強化合宿一日目の日誌を書きなさい。
姫路瑞希の日誌
『電車が停まり駅に降り立つと、不意に眩暈のような感覚が訪れました。風景や香り、空気までもがいつも暮らしている街とは違う場所で、何か素敵なことが起きるような、そんな予感がしました』
教師のコメント
環境が変わることで良い刺激が得られたようですね。姫路さんには高校二年生という今この時にしか作ることのできない思い出が沢山出来ることを願っています。
土屋康太の日誌
『電車が停まり駅に降り立つと、不意に眩暈のような感覚が訪れた。あの感覚は何だったのだろうか』
教師のコメント
乗り物酔いです。
岡崎大悟の日誌
『電車が停まり駅に降り立つと、不意に眩暈のような感覚と、体の奥底から何かが一斉に解き放たれるような気分になった。あれらは一体何だったのだろうか』
教師のコメント
吐いてるだけだと思います。
坂本雄二の日誌
『駅のホームで大きく息を吸い込むと、少し甘いような、仄かに酸っぱいような、不思議な何かの香りがした。これがこの街の持つ匂いなんだな、と感慨深く思った』
教師のコメント
隣で土屋君と岡崎君が吐いていなければもっと違った香りがしたかもしれませんね。
ーー明久視点ーー
桜の花もすっかり身を潜め、少し暑さを感じながらも夏と呼ぶにはまだ早いこの季節。僕らはこの卯月高原に学力強化合宿にやって来た。
数え切れない星と儚げな三日月が夜を彩るこの日にーー
「アキ‥‥‥抱いて‥‥‥くれる‥‥‥?」
「明久君、お願いです。抱いてください‥‥‥」
僕は、少し大胆になったクラスメイトの少女たちから、言い迫られーー
「そんなの、僕には無理だよ‥‥‥」
「やっぱり、どうしてもダメなの‥‥‥?」
「‥‥‥‥‥」
「明久君がダメなら、土屋君に抱いてもらうしか‥‥‥」
「それでもいいの‥‥‥?」
「‥‥‥ああ、僕はそれでも構わない‥‥‥」
「だってー♪ 抱いてくれる、土屋? もう一枚!」
「‥‥‥‥‥っ!? ‥‥‥‥‥ーーッ!!(ドンッ)」
大昔の拷問である、石抱き刑を受けていた。
「‥‥‥浮気は許さない」
「俺たちは覗きなんかしてねぇ‥‥‥!(ミシミシ)」
「そんなことを考えるいけない脳みそはこれかしら?」
「だから誤解だっつってんだろうがぁ‥‥‥!(ギチギチ)」
一体、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
事の発端は、今から少し前に遡るーー
ーーー
「‥‥‥あ、あれ? ここは‥‥‥」
気が付くと、僕は知らない部屋で寝かされていた。確か僕はあの時、姫路さんが作ってくれたお弁当を食べて‥‥‥そこからの記憶が‥‥‥
「明久、起きたか! 良かった‥‥‥。電気ショックが効いたようだな‥‥‥」
「この旅館にAEDがあって助かったぜ‥‥‥」
心底安心した表情でアイロンみたいな道具をしまう雄二と大悟。AEDって‥‥‥冗談だよね? 僕の命がそんな一か八かの状態になっていたなんて。
「ところで、ここは合宿所?」
「ああ、そうだ。まったく贅沢な学校だよな。この旅館、文月学園が買い取って合宿所に作り変えたらしいぞ」
「ったくよぉ。そんな金があるんならもうちっと別なとこで使ってほしいぜ。無料の学食とか校内にアニメショップを作るとかよぉ」
作り変えたってことは、召喚獣を喚び出せるようにしているとみて間違いないだろう。その為の文月学園だし。
「む。明久、無事じゃったか! 良かったのう‥‥‥。 お主がうわ言で前世の罪を懺悔し始めた時には、正直もうダメじゃと‥‥‥」
部屋に入ってきた秀吉が胸を撫で下ろしていた。よく生きてるな僕。
「心配してくれてありがとう。秀吉もこの部屋で一緒なんだよね?」
「うむ。ムッツリーニも含めた五人でこの部屋を使うのじゃ」
「そうなんだ。あれ? ムッツリーニはどこに行ったの? 覗き? 盗撮?」
「友人に対してそんな台詞がサラッと出てくるのはどうかと思うのじゃが‥‥‥」
ガチャッ
「‥‥‥‥‥ただいま」
噂をすればなんとやら。丁度いいタイミングでムッツリーニが部屋に帰ってきた。
「おかえりムッツリーニ」
「‥‥‥‥‥明久。無事で何より」
「あ、心配してくれたんだ。ありがとう」
「‥‥‥‥‥情報も無駄にならずに済んだ」
「情報? 昨日俺たちが頼んだ例のヤツか。随分早いな」
情報と聞いて雄二が反応した。ああ、僕の盗撮(メイド服激写)と雄二と大悟の盗聴(プロポーズ録音)の犯人を捜してほしいっていうやつか。
「流石同志。仕事が速いぜ」
「‥‥‥‥‥手口や使用機器から、明久と雄二、同志の件は同一人物の犯行と断言できる」
「それで、その犯人は誰だったの?」
「‥‥‥‥‥(プルプル)」
尋ねると、ムッツリーニは申し訳なさそうに首を振った。そりゃそうだよね。昨日の今日でそう簡単に犯人なんて見つかるわけがないよね。
「‥‥‥‥‥すまない」
「いや、そんな。協力してくれるだけでもーー」
「‥‥‥‥‥『犯人は女生徒でお尻に火傷の痕がある』ということしかわからなかった」
「君は一体何を調べたんだ」
普通の人は名前や顔を知っている相手でもお尻の火傷の有無なんて知らない。この男の調査方法が気になるところだ。
「‥‥‥‥‥昨日の内に校内に盗聴器を仕掛けておいた」
そう言ってムッツリーニが取り出したのは小型録音機だ。なるほど、これで学校内での怪しい生徒の行動が分かるというわけだな。
ーーピッ
《ど、どうですか岡崎君、土屋君。似合っていますか? 少し肌の露出が多くて恥ずかしいですけど‥‥‥》
《ビューティフォー!! さすがは姫路だ! やはり俺の目に狂いはなかったようだな! これで夏の同人誌即売会の売り上げトップは俺たちが頂いたも同然よぉ!》
《‥‥‥‥‥我が人生に、一片の悔いはなし‥‥‥っ!(ブシャァァアアッ)》
《じゃ、じゃあ、お約束通り‥‥‥》
《任せとけ! 高解像度データで仕上げたナース服バージョンの明久イラストをーー》
ーーピッ
「‥‥‥‥‥間違えた」
「おいおい同志よ。顧客との守秘義務があるんだから気を付けてくれよな~」
「‥‥‥‥‥すまない、同志」
「待って! 僕としてはそっちのほうが凄く気になるんだけど!?」
一体この二人と姫路さんは何の会話をしていたんだろうか。僕の名前が出てきたような気もするし。そもそもなんで関係ないのに録音の必要があるんだろう。
「‥‥‥‥‥こっちだ」
ーーピッ《ーーらっしゃい》
改めてスイッチを押すと、内蔵されている音源からノイズ混じりの声が部屋に響いた。
「あれ? 随分と音が悪いね」
「校内全てを網羅したというのなら仕方ないだろう。音質や精度にこだわる余裕がなかったんだろう」
「じゃあさっきの会話は?」
「‥‥‥‥‥プライベートに踏み込むのはよくない」
「あ、うん。ごめん」
答えになってないような気がする。
《‥‥‥雄二のプロポーズを、もう一つお願い》
《アタシも、大悟のプロポーズを一つ》
対する二つの女子の声。こっちも声で人物は特定できないけど、この台詞から簡単に割り出せる。
「しょ、翔子‥‥‥! アイツ、もう動いていたのか‥‥‥!」
「優子の野郎‥‥‥! 相変わらずこういうときだけ行動的になりやがって‥‥‥!」
霧島さんも木下さんもこんなやつらのどこがいいんだろう?
《毎度。二人共二度目だから安くするよ》
《‥‥‥値段はどうでもいいから、早く》
《あら、気が利いてるのね。じゃあお言葉に甘えようかしら》
《それじゃあ明日ーーと言いたいところだけど、明日からは強化合宿だから引渡しは来週の月曜で》
《あら、残念ね》
《‥‥‥分かった。我慢する》
「あ、危ねぇ‥‥‥。強化合宿があって助かった‥‥‥!」
「なんとか首の皮が繋がったってところか‥‥‥」
「タイムリミットが来週の月曜まで延びたね」
と言っても土日は殆ど行動できないだろうから、実質はあと四日だ。
「‥‥‥‥‥それで、こっちが犯人を特定するヒント」
《ーーでも、相変わらず凄い写真ですね。こんな写真を撮っているのがバレたら酷い目にあうんじゃないですか?》
《ここだけの話、前に一度母親バレてね》
《大丈夫だったんですか?》
《文字通り知りにお灸を据えられたよ。全く、いつの時代の罰なんだか》
《それはまた‥‥‥》
《おかげで未だに火傷の跡が残ってるよ。乙女に対して酷いと思わないかい?》
「‥‥‥‥‥分かったのはこれだけ」
「なるほど。それでお尻に火傷の痕ってことか」
「今の会話を聞いても女子というのは間違いなさそうだな」
「口調は芝居がかかっていたけど女子というのは間違いなさそうだね」
音が悪いから心配だったけど、自分で乙女と言っているからには女子か秀吉のどちらかなのは間違いない。
「だがどうする? 尻に火傷の痕があるっつってもどうやって調べんだ? 流石に女子全員のスカートを捲って回ったとしても見つけられる保証はねぇぞ」
「赤外線カメラでも火傷の痕なんざ映らねぇだろうからなぁ‥‥‥」
隣では雄二も大悟も女子のお尻を見る方法を探していた。
「お主ら、さっきから何の話をしているのじゃ?」
そんな僕らを見て秀吉が首を傾げている。そっか。秀吉は事情を知らないんだっけ。
「秀吉、実はねーー(以下略)」
簡単に僕らの事情を説明する。
「そうじゃったのか。それにしても、尻に火傷とは‥‥‥」
秀吉も一緒に考え始める。すると、突然大悟がああ! と声を上げた。
「いい案が思いついたぜ! 女子が風呂に入ってる時に相棒に見てきてもらうってのはどうよ!?」
「そうか! 確かにそれなら安全で確実に調べることができるね!」
「お主ら。なぜにワシが女子風呂に入ることが前提になっておるのじゃ?」
大悟の割には中々にいい考えだ。これなら大丈夫だろう。
「大悟、明久。それは無理だ」
「雄二? どうして無理なのさ」
「そうだ。何も問題はなかろう?」
「いや、じゃからワシは男じゃと」
「しおりの3ページ目を見てみろ」
雄二に言われた通りに大悟と強化合宿のしおりの3ページ目を見てみる。えっと、
~合宿所での入浴について~
・男子ABCクラス‥‥20:00~21:00 大浴場(男)
・男子DEFクラス‥‥21:00~22:00 大浴場(男)
・女子ABCクラス‥‥20:00~21:00 大浴場(女)
・女子DEFクラス‥‥21:00~22:00 大浴場(女)
・Fクラス木下秀吉‥‥20:00~21:00 個室風呂➃
「「ちくしょぉぉおおおー!!」」
くそっ! これじゃあ秀吉に見てきてもらうことが出来ないじゃないか!
「そういうことだ」
「どうしてワシだけが個室風呂なのじゃ!?」
良い考えだと思ったのに、残念‥‥‥。
「ま、普通に考えりゃあそうだよな‥‥‥」
大悟の言葉に僕、雄二、ムッツリーニの三人がうんうんと唸る。仕方ない、別の方法をーー
ーードバン!
「全員手を頭の後ろに組んで伏せなさい!!」
突然、凄い勢いで部屋の扉が開け放たれ、沢山の女子がぞろぞろと入ってきた。
「な、なにごとじゃ!?」
「木下はこっちへ! そっちのバカ四人は抵抗をやめなさい!」
「なぜお主らは咄嗟の行動で窓に向かえるのじゃ‥‥‥?」
咄嗟に窓から脱出しようとしたら、先頭に立っていた美波に制された。流石美波、できる‥‥‥!
「全く、仰々しくぞろぞろと、一体何の真似だ?」
「こんな夜に奇襲かけてくるたぁ、どういう了見だこの野郎」
窓を閉めながら女子勢に向き合う雄二と大悟。
「よくもまぁ、そんなシラが切れるものね。あなたたちが犯人だってことくらいすぐに分かるというのに」
そう高圧的な口調で言い放ったのはCクラスの小山さんだ。結構感情の起伏が激しく、大悟からはヒステリー女って言われてる。
「犯人? 犯人ってなんのことさ?」
「コレのことよ」
小山さんが僕らの前に何かを突き付けてきた。
「‥‥‥‥‥CCDカメラと小型集音マイク」
「コレが女子風呂の脱衣所に設置されていたの」
「え!? それって盗撮じゃないか! いったい誰がそんなことを」
「とぼけないで。あなたたち以外に誰がこんなことするっていうの?」
完全に僕らを犯人だというような態度で迫る小山さん。すると、秀吉が小山さんの前に出た。
「違う! ワシらはそんなことしておらん! 覗きや盗撮なんて真似はーー」
「そうだよ! 僕らはそんな真似しない!」
「‥‥‥‥‥!(コクコク)」
秀吉の反論に合わせて僕とムッツリーニが前に出る。
「そんな真似は?」
「そんな真似は‥‥‥真似は‥‥‥‥‥‥‥‥‥否定できん‥‥‥っ」!
「えぇっ!? 信頼足りなくない!?」
僕とムッツリーニが同じ扱いだという事実に少しだけ涙が出た。
「‥‥‥おいおい、随分と好き勝手に言ってくれるじゃあねぇか」
すると、今までずっと黙っていた大悟が口を開き、僕たちの前に歩み出た。
「っ‥‥‥なによ岡崎。文句でもあるの?」
「そりゃああるに決まってんだろうが。さっきから聞いてりゃあなんだ? 大した証拠もねぇ癖に犯人だとか決めつけやがって、いい迷惑だってんだよこのヒステリー女が。あんま俺たちを舐めてんじゃねぇぞ」
「な、なんですって‥‥‥!」
大悟と小山さんが互いを睨みそう言い合う。だが大悟の言い分は最もだ。
確かに彼女たちは証拠物品であるカメラと小型マイクを持っていた。でもそれはあくまで『覗かれたという事実の証拠』を示しているだけで、それが僕らが女子風呂を覗こうとしたということには結びつかない。だからおそらく小山さんたちは、普段の僕らの行いや態度から、犯人はコイツ等だという風に決めつけているんだろう。
流石大悟だ。そこをちゃんと指摘できるなんて、いつもは気持ち悪いオタク野郎だけど、やっぱり兄貴と呼ばれるだけのことはあーー
「そもそも! 俺は三次元の女の裸になんぞ興味がない! ましてや貴様らのような中途半端に発達した体など、覗いたところで俺にとっては何の意味も価値もない! そんなお前たちに教えてやろう! この世で最もその姿を拝む価値があるもの‥‥‥それは二次元の女の子の生着替えシーンなんだ! そこには三次元ごときでは決して味わうことの出来ない背徳感と幸福感、そして現実では決して実現が不可能な妖艶なボディから醸し出されるとめどなき溢れるエロスがある! 画面の向こうに広がる光景は、まさに現代の科学や技術を以てしても踏み込むことの出来ない
「大悟、分かったからそれ以上はやめとけ。女どもが冷え切った目をしている」
ヤバいと思ったのか、雄二が止めに入った。ーーうん。やっぱりコイツは頭がおかしい。いくら冤罪を晴らすためとはいえ、女性に対してここまで自分の性癖を自慢げに語れるなんて並大抵のイカれ具合じゃない。しかもに隣ではムッツリーニが鼻血を噴射して倒れているし。
「‥‥‥もうコイツは覗き云々以前に社会から抹消した方がいいんじゃないかしら」
小山さんの言葉に後ろの女子たちも頷く。‥‥‥どうしよう、否定ができない。現に女子小学生が良いって公言するようなヤツだし。
「まさか、本当に明久君たちがこんな事をしていたなんて‥‥‥」
殺気立つ女子と大悟を生ゴミのような目で見る女子の中から一人悲しそうな声をあげたのは姫路さんだった。そうやって言われると信頼を裏切ったみたいで辛い。でも、本当に身に覚えがないんだ!
「嘘なら噓と言ってください。明久君‥‥‥」
「アキ‥‥‥。信じていたのに、どうしてこんなことを‥‥‥」
「姫路さん‥‥‥美波‥‥‥、じゃあ、どうして‥‥‥」
ーー二人は拷問道具を持ってきているんだろうか。信頼のかけらも感じられないんだけれど。
「姫路さん、違うんだ! 本当に僕らはーー」
「もう怒りました! よりによってお夕飯を欲張って食べちゃった時に覗きをしようだなんて‥‥‥! い、いつもはもう少しその、スリムなんですからねっ!?」
「えぇっ!? 怒るところはそこなの!?」
「う、ウチだっていつもはもう少し胸が大きいんだからね!?」
「いや! それはウソ」
「皆、やっておしまい」
素早い動きで女子たちに周りを取り囲まれた。し、しまった! つい咄嗟に本音が!
そのまま抵抗出来ずに石畳の上に座らされる僕とムッツリーニ。これは大ピンチだ。こんな時に頼りになるのはーー
『はっ! 馬鹿め! たかが女子が大勢いたところで烏合の衆よ! この俺を止められると思ったら大間違ぶべらぁっ!?』
『大悟ぉ~? 覗きってどういうことかしら? どうしてアタシ以外の女を見るのかしら?」
『ゆ、優子! 違う! これは罠だ! 誰かが俺を陥れるために仕組んだ罠であがぁぁぁあああああっ!!』
『‥‥‥浮気は許さない』
『翔子待て! 誤解だ! 落ち着ぎゃぁぁあああっ!』
ダメだ! 向こうでは既に刑が執行されている!
「さて。真実を認めるまでたっぷりと可愛がってあげるからね?」
美波のS気質が全開だ。これはご機嫌をとっておかないと命に関わる! ウソは嫌だけど、ここはお世辞でも言ってごまかさないと!
「あのね。僕、今まで美波ほどの巨乳を見たことがぎゃぁぁあああっ!」
「まずは一枚目ね」
「明久君。まさか、美波ちゃんの胸、見たんですか‥‥‥?」
「あははっ。やだなぁ。優しい姫路さんはそんな重そうな物を僕の上に載せたりなんてふぬおぉぉっ!?」
「質問にはきちんと答えてくださいね?」
最近、彼女の笑顔は綺麗なだけじゃなくなってきた気がする。
ーーー
拷問に遭う(雄二と大悟は処刑レベル)こと三十分。僕らは証拠不十分という形で解放された。
「なんか、今日はいつもより更に生命の危機が多いよ‥‥‥」
「なぁ秀吉。俺の顔ダイジョブか? 耳とか鼻とか取れてねぇよな?」
「安心せい、辛うじて無事じゃ。しかし酷い濡れ衣じゃったのう‥‥‥。何故だかワシは被害者扱いじゃったのも解せぬが」
「‥‥‥‥‥見つかるようなヘマはしないのに」」
ムッツリーニ。その返事はギリギリだと思う。あと大悟は木下さんに顔面が見えなくなるくらいまでボコボコに殴られていたようだ。
「‥‥‥上等じゃねぇか」
「え? 雄二。どうしたの?」
ずっと黙っていた雄二が、何かを決意したかのようにその場に立ち上がった。
「どうせここまでされたんだ。本当にやってやろうじゃねぇか」
「本当って‥‥‥まさか雄二」
「ああ。そのまさかだ。あっちがそう来るのなら、本当に覗いてやろうじゃねぇか!」
いきなりとんでもないことを言い出す雄二。すると、隣にいた大悟も同じように立ち上がった。
「雄二も同じことを考えていやがったか! あそこまでボコボコにされたんだ! このまま泣き寝入りなんざ俺ぁしたくねぇ! だったらお望み通りにしてやらぁ!」
「いいぞ大悟! それでこそ兄貴だ!」
雄二と大悟(顔面痣まみれ)が互いに頷く。コイツらは何を言ってるんだろう。こんな警戒されているタイミングで覗きに行くなんて、頭が悪いにも程がある。
「二人共。そんなに霧島さんと木下さんの裸が見たいなら、個人的にお願いすればーー」
「バ、バカを言うな! 翔子の裸になんか興味があるか!」
「俺は二次元の女の子の裸が良いって言ってるだろうが!」
胸を張って言おう。僕は両方とも見たい。
「ふむ。もしや、例の尻に火傷のある犯人探しかの?」
「そうだ。流石に覗きなんて真似はやりすぎだと思って遠慮していたが‥‥‥向こうがあんな態度で来るなら遠慮は不要だ。思う存分覗いて犯人を見つけてやろうじゃないか」
「‥‥‥‥‥さっきのカメラとマイクは、脅迫犯の物と同じだった」
「なんじゃと? それは本当かの、ムッツリーニ」
「‥‥‥‥‥間違いない」
「流石同志だ。あの短期間でそこまで見抜くたぁよ」
四人が腕を組んで頷き合っている。えっとーー
「つまり、どういうこと?」
「いいか? 俺と大悟。そしてお前を脅している犯人は同じで、さっきの覗き犯のカメラとマイクがその犯人と同じ物だった。そして、覗き犯は火傷の痕があるということだからーー」
「ああ、なるほど! その火傷の痕がある人を探したら全部解決するってわけだ!」
これでもう迷う余地はない。覗きなんて褒められたことじゃないけど、これも僕と雄二、そして大悟の幸せな未来の為!
「そうとなれば、すぐにでも向かわねば風呂の時間が終わってしまうぞい」
「‥‥‥‥‥(コクコク)」
「え? 秀吉とムッツリーニも協力してくれるの?」
「うむ。友人と相棒の危機なのじゃ。当然じゃろう」
「‥‥‥‥‥(コクコク)」
なんて良い友達だろう。苦労も汚名も顧みずに動いてくれるなんて。
「それに‥‥‥雄二と大悟の台詞には責任があるしのう‥‥‥」
ああ、あの時の召喚大会のことか。あれは僕と雄二が仕組んだことだから別に気に病む必要はないのに。
「‥‥‥‥‥女子風呂の場所なら確認済み」
「同志、それで現在の状況は?」
「‥‥‥‥‥後半組の入浴時間、残り四十分」
「時間がないな、行くぞお前ら!」
「オッケー!」
「おうよ!」
「了解じゃ!」
「‥‥‥‥‥(コクッ)」
そして、僕たちは部屋を出て、目的地である女子風呂へと向かい始めた。
こうして、僕たちの四日間に渡る戦いの火蓋が切って落とされたのであった。
「‥‥‥‥‥フン、いい気味ね。ま、アイツらがただで終わるとは思えないけど、私としては、アイツに仕返しが出来ればそれでいいわ‥‥‥」
さあ始まりました。男子による女子風呂突撃作戦、第一夜目です! 本当はこのまま一夜目を終わらすつもりでしたが、自分程度の文章力では無理だったので次回に持ち越しです。
それではまた次回。
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
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入れろ、絶対に
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別に入れなくてもいいよ