バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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バカテスト

問 以下の問いに答えなさい
学校に持ってきてはいけないものをあげなさい。


姫路瑞希の答え
『漫画やゲーム機などの遊び道具』

教師のコメント
正解です。さすがですね、姫路さん。
基本的に学校は勉強をするところですが、同時に社会に出る前に生活態度を学ぶところでもあります。
勉強さえできれば良いわけではなく、罰則を守って生活していくことも大切です。


岡崎大悟&土屋康太の答え
『黙秘します』

教師のコメント
後で西村先生が持ち物検査をするとのことです。


吉井明久の答え
『おやつはバナナに入りますか?』

教師のコメント
そんなバナナ‥‥‥とか言えばいいですか?






第四十四問 試してみな

 

 ―――side大悟

 

『『『……………!?』』』

 

 俺の突然の行動に、高橋女史だけでなく、霧島や優子など他の女子達や味方側の男子までもが唖然としている。

 当然だろう。普通に考えて召喚獣に対し生身で攻撃を仕掛けられるとは到底考えないのだから。

 

「………! お、岡崎君!? 一体何を……!」

 

 流石は高橋女史。他の奴らよりもいち早く意識が戻ったようで、目を見開きながら驚愕の言葉を放つ。彼女の召喚獣も吹っ飛ばされたものの、すぐに体勢をやはり生身の拳じゃ大したダメージは

 それに対して俺は、ニヤリと小さく笑みを浮かべて返した。

 

「おいおい高橋女史、ぼさっとしちゃアカンですよ。もう闘いは始まってるんすから」

「た、闘いって、どういう―――」

 

「どういう? そんなの―――こういうことだってんだよ!!!

 

 俺は再び強く脚を踏み込み、素早く高橋女史の召喚獣に肉薄する。

 そのままの勢いを利用しての下段回し蹴り。相手の召喚獣に回避する隙を与えず、そのまま廊下の壁に向かって吹っ飛ばした。

 

「っ! こ、この……!」

「甘いッ!!」

 

 召喚獣は反撃とばりに、自らの得物である鞭を繰り出してくる。が、すかさず俺は膝を曲げ、下半身に力を込めて上体を重くしつつ右肘でそれを受けた。

 が、人間の遥か何倍もの力を持つ召喚獣の攻撃だ。鍛えてるとはいえまるで鋭い刃物で斬りつけられたような痛みが腕から全身に伝わってくる。

 

「ぐっ! 痛ぇ!! ……はは、流石は教師の召喚獣。伊達じゃねぇな……!」

「だ、大悟!? 一体何してるんだよ!? 生身で召喚獣を殴るなんて!」

「ち、血迷ったのかお主!?」

「……………自殺行為!(コクコク)」

「まてお前ら。これはバカのアイツなりに考えた策なんだ」

「なんじゃと!?」

「え? ちょ、ちょっと、どういうこと雄二?」

 

 後ろの雄二のあまりにも落ち着いた姿勢に、明久達が見なくとも分かるくらいに動揺している。そう、雄二の言う通り、俺の今のこの行動は突発的なものではなく、ちゃんとした"策"に基づいているのだ。

 と言っても、頭の無い俺が考えたものだから作戦とも呼べない代物だがな。

 

「なぁ明久。俺は昨日お前に召喚獣のことについて訊いただろう?」

「あ、うん。確か僕の召喚獣と教師の召喚獣は仕様が同じなのかって言ってたね」

 

 明久の言葉にそうだろう、と返す。

 コイツは他のヤツらとは違い"観察処分者"という肩書きを持つ生徒だ。それは自身だけではなく召喚獣にも影響を及ぼし、特に一番の特徴は教師の雑用をやらされるという名目のもと物理的干渉が可能になり、物体に触れることが出来るのだ。現にこれまでこの能力によって窮地を脱した経験が何度もある。

 だが、俺は見ていくうちに気づいた。物体に触れられるというなら―――明久の召喚獣は人間にも触れられる(・・・・・・・・・)ということに。

 でもこの試召戦争では基本的に召喚獣同士で行うものであり、そもそも人間と召喚獣じゃ力の差がありすぎて勝負にもならないから、さして重要なことではないだろうと思っていた。

 

「でも、僕と先生達の召喚獣の仕様が同じなのと今の状況がどう関係あるのさ?」

「何言ってやがる明久。むしろ関係大有りだ」

「へ?」

「よく思い出せ。お前はそれが原因で一度痛い目を見ている筈だろう?」

「痛い目って……うーん、特に何も無かったと思―――あっ!!」

 

 でも違った。

 確かに召喚獣は普通の人間じゃとても勝てるような代物じゃないことには変わらない。しかし、物事にはイレギュラーというものが付き物であるように、この絶対的概念を覆す存在がいたことをこの強化合宿の中で思い知らされた。

 

 

「―――鉄人!!」

「その通りだぜ、明久」

 

 

 そう、それは何をかくそう鉄人こと西村教諭だ。

 ヤツは一日目の女子風呂突撃作戦において、最終防衛ラインとして立ち塞がり、明久と対決したのだが、なんとヤツは生身で対峙したばかりか、意図も容易く明久の召喚獣を打ち倒してしまったという。信じられない話だ。

 いくら鉄人がバケモノじみた戦闘力を持っていて、明久の点数が低かったとしても戦闘力の差は召喚獣にある。更に明久は"観察処分者"であるために、他よりも召喚獣の扱いに慣れているハズなのだ。それでも鉄人はそれを叩き潰し勝利した。決して有利な戦況では無いにも関わらずだ。

 これは単にヤツが強すぎるからという単純な理由だけで済むものなのだろうか? 俺は事の顛末を明久からそのことを聞いた時からずっと疑問に思っていた。

 

「確かにあの時、僕は完膚なきまでに叩きのめされたよ。痛かったなぁ…」

 

「そうだ。いくらお前がどうしようもないくらいの馬鹿とはいえ、この学年で一番召喚獣の扱いを心得ている。それでもなお鉄人には敵わなかった。だがそれは単に鉄人が怪物並の戦闘力を持っているだけだからじゃないと俺は思ってんだ」

 

「馬鹿は余計だよっ! でもそれだけじゃないって…じゃあ、他に一体何があるっていうんだよ、大悟?」

「同感じゃ。ワシらではそれ以外に考えがつかぬぞ」

「……………(コクコク)」

 

 三人が後ろから尋ねてくる。仕方ない、教えてやるとするか。

 俺は小さく笑みを浮かべてみせる。そう、鉄人が召喚獣に黒星を挙げさせた最大の理由は明久が弱いからでも怪物じみた強さからでもない。俺が導きだした答えは―――

 

 

 

「"戦い"という"場数"の違いだよ」

 

 

 

 学年主任  高橋洋子   7760点

 

 総合科目  VS

 

 Fクラス  岡崎大悟   NONE

 

 

 

「さ、てことで早速始めましょうや。高橋先生」

 

 召喚獣を前に、俺は足を肩幅くらいまで開き両拳を頭上で強く握り締め、久しぶりに構えた(・・・・・・・・)

 

『な、なんだあの兄貴の姿勢は!?』

『見たことないぞ!?』

「あの構え……あれは大悟が喧嘩をする時に必ず用いておったものじゃ」

「…………気迫と威圧感が凄い…!」

 

 後ろが騒がしいが特に気にもとめず、俺は視線を高橋女史とその召喚獣のみに集中する。

 無論こちらの勝ち目は未だに少ない。だが俺はこのまま大人しく敗北を受け入れるつもりは毛頭ない。負け戦なら負け戦なりの足掻きってのを見せてやるぜ!

 

「……仕方ありませんね。本来なら教師が生徒に危害を加えることなど絶対にあってはなりませんが…今回ばかりは例外としましょう。それに、西村先生からも『多少の教育的指導』をしてもよいと言われていますから」

 

「っ! 先生、でも大悟の()()は―――」

「心配には及びませんよ。木下さん」

 

 優子を手で制し、高橋女史は再び冷たい視線を俺に向ける。

 それに呼応するように彼女の召喚獣も得物を構えた。

 

「フン、その上からな態度……アンタ、自分が敗けるかもなんて想像すら一片もしてねぇだろ?」

「当然です。自慢するわけではありませんが、今のこの状況…私と岡崎君の間には絶対的な差があります。むしろ負けることの方が遥かに難関だと思いますが?」

「いいねぇ……そういう自信に満ち溢れたヤツは嫌いじゃない」

 

 驚いた。大抵の人間は俺を知らなくとも構えただけでビビったり竦み上がったりするのが殆どだったが、彼女は全くと言っていいほど動じてない。

 ていうかそもそも勝負にすらならないだろうなと、高橋女史は考えているかも知れねぇな。まあ無理もないが。

 

 

「来なよ。アンタのその召喚獣の腕前で……どこまで俺を追い詰められるのか…試してみなぁ!!!

 

「!! 虚仮威しを!」

 

 

 俺の挑発とも取れる発言に、高橋先生の目元が鋭くなった。それと同時に召喚獣も動く。

 そしてそのまま突撃してくるのかと思い警戒していると、予想通り直線上から鞭をしならせ勢いをつけたかと思いきや、その鞭が視界から消えた。先程の明久戦同様、あまりの速さ故に視認すら出来ないのだろう。

 そして鞭は、空を切る音と共に、俺の頭部めがけて叩きつけられ―――

 

「大悟! 危ない!」

「遅いです! いきなさい!」

 

「恋のラブリー☆顔面砕き!!」

 

 

 ―――る直前に、俺の拳が先に召喚獣を捉えた。

 

「何!?」

 

 軌道がずれたのか鞭はあらぬ方向に行き、召喚獣も無防備に空を舞った。

 

「もういっちょ!! 恋のラブリー☆肋骨粉砕パンチ!!」

 

 瞬間、俺は素早く五段突きを叩き込む。

 まともに食らった相手の召喚獣は、体をくねらせそのまま大きく壁に激突した。

 

『嘘でしょ!? 高橋先生の召喚獣が吹っ飛ばされてる!?』

『そんな、あり得ない…!』

「どうした高橋先生? 明久の時より随分手こずってるようだぜ?」

「くっ! この……まだです!」

 

 しかしダメージなど無いようなもの。すぐに召喚獣は立ち上がり、再び俺に攻撃を仕掛けてきた。

 今度も鞭は視認できないほど速い―――が、速いだけだ。それが対応出来ないワケじゃない。俺は重心を下げて姿勢を保ち、両腕をクロスさせて防御の構えを取った。   

 

 バシン! ビシン!

 

「うぐっ!? く、くぅぅうっ……!!」

 

 全身に降りかかる想像を絶する程の痛みに、歯を食い縛って耐える。明久と違ってフィードバック機能によるある程度のダメージ軽減が無く、受けた攻撃がそっくりそのまま俺に来るため、衝撃も負担もヤバい。

 そもそも鞭というのは、本来殺傷を目的として作られてはおらず、主に拷問などの身体的苦痛を与える為のアイテムとして開発された代物。それ故に武器としてはあまり効率がよいとはいえない筈だ。

 だがそれを人間の何倍もの召喚獣が使えば話は別。威力も苦痛レベルも段違いだ。気を抜いたら倒れちまいそうだ。

 

「……流石に体鍛えてても、召喚獣の攻撃はかなり効くなぁ……!」

「僕の召喚獣のフィードバック作用のダメージ軽減があっても悶える程だったあの攻撃を、腕だけで受けてるなんて……!?」」

「……………凄まじい防御力」

「見ているこっちまで腕が痛くなってくるの……じゃが」

「ああ…大悟の野郎―――全然余裕な顔してやがる」

 

 鞭打部位の皮膚は剥がれ、肉が裂け、血が滲む。だが、まだそれだけだ。折れたりしていなけりゃ充分。逃げるつもりなど毛頭ない。何故なら既に…俺の喧嘩は"後退"というネジをとっくの昔に外してあんのさ! 

 それに、この程度の鞭打なんかより―――いつもくらってる優子の折檻の方が全然痛ぇ!

 

「効くなぁ……流石は学年主任!! 骨があるじゃねぇか…!」

「流石の岡崎君でもここまでに太刀打ちは出来ない筈…そろそろ降参した方が身の為ですよ? 生徒を傷つけるような行為は私とて、出来ればしたくはありませんからね」

「…その言葉、そっくりそのまま鉄人に訊かしてやりてぇな……そうだよな。高橋先生の言う通り―――」

「なら、このまま大人しく―――」

 

 

 ガシッ!

 

 

「傷つけられる前に―――勝負(ケリ)をつけなくっちゃあな…!」

 

「!?」

「油断したな先生……!」

 

 俺は高橋先生が見せた一瞬の隙をついて、鞭を両手で掴んだ。

 そのまま力を込めて勢いよく自分の方へと鞭を引っぱる。それに伴って高橋先生の召喚獣も鞭の柄を掴んだ状態で引き寄せることに成功した。

 

「くっ、小癪な真似をしますか………!」

「戦いに小癪もクソも無いんですよ―――オラァ!!」

 

 そのままカウンターとばかりの強烈な右ストレートを顔面に叩き込む。

 召喚獣はその衝撃で再び敵陣へとブッ飛び、得物である鞭を放り投げた。

 

 

 

 学年主任  高橋洋子   7660点

 

 総合科目  VS

 

 Fクラス  岡崎大悟   NONE

 

 

 

 やっぱり、ここまでやっても蚊ほどのダメージしかないか……。

 

『ウォォオ! すげぇ! 兄貴が学年主任の召喚獣相手に押してるぞ!』

『流石は俺達の希望の星だ!』

『いいぞー! 兄貴ィィイイ!!!』

「す、凄いよ雄二!! 大悟の動きが高橋先生の召喚獣を上回ってる!」

「ああ、しかもあのストレート……攻撃が小さい的の召喚獣に確実にクリーンヒットさせてやがる! コントロールも流石だな大悟!」

「こんな馬鹿なことが……」

 

 何かの間違いだ、と言わんばかりの表情をする。そりゃそうだ。普通の人間の動体視力じゃ召喚獣のスピードもパワーも越えられるワケがないのだから。

 …が、それはあくまで性能故の憶測に過ぎない。それは何故か? 本来召喚獣というシステムは対人時のことなど全く考えておらず、あくまでも召喚獣同士を戦わせるという前提条件で立てられているからだ。

 

「高橋先生。確かに人間と召喚獣じゃその力は雲泥の差だ。それは認めざるを得ない」

「!」

「だが戦いってのは、"力"と"性能"だけで押しきれるほど甘っちょろいモンじゃない。さっきの召喚獣の操作とアンタの様子を見て気づいたが―――高橋先生。アンタ…"喧嘩"も一つすらしたことないだろ?」

「! それは……」

 

 高橋女史の表情が揺らぐ。どうやら図星の様だ。

 先程から高橋先生の召喚獣は、ただひたすら俺に向かって攻撃してくるように動いていた。一度俺からの攻撃を受け、その行為は既に見透かされているにも関わらず真っ正面から突っ込み、得物を振るうだけ。これがもし不良やチンピラとの喧嘩であって、相手が高橋先生の召喚獣のような動きをしてたなら、意図も容易く捩じ伏せれる。何故なら喧嘩を含む全ての"戦い"において、敵の初見の動きやスタイルは二度とは通用しないのがセオリー。 

 一度やったゲームは二週目以降になると簡単にクリア出来るよう(例外もある)なものだ。そしてそれをする人間というのは、その概念が分かっていない者、もしくは知らずにいる者―――つまり、戦いという行為自体に慣れていない(・・・・・・・・・・・・・・・・)ことに他ならない。

 

 更に付け加えるなら、そもそも召喚獣というシステムに頼っている事が大きい。

 あれはあくまでも自分の知力を召喚獣というものに置き換えて使用するモジュール化したもの。つまり召喚獣を用いるということは、戦っているのは自分であって自分では無いという矛盾じみた事実になる。例えるなら、ゲームで自分そっくりのアバターを作ってバトルするようなものだ。あれだって"本人"ではなく、"本人自らの手で造り上げた本人像"に過ぎない。自分はただそれに命令して思うがままに動かしているだけ。召喚獣も同じだ。

 いくら殴られ、蹴られ、傷つけられようと決して自分にはダメージがない。しかもそれを操作するのは戦争どころか"殴り合い"すらも大して経験したことのないド素人共だ。何が"戦争"?俺から言わせればこんなのは"戦争ごっこ"だ。

 つまり召喚獣を操れれば、自分の技量は関係が無い。つまり―――喧嘩の素人でも同じように戦えてしまう(・・・・・・・・・・・)ことになる。

 

 しかし、ただの一般人が鋭利で扱いやすいナイフを携えたところで、ジャックザリッパーを殺せるのか? 答えはノーだ。

 

 だから鉄人は明久に勝てたのだ。ヤツは確か学生時代レスリングだかなんだかをやっており、かなりの成績を挙げたと聞く。そして今も現役でトライアスロンをやってる。

 いや、たかがレスリングだろ? と思われるかも知れないが、俺はあれほど実戦に基づかれた格闘競技はないと思ってる。押し技、投げ技、掴み技、絞め技などあらゆる総合的格闘技術を用いて戦うのだ。実際、他の格闘技経験者がレスリングをやっていることも珍しくないからな。

 

 さっきの例えを借りるなら、鉄人はジャックザリッパー。明久は高性能なナイフを持った一般人となる。

 

 つまりヤツは、戦いというものが何なのかを知っていて、反対に明久はそれ(・・)を知らなかった。これが先程言った"場数の違い"であり、二人の勝敗を分けた大きな原因だと考えている。

 

「今のアンタは俺を優に超える力はあっても、それを最大限に活かせるだけの知識と技量―――所謂"経験値"が足りなさすぎるんだよ。例えるなら、格ゲー初心者がいきなり高難易度キャラを使うようなもんだ。」

「なんですって……?」

「性能は凄まじく、さほど知識が無くてもそこそこ戦える。だが―――決してプロゲーマーには勝てない(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 そして俺は再び先程と同じ構えを取り、臨戦態勢に入った。

 

 

「覚悟しな…俺が二次元と同様真剣に打ち込み、毎日欠かさず練り上げ、多くの腕自慢(バカ共)を叩き潰してきた格闘技術の粋!! たっぷりと味わってみるがいい!! 高橋女史!!」

 

 

 もうここまで来たのなら引き返すという選択肢はない。

 それに……あそこまで明久達に啖呵を切ったんだ。こんなところで性根を上げてたら、めるたんをはじめとする全ての嫁達に愛想を尽かされてしまうではないか! そんなのは男として断じて許されない!! 

 見ていてくれ皆! この戦いを、俺の勇姿を、そして完全なる勝利を―――画面の向こう側で応援してくれている君達に捧げようっ!!

 

 ―――計算もクソもないっ! 全てをこの肉体に委ねるっ!!

 

 

「いくぞ―――歯ぁ食い縛れぇぇええ!!!

 

 

 

 

 

 

 ―――side明久

 

 

 信じられない。

 今の状況を言葉にするのなら、僕の語彙力ではこれが限界だ。

 

「うぉぉぉおおおおおおおお-っ!!!!!」

 

 野性味溢れる猛獣の様な叫び。鬼のような眼光。

 鉄人に劣らないその限界まで鍛え込まれたであろう鋼の肉体から繰り出される殴打の雨。反撃のタイミングも何もない。その先には―――この場で最も強い筈の高橋先生の召喚獣が防戦一方になっている二度と見れないであろう光景があった。

 

「驚いたかの、明久?」

「秀吉……」

 

 茫然自失としているところに、秀吉が僕の肩に手を置いて言った。

 

「ワシも、大悟のあんな姿を見るのは久しぶりじゃ」

「同じくだ。あの野郎、全く衰えちゃいねぇな……」

 

 慈しむような視線を向ける雄二と秀吉。けど心なしか表情は嬉しそうだ。

 その横には僕同様言葉が出なくなっているムッツリーニがいる。

 

「凄いね……いや、もう凄いとかっていうレベルを超越しているよ」

「……………普通じゃない」

「その初々しい反応、懐かしいのう。ワシも初めて大悟の喧嘩を見たときはそんな反応をしたものじゃ」

「まさしく"閻魔大王"の本領発揮ってところだな。もう昔のことなのに身体が震えやがる…」

 

 雄二の口から告げられた閻魔大王というワード。これは確か同じ地区の不良達によって大悟に付けられた異名だった筈だ。

 

「あやつは喧嘩だけじゃなく、昔から空手。ボクシング。柔道。合気道。中国拳法などといった格闘技や武術にもかなり精通しているからの。実力は折り紙つきじゃ」

「ああ。ここら一帯の不良や喧嘩自慢共は一人残らず大悟にブッ潰された。未だに病院から出てこれねぇヤツもいるらしい。射殺すような眼力と無類の喧嘩の強さ。そして一度自分に向かってきた野郎は、例え許しを乞おうが泣きわめこうが倒れ骸と化すまで一切情け容赦のないやり方から"閻魔大王"と呼ばれるようになったんだよな」

 

 とても女子小学生に平気で土下座するような二次元オタクとは思えない話だ。

 

「やけに詳しいね、雄二」

「俺も一度大悟に完膚なきまでやられてるからな。嫌でも知っちまうんだよ」

「うむ、あの時か…その時は姉上と共に現場にいたからよく知っておるわ」

「……………最早伝説(コクコク)」

 

 そういえば、雄二も大悟ほどではないが、昔は喧嘩の腕で広く名を馳せてたんだっけか。

 あまりそういったことに疎い僕でも、雄二と大悟の喧嘩は当時耳にしていた。それどころかここら一帯の中学に通う人で知らない者はいないくらい有名な出来事として残っている。

 

「それに、お前もアイツの強さを身をもって知っただろう?」

「あはは。そんな事もあったね。懐かしいなぁ」

 

 雄二の言う通り僕は一年生の頃、とある事が原因で大悟と本気の殴り合いに発展するまでの大喧嘩をしたことがある。勿論僕程度が敵うわけもなく、気を失う直前までボコボコにされた。

 最終的にはその原因は大悟を恨む当時の三年生の仕業であったことが判明し、僕らは和解という結果に終わった。けどもしあのまま続いていれば僕は間違いなく自然治癒不可能なほどの大怪我を負い、病院送りにされていたことだろう。

 

「っ! どうしてこれほどの強さを……!?」

 

 高橋先生が苦虫を噛み潰したようにそう呟くのが聞こえる。

 その言葉通り、召喚獣はどうにかして逃げようとするもののそれより速く大悟の攻撃が放たれている為、回避が不可能になっていたのだ。

 

「簡単なことです……何かを決意した人間ってのは特別な力を発揮する。俺はあの日の決意から今日までの15年間、度重なる努力や苦労を重ねて己を磨き続けてきたんですよ! それこそ血の滲むようなね………!!」

「あの日の決意………!?」

「そうです。俺はあの時…"彼女等"と出会ったことで、自分の中の世界が変わったんです。そして心に誓ったんだ―――」

 

 

「―――二次元の女の子達は俺が守るんだってなぁぁあ!!!」

 

 

「………は?」

 

 一瞬ポカンとなる高橋先生。

 だが大悟は構わず続ける。

 

「めるたんをはじめとする全ての二次元の可愛い女の子達を守れる存在…つまり! 美少女&ロリッ娘達とあんなことやこんなことやキャッキャウフフな展開が繰り広げられるハーレム系主人公として相応しい男になる為だ!!! そして俺はこの強靭な身体と卓越した技術を手にいれたのさ!! そう、今の俺を突き動かしているのは覗きを達成するという目的だけじゃねぇ―――俺を変えてくれた二次元に対する絶対的な"愛"なのさ!!!!

 

 なんだろう、力をつけた理由が予想以上にしょうもなさすぎて逆に凄いと思う。そもそも二次元の女の子にはどう頑張っても会えないからね?

 

「長年の鍛練によって培われた打撃の境地!! 決して揺らぐことのない信念!! 彼女達への真なるラブ!!! たかが召喚獣の性能と素人の反射神経で追いつけると思うなぁっ!!」

「な、なんてふざけた考えなの……!?」

 

 ごもっとも、とは敢えて言うまい。 

 だが大悟にとってはそれが原動力だから仕方ないかな。

 

「愛は男を強くする!! これが岡崎大悟の力だぁぁあああ!!!」

 

 大悟のラッシュが更に加速する。

 

「くっ……これでは埒があきませんね。誰か西村先生を呼んできてください!」

「わ、分かりました!!」

 

 高橋先生が後ろで見ていた女子生徒にそう指示を出す。

 ま、まずい! 鉄人はおそらくまた女子風呂の前で防衛を張っている。もしここにヤツが合流してしまえばいくら大悟とはいえ勝ち目は一気に無くなってしまう!

 

「そうはさせるか! 野郎共、大人数で女子の行く道を阻め! 何があっても鉄人の下まで行かせるな!!」

『『『おうっ!!』』』

 

 すぐさま雄二が全員にそう通達し、仲間達が一斉に走りだし次々と女子生徒に勝負を挑んでいった。

 科目は勿論高橋先生の召喚フィールドにより強制的に総合科目となっている。

 

「くっ! 工藤、高橋先生に加勢するぞ!」

「分かりました! って、そこをどいて、ムッツリーニ君!」

「…………悪いが断る。同志の邪魔はさせない…試獣召喚(サモン)!」

『俺も手伝うぞ! ムッツリーニ! 試獣召喚(サモン)!』

『兄貴は俺達の最後の希望なんだ! 何があっても守り抜く! 試獣召喚(サモン)!』

 

 近くでは既にムッツリーニ達が工藤さん達を足止めしていた。

 こうなったら、僕もやれるだけのことをやらなくちゃね!

 

「俺たちも行くぞ、明久! 秀吉!」

「うん!」

「了解じゃ!」

 

 雄二の号令に従い、僕達も戦地へと赴く。

 目的は皆と同じ、鉄人の下へ向かおうとする女子の足止めだ。そして僕らが相手をすることになったのは、

 

「……雄二、そこをどいて」

「私達の邪魔をしないでください、明久君!」

「大人しく道を空けなさい、アキ!」

「秀吉…なんのつもりかしら?」

 

 最早見慣れた顔ぶれの四人だ。

 

「そうはいかねぇ。大悟があそこまで身体張ってんだからな! なら俺達もそれに全力で応えるのが筋ってんだ!」

「雄二の言う通りだよ。だから姫路さん、美波、霧島さん、木下さん。ここからは何があろうと通さない!!」

「どうしても通りたくば、ワシらを倒していくのじゃ!! 馬鹿の意地というものを見せてやるぞい!」

 

「「「全ては女子風呂の覗きの為に!! 試獣召喚(サモン)!!」」」

 

 僕らは召喚獣を喚び出す。

 それを見て完全に僕らが退くつもりがないと理解したのか、霧島さん達も観念して召喚獣を出現させた。

 

 

 Fクラス  坂本雄二   1720点

        &

       吉井明久    902点

        &

       木下秀吉    961点

 

 総合科目   VS

 

 Aクラス  霧島翔子   4741点

        &

       木下優子   4279点

        &

 Fクラス  姫路瑞希   4418点

        &

       島田美波    989点

 

 

 桁違いの戦力差。まさに月とスッポンと言ったところか。

 

「……雄二。浮気は許さないと言った」

「へぇ…お姉ちゃんに逆らうの。なら大悟の前にたっぷりお仕置きしてあげるわね、秀吉」

「坂本君、明久君、木下君。覗きは立派な犯罪なんですよ?」

「そういえばアキには昼間のお礼もしないとね?」

 

 戦闘態勢に入った四人。

 正直凄く怖いけど、何とかその気持ちをグッと堪え彼女達に対峙する。

 

 

「「「かかってこいやぁぁああああっ!!!!」」」

 

 

 そして、僕らの召喚獣と彼女達の召喚獣が肉薄した。

 

 

 

 




お久しぶりです。およそ一ヶ月ぶりの投稿になってしまったことをお詫びします。
さて、今回は大悟vs高橋先生の召喚獣という前代未聞の戦いとなりました。正直やり過ぎたかなという考えはありましたが、ちょっとくらいは原作から離れた展開にしてみたかったというのと、大悟の喧嘩の強さを証明出来る機会だなと思い執筆に至りました。賛否両論あるかと思いますがご了承下さい。

それではまた次回

感想、意見は随時お待ちしています。

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ
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