃあならん! ようみちょれ‥‥‥!
そして再び双眼鏡で確認する。おっと、大分慌てていやがるな。だが時すでに遅しというものよ!
「今度はさっきより左‥‥‥いや、右に照準を合わせろ」
「りょーかい! それじゃあ、とどめの一撃いきまーす! せーのー!」
「貴様らぁっ! 何をやっているかぁっ!」
「うわぁっ!」
「おいバカ! どこに投げてやがーー」
ヒュ~‥‥‥ ドォン!
「あ、明久! 学校にブチ当たったぞ!?」
「ああっ! 校舎がゴミのようだっ!?」
「まるで海外ドラマの建物が爆破するシーンみてぇだな!」
突如後ろから聞こえたドスの利いた怒鳴り声によって、召喚獣は狙いを外し、花火は見事校舎の一角に激突、爆破した。壁や扉が瓦礫の山と化していく。わースゲー。
「き、君達! よりによって教頭室になんてことをしてくれたんだ!」
え? あそこ教頭室だったのか。なら逆にラッキーだ。今回の黒幕は教頭だからな。それにアイツには優子の件でケリをつけなきゃと思っていたところだった。こいつはいい! 今までふんぞり返ってたテメェに俺たちからの正義の鉄槌をくらいやがれ竹原さんよぉ!
「よし、これで任務完了だな! アッハッハ!」
「全くその通りだな! アッハッハ!」
「これでもう心配はないよね、アッハッハ!」
「何がアッハッハだこの馬鹿共がぁっ!!」
お馴染みの低い声。我らが鉄人の登場だ。
「逃げるぞ明久! 大悟!」
「おうともさっ!」
「分かってらぁ!」
「吉井ぃっ! 坂本ぉっ! 岡崎ぃっ! 貴様ら無事に帰ることができると思うなよ!」
さて、悪は滅んだ。後は裏ボスから逃げることだけだ!
「違うんですよ先生! 僕らは学校の存続の為に」
「存続だと!? 馬鹿を言え! たった今お前らが破壊したばかりだろうが!」
「そ、それには深いワケが!」
「恩に着るぞ明久! 鉄人を引き付けてくれるとは!」
「おまえのその勇気には俺たちも脱帽せざるを得ないぜっ!」
俺と雄二は一目散に明久から距離を取る。これで少しは逃げやすくなるはずだ。
「しまった! ズルいぞ雄二! 大悟! 先生、向こうに坂本と岡崎が逃げました!」
「まずは貴様だ吉井ぃぃっ!」
「何でぇぇええ!?」
鉄人はそのまま明久を追いかけ始めた。よし、今のうちにとっととーー
「みぃつけた、ダーリン♪」
「‥‥‥雄二、そこまで」
と、俺と雄二の前に突如として立ち塞がった二つの影。
見るとそれは、禍々しいオーラを纏い、眩しいくらいの笑顔でエスカリボルグを構えた優子と、同じく釘バットを持って静かに佇む霧島だった。
「さぁて、どうしてアタシから逃げたのか、たっぷり聞かせて貰おうかな? カナァ?」
「雄二‥‥‥岡崎と逃避行なんて‥‥‥絶対に許さない」
「ま、待て翔子! 誤解なんだ! 落ち着ぎゃぁぁあああっ!」
「優子! これにはちゃんと理由があるんだ! だから話をあぎゃぁぁあああっ!」
『坂本ぉっ! 岡崎ぃっ! 貴様らも逃がさんぞぉぉおおっ!!!』
「「なんでさぁぁああああああああ!!?」」
こうして、俺たちの命を懸けたリアル鬼ごっこが幕を開けた。
さて、遂にここまで来ることが出来ました。次回が清涼祭編の最終回になります!
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
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入れろ、絶対に
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別に入れなくてもいいよ