バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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強化合宿の日誌

【第四問】
強化合宿三日目の日誌を書きなさい。


土屋康太の日誌
『前略。 (※坂本雄二に続く)』

教師のコメント
今度はリレー形式ですか。次から次へとよく思いつくものです。


坂本雄二の答え
『そして翔子が俺の前で浴衣の帯を緩めようとした。俺は慌ててその手を押さえつけ、思いとどまるように説得した。ところが、隣では木下姉が大悟に馬乗りになっていたり島田が明久に迫っていたりと妙な雰囲気に (※岡崎大悟に続く)』

教師のコメント
君たちに一体何があったのですか? 土屋君が略した部分がとても気になります。


岡崎大悟の日誌
『絶体絶命‥‥‥今の状況を一言の単語でで示すのなら、これ以上の言葉はいらないだろう。俺の腹部から腰の下あたりに感じる人肌の暖かさや、お風呂上がりの女性特有のシャンプーのいい匂いとは裏腹に、眼前に映るのは悪寒さえ感じる底なし沼のごとき真っ黒に濁りきった瞳で俺に笑顔を向ける優子。腰には刃渡り数十センチの鉈を提げ、その手は小柄な身体からは想像もつかないほどの腕力を有し、俺の手首を掴んでいる。そして優子は一気にその淡く濡れた桃色の唇を、躊躇いなく俺の口元へと (※吉井明久に続く)』

教師のコメント
一部分の箇所だけおかしい気がします。そして悔しいですが、益々続きが気になってしまいました。


吉井明久の日誌
『後略』

教師のコメント
ここでその引きはないでしょう。




第四十二問 めるたんに嫌われるとか自殺モンに決まってるダルォ!?

 

 ―――side大悟

 

「あれ……ここはどこだ?」

 

 気が付くと、俺は真っ暗闇な場所に一人で立っていた。

 なんだここは? 俺は確か鉄人と優子にボコボコにされてそのまま部屋に戻って寝ていた筈だが……?

 

「まさか、これは夢か? にしては随分と不気味じゃねぇの」

 

 思わず一人で喋ってしまう。

 取り敢えず今俺は夢を見ているんだろうなということはわかった。所謂明晰夢ってヤツだろう。

 

「あーあ、早く目が覚めねぇかな……」

 

『大悟お兄ちゃん』

 

 

「!?」

 

 突然、暗闇の中から俺をお兄ちゃんと呼ぶ声が聞こえた。

 俺は思わず目を見開き、その方向に視線を向ける。すると、

 

 

『会いたかったよ、大悟お兄ちゃん……♪』

「う、嘘だろ……キミは、め、めるたん!?」

 

 そこには、俺の最推しキャラクターである『魔法少女の弟子☆めるたん』の主人公、めるたんが立っていたのだ。

 

「おお、本物……、本物のめるたんなんだね!! 僕こそ会えて嬉しいよ!!」

 

 俺の心は一瞬にして晴れやかなものになった。

 夢とはいえ、手の届かぬ憧れの存在であるめるたんが俺の目の前にいて、なおかつお兄ちゃんと呼んでくれている!! これ以上の幸福などあろうか!! 俺は今! 最高にハイってヤツだぜ!!

 いや~、これは心が躍りますぞ~。さぁて、これからは俺とめるたんによるイチャラブタイムの始ま

 

『……ねぇ大悟お兄ちゃん。一つ聞きたいことがあるんだけど』

「ん? なんだいめるたん? キミの大悟お兄ちゃんがなんでも答えてあげ―――」

 

 

『どうして、女子風呂なんて覗こうとしてるの?』

 

「……………え?」

 

 

 一瞬、思考が停止した。

 

『お兄ちゃん。どうしてそういういけないことするの? 私画面の向こうからずぅっと言ってるよね? エッチなことはしちゃいけないんだよって』

「い、いや待ってくれめるたん! これには海よりも深い事情があるんだ! それに俺は三次元の裸なんぞに興味は―――」

『やめて! 言い訳なんて聞きたくないっ!』

「め、めるたん……」

『……もういい。私は大悟お兄ちゃんの事信じてたのに、お兄ちゃんは私を裏切ったんだね。それどころか謝りもしないなんて……』

「ち、違うんだめるたん!! 俺は……」

 

 

『……………もう、大悟お兄ちゃんなんて―――大っ嫌い!!

 

 

 

 その言葉は、俺の心臓に深く突き刺さった。

 そしてめるたんは、そんな俺を一瞥したかと思うと、再び暗闇の中に消えてしまった。

 

 

「そんな……う、噓だ……、め……めるたぁぁあああああああああああああああああああん!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、待ってくれ……めるたぁぁあああああん……!」

「大悟、大悟。起きるのじゃ。もう起床時間じゃぞ!」

「めるた……んあ?」

 

 声が聞こえたので、俺は目が覚める。

 すると目の前には、俺の大親友であり可愛らしさ満開の男の娘の顔があった。

 

「……秀吉? 何故お前がここにいる? ていうか俺の嫁は?」

「何をおかしなことを言っておるのじゃ。変な夢でも見ておったのか?」

「何……てことは夢から醒めたのか。チクショウ……最悪の悪夢だったぜ」

 

 ホント、めるたんに嫌われるとか自殺問題だかんな。夢で良かった。

 すると、隣で寝ていた同志も起きてきたようだった。そんじゃ、俺も起きるかと思い上体を起こす。

 

「とにかく雄二! 起きろコラァっ!」

「ぐふぁっ!」

 

 いきなり怒声と共に、明久が雄二を布団から蹴り飛ばすのが見えた。おお、いいキックだ。

 てか、なんで雄二が明久の布団で一緒に寝てたんだ? ホモか?

 

「んむ? なんじゃ? 雄二はまた自分の布団から離れた場所で寝ておったのか」

「あ、おはよう三人とも。って秀吉。またってどういうこと?」

「俺も気になるな」

「いや、別に大したことではないのじゃが……雄二は大層寝相が悪くてのう。明け方はワシの布団の中に入ってきておって―――ってお主ら何をしておるのじゃ!?」

 

 秀吉が言い終わる前に、俺達三人は雄二につかみかかっていた。

 

「殴る! コイツの耳からドス黒い血が出るまで殴り続ける!」

「雄二この野郎! 明久だけじゃ飽き足らず俺の相棒にまで手ェ出そうとはな! くたばれカス野郎!!」

「……………その罪、死をもって贖うべし……!」

 

 

 ガチャ

 

 

「おいお前ら! 起床時間だ―――ぞ?」

 

「死ね雄二! 死んで詫びるんだ! もしくは法廷に出頭するんだ!」

「お、ちょうどここにいい感じの花瓶があるな! これで頭をカチ割ってやるよ!」

「……………楽には殺さない(ギリッ)」

「なんだ!? 朝からいきなり三人がキまっているぞ!? 持病か!?」

「ええい落ち着くのじゃお主ら! 西村先生、済まぬがこやつらを抑えるのを手伝っていただきたい!」

 

「……お前らは朝から何をやっているんだ」

 

 鉄人に邪魔をされてしまい、残念ながらこのクソッタレの息の根を止めることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「雄二。そう言えば昨夜妙なことを言われたよ」

「ん? なんだ?」

 

 寝起きのひと悶着も終わり朝食中。突然明久が雄二に話しかけた。

 

「工藤さんに『脱衣所にまだ見つかってないカメラが一台残ってる』って」

「なんだと?」

 

 忙しく動いていた雄二の橋が止まる。俺も思わず食事を一旦止めてしまった。

 

「怪しいよね。そんなことを知っているなんて、やっぱり彼女が犯人じゃないかな?」

「いや、そうとは限らんじゃろ。それならわざわざ怪しまれるようなことを言うとは思えん」

「だが、それは逆にそう思わせることでこっちの動向を錯乱させる作戦の可能性もあるぜ?」

「う~ん。どっちなのかな……」

「……………確認するしかない」

「やっぱりそれしかないか……」

 

 どうあっても方法は覗く以外に残されて無いようだ。

 

「だが、工藤の情報はありがたいぞ。それを工藤しか知らないってことは、そのカメラに女子の着替えが撮影されている可能性が高い。それを手に入れたら入浴していない女子の確認もできるからな」

「そこに工藤が映っていなけりゃ、犯人の線は強くなるな」

「……………隠し場所なら五秒で見つける自信がある」

 

 流石同志だ。俺もしっかり見習わねぇと。

 

「だが雄二。そうなると少しおかしくねぇか? 確か最初にカメラを見つけたのは小山だ。同志なら分かると思うんだが、盗聴や盗撮に長けた人間が素人に簡単に見つかるような場所に仕掛けるワケがない」

「お、いいところに気づいたな。確かに大悟の言う通りだ。そうなると考えられるのは――」

「……………二段構え」

「そうだ。最初に見つかったカメラはカモフラージュだった可能性が高い」

「用意周到じゃな」

「けど、それならお風呂の時間を避けて本命のカメラを取りに行けばいいんだね」

「……………それは無理。時間外だと脱衣所は鍵がかかっている」

「つまり、今まで通りガンガン行こうぜ作戦しか無理なワケだ」

 

 やれやれ、これからも骨が折れる(主に優子の手により)戦いになりそうだ。

 

「そこで昨日の反省だ。明久、昨日の敗因はなんだと思う?」

「敗因? う~ん、帝国華撃○じゃない?」

「なんでだ!! あれは完璧だっただろう!」

「アレは敗因じゃなくただのこのキモオタがやらかしたバカ騒ぎだ。残念ながら違う」

 

 よし、後で雄二には俺の新技、恋のギャラクシー☆ラッシュを食らわせてやることにしよう。

 

「それじゃあ……、向こうが女子の半分を防衛に回してきたことじゃないかな?」

「……………敵側には工藤愛子もいた」

「そうだ。昨日の敗因はAクラスを含め、敵の戦力が大幅に増強されていたことだ」

 

 記憶に残ってる限りでも、昨日までの向こうの戦力はこちらの人数の数倍の人数。更には教師陣が四人もいる。まさに火中の栗を拾うなんてよりも以上の戦力差だったな。

 それに、日を追うごとに優子の折檻もハードになってきている。明日あたり殺されるんじゃないか?

 

「そこで、こちらも更に戦力を増強しようと思う。Fクラスだけでなく他のクラスも味方につけて対抗するんだ。幸いここには、学年の全男子を動かすことのできる力を持つ男が二人もいるからな」

「それは……もしや大悟とムッツリーニのことかの?」

 

 秀吉の問いに雄二がああ、と頷く。

 確かに、俺の"ダイゴブックス"と同志の"ムッツリ商会"は文月の裏経済を牛耳っている二大産業だ。当然二学年の男子にもかなりのファンがついてくれている。その立場を上手く利用すれば、かなりの戦力増加が見込めるだろう。

 

「ぬぅ……正直なところ、立場に物を言わせるやり方は俺の経営理念に反するが……この際そうもいってらんねぇか」

「……………これも汚名返上のため」

 

 仕方ない。次の休み時間にでも話をつけに行ってみるか。

 と思っていると、明久が何やら腑に落ちないような面をしていた。

 

「む? 明久、どうしたのじゃ?」

「う~ん。なんか、この作戦がいつものやり方と違うやり方な気がしてさ……。ほら、いつもなら戦力で不利だったとしても上手く立ち回ったりして目的を達成するのが僕らってとこあるじゃん?」

「ほう……。明久も頭が少しは回るようになってきたな。その通り。このやり方の目的はもう一つある」

「目的? んだそりゃ?」

 

「それは俺たちの"保身"だ」

 

 保身? どういうことだ? どうして戦力増強が俺たちの身を守ることに繋がる?

 頭にはてなマークを浮かべていると、雄二は続けた。

 

「いいか? 今のところは未遂で終わっているから大した問題になっていないが、覗きは立派な犯罪だ。作戦が成功して女子風呂に至ったとしても、例の真犯人が見つからない限り俺たちは処分を受けることになる」

 

 そりゃあそうだ。今のところ俺たちのやってることは向こうからしたらただの覗きのための暴動だ。仮に突破が成功しても盗聴・盗撮の真犯人をとっつかまえて事情を説明しない限り、少年法で守られているにしても俺達はそれ相応の処分を受ける。最悪退学だ。

 

「そこで、覗きの人数を増やせば相手の特定は難しくなる。向こうだって戦いながらその場にいる全員の顔を覚えるのは難しいだろうからな」

「じゃが、ワシらは既に面が割れておるぞ?」

「ああ。だから昨日明久が呼ばれたんだろうな」

「文月学園は世界中から注目を浴びている試験校だからな。そんな不祥事があった場合はひた隠しにするかキッチリと一人残らず処分するかのどちらかしか選べない。そしてもう一つは……お前だ、大悟」

 

「俺?」

 

 いきなり雄二が俺を話題に上げた。

 

「大悟は元々、青少年更正プロジェクトの第一号である"特別監視対象生徒”だ。当然あのババァや文月の経営に携わるスポンサー、お偉いさんもそれは既知のこと。てことは裏を返せば、何が何でもこの文月学園の教育を用いて大悟を完全に更生させなきゃならない。そんな期待を寄せられている中で、覗きなんていう理由で大悟を退学処分にさせたらそのあとどうなると思う?」

「少なくとも、文月学園の信頼はガタ落ちだね」

「……………(コクリ)」

 

「ああ。わざわざあのババァが自らこのプロジェクトに名乗りを上げたと聞いているからな。そう簡単に大悟を手放すような真似は出来ねえだろうよ」

 

 成程、つまり俺のこの"特別監視対象生徒"という不名誉な肩書は、この状況なら逆に大きな後ろ盾になるといいたいんだな。

 確かにあのババァはわざわざ少年院の院長に頭を下げてまで俺を引き抜いた。そしてこの青少年更正プロジェクトを開始した。もしそれが失敗に終われば文月というブランドに大きな傷がつくだけではなく、学園に投資してくれているヤツらからもよく見られなくなり、その後の運営にまで支障が出てくるだろう。そんなのあのババァは絶対に回避しようとするに決まってる。

 

「ま、大悟という条件がなくとも、中途半端に一部の生徒だけを罰するようなことをすれば、ただでさえ叩かれている『クラス間の扱いの差』に更にマイナス要因を増やすことになるけどな」

「えーと……、つまり僕たちみたいに顔の割れているのがFクラスってのを利用するのかい?」

「確かに、ワシらだけが罰を受けようものなら『出来の悪いFクラスだけが処分を受けて他の優秀なクラスが忖度を加えられた』なんて風にみられるじゃろうな。更に言えば大悟もFクラスゆえ、かなりの相乗効果じゃな」

 

 世間の注目度を鑑みるに、そんなことは絶対にしたくないよな。

 

「なるほど。流石は雄二。汚いことを考えさせたら右に出る人はいないね」

「知略に富んでいると言え」

 

 ま、これでもかつて『神童』なんて呼ばれていたヤツだからな。否定は出来ねぇ。

 

「なら、まずは協力者の確保をしなきゃいけないな」

「そうだね。じゃ、まずはどこから行く?」

「当然戦力が一番揃っているAクラスだ。同じ手間ならそっちの方がいい」

「Aクラスならば昨日の合同授業で交流もあるしのう。話もしやすいじゃろうて」

「……………妥当な判断」

 

 今後の方針も決定したので、俺達は再び食事を始めた。ううん……、ちょっと味付けが濃すぎないか? この鮭の塩焼き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、Aクラスに説得に行くわけだが、一番は久保を説得するのが妥当だな」

「賢明な判断だな」

 

 久保は霧島、姫路に続く実力を持つ学年次席。おそらくクラスの男子をまとめているのもアイツだろう。

 

「よし、明久。行って来い」

「え? 僕?」

 

 当然雄二が指名したのは、我らがアキちゃんこと吉井明久だ。

 

「うむ。明久ならば適任じゃの」

「……………頼んだ」

「お前が一番成功確率が高いからな」

「あ、うん。別にいいけど。でも、どうして僕なの?」

 

 

「「「「……………」」」」

 

 

 全員が目を逸らした。真実は時として人を悲しませる。

 

「あ、あのさ。なんだかすごく嫌な感じがするんだけど、本当に大丈夫だよね?」

「……明久。この世から性に対する差別なんてモンがなくなればいいよな」

「い、一応久保はお主に悪意は抱いておらんと断言できる」

「……………彼に悪気はない」

「なんで三人ともそんな奥歯にものが挟まったような言い方をするの?」

 

 ホントのことなんて言えるわけがなかろう。

 

「明久、大丈夫だ。この中ではお前が一番久保に好かれている。自信を持て」

「あ、うん」

「……ただし、いざというときはこれを使え」

「俺からも渡しておく」

 

 俺はポケットからそれを取り出して明久に渡した。同志も何かを明久に渡す。

 

 

 スタンガン(二十万ボルト)

 スタングレネード(本場もの)

 

 

「ねぇ、どうしてお願い事をしに行くだけなのにこんな物騒なものを持たされるの?」

「「万が一だ」」

「そ、そう……それじゃあ行ってくるね」

 

そして、明久は久保のいるテーブルへと向かっていった。

 明久……最悪貞操だけは守り切るんだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――side明久

 

 

「ごめん皆、失敗だったよ」

 

 

 肩を落として、僕は皆のいるテーブルへと戻ってきた。

 結局、久保君は僕のお願いを聞いてはくれなかった。それどころか『女生徒の身体を見ようとする考えそのものが不潔』なんていう軽いお説教まで受けるという始末に終わってしまったのだ。

 でも、去り際に『……人として間違ったこと、か……』っていう呟きが聞こえたけど、なんだったんだろう?

 

「そうか。まぁ、無事で何よりだ」

「いや、そんな危ないことはしてないんだけど」

 

 そうやって心配するんならもっと別の時にしてほしいもんだ。

 

「しかし、こうなると他のクラスとの交渉を迅速に進める必要があるな」

「それはそうだけど、今は一応授業中だよ? 先生の見回りだってあるし」

「それはわかっている。だが、全クラスに声をかけるとなるといくら大悟やムッツリーニを以てしても、休み時間程度じゃ全然足りないからな。何としても抜け出すしかない」

「しかも俺達の担当は鉄人だからな。そう簡単にはいかねぇだろう」

「ああ、だがそれでもどうにかする」

 

 雄二が鋭い目つきで鉄人の隙を狙っている。すると、

 

 

「こらっ。アンタたち、また何か悪巧みしてるでしょ」

 

 

 僕らに近づいてきた人影がいた。少し離れた席で自習をしていた美波だった。

 

「美波、別に僕たちは悪いことなんて考えていないよ?」

「そうだぜ。もう散々痛めつけられたからな。流石に懲りてる」

「はぁ……。今更アンタたちに問題を起こすな、なんて無理を言う気はないけど、よりによって覗きなんて……。少しは覗かれる方の気持ちを考えてみたら?」

 

 美波の言っていることは正しい。僕も脅迫を受けていなくて無実なのに拷問を受けていなくて姫路さんの胸がもう少し小さかったら考えを改めていただろう。

 

「よりによってお風呂の覗きなんて……。周りと比較されるし、隠すものはないし、パッドを入れることもできないし、寄せてあげることも……」

「それって特定の個所を見られるのが嫌なだけだよね?」

「島田。二次元じゃお前のその身体つきはかなり喜ばれるんだぞ? だからそう卑屈になるな」

「そんな台詞で励まされても嬉しくないわよ」

 

 僕も今更取り繕う必要もないよ、と言おうとしたところ、雄二が目線を送ってきた。

 

『鉄人にマークされている。島田を遠ざけろ』

 

 確かに、鉄人がずっとこちらを見ている。美波との会話で鉄人の警戒心を煽ってしまったみたいだ。ここで目立ってしまうのは非常にマズい。ここは雄二の言う通り美波を遠ざけることにしよう。

 さてさて……お、ちょうどいいところに木下さんがいた。申し訳ないけど彼女を利用させてもらうことにしよう。幸い大悟は秀吉と喋ってる。今の内だ。

 

「ねぇ美波、ちょっと頼みがあるんだけど」

「ん? なによ」

「コレをあそこにいる木下さんに渡して欲しいんだ」

 

 と言って、僕は前にムッツリーニから貰っていた一枚の写真を取り出して美波に渡す。

 

「ふぅん……。でもなんでウチなの? アキか岡崎本人が行けばいいじゃない」

「いやぁ、そうしたいのはやまやまなんだけど、生憎僕らは覗きをしようとしたでしょ? 木下さんも警戒してるだろうし、同じ女子の美波が行った方がいいと思うんだ」

「あ、そういうことなの。ならしょうがないわね。行ってくるわ」

 

 そう言い残して、美波は木下さんのところに向かっていった。

 

『島田。どこに行くつもりだ?』

『いや、なんでもこの写真を木下さんに渡してほしいって言われて』

『そうか。ならこれは俺が渡しておこう。島田は自習に戻れ』

 

 お、運よく鉄人が向かってくれている。またとないチャンスだ!

 

「明久、秀吉、大悟、ムッツリーニ。今だ。見つからないように脱出するぞ」

 

 雄二が何かを話し合っている大悟&秀吉と自習のフリをしているムッツリーニに声を掛けた。互いの目を見て小さく頷く僕ら。

 そのまま音もなく出入り口に向かい、廊下に出ていった。

 

 

 

『西村先生。ちょっと大悟のところに行ってきてもいいでしょうか』

『別に構わないが、俺はお前が岡崎を完膚なきまでに嬲り殺さないか心配なんだが』

 

 

 

 扉を閉める寸前、とてつもない寒気とそんな会話が聞こえてきた。どうやら例の写真――大悟がコスプレイヤーの女性とツーショットで写っているのが効いたようだ。

 大悟ごめんよ。君の犠牲は無駄にはしないから。

 

 

 

 

 

 




次回は突撃作戦三日目です。そしてアンケート調査を行いますので良ければ投票よろしくお願いします。それ以外特に言うことは無いッッ!!!


感想、意見等ありましたらよろしくお願いします。

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ
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