バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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バカテスト 世界史

以下の問いに答えなさい。
『西暦1492年、アメリカ大陸を発見した人物の名前をフルネームで答えなさい』


姫路瑞希の答え
『クリストファー・コロンブス』

教師のコメント
正解です。卵の逸話で有名な偉人ですね。コロンブスという名前は有名ですが、意外とファーストネームが知られていないことが多いです。意地悪問題のつもりでしたが、姫路さんには関係なかったようですね。よくできました。


清水美春の答え
『コロン・ブス』

教師のコメント
フルネームはわかりませんでしたか。コロンブスは一語でファミリーネームであって、コロン・ブスでフルネームというわけではありません。気をつけましょう。


島田美波の答え
『ブス』

教師のコメント
過去の偉人になんてことを。


岡崎大悟の答え
『ゲス野郎』

教師のコメント
確かに彼の全ての史実を知ってしまえば、そう思っても仕方がないのかもしれませんね。
 


第五十五問 リア充は死ね!!!

――――一時限目、化学。

 

 半分眠気で意識を失いながら授業を受ける。

 だが、そんな状態でも俺は、現在教室内に広がる違和感を感じていた。

 

 

 ―――静かだな。そして殺気がすげぇ。

 

 

 普段なら勉強どころか静かに授業すら受けられないチンパンジー共が、今日は珍しく一言も声を発さない。しかしコイツらは決して真面目に勉学に取り組むようになったとかではないようで、ある一点の方向を見ながら邪気と怨念にまみれたオーラをこれでもかと放っていた。

 その視線の先には、やけに頬を赤らめている明久の姿がある。そしてその明久が更に視線を向けているのは、朝と変わらず赤面で顔を伏せる島田だ。

 

「………おい雄二」

「なんだ。ロリコン」

「ブチ殺されてぇかコラ」

 

 俺はロリコンじゃない。ただロリが他の人種よりも愛すべき存在なだけだ。

 

「なんだこの異様な雰囲気は。いつもと全然ちげぇぞ?」

「ああそれか。別に大したことじゃないなら放っておけ。それに俺やお前にはあまり関係がないからな」

「そうなのか?」

 

 興味がないのか、あるいは今朝の一件からまた巻き込まれたくないのかぶっきらぼうに俺にそう言った雄二。

 そういえば朝、須川が島田と明久がキスをしていたと言っていたな。ならこのギスギスした嫌な雰囲気はそれのせいか?

 

『では須川君。この場合3molのアンモニアを得るために必要な薬品はなんですか?』

 

『塩酸を吉井の目に流し込みます』

『違います。それでは、朝倉君』

『塩酸を吉井の鼻に流し込みます』

『流し込む場所が違うという意味ではありません。それでは、有働君』

『濃硫酸を吉井の目と鼻に流し込みます』

『『『それだっ!!』』』

『それだ、ではありません。それと答えるときは吉井君の方ではなく先生の方を見るように』

 

 うん、どうやら俺の予想は間違いないようだ。

 しかし明久も馬鹿だな。校舎裏とかならまだしも、わざわざ生徒達がたくさんいるような場所で堂々とキスをするなんてよ。それが後々こうなるってことは簡単に予測が出来るだろうに。

 とまぁ、こんな感じでいつもと違う空気の中、一時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響き、布施は大きな溜め息をついて教室から出ていった。

 

『吉井のヤツ、島田と目と目で通じ合っていやがったぞ………!』

『島田は狙い目だと思っていたのに、あのクソ野郎………!』

 

 お前らみたいな名も無きモブ共じゃ無理だ。諦めとけ。

 

『畜生………! 姫路、木下に続いて島田までヤツに持っていかれたら、このクラスの希望はアキちゃんしかいねぇじゃねぇか………!』

『いや、兄貴と繋がりがあるという点で天ちゃんも可能性があるぞ………!』

 

 やめとけ、どっちもろくな人間じゃねぇから。しかも片方男だし。

 そんな殺意の籠められた野郎共の視線が飛び交う中、島田がピコピコとポニーテールを揺らしながら恥ずかしそうに明久の席に一緒に座ったのが見えた。

 

「………雄二。アイツらはこの剣呑な雰囲気に気がついてないのか?」

「島田はともかく、明久は多分気がついてないだろうな」

 

 そう俺と雄二が話しているうちにも、どんどんと距離を縮めていく二人。そしてそれと比例して膨れ上がる殺気。

 フッ………愚かしい。確かにあれは他の連中から見れば羨ましい光景だろうが所詮は三次元。わざわざそこまで気にする程でもあるまいて。

 さて、俺は同志と約束していた写真&イラストの交換購入会でもやるとするか。そう思い立ち上がって同志の席へと移動する。

 

「……………来たか、同志大悟」

「おう。待たせたな同志ムッツリーニよ。今回も秋葉原で特殊なルートを使って仕入れた良質物を持ってきたぜ」

「……………こっちもかなりの厳選を重ねた。抜かりはない」

「それは期待ができそうだ。んじゃ、早速始めようか」

「……………(コクリ)」

 

 そんな感じで俺と同志は我関せずのスタンスを取り、他の連中が明久達を見て嫉妬の炎を燃やす中、

 

 

「お姉さまっ! 何をしているんですか!? そんなに豚野郎に密着して!」

 

 

 デカい声が響き渡ったかと思ったらなんか来た。

 

「み、美春!? ウチの邪魔をしに来たの!?」

「当然ですっ! そこの豚野郎がお姉さまに密着している姿を見て黙っていられるはずがありませんっ!」

 

 そう言って、明久を親の仇のような鋭い視線で睨み付けるのはDクラスの清水だった。なぜ怒っているのかは、おそらく島田を女性として愛しているがゆえに他の男………しかもよりによって恋敵の明久とイチャついてるのが許せないんだろう。ま、俺にとっちゃどうでもいいがな。

 

「み、密着って、仕方ないでしょ!? 代わりの卓袱台はないし、狭いんだからくっつかないとダメだし……」

「お姉さま。それなら姫路さんのところでいいじゃないですか!」

「そ、それは……。ほら、瑞希はきちんと勉強するから邪魔したら悪いでしょ? その点、アキなら邪魔になってもならなくてもどうせ成績は悪いんだし……」

「美波。僕、微妙に悪口を言われてる気がするんだけど」

 

 安心しろ。お前はちゃんと馬鹿にされてんだよ。

 その後はなんか島田が明久の為に作ってきたとか言う弁当の内容を清水が暴露したりして、島田が恥ずかしさのあまり清水を黙らせようと叫んでいた。その中でもさすがにご飯にハートマークは直接的過ぎないか? と俺は思ったりもしたが。

 おっと、そんな話はどうでもよかったな。それよりもこっちの方が大事だ。

 

「さて、本日一枚目のイラストはこれだ! 『妹属性を持つ貧乳女子高生のスクール水着イラスト』! しかも高解像かつカラーに仕上げてある!」

「……………す、素晴らしい………!!(ボタボタボタ)」

「そして更に、サービスカットとして今回は制服半脱ぎバージョンもセットでつける! しかも値段は通常価格の二割引だぜ!」

「……………迷うまでもない。即購入だ………っ!(ドバドバドバ)」

「ありがとナス!」

 

 そしてイラストを渡し、俺は代金を受け取り財布にしまう。ふふ、同志のやつ、鼻血を出しながら嬉しそうにしやがって……これだからこの事業はやめられねぇなぁ! 俺の作品が他の誰かを笑顔にして、尚且つ二次元の良さを分かってもらうことこそがダイゴブックスの経営理念だからな! 

 とまぁ、こんな感じで俺達盛り上がっていると、突然後ろからこんな声が聞こえた。

 

「―――だって、ウチとアキは付き合ってるんだもの」

「畳返しっ!!」

 

 シュカカカカッ

 

『『『―――チッ』』』

 

「ん? なんだ?」

「……………?」

 

 島田がそう告げた瞬間、明久が畳を返し、そこに無数のカッターが突き刺さるのが分かった。

 おお、あの数と威力はマジで殺す気で投げたようだな。

 

「お、お姉さま………? 付き合ってるなんて、冗談、ですよね………?」

 

 うちひしがれたように狼狽える清水。そんな彼女に対し、島田は間を置かずに返した。

 

「冗談なんかじゃないわ。ホントの話」

「そ、それじゃ、美春の幻覚だと思っていた今朝のキスも、本当に……?」

「……うん」

 

 ああ、やっぱりキスしてたのか。

 

「だからね、美春。これからもウチの」

「……男なんか」

「あくまでもお友達として」

「……男なんかが存在するから、お姉さまが……」

「美春、聞いてる?」

 

「男なんかが存在するからお姉さまが惑わされるんですーっ!」

 

 すると、清水が突如弾かれたように動き出した。その矛先は勿論―――明久だ。

 まぁ、別にここで明久が処刑されようと知ったことではないな。それよりもこっちの方が俺にとっては重要だ。

 

「さて、あれはほっといて続きを再開しようか」

「……………(コクリ)」

 

「この豚野郎を始末します! そして美春が第二の吉井明久としてお姉さまと結ばれるのです!」

「ちょ、ちょっと清水さん!? かなり錯乱してない!? 僕を始末したところで入れ替わることは難しいと思うけど!?」

「極力身体に傷をつけないように始末した後、剥いだ皮を被って吉井明久になりすまします!」

「それ凄くグロいよ! ちょっと本気で考えていそうだし!」

「大丈夫です! 日本昔話で狸さんもそうしていました!」

「しかも原点は意外と可愛い!」

 

 そんな会話と共に、清水と明久による攻めと逃げの攻防が背後で一進一退に繰り広げられている。だがおそらく軍配は清水に上がるだろう。嫉妬に狂った女子ってのは時に思わぬ力を発揮するものだからな。

 するとそれを察したのか、明久は教室の隅にいる俺達の所に来た。

 

「助けてムッツリーニ! 大悟! 清水さんを止めて!」

 

 そう藁にもすがる思いで助けを乞う明久。おそらくムッツリーニの素早い動きと俺の高校生離れした腕力なら清水をどうにか出来ると思っているのだろう。まぁ、実際出来ると思うが。

 そんな明久に対し、俺達は静かにこう言ってやった。

 

 

「……………邪魔をするな。裏切り者」

「死ぬなら一人で死んでろこのリア充が」

 

 

 明久は泣いた。

 

「くそっ! イラストを見てるフリをして飛び回る清水さんのスカートを目で追っているムッツリーニも薄情な大悟も大っ嫌いだ!」

「……………!!(ブンブン)」

 

 否定しながらも同志の視線はしっかりと清水の下半身を捉えている。異名は伊達じゃないな。

 

「男なんてこの世からいなくなってしまえばいいんですっ! お姉さまに必要なのは美春なんです!」

「待って清水さん! キミにだってお父さんはいるでしょう? そんな哀しいことを言っちゃダメだよ!」

「アレは誰よりも最初に消えるべき男ですっ!」

 

 家族間で何があったんだろうか。

 

「えっと……何かあったの?」

「……思い出したくもないです」

 

 声のトーンが一回り低くなる清水。よっぽど嫌な事があったらしいな。

 父親と娘というカップリングは同人界隈じゃあまり珍しい組み合わせではないのだがな。三次元って難しいな。

 

「とにかく豚野郎は消えるべきです! そして美春はお姉さまと結婚して、生まれてくる娘にお姉さまの『美波』から字を取って『美来』と名付けるのです!」

「待つんだ清水さん! 息子が生まれたらどうするんだ!」

「男なんか『波平』で充分です!」

 

 国民的アニメキャラになんて侮蔑的発言を。

 

「その前にウチと美春じゃ子供は出来ないから!」

 

 そんなことはない。今は人工受精や性転換手術といった方法があるため、女同士でもそれらを用いれば子供は作れるんだぞ? 全く近頃の医療技術の発達は凄いよな。

 だから俺はいつか、女性の見た目が小学生くらいから一切成長しなくなるような素晴らしい技術や薬が開発されることを心より願っています。

 

「さぁ、無駄話は終わりです。五秒差し上げますので神への祈りを済ませてください」

 

 ゆっくりと清水が明久に迫っていく。これはもう明久も万事休すか?

 

 

 ガラッ

 

 

「さぁ、授業を始めるぞ。今日は遠藤先生は別件で外しているので俺がビシビシ―――ん? やれやれ………また清水か………」

 

 

 タイミングよく扉が開き、姿を表したのは我らが宿敵、鉄人だ。そして清水を見て溜め息をつく。

 

「清水。授業が始まるから自分の教室に戻るように」

「西村先生! 今日だけは美春を見逃してください! 特に大事な用があるんです!」

「それはどんな用だ?」

「はいっ! 今日は『この教室の男子を全て殲滅する』という特に大事な―――」

 

 

 ピシャン

 

「今後この教室への立ち入りを禁じる」

 

 

 出禁宣言と共に、清水は鉄人によって教室の外へ放り出された。

 それでもなお抵抗を続ける清水だったが、鉄人の迫力ある注意喚起を受けたことでようやく引き下がった。

 

 

『お姉さま………! 卓袱台だから豚野郎の近くにいるというのなら、美春にも考えがありますからね………!』

 

 

 そう不穏な言葉を残して、清水は消えた。ふぅ、これで静かになったな………。うんうん、よかったよかった。さて、俺も授業の用意をしなくちゃ―――

 

 サッ

 

 ガシッ

 

 ん? なんだ、俺の手首が掴まれたぞ?

 

「土屋、岡崎。今更隠そうとしてももう遅い。それらは全て没取だ」

「「ちくしょぉぉおおーーーっ!!!」」

 

 

 

 俺と同志は泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………くそったれ」

 

 鉄人が淡々と授業を進める中、俺は無性にイラついていた。

 それは勿論、あのチンパンジー野郎に俺と同志が苦労して集めたお宝達を全て没収されたからなんだが、そんな状態の俺の神経を逆撫するかのように、俺の席の近くでは明久と島田がお互いの髪を触り合い楽しそうにしていやがる。

 

『『『……………』』』

 

 なんだろう。俺はロリ以外の三次元になど一切興味がないはずなのに、今の明久を見てるとメッチャ腹が立つ。俺がこんなにも不幸な目に遭っているというのに………そうか。これが俗に言う『リア充爆発しろ』っていう感情なのか。よし、覚えた。

 だが、ここで明久や島田に八つ当たりをするのは筋違いというもの。仕方ない、ここは大人しく心の中で中指を立てるだけに留めておこう。

 

 

 

『『『もう我慢ならねぇーーーっ!!』』』

 

 

 

 が、他のヤツらは明久達の桃色空間に耐えきれなかったようで、遂に感情を爆発させたかのような怒号をあげた。うるせェ。

 

『さっきから見てりゃあ、これ見よがしにイチャイチャしやがって!』

『殺す。マジ殺す。絶対的に殺す。魂まで殺す』

『……お姉さまの髪に触るなど、八つ裂きにしても尚、許されません……!』

『出入り口を固めろ! ここで確実に殺るぞ!』

 

 そして全員が一気にカッターを構え、投擲の姿勢に入る。だからうるせェって………。

 

「そうはいくかっ! 僕の畳返しを破れると―――」

『全員カッターの投擲終了後、間髪容れずに卓袱台を叩きつけるのですっ! 決してお姉さまに当たらないよう注意するのですよっ!』

『『『了解っ!』』』

「お姉さま! 早くこちらに―――」

 

 

 

「うるせェ!! 静まりやがれてめェらァ!!!」

 

 

 

『『『!?』』』

 

 さすがに色々あってイラついてる中、周りが騒がしくなったことに耐えきれなくなり、俺は大声を出して野郎共を鎮圧する。

 

「たかが三次元のイチャイチャごときで一々騒いでんじゃねェよゴミ共!! こっちはムカつくことが重なったおかげでイライラが溜まってんだよこのクソッタレが………!! そういうことは今じゃねェ、後でやるんだよォ!」

 

 そう言うと、さっきまでの殺気が嘘のように消え失せ、武器を構えたままではあるものの、皆は大人しくそれぞれの席に戻っていった。

 

「清水………てめェも俺の苛立ちが噴火しないうちに教室に帰りな」

「岡崎先生! ですが、美春はお姉さまの為を思って―――」

 

 懲りない清水が俺に反発しようとした時、

 

 

「お前ら! 今は授業中だぞ!!」

 

 

 とうとう鉄人の一喝が入り、教室内に真の静寂が訪れる。

 

「清水。二度目の警告だ。おとなしく自分の教室に戻れ。それと、もう一度言うがこの教室への出入りを禁止する。わかったな?」

「……分かりました」

「お前らも授業中に遊ぶんじゃない。そういうことは休み時間にやれ」

 

 流石に鉄人に二度も念を押されて頭が冷えたのか、そのまま明久を睨み付けながら教室を出ていこうとする清水。

 すると、その間際にこっそりと俺に耳打ちしてきた。

 

(岡崎先生。お願いです。美春と協力してあの豚野郎の始末を!)

(あ? 断る。なんで俺がそんなめんどくさいことをしなきゃならんのだ。第一俺は三次元の色恋沙汰なんぞには興味がない)

(ですが、もしお姉さまと豚野郎がくっつくような事態になってしまえば、とんでもない事態が待ち受けているんです!)

(とんでもない事態だと? 一体それはなん―――)

 

 

 

 

 

(………妹の葉月ちゃんにも、豚野郎の魔の手が伸びてしまうかも知れないですよ?)

 

(!!!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺にそう言い残して、清水は俺の前から立ち去った。

 それからは特に何事もなく、鉄人の英語の授業はチャイムと共に終わりを告げた。その後教室から出ていくのを見計らい逃げようとする明久と、それをさせまいと武器を構えるクラスメイト達。そして俺は―――

 

 

Go for It(殺っちまいな)!!」

 

『『『OK!! Let's Party!!!(さぁ、血祭りの始まりだ)!!』』』

 

 

 ―――いち早く号令をあげて、明久の逃げ道を塞がせた。勿論そこには清水もいる。

 

「なっ!? 大悟貴様! 僕を守ってくれたんじゃないのか!?」

「黙れ。この世全ての富を独占しようとする邪悪め。貴様ごときに愛しの葉月ちゃんは渡さん!!」

「なんでそこで葉月ちゃんが出てくるのさ!? あの子は関係ないじゃないか!」

「ほざくな虫ケラ! そうやってハーレム系主人公よろしく姫路やら島田やら挙げ句の果てには葉月ちゃんに至るまで周りの女の子かっさらっていきやがって! 第一俺はな、二次元三次元どうこうよりもお前が幸せになることだけはハナから気に入らないんだよバーカ! てことで者共! ヤツを殺せぇぇええっ!! ヤツの首を獲った者には後で褒美(エロイラスト)を授けるぞぉぉおおッ!」

 

 

『『『了解!! くたばりやがれ吉井ぃーーっ!!!』』』

 

『死になさいこの豚野郎ぉーーっ!!』

 

「大悟ぉおーーっ!! この腐れ外道がぁあーーっ!!」

 

 

 武器を構えた野郎共と清水が敵に向かって突貫。対する明久は勝ち目がないと分かったのか、俺に捨て台詞を吐くと尻尾を巻いて逃げ出した。あーすっきりした。やっぱりリア充が酷い目に遭っているのを見るのはなんとも気分がいいな。これが三次元の感情の一つか。悪くないだろう。

 

「おい、大悟」

「あん?」

 

 飛び交うカッターや卓袱台を避けつつも清水の怒りのパンチをくらっている明久の無様な姿を見ていると、突然雄二から声をかけられた。

 

「なんだ雄二? 今丁度リア充が撲滅される風景を見て楽しんでいる最中なんだが」

「それどころじゃねぇ。ちょっとこっちへ来い。話がある」

「話だと?」

 

 そう告げる雄二は珍しく神妙な面持ちをしていた。そのままヤツの卓袱台に移動すると、同じく深刻そうな顔をする秀吉とムッツリーニが座っている。

 

「んで、何のようだ? やけに真面目な顔してよ」

「ああ。明久のせいで面倒なことになりそうなんだ」

 

 溜め息混じりの雄二の台詞。なんだ、また明久絡みか。強化合宿の時といい、必ずアイツは何かしら関わっていやがるよな。

 何事かと俺が問うと、同志が静かに答えた。

 

 

「……………Dクラスで試召戦争を始めようとする動きがある」

「なぁにそれぇ」

 

 

 うわぁ、聞くだけでめんどくさそうなんだが。

 

「あれか? その標的が俺達Fクラスとかそんな感じか?」

「その通りだ。そしてその理由だが―――」

「あーはいはい。何となく分かるよ。清水だろ?」

「そこまで分かってるなら、説明の必要は無さそうだな」

 

 そりゃあ、わざわざ上位クラスのDクラスが下位クラスである俺達Fクラスを攻めるなんて、今の状況的にそれくらいしか考えられないからな。多分設備のランクを落として卓袱台をミカン箱にし、島田と明久を遠ざけるのが目的だろう。

 しかも俺達は先日の強化合宿で覗き犯のレッテルを張られている。その為クラスを纏める立場である代表の平賀も発言力を無くしている今、清水達Dクラス女子勢を止められるものがいないのも厄介になる。

 

「ったく、ほとほと貧乏くじを引かされるよ俺は。強化合宿じゃババァの汚ェ裸を見せられてかつ停学。そして今朝は警察に捕まりそうになって、鉄人にはお宝を奪われ、そんで今はDクラスに目の敵にされるんだからな」

「……………苦労が絶えない」

「途中の鉄人の件はお主らの自業自得ではないのかの………?」

「「???」」

「いや、なぜそこで『え? 俺達なにか悪いことした?』みたいな顔ができるのじゃ………」

 

 秀吉もおかしなことをいうな。俺達がなにか悪いことをしたのか?

 

「おいお前ら、話を脱線させるな」

「おっと、すまねぇな。Dクラスのことだったか。仮に戦争になったらこっちに勝機はあるのか?」

「厳しいな。うちのクラスの連中は朝からの騒ぎのせいで点数を補充出来ていないし、唯一戦力が残ってる女子生徒はたったの二人。万全の態勢であっても作戦が無ければ太刀打ちできないというのに、点数が残ってるのが姫路と島田だけとなると、よほどのことが無い限り勝ち目はない」

 

 成る程、それはヤバイな。確かDクラスの女子は二十人くらいいたはず。いくらこっちに強靭☆無敵☆最強の姫路がいたとしても多勢に無勢だな。

 

「ちなみに今のところその対策は?」

「まだない。何せついさっきムッツリーニから入ってきた情報だからな。策を考えるにしても時間がかかる」

「向こうもそれなりに準備の期間を要してくるとは思うが、それでも厳しいのぅ」

「……………時間との勝負」

「オーマイガー」

 

 

 そのままいつも通り作戦会議に入る俺達。

 しばらくすると、クラスメートと清水によってボコボコにされた明久がこっちに加わってきた。その有様を見て俺は心の中でこう思った。

 

 ―――メシウマ。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の登場人物

明久←非モテ集団&清水によってフルボッコ。でもなんとか生き延びた。
雄二←明久がボロボロになっている姿をみてちょっとニッコリ。
大悟←三次元だがリア充は死ね!!! 
秀吉←今回ワシは出番が少なかったのぅ……。
ムッツリーニ←鉄人に大悟同様お宝を奪われガックシ。鉄人許すまじ。
清水←死になさい豚野郎!!
島田←絶賛誤解中。
姫路←同じく絶賛誤解中。

それではまた次回。
感想、意見などありましたら宜しくお願いいたします。

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ

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