次の問に答えなさい。
『女性のバストのサイズを現す単位に『カップ』があります。基準となるAカップの大きさを説明しなさい』
姫路瑞希の答え
『トップバストと、アンダーバストの差が10センチ以内』
教師のコメント
正解です。さすがですね、姫路さん。
女性は思春期を迎えると、第二次性徴の発達により胸が膨らみ、特有の体つきになってきます。ですがその時期は個人差があるので覚えておきましょう。
吉井明久の答え
『島田美波』
岡崎大悟の答え
『木下優子』
教師のコメント
コメントは控えます。
※その後、二人は学校裏にて無惨な姿で発見されました。
土屋康太の答え
『―――長すぎて全カット―――』
教師のコメント
せめて解答欄に収まる範囲で書いてください。
―――side明久
「ああクソッタレ……全身が焼けるように痛ぇ」
「まさか教師が全員集合してくるとはな…」
「もう戦力がオーバーキルしてたよね…」
僕達は女子生徒&教師連合軍に三回目の敗北を喫した。
やはり元々の戦力に大きな差があったというのが大きく、時間経過と共に次々とこちらの人数が減っていきやがて全滅。もちろん僕らも完膚なきまでに姫路さん達に叩きのめされた。
今夜一番健闘した大悟に至っては、鉄人を含む引率の教師が総動員し最後には召喚獣達に取り押さえられ教育的指導のもとボコられるという結果に終わった。
その後雄二は霧島さん、僕は姫路さんと美波、大悟は木下さんにそれぞれ口に出すのも憚るほど凄惨なオシオキ…もとい拷問を受けた。今後は当分姫路さんと美波の笑顔が夢に出てきそうだ。勿論悪夢で。
「教師なんかに負けるなんて、俺の二次元に対する愛が……まだ未熟だとでもいうのかぁっ!!」
「大悟よ。その気持ちは分かるがテーブルを破壊するでない」
悔しそうにギリギリと歯を擦り鳴らす大悟。
いや、召喚獣に殴り勝ちする時点で十分凄いことだと思うけど。
「……………惜しかった(コクリ)」
「トランス状態の大悟と互角以上に張り合うなんて、もうあれは人間の域を超えてるよね…」
「ああ、全くだ」
最早あの化け物相手にタイマンで勝てるヤツなんてこの世にいないだろう。
ちなみに秀吉は姉の木下さんから拷問は受けていたけど覗きに関しては無罪放免だった。ま、女の子が女の子のお風呂を見たからといって犯罪になるわけじゃないから当たり前だけど。
「じゃがどうする? このままではお主らは脅迫犯の影に怯え、且つ覗き犯という不名誉な称号を掲げられてしまうぞい」
「勿論諦める気は毛頭ない。残るチャンスは明日だけだが、逆に言えばまだ明日が残っているんだからな」
「そうだね。圧倒的な戦力差だったけど、そんなのは僕らにとってはいつものことだし。こういった逆境を覆す力こそが僕らの真骨頂だよね!」
「よーし、なら例のあれやっとくか。同志」
「……………オーケー(コクッ)」
「例のあれ?」
大悟の発言に僕が首を傾げていると、突然鞄からバスケットボール、丸眼鏡、付け髭を取り出した。いや、なんでそんなもの持ってきてるの?
するとムッツリーニが膝をついて項垂れるようなポーズを取り、大悟はバスケットボールを持って立ち上がった。
「最後まで…希望を捨てちゃいかん。諦めたらそこで試合終了だよ」
「……………先生。覗きが…したいです……!(ガクッ)」
すると、今度は唐突に秀吉が歌い出した。
「世界が終わるまでは~♪」
「おい馬鹿やめろ!」
「安○ネタは色々とアウトだ!」
慌てて僕と雄二は二人を止める。危なかった…もうちょっとで様々な方面の人達から怒られるところだった。
大悟とムッツリーニは「折角名シーンを再現してたのに…」と不満そうな表情を見せながらしぶしぶそれらを片付けていた。いや再現するにしても相手を選ぼうよ。危うくこの小説ピンチだったんだからね?
「あと秀吉も乗らなくていいからね?」
「す、済まぬ……あのシーンを思い出したら無意識に……」
申し訳無さそうに言う秀吉。ていうかスラム○ンク読んでたんだ。
それにしても、相変わらず声真似が上手いなぁ……後でこの五人でカラオケに行こう。絶対に楽しくなる。
「ったく、昨日のサクラ○戦といい、お前らはもうちょっと自重しろ」
「「だが断る(キリッ)」」
「断るな!」
某スタンド使いの漫画家の有名台詞を吐く二人。
ちなみに僕もジョ○ョは大好きだ。
「ワシは五部が一番好きじゃの」
「僕は三部かなー。やっぱり一番人気ってのもあるし、D○Oもカッコいいしね」
「……………一部こそ至高。人間賛歌は…勇気の賛歌………!」
「何を言う、やはり四部だろう。グレートですよ、コイツはぁ! 雄二は?」
「俺か? 俺は二部が面白―――ってそんなことはどうでもいい! それよりも明日の作戦内容について話すぞ!」
「「「「へーい」」」」
閑話休題
「それで、今度はどんな作戦を考えているの?」
「正面突破だ」
「は?(威圧)」←僕
「うっそだろお前(呆れ)」←ムッツリーニ
「人間の屑がこの野郎…(憤怒)」←大悟
雄二が自信満々にそう告げたのを訊き、僕らはもうダメかも知れないと思った。
「三人とも俺を罵倒する前に最後まで聞け。正面突破の基本スタンスは変えないが、その分事前の準備で考えがある」
「正面突破を続行するってことは、こっちの戦力を更に増やすってこと?」
「そうだ。向こうの戦力はもう頭打ちだ。あれ以上は戦力を増やせない。今日は負けたが、おかげで相手の戦力を知ることが出来た。これは大きいぞ」
「…………他のクラスでの目撃情報も集めた」
「ていうかむしろあれで全力じゃないならキツすぎるがな」
大悟の言う通りだ。
ただでさえ今の戦況でもジリ貧なのにまだ全力じゃありませんでしたなんて無理ゲーもいいところだ。
「まずは向こうの布陣だが、教師を中心とした防御主体の形になっている」
「ああ、まさに鉄壁の守りだったよな」
「だがあれは強固ではあるものの無敵という訳ではない。色々と弱点もあるんだが、それがなんだかわかるか?」
「微塵も分からないね」
「大悟。チョキの正しい使い方を教えてやれ」
「ほいよ(ブスリ)」
「ふぎゃぁああっ! 目が、目がぁっ!」
大悟のチョキが僕の眼球にディープキスをプレゼントしていった(詩的表現)。この野郎、全く躊躇いもなくクラスメイトの眼球を潰そうとするなんて血も涙もないのか。
「まったく、少しは考えろってんだ。よし、ムッツリーニ。あれを見せてやってくれ」
「……………了解」
雄二の言葉に従い、ムッツリーニがノートパソコンを準備し始める。
そこには昨日か今夜かの僕らの突撃作戦の様子らしき映像が映し出されていた。
「さて、これを見て何か気になる点はないか?」
「おかしいところ? うーん…見たところ特には…」
なにか不自然な箇所や違和感を探せと言われても全然分からない。
すると、秀吉が画面を凝視しながら言った。
「む、そういえば、やけに教師達は互いに間隔を開けてフィールドを展開しておるのじゃな」
「んあ? あ、確かにそうだな…」
「ビンゴだ。秀吉」
「え、そうなの?」
「ああ、これこそが向こうの弱点なんだ。お前ら―――《干渉》というものは聞いたことあるか?」
雄二から出てきた《干渉》という単語。そう言えば、二日目あたりに須川君がそんなことを言っていた気がする。でもその時はそれがどういう意味なのか分からなかったから、すぐに忘れてしまったんだけど。
「なんだそりゃ、子供がよくイタズラでやるあの痛いヤツか?」
「それは浣腸だ」
「耳が遠くなること」
「それは難聴」
「地下チンチロ」
「それは班長!」
「…………下手だなぁ、雄二君。ツッコミのやり方が下手っぴさぁ……(ニヤリ)」
「うるせぇ! あと似てねぇ物真似はやめろ!」
「ならシルヴェスター・○タローンか?」
「…………新作は面白かった」
「それは恐らくラン○ーって言いたいんだな!? だからお前らは話を脱線させるな!」
「「かしこいかわいい?」」
「もういいわ!!」
ツッコミきれなくなったのか、そう二人に怒鳴る雄二。最後の答えはは多分南○だね。
このところ大悟とムッツリーニが揃ってボケるようになる光景が多くなったなぁ。
「ったく、話を戻すぞ。召喚獣を呼び出すフィールドにはさっき言った《干渉》というものがある。これは一定範囲内でそれぞれ別の教師がフィールドを展開すると、科目同士が打ち消しあって召喚獣が消えてしまうというものだ」
「つまり、教師はある程度の距離を取らないと複数の人数を配置出来ないんだね」
「そういうことだ」
なるほど。だからあの時高橋先生以外の教師達も総合科目で勝負していたのか。もし召喚獣がいなければ大悟は勿論のこと、他の男子高校生の体力にも対抗する力は無くなるわけだし、干渉は最も避けたい事実なのだろう。
まぁ、鉄人というイレギュラーな存在もいるけど。
「その現象と今回の大悟が引き起こした行為、を総合して判断すると、明日の向こうの戦力はこんな感じだ(カキカキ)」
雄二がテーブルに紙を広げて書いていく。
「あれ? 高橋先生は今日と違う場所になるの?」
「確実に、というワケではないが、俺が向こうの立場ならそうする。絶対に通過する道に主力を置くのは定石だ」
「地下に続く階段の前か…ま、女子風呂に繋がる道はここだけだからな。ならそこに戦力を配置するのは当然だってはっきりわかんだね」
「それなら、なんで今日もそうしてこなかったのかな?」
「あんた馬鹿ァ!?」
「なんで!?」
いきなり大悟に罵倒された。ていうか君がそれやってもブサイクなだけだよ!
「恐らく圧倒的な力を見せてこちらの出鼻を挫きたかったんじゃないか? ま、今回はその目論見は叶わなかったみたいだが」
「そうじゃのう。確かにあの点数は圧巻じゃったが、こっちにはそんなもの関係無く縦横無尽に暴れまくったヤツがおるのじゃからな」
確かに。向こうからしたら今回の大悟の行動はかなり予想外だっただろう。なにせコイツは今日、試召戦争の根幹を大きく覆してしまったのだから。
「でも、それでもまだ苦しい勝負だよね。鉄人と大島先生(保健体育教師)と落合先生(社会科教師)と高橋先生(学年主任)のいる場所は絶対に通らないといけないし」
「その中でも特に鉄人だ。ヤツは最後の砦として女子風呂の前に陣を敷いてるだろう。だが今日見て分かった通り、生身の人間じゃ打倒は不可能だ」
「ありゃ無理だ。人間とやってる気がしない」
喧嘩で名を馳せた大悟でさえこの台詞だ。
もう一体どんな手を使えばいいのだろうか。
「そこで、だ。鉄人の相手はあるヤツに任せようと思う」
「あるヤツ?」
「お前だよ明久。お前が鉄人と戦って勝利する。これはどうあっても外せない条件だ」
「それって僕が"観察処分者"だから?」
「そうだ。人間は武器を持って初めて猛獣と対等になる。その武器を持っているのは明久、お前しかいない」
確かに僕の召喚獣は他とは違い物や人に触れる。そうなると必然的に鉄人の相手をするのは僕であるのは必然だ。
「でも、それなら大悟の方が可能性はあるんじゃない?」
「本来ならそれが理想なんだが…向こう側もそれを一番警戒してるだろうからな。必ず対策をしてくる筈だ」
「てことで明久。ラスボスの相手は頼むぞ」
うーん……大悟でも歯が立たない化け物を僕が相手するのか。イマイチ自信が持てないな。現に一度負けてるし。
「じゃが、そうなると高橋女史の場所を無傷で通過する必要があるじゃろう?」
「ああ。大島はムッツリーニ。落合は大悟にやってもらうとしても、高橋女史と戦うための戦力が圧倒的に足りない」
「俺が両方とも相手できればいいんだが…現実的に無理だ」
「つまり作戦を成功させるにはどうしてもA・B・Cクラスの協力が必要になる」
B・Cクラスは高橋先生まで辿り着くまでの陽動。Aクラスは高橋先生の討伐に必要だと雄二は言う。
「だから明日の作戦時刻まではその根回しに全力を注ぐことにする」
「でも、一度断られたわけだし、そう簡単にいくかな?」
「明久。よく見てみろ。ここには文月の男共を動かせるだけの力を持つ存在がいるだろう?」
雄二はムッツリーニと大悟に視線を向ける。
確かに、この二人ならそれが可能だ。なにせこの二人は文月の裏経済を牛耳る二大巨頭『ムッツリ商会』『ダイゴブックス』の経営者だ。
特に大悟はその良質かつ色々な性癖に応じた商品と学生に優しいお手頃価格。どんな人だろうと客であるなら決して差別しないという徹底した運営方針の為、殆どの男子生徒(一部女子生徒も含むらしい)から信頼と人望を得ている。彼が本気を出せば全ての男子生徒を動かすことも夢じゃないだろう。
「てことで大悟、ムッツリーニ。頼むぞ」
「おうよ。俺達の腕の見せ所だぜ、同志よ」
「……………任せろ、同志(グッ)」
そう言うと、ムッツリーニは何故か撮影機材の準備に取りかかり、大悟は自分の鞄をガサゴソと漁り始めた。
あれ、このくだり前にもあったような………?
「……今回はそんなにねぇか…?」
そして大悟は鞄から何かを取り出し、床に広げた。
バサッ(レオタード)
バサッ(ビキニ(セパレートタイプ))
バサッ(ワン○ース、ナ○のコスチューム)
バサッ(スクール水着)
バサッ(間○桜(黒化)のコスチュームセット)
バサッ(レースクイーン)
バサッ(セーラー服(スカート丈が凄く短い))
「これくらいしか用意がないな」
「お前にとってはこれでも足りない方なのか!?」
いつからだろうか? 大悟がコスプレ衣装を持ち歩いていることに違和感を覚えなくなったのは。
「…まあいい。これらを使って写真を撮り、なおかつそれを大悟にイラストにしてもらい、A~Cクラスの野郎どもの劣情を煽る。間違いなく覗きへの興味を引き出せる筈だ」
やっぱりそういう作戦か。
「でも確かに大悟特製のイラストやコスチュームとムッツリーニの撮影技術なら効果は絶大だよね。てことではい、まずは浴衣から」
「あ、その次はレオタードかレースクイーンがおすすめだぞ」
「………予想はしとったが、やっぱりワシも着るのかのう………」
コスプレ衣装を渡された秀吉はなんだか不満そうな顔をしていた。
「安心しろ。秀吉だけじゃない。姫路と島田にも着て貰う」
「え? 雄二、工藤は呼ばないのか?」
「アホか。犯人の疑いがあるヤツを呼ぶわけ無いだろう」
「………
「
その後、大悟はいきなり地面に伏せて号泣し始めた。
どうやら工藤さんに例のエロゲキャラのコスプレをさせたかったらしい。理由が理由だから可哀想という感情がまるでおきない。
「雄二貴様ァ………俺の期待と夢を容赦なく踏みにじりやがって…末代まで呪ってやる…!」
「そんな下らん理由で俺の子孫を不幸にするな」
「下らん理由だと!? 貴様! 俺の愛するみるくたんを侮辱するのは許さ―――」
「なら木下姉に今の発言をバラすか?」
「誠に申し訳ございませんでした」
相変わらず木下さんのことになると弱気だなぁ。
「いや、ワシ一人で着るのが不満だとかそういうワケではないのじゃが」
「ならいいじゃねぇか。別にコスプレぐらいもう慣れっこだろ?」
「むう…確かにそうじゃが………」
つまり不満はないワケだ。よかったよかった。
「それじゃ、ムッツリーニと大悟は引き続き準備をしてくれ。明久は姫路と島田に連絡を」
「オッケー」
雄二の指示に従って僕は携帯電話を取り出す。え~っと、二人のメアドは………っと。
カチカチとメールの文章を作成し、送信する。
【ちょっと話があるんだけど、僕らの部屋に来てもらってもいいかな?】
【分かりました。お菓子とか持って遊びに行きますね】
【別にいいけど、こんな時間にどうして?】
すぐに返信が来た。ふむ、姫路さんは大丈夫そうだけど、美波が少し警戒してるみたいだ。はてさて。なんて返事をしたらいいものか。
考えていると、三度僕の携帯電話がメールの着信を通知してきた。送信者は―――須川君か。なんだろ?
【吉井。気になったんだけど、お前はなんで覗きにそこまで必死なんだ? そもそも本当に女が好きなのか? 坂本や木下や兄貴の尻が好きだって言ってた気がするんだけど】
こ、これはとんでもない誤解だ! この文面を見ると僕は女の子よりも雄二と大悟に興味があるみたいじゃないか! 特に大悟はガチムチの筋肉野郎だから誤解云々の前に絵面が最悪だよ! すぐにでも認識を改めさせないと!
なんで女子風呂を覗くのかって? そんなの、決まっている!
【勿論好きだからに決まっているじゃないか! 雄二や大悟なんかよりもずっと!】
少し熱くなりながらも送信ボタンを押す。やれやれ。どうしてそんなことに疑問を抱くんだろうか? 本当に僕の周りにはバカが多くて困―――
【メール送信中……… → 島田美波】
―――あれ? おかしいな、メールの宛先の標示が間違っているぞ? ちゃんと目を凝らして、
【メール送信完了……… → 島田美波】
「ゴふっ」
送信先を見た瞬間、口からあり得ない音が出た。
いやまて、落ち着くんだ吉井明久。これは何かの間違いだ。そうだ、まずは冷静になって送った文章をもう一度ちゃんと見直してみてごらん?
【勿論好きだからに決まっているじゃないか! 雄二や大悟なんかよりもずっと!】
なんて男らしくて力強い告白文だろうか。
「バカぁっ! 僕のバカぁっ! ある意味自分の才能にビックリだよ畜生!」
こここコイツは人生最大のピンチだ! よりによって僕のことをウジ虫かサンドバッグとしか考えていない美波にこんなメールを送ってしまうなんて!
とにかく訂正のメールだ! さっきのメールは事故だってきちんと弁解しないと!
「どうした明久? さっきなにか悲鳴が聞こえたんだが―――っとと!」
ツルン(雄二がバナナの皮で滑る音)
ドタッ(雄二が僕を巻き込んで倒れる音)
バキッ(雄二が僕の携帯電話を踏み潰す音)
「なにか大変なのか?」
「たった今貴様が作った状況がな」
僕の携帯電話は、雄二の足によって物言わぬスクラップと化した。メールや電話での弁明なんて明らかに不可能だ。
「ん? これはお前の携帯電話か。すまん。今度修理して返す」
「いや、今はそんなことどうでもいいから、とりあえず雄二の携帯電話を貸して!」
「ほらよ」
いかにも雄二が好みそうなシンプル形状の携帯電話を受け取り、すぐに美波の電話番号を探し始める。
坂本雄二のアドレス帳登録………一件 → 『霧島翔子』
「む。翔子のヤツ、また勝手に俺の携帯電話を弄りやがったか。機会音痴のクセに……。これでまた家でアドレス帳を入力しないといけないじゃないか」
「……………」
僕の中で何かが色々と終わってしまった。
「……ねぇ雄二。美波の番号って覚えてる?」
「逆に訊くが、お前は友人の電話番号なんていちいち覚えてられるのか?」
「そっか……、そりゃそうだよね」
カチカチカチ。送信………っと。
【To:霧島翔子 From:坂本雄二
もう一度きちんとプロポーズをしたい。今夜浴衣を着て俺の部屋まで来てくれ】
「うん? 明久、俺の携帯で誰に何を送信し―――ゴふっ。ななななんてことをしてくれるんだキサマ!」
「黙れ! キサマも僕と同じように色々なものを失え! どりゃぁぁ―――っ!」
「おわぁっ! 俺の携帯をお茶の中に突っ込みやがったな!? これじゃ壊れて弁明もできないじゃねぇかこのクズ野郎!」
「そう! その気持ち! それが今僕が雄二に抱いている気持ちだよ!」
「何をわけのわからんことを!」
そのままお互いに胸ぐらを掴んで睨み合う。
くそっ! 肝心なところでこの馬鹿はいっつも僕の邪魔ばっかりしやがって! この件が終わったら全身全霊を持ってシバき倒してやる!
こうなったら………アイツにお願いするしかない!
「大悟! ちょっといいかい!?」
「んあ? なんだ明久」
横でムッツリーニと一緒に撮影の準備をしている大悟に呼び掛ける。
「ちょっと携帯電話を貸してほしいんだけどいいかな!?」
「俺もだ! 頼む大悟!」
「あ? 携帯電話? テーブルの上にあるから勝手に使えよ」
「ありがとう! って雄二! なに勝手に使おうとしてるんだ!?」
見ると、いつの間にか雄二が大悟の携帯電話を弄っていた。いかにも大悟が好きそうな二次元の女の子がデザインされとっても痛々しい。
「寄越せ雄二! その携帯は僕が使うんだ!」
「なに言ってやがる! お前に何があったかは知らないがこんなのは早い者勝ちだ!」
「そんなの関係ない! 僕は一刻も早くこの状況をどうにかしないといけないんだ! だから大人しくその携帯を渡せこの妻帯者ぁっ!」
「なんだとこの女装趣味の変態野郎が! って制服を引っ張るんじゃねぇ!」
「うるさい! よこせっ! 携帯をよこせぇぇーっ!」
「決して渡すものかぁぁーっ! 早速翔子のメアドを―――」
岡崎大悟のアドレス帳登録………一件 → 『木下優子』
「「……………」」
お互いに顔を見合わせる。
そして雄二が静かにカチカチと文字を打ち込み、躊躇いなく送信ボタンを押した。
【To:木下優子 From:岡崎大悟
お前を抱きたい。だから夜中になったら俺の部屋まで来てくれないか? 一緒に………限界までイッちゃおうぜ?】
「はい、ありがとう大悟」
「おう。けどさっき俺の携帯のメールの送信音が聞こえたんだがなにをしてたん―――ゴふっ!!?」
送信されたメールを見た瞬間、大悟の口からあり得ない音が出た。
そしてすぐに僕たちに掴み掛かってくる。
「明久ぁっ! 雄二ぃぃっ!! テメエらなんだこの身の毛もよだつような恐ろしいメールはぁぁっ!!」
「いやぁ、ごめんよ大悟。他人の携帯だから打ち間違えちゃったよ」
「おいおい、気をつけろよ明久。ま、間違いならしょうがないよな」
「どこをどうすりゃこんなピンポイントな間違いが出来るってんだよこの馬鹿野郎! と、とにかく妙な真似をされる前に訂正を―――」
「おっと、手が滑ったぁ!(バシッ!)」
「俺も足が滑ったぁ!(ベキッ!)」
「更に僕も足が滑ったぁ!(ゲシゲシゲシ!)」
「ああああああああああ!!!?」
大悟の携帯電話は僕らによって鉄クズと化した。
デザインされている女の子のイラストが見るも無惨な姿になっている。
「貴様らぁぁあっ!! なんてことをしてくれやがんだ!? これじゃ誤解を解くことが出来ねぇじゃねぇかこのゴミ野郎!」
「黙れこの役立たず!」
「お前も俺達と同じ気持ちを味わいやがれ!」
「アァん!? 二人揃って意味不明なことを抜かしやがって………! くそっ! だがお前らをブチのめすのは後だ! 携帯がダメなら直接アイツに―――」
「そうか! なら俺も翔子のもとに―――」
ガラッ(雄二と大悟が廊下へと続くドアを開ける音)
ドゴッ(廊下にいた鉄人が二人に拳と蹴りを叩き込む音)
グシャベキグチャッ(雄二と大悟がテーブルを巻き込んで壁に激突する音)
「部屋を出るな」
「了解です」
屍となった二人の代わりに僕が返事をする。
「ちなみに秀吉とムッツリーニはまだ携帯電話買ってないの?」
「うむ。前に捨てて以来買ってないのじゃ」
「……………いざというとき鳴り出すと困る」
最近の高校生としては珍しいな。片方の理由は特に。
仕方ない。美波には明日会った時にでも事情を説明しておくとしよう。
「ところで、この部屋は片付けないとまずいのではないかの? これでは布団も敷けぬぞ」
「そうだね。とりあえず片付けて秀吉の撮影を始めようか」
テーブルを戻して、床に散らばったものを一ヶ所に纏めておく。
秀吉の荷物はこっち(ドサッ)。
割れたグラスや花瓶の破片は危ないからあっち(ポイッ)。
僕の荷物はこっち(ドサッ)。
雄二はゴミだからあっち(ポイッ―――ザク)
ムッツリーニの荷物はこっち(ドサッ)。
大悟もゴミだからあっち(ポイッ―――グサッ)
「「ぐぁあっ! せ、背中にガラスの破片がっ!!」」
「あ、雄二に大悟。起きたなら手伝ってよ」
「待て! お前には俺達の背中の傷が見えないのか!?」
「いい感じに手が届かない所に刺さってやがるぞコンチクショウ!」
「大丈夫。致命傷ではなさそうだから」
「そう思うならお前にもこうしてやらぁ!」
「ああっ! 僕の着替えがガラスの破片まみれに!?」
「お前も俺達と同じ痛みを味わえ!」
「それなら浴衣を着るからいいさ! 秀吉とペアルックだしね!」
「そうはさせるか! 大悟! 秀吉と姫路達以外の分の浴衣を全部改造しちまえ!」
「任せろ! 露出度高めのエロ浴衣に大変身させてやらぁ!」
「そんなことはさせないぞこのキモオタ!」
なんてことをやってるうちに時間が過ぎて
―――コンコン
「こんばんわ、皆さん」
扉が開かれ、僕らの部屋に姫路さんが入ってきた。
「あ、いらっしゃい、姫路さん。あれ? 廊下で鉄人に絡まれなかった?」
「西村先生ですか? いましたけど、お菓子をあげたら通してくれました」
「「「「「さらば鉄人。安らかに眠れ………」」」」」
―――消える飛行機雲~♪ 僕たちは見送った~♪
彼の冥福を心から祈ろう。
「ところで明久君。お話ってなんですか?」
「ああ、うん。それなんだけどね」
「よく来たな姫路。早速だがプレゼントだ」
雄二が大悟特性のコスチューム(黒桜なりきりセット)を姫路さんに手渡す。
「これって、岡崎君のコスプレ衣装ですよね? どうして私に………?」
「うん。実はね、そのコスチュームを着た姫路さんの写真を撮らせて欲しいんだ」
「「仕事は俺達に任せろ(キラーン☆)」」
「え………っ?」
突然の話で目をパチパチと瞬かせている姫路さん。そりゃ、いきなりこんなことを言われたら驚くよね。
「あ~、その、なんて言うか………」
「安心しろ姫路。これはコイツにも着させるから」
「えっ!?」
突然大悟が僕の肩を叩いてそう言った。
「ちょっと大悟! なにを勝手に」
「本当ですか!? それなら喜んでやりますっ!」
すると、姫路さんが急に態度を変えて承諾してくれた。さっきまで微妙そうな顔をしてたのに今は目がキラキラと輝いている。一体彼女の中でなにがあったんだろうか?
「アキちゃ―――明久。ここは大人しく従え。お前が我慢さえすれば姫路は協力してくれんだからな」
「ぐっ………、なんて屈辱的な………!」
それに最初に貴様が言おうとしたことは聞き逃さなかったからな?
「……明久君の可愛いコスプレ姿。これでまたコレクションが増えちゃいますね……♡♡♡」
「ん? なにか言った、姫路さん」
「ふぇぇ!? い、いえっ! なんでもないですよ! それじゃ、ちょっと着替えて着ますね」
コスチュームを持って着替えに行こうとする姫路さん。
ここでふと思った。撮影する写真を人に見せてもいいか聞いておくべきじゃないだろうか? 変な写真を撮るつもりはないけど、友達としてそれくらいはしておくべきだ。
「姫路さん、ちょっと待って」
「はい?」
「実は撮る写真なんだけどさ、友達とかに見せてもいいかな?」
「え? このコスプレ姿をですか? そ、それは少し恥ずかしいです………」
「何を言ってるんだ姫路。コスプレ程度で恥ずかしいと思っていたら明久の存在はどうなる? バカの上に変態なんて、生きていけないほど恥ずかしいじゃないか」
「その通り。だから姫路は全然気にしなくて大丈夫だ。明久はもう現代医学じゃ手遅れなぐらいの変態クソ野郎だが、お前は二・三次元共において魅力溢れる稀少な女性だからな。自信を持っていい」
「そ、そんな………魅力溢れるだなんて、照れちゃいます」
「落ち着くのじゃ明久! 割れた花瓶の破片を振りかざすでない!」
「放して秀吉っ! これでコイツらの脳ミソをグチャグチャにかき回してやるんだ!」
なんだろう。雄二と大悟のフォローはいつも僕を不幸にする。
「まぁ、こっちも無償でやらせるなんて野暮な真似はしない。報酬は弾ませて貰おう。大悟」
「分かってるよ。姫路、ちょっとこっちに来てくれ」
「なんでしょうか?」
特に警戒した様子もなく姫路さんと大悟が部屋の隅に寄っていく。そして僕らに背を向けて小声で会話を始めた。
「………久の無修正イラ………抱き枕カバーとストラップもセット………」
「……当ですか!? ………少のエッチな格………やります………!」
一体何を話しているんだろう? と思っていると姫路さんと大悟がいい笑顔で固い握手を交わした。
「交渉成立だ。特に問題はないってよ。な、姫路」
「はいっ! 多少のサービスシーンくらいなら全然大丈夫ですっ!」
なんだ? 何が彼女をそこまで奮い立たせたんだ?
ちなみに隣では人知れずムッツリーニが「…………サービス、シーン………!?」と呟きながら出血多量で倒れている。
「とにかく協力してくれてありがとう。それなら早速準備をお願いできる?」
「はいっ! あ、でもその前に一つやることがあるんです」
「ん? やることって?」
「おいおい明久。さっき俺が言っただろう―――」
「
その場にいた全員が僕に屈託のない笑顔を振り撒いた。
「………ごめんっ!! 僕ちょっとトイレに行って「野郎共! そいつを逃がすなぁ!!」「「「了解!!」」」ぐはぁっ!」
咄嗟に逃げようとした僕は一瞬で雄二とムッツリーニと姫路さんに取り押さえられた。
「どこへ行くんですか? 明久君?」
「……………無駄なあがきはやめるべき」
「いやだ! 僕はもうあんな恥ずかしい格好は二度としないと決めたんだ!」
「そう恥ずかしがるなよ明久。案外似合うかも知れないし、そうじゃなくてももうこれは決定事項なんだからな」
「そうじゃの。明久もワシと同じ気持ちを味わうべきじゃな」
「僕は一度でも女装するなんて言った覚えはないんだけど!?」
「わめくな。元より貴様の意見など関係ない。俺がルールだ」
「大悟貴様っ! この人間の形をしたクズめ!!」
「はっはっは、なんとでも言うがいい。では諸君、始めようか」
「はいっ。じゃあ明久君。着せてあげますから制服を脱いでくださいね?」
「ひ、姫路さん? 落ち着こう? だからよだれを垂らしながらスクール水着を持ってジリジリ迫り来るのは止めてくださいホントお願いします勘弁してください神様仏様姫路様!!」
「むぅ、往生際が悪いですよ明久君! ならちょっと乱暴にしてでもやっちゃいますからね!」
「やめて! こないで! いやぁぁぁあああっ!!!」
僕の憧れた姫路さんはどこへ行ってしまったのだろうか。
今回はここまでです。さて、あんなメールを送られてしまった大悟の運命や如何に!?
それではまた次回。
感想、意見などありましたらよろしくお願いいたします。
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
-
入れろ、絶対に
-
別に入れなくてもいいよ