バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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バカテスト  物理

以下の問いに答えなさい。
『観測者Aが速度vで走っていると、正面から周波数fの音を発し速度v'で走行してくる救急車がやってきた。音速をVとしたとき、観測者にどのようなことが起きるかを書きなさい。また、その現象の名前も併せて答えなさい』


姫路瑞希の答え
『観測者Aには車が発する音の周波数がf×[(V+v)÷(V-v')]になって聞こえる。
現象の名前……ドップラー効果』

教師のコメント
F1マシンが通過する時もこれと同様の現象が起こっていますね。物理現象は一見難しいように思われますが、意外とと身近に存在するものです。


吉井明久の答え
『観測者Aが速度v'+vではねられる。
現象の名前……交通事故』

教師のコメント
きちんと相対速度を補正しているあたりが腹立たしいです。




第四十九問 学力強化合宿最終戦 ~リベンジ戦~

「大悟! 今じゃ! 敵が同一箇所に集まったぞい!」

 

「おうよっ! くらいやがれ―――"恋のバーニング☆ブレス"!!!」

 

「っ!? 皆、避けて!!」

 

 空に浮かぶ巨大な龍と化した俺の召喚獣の口から放たれた巨大な熱線が、地上ごと敵を焼き尽くさんと襲いかかる。

 それに対し優子は、いち早く指示を出し味方に攻撃を回避させようとするが、

 

 ボォォオオンッ!!

 

『っ!? きゃぁぁああっ!?』

『森さん!?』

 

 一瞬の判断が遅れたのか、逃げ遅れた一体の召喚獣が熱線に包まれる。勿論戦死だ。

 ちなみに秀吉の召喚獣は俺の召喚獣の頭部に搭乗させることで、簡単には敵に攻撃をさせないようにしている。

 

「ははは! 実に痛快だな!」

 

『な、なんてデタラメな攻撃なの……』

『しかも何よ。あのバカげた点数は……!?』

 

 龍を見上げながら、女子達が口々に呟く。

 当然だ。ただでさえ相手がこんなバカデカい怪物なのに、更にその強さが担当教師を大きく上回っているのだから。

 

「当たり前だ! このリベンジ戦の為に備えて、俺と秀吉はこの三日間を費やしたんだからな!」

「うむ。正直かなり体力的にも精神的にもキツかったが……これも雪辱を晴らすためじゃからな!」

 

 俺の得意科目は社会科目。特に日本史と世界史だ。

 だから俺達最初の敗北から、この三日間の内に与えられた学習時間は全てその科目のみを勉強した。どうせ他の科目じゃ俺は使い物にならないし、なら自分の持つ最強の武器を徹底的にレベル上げする方が効率的だからな。雄二もお前はそうしてくれと言っていたしな。

 秀吉も同様で、今までに見たことがないくらい必死に勉強していた。コイツは演劇や歌唱など"エンターテイナー"としての才能には長けているが、勉学に関しては社会科目以外の俺や明久、同志とあまり大差がない。だから中々に苦労はしたがその結果、凄く良いとまではいかなかったものの、今までの成績を凌駕する程の点数を取ることが出来たのだ。

 

「もう油断も加減もしねェ。覚悟しろよ女子共。今日の俺達は―――強ェぞ!!!」

 

『……! こ、こんなの私達でどうにかなるの……?』

『落合先生を点数で超えてるのに、無茶だよ……!』

 

 戦況はまさしくこっちの圧倒的有利。一日目の無様な結果とは大違いだ。

 ……が、だからといって諦めるようなタマじゃないことは知っている。そう―――特にアイツは。

 

「怖じ気づかないで! 確かに今は完全にこっちが不利だけど、大悟の腕輪の能力には時間制限があるの! だからそこまで生き残ることが出来れば、アタシ達の勝ちよ!」

 

「木下さんの言う通りだよ! だから皆。まずは防御と回避に撤して! そして隙が空いた瞬間に攻撃を仕掛けていくよ!!」

 

『『『はい!!』』』

 

 なるほど、どうやらこっちの情報は筒抜けのようだ。

 二人の言葉通り、俺のこの召喚獣を龍に変身させる能力には、点数分の秒数かんのみという時間制限が存在する。それが過ぎてしまうと元の姿に戻るだけでなく、一気にその点数がごっそりと減ってしまい、かつ疲労感のフィードバックがあるというおまけつきだ。当然そうなれば勝ち目は皆無になる。

 だからさっきの姉御の発言は妥当な判断だと言えるだろう。無理をして攻め込み返り討ちになるよりも、そうした方が断然イージーなのだから。

 

「はっ。確かにそうだな。だがそんな甘っちょろい考えで……俺達を―――」

 

 俺は龍を上空でとぐろを巻くように大きく旋回させる。そして凄まじい勢いを利用し、

 

「っ! 来るわ!! 回避!!」

『『『はい!!』』』

 

「―――倒せると思うなぁ!!!」

 

 鞭の様にしならせた尻尾を思い切り叩きつけた。

 地面を砕かんとするほどの轟音と衝撃を引き起こすが、残念ながらその攻撃は今度は空振りに終わってしまった。

 

「チッ、はずしたか」

「とんでもない威力じゃの……召喚獣でなければ床は確実に木っ端微塵じゃな」

「おう。そのつもりでブッ叩いたからな」

 

 手加減など必要ない。

 これは喧嘩じゃなく戦争だ。例え相手が女子だろうが、敵に少しでも情けや容赦をかければそれが命取りとなる。

 だから俺は今日―――相手をブッ殺すつもりで戦う!

 

「姉御! 優子! 悪いが今日は教師とか、腐れ縁だとかっつうモンは全部抜きにさせてもらう! 大義の為、友の冤罪を晴らす為……そして、男の尊厳を守る為に遠慮なくお前らを倒す!! 行くぞ秀吉!!」

「合点!!」

 

 龍が咆哮をあげながら敵に迫る。狙いは一番厄介になるであろう姉御の召喚獣だ。まずは先に潰す!!

 

「前回の時のようにはいかねぇぞ!! 姉御!! 」

「くっ! 岡崎君、木下君……どうしてそこまでして覗きなんてする必要があるの!? 言っておくけど、君達がやってることは犯罪なんだよ!? 停学が怖くないの!?」

「停学……? それがどうしたってんだよォ!? んなもん俺達が背負ってるモンに比べりゃ大したことじゃねぇ!!」

「いや、停学はかなりの事態だと思うのじゃが……」

 

 そして龍が相手を噛み砕こうと大きく口を開けて襲いかかる。

 

「もうっ! どうしてその行動力を他の事に活かせないのかなっ!」」

 

 が、間一髪のところで避けられる。すると反撃とばかりに姉御の召喚獣が武器を抜刀し首目掛けて刃を振り上げてきた。しかし、その攻撃は強固な鱗のお陰でダメージは殆ど通らない。

 

「そんな攻撃じゃあ、俺達は倒せねぇぞ!!」

「むぅ。一年生の頃といい、本当に貴方や吉井君達は破天荒なんだからっ!!」

「あははは! そいつはどうも! 誉め言葉と受け取っておくぜ!」

 

 龍は再び上空へと高く舞い上がり、地面から敵を見下ろす。

 さて、次はどうやって攻撃を仕掛けようかと考えていると、

 

「大悟……そこまでして他の女の裸が見たいっていうの……? アタシのじゃ、満足出来ないの……?」

「なんだと?」

「だって、ここまで危険を犯してまで女子風呂を覗こうとするってことは、大悟にとってそこまでするほどの魅力的な子が他にいるって事なんでしょう……?」

 

 優子が俺に向かってそんな事を訊いてきた。

 俺はふぅ、と溜め息をつく。全く、アイツは何をバカなことを言っているのだろう。全く仕方ないな……もう一度教えてやるとするか。

 

「勘違いするな優子。別に俺にはそんなヤツはいねぇし、お前の身体が魅力的じゃないとも思ってない。何故なら俺は―――」

「えっ……? それってつまり、アタシのことが……」

 

「―――二次元かロリじゃないと興奮出来ねぇんだ」

 

「うん、殺すわね♪」

 

 瞬く間の殺害宣告。そんな! 俺は何も嘘はついていないというのに!?

 しかもなんか背中から禍々しいオーラみたいなの出てるんだが!? はっ! まさか優子は病ミ病ミの実を食べたヤンデレ人間!?

 

「大悟。秀吉。この勝負が終わったら三人でサッカーをしましょう。アタシがキッカーで二人はボールとサンドバッグね」

「待て優子! 俺の知識が間違っていないのならそれはサッカーでなくただの虐殺だ!」

「しかも何故ワシまで巻き込まれるのじゃ!?」

 

 すると、優子の召喚獣が物凄い速度で壁を蹴ってジャンプ。驚くことにその跳躍力は凄まじく、空中に浮かぶ俺の召喚獣と同じ高さまできやがった。

 

「あっ! 木下さん! 待って!」

「ふん! バカ正直に正面から来やがったな! ならくらえ! "恋のバーニ――」

「違うわ! まずはアンタからよ!! 秀吉!!」

「なんじゃと!?」

 

 そのままランスを突き出して俺―――ではなく、頭部に乗っている秀吉の召喚獣に向かってくる!

 ま、まずい! 回避をっ!

 

「クソッ!!」

「あ、危なかったのじゃ……!」

「まだよ!!」

 

 間一髪のところでなんとか避ける。が優子は地面ではなく、なんと龍と化した俺の召喚獣に着地したのだ。

 そのままダッシュで身体を駆け、頭部へと向かっていく。

 

「召喚獣といえど、アタシの大悟に気安く触れるなんて許さないわよ……秀吉ィ!!」

「姉上。ワシが言うのもなんじゃが目的が変わっておらぬか!?」

「!! しっかり掴まってろよ秀吉!!」

 

『ヴォロロロロロロ!!!!』

 

 召喚獣に全身を大きくうねらせ、召喚獣を振り落とそうとする。しかし、

 

「この程度で、落とされるもんですか……!!」

 

「「なっ!?」」

 

 俺も秀吉も驚きの声が漏れる。

 優子の召喚獣は全身を使って龍の身体にしがみつき、そのまま昇ってきているのだ。な、なんつう意地だ……まるで優子の意志がそっくりそのまま召喚獣に移ってるようじゃねえか!

 

「こんな小細工、無駄なのよ……Aクラスを、舐めないで!」

「ふん。やるじゃねェか……!」

 

 やがて優子の召喚獣は頭部へと到達してしまった。

 

「とうとう辿り着いたわよ。覚悟しなさい……秀吉!!!」

「っ! 姉上……!」

 

 隣で苦虫を噛み潰したような表情になる秀吉。

 まずい! いくら秀吉の点数がいつもより高いとはいえ、それでも優子の点数には圧倒的に及ばない。このままじゃ戦死確定だ!

 

 だが……そう易々と相棒をこのまま見殺しにしてたまるか! 

 

「くらいなさい!!」

「負けぬぞっ!!」

 

 優子の槍と秀吉の薙刀が交わろうとするその瞬間、

 

 

『ヴォォォォオロロロロロロロォォオオッ!!!!』

 

「「!?」」

 

 

 空間を揺らすほどに龍が咆哮をあげた。

 

『な、なにあれっ!?』

 

 女子の一人が天井を指差して叫ぶ。

 彼女が示す視線の先にあったのは、俺達の召喚獣―――の更に上空に突然として現れた黒雲だった。

 それにより、優子と秀吉も攻撃を止める。

 

「な、なんじゃ!?」

「なによあれ……!?」

 

 驚愕する二人をよそに、その黒雲はどんどんと大きくなり、やがて天井いっぱいになるほどの大きさまで巨大化する。よし、これで準備は万端だ!

 

「秀吉!! すぐに俺の召喚獣から離れろ!!」

「っ!? 承知じゃ!!」

 

 俺はそう秀吉に強めに言う。

 本人も俺の意図を察したようで、すぐさま頭部から飛び降り、急いで自分の召喚獣に距離を取らせた。

 その反面、優子は雲に気を取られ動けないでいる。今だ!

 

「くらえよ……"恋の―――」

 

 俺は龍に思い切り頭部を振り上げさせ、優子の召喚獣を吹き飛ばす。そして―――

 

 

「―――シャイニー☆ボルテェェエエック"!!!」

 

 

 ―――刹那、誰もが予測しえない事が起こる。

 黒雲から巨大な雷が発生し―――優子の召喚獣目掛けて落とされたのだ。

 

 バリバリバリバリィッ!!

 

 耳をつんざくような雷鳴が響き渡る。

 やがてそこには、バタリとうつ伏せで倒れている優子の召喚獣があった。

 

「まともにくらったな……まだ戦死にゃなってねぇだろうが、相当点数は削った筈だ」

「なんと……まさか雷まで使用するとは……恐るべき能力じゃのう。お主の召喚獣は」

「まぁな。けどその分リスクもデカいけどな」

 

「くっ…! 油断したわ……。まさかこんな技を隠し持ってたなんて……!」

 

 

世界史

Aクラス 木下優子  198点

 

 

 予想通り、優子の点数を最初の半分くらいまで減らすことが出来ていた。

 しかしさすがはAクラスのトップレベル。それでもまだ余裕で戦えるだけの点数が残っている。

 

「木下さん、大丈夫?」

「は、はい……。すみません。勝手な真似をして」

「ううん。気にしないで。でもどうやら聞いていた以上の能力みたいだね。本当、学園長のこだわりにも困っちゃうな……」

 

 姉御の表情が更に強張る。

 召喚獣の腕輪の性能は全て開発者であるあのババァが決めている。だからババァの器量次第で同じ腕輪でもその固有の能力に大きな違いが出ることもあるだろう。それは仕方の無いことだ。まぁ、だとしても腕輪は全部強スキル持ちであることに変わりはないが。

 今思うと、正直よくこんなチートに近い能力をあの堅物ババァが俺なんかに渡してくれたものだ。だが今はその心意気に感謝しておこう。

 

「さて、仕切り直しといくか。秀吉、乗れ」

「うむ。了解じゃ」

 

 秀吉の召喚獣を再び頭部に乗せて浮遊する。

 俺の体感時間では変身してからおそらく五分は経っている筈。龍に姿を変えていられるのは変身時での点数の秒数であるため、残り時間はもう10分もない。

 

「さぁ、今度はこっちの番だ!! 一気に攻めるぞ!」

「分かったのじゃ!」

 

 俺は召喚獣に攻撃の指示を出す。

 すると天井に広がる黒雲が渦を巻き、ゴロゴロと不穏な音を立て始めた。

 

「避けれるもんなら避けてみやがれ!!」

 

 俺がそう叫ぶと、再び雷が大きな音をあげて発生。しかも今度は一ヶ所にではなくフィールド全体に向かって落とさせた。

 

 ドォン! ドォン! バリバリバリバリィッ!

 

「くっ、皆避けて!」

「当たったらタダじゃ済まないわよ!」

 

 

 姉御が優子達にそう指示を出すと、自分も自身の召喚獣を上手く操作し、襲いかかってくる雷を颯爽と避け始める。優子も同様だ。

 が、そんな高度な操作技術を全員が持ってる訳もなく、

 

『きゃあっ! ちょっと危ないじゃない! 邪魔しないでよ!』

『あっ、ごめん! わざとじゃないの! 慌てたらつい………』

『気を付けてよね! 全く!』

『そ、そこまでキツく言わなくても………!』

『ちょっ、二人共!! 上、うえ!』

 

『『え? なに―――きゃぁあああああっ!!!?』』

 

 互いにぶつかり合いバランスを崩した敵の召喚獣目掛け、俺の召喚獣の無慈悲なる鉄槌が下された。

 

 

世界史

Aクラス  横田奈々   76点

       &

      花岡麗    54点

 

 

 一瞬で相手を満身創痍直前にまで追い込む。しかしこれでは終わらない。続けて俺の召喚獣は、その大木のように巨大な尻尾を思い切り斜めに振り下ろした。

 

「ふん……つまらねぇな。もういい、ここでくたばれ!!」

 

『『きゃあっ!?』』

 

 相手が女子だろうが手加減はしない。何度も言うがこれは遊びじゃない。模擬とはいえそれぞれの命を懸けた『殺し合い』だ。そこで負けたのならそれは弱ェヤツや油断したヤツ自身が悪いのだ。

 それを体現するかのように、龍の尻尾による強烈な攻撃は向こうの反撃すら許さずに召喚獣を葬り去った。

 

『ひ、ひぃっ!?』

 

 かろうじて逃れた残りの女子生徒が小さな悲鳴をあげる。さっきの光景を見て怖じ気づいてしまったようだ。 

 

「……おい。この程度で俺達を倒すだとォ……? 夢見てんじゃねェよ!!

 

 すかさずその敵の上空に移動し、口から再び熱線を吐く俺の召喚獣。抵抗する間も与えず相手を文字通り灰塵にした。

 

『Aクラスの私達がこんなあっさり……』

『点数が違い過ぎる……!』

『前の試召戦争から思っていたけど、どうしてあんなヤツがFクラスにいるのよ……!』

 

「凄い……一日目の散々たる結果が嘘のようじゃ」

 

 横でそう感嘆の声をあげる秀吉。だが俺の心情は穏やかではなかった。自分が思っていたのと違う。

 

「おうよ。しかし……姉御や優子にも焼きが回ったもんだぜ。こんなヤツらと徒党を組んだくらいで俺と相棒の首を獲れると思ってたとはな……図に乗るなァ!!」

 

「「っ!?」」

 

「一度勝ったぐれェで、調子に乗りすぎじゃあねェか姉御? 優子、おめェもだ。俺の性格を熟知してるってんならよォ……俺があのまま(・・・・)やられっぱなしじゃ収まらねェヤツだってことをわかってるんだよな? それがなんだこのザマは!! 『男子、三日会わざれば刮目して見よ』って諺を知らねェのか!!!」

 

 舐めやがって、といったニュアンスを込めて俺は二人に告げた。

 そう、俺も秀吉も今日まで身を粉にする思いで力をつけた。それは覗きや盗聴の真犯人を突き止めるのもそうだが、一度敗北を喫した姉御への雪辱を果たすためでもある。当然向こうも俺達がこうして力をつけることを想定し、こちらに負けないくらいの戦力を蓄え、作戦を練り、完璧な状態に仕上げて敵である俺達を迎え撃つものだと思っていた。それに優子は勉学だけに留まらず、あらゆる事に置いて手を抜くという行為をしないヤツだ。それは俺と秀吉が一番よく分かっている。姉御も姉御で優子と同じくそういう人種であることも承知済みだ。

 実際俺も姉御や優子のそんな強さには一目置いているし、隣にいる秀吉だってそうだろう。だからこそ俺は一日目に姉御と戦うことに対して戸惑ったし、Aクラスとの代表戦の時も優子と本気でぶつかり合い、腕輪の能力まで使ったのだ。それも結局、二人を敵としては見ていても、その強さを認めているからだ。この辺りの思いは好きとか嫌いとかそういう単純なものじゃない。最早勉学の出来というよりも、本来持ち合わせているであろう人としての強さが大いにあるんじゃないかと思う。これはあまりこの二人と関わりの無い者や外面しか見ていない者には決して分からないだろう。同じ教職者である鉄人や高橋女史。敵の立場にある雄二や明久。そして同じクラスであり仲の良い霧島や工藤、久保だって同じだ。誰もこの二人を侮る者などいないだろう。むしろ姉御や優子を大して知らないヤツがデかい口を叩こうものならそいつのことを俺は嫌いになる。昔だったらムカついて殴ってしまうかも知れない。実際中学の頃はそんな性格の優子をからかった同級生を泣かせるまでボコボコにしたし、Aクラスとの試召戦争の時も『兄貴なら余裕で勝てる』と抜かしたヤツを強めに叱りつけたこともある。冗談でも許せないのだ。

 

 だからこそ俺は―――こんな体たらく(・・・・)をしやがった二人に怒りを覚えているのだ。

 そして何より……俺は他人に勝負事で手を抜かれるってのが大っ嫌いなんだよ!

 

「お、おい大悟よ。少し落ち着……」

「クソッタレが……!! ムカついてきたぜ……俺も秀吉も大したことねェと思われただけじゃなく、その相手があの二人だってんだからな……フザけやがって―――」

 

 横で秀吉が何か言ってるが気にしない。

 気合いを込め、俺は部屋いっぱいに響き渡る声量で叫んだ。

 

「―――俺達を舐め腐りやがったこと……補習室(じごく)で後悔しやがれェ!!!」

 

 俺の気合いに呼応するかのように、続いて俺の召喚獣が大きな咆哮をあげる。

 

「むぅ、大悟め。スイッチが入ってしもうたか。こうなってはワシでは止められんな……」

 

「っ! 流石は大悟。ものすごい気迫ね……!」

「うん……でもここで怯んじゃダメだよ! さっきも言った通りここは逃げることに集中して! このまま制限時間まで耐えきれば私達の勝ちなんだから!」

 

「まだそんな戯れ言を……ブッ潰してやる……!! "恋の―――」

 

「っ!? また何か来る!」

「また雷が―――いや、違う!」

 

「―――アイシクル☆ブリザード"!!」

 

 技名を宣言し、龍は再び雷―――ではなく、新たな能力のお披露目とばかりに、上空のあちこちに巨大な氷塊を出現させた。氷塊はそのまま物理の法則に従い地面へと次々に落下する。

 

「なにあれ、氷―――きゃぁっ!」

「危ない! このっ……!!」

 

 姉御の召喚獣が得物の刀を抜く。そして優子に向かって落ちてきた氷塊を当たる危機一髪で粉砕した。が、雷と違って氷塊は落下してからもその場に留まり続けるので、向こうからすればかなり厄介な障害物と化す。

 そして俺の予想通り、同じ場所にいれば避けにくくなると思ったのか、姉御と優子の召喚獣はそれぞれ立ち位置を分散させた。俺はそのまま続けて、

 

「これで終わりだと思ったか!! "恋の―――スピニング☆ハリケーン"!!」

 

『ヴォォォォオオロロロロロ!!!!』

 

 ブォォオオオオッ!!

 

「こ、今度は竜巻ーーー!?」

「こんなのアリ!? さすがに避けられる訳ないよ~~!!!」

 

 今度は龍に身体をうねらせるように高速で回転させることで巨大な竜巻を発生させ、容赦なく二人の召喚獣を飲み込んだ。無様に逃げ出そうと竜巻の中でもがいているのが見える。更には地面に落ちていた氷塊をも巻き込み、まるで本物の嵐が来たような凄惨な光景が広がっていた。

 

 その後は簡単なもので、特に苦労もなく二人の召喚獣を満身創痍にまで追い詰めることが出来てしまった。

 

「まさか、ここまでだなんて……」

「っ! 大悟……」

 

「……ここまで圧倒的じゃと、逆に向こうが可哀想に思えてくるのう」

「ふん! 俺はもっと一進一退の展開になると思ってたのに期待外れだよ……さて、そろそろ明久達もケリをつけてる頃合いだからな……悪いがここで終わりにしてやる!!」

 

「「!!?」」

 

 不完全燃焼なのが癪だが時間も迫っているし、本来の目的を忘れてはならないと自分に言い聞かせ、俺は召喚獣に最後の命令を下す。

 その瞬間竜巻がパッと晴れ、二人の召喚獣が露になる。

 

「大悟、今じゃ!」

「おう。トドメだ……自らの無力さと、俺達を侮ったその愚かさを思い知りやがれェ!!!」

「これも勝負の内じゃ。姉上、落合教諭。済まぬ!」

 

「マズいっ! 先生! 逃げ……」

「ダメ! 間に合わな」

 

 

「消し炭にしてやる―――"恋の!! バーニング☆ブレェェェエエエエス!!!!!」

 

 

 

 ―――室内を埋め尽くす程の閃光と爆発音。

 俺の召喚獣から放たれた最後の一撃は、姉御と優子の分身を塵一つ残らず消し去ったのだった。

 

 

 

世界史

 

社会科教師  落合夏音   DEAD

        &

 Aクラス  木下優子   DEAD

 

 

 

 

 

 

 




少し巻きぎみになってしまいましたが、いかがだったでしょうか。戦闘描写を上手く表現出来る能力が乏しいからかなりキツいわぁと思ってます。
恐らく次回くらいで強化合宿編は終わりになると思います。  


感想、意見などありましたらよろしくお願いいたします。

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ
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