バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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バカテスト

問 以下の問いに答えなさい。 
『味噌に足りない栄養素と、それを補うために
 味噌汁に入れると良い具材の例を上げなさい』


吉井明久の答え
『ネギ』

岡崎大悟の答え
『ジャガイモ』

教師のコメント
正解です。
他にも玉ねぎや春菊などのビタミンCが含まれる野菜がいいでしょう。味噌はビタミンB群が豊富で、大豆蛋白質も含まれるのでとても健康に良いです。反面、塩分が多めですので、摂りすぎには注意しましょう。


姫路瑞希の答え
『ビタミンC オレンジ 塩酸』

教師のコメント
それは料理ですか?


木下優子の答え
『血』

教師のコメント
…………………………はい?




第五十七問 今日も今日とて作戦会議

―――大悟視点。

 

 

 小暮先輩との話を終えてFクラスに戻り、その後明久達とも合流してしばらくたった昼休み。

 

 

「瑞希。お昼にしない?」

「あ、はい。美波ちゃん」

 

 そう言って立ち上がる美波と姫路に、スッと明久が近づいて声をかけた。

 

「あ、美波」

「何よアキ。ウチになんか用?」

「えっとさ、今朝言ってたお弁当なんだけど……」

 

「なぁに、アキ? ウチにあそこまで恥をかかせておいて、まさかお弁当をたかろうって言うのカシラ?」

 

「ごめんなさい。心の底からごめんなさい」

 

 そう言って土下座する明久をよそに、島田は大変ご立腹な様子のまま姫路を連れて去っていった。

 その背中を見て沈んだ表情になる明久。それを見た俺はやれやれと立ち上がり、ヤツの肩にPONと手を置いて言った。

 

 

 

「怒られてやんの(笑)」

「喧嘩なら買うぞコラ!!」

 

 

 

 怒って俺に飛び掛からんとする勢いでくらいついてきた。お前みたいなリア充してたヤツを俺が優しく慰めると思ったら大間違いだ馬鹿め。

 

「なんだ明久。島田が作った弁当は貰えなかったのか」

 

 そんな声と共に、自分の弁当を持った雄二と秀吉が俺達のところへやって来た。

ん? 同志の姿が見えないな。

 

「うん。美波のご機嫌が斜めで貰えなかった。凄く期待してたのに……」

「残念だな明久。だが、まさか島田があそこまで怒るとは思わなかったぜ。よっぽど明久の勘違いメールが気にくわないみたいだな」

 

 秀吉から話を聞いたところ、明久が正直に島田に真実を打ち明けたところ、予想通りメチャクチャ怒ってたらしい。まぁ勘違いとはいえ接吻までしちまった後でのカミングアウトだからな。ああなるのも無理はない。

 

「まぁ、この状況で手作り弁当など渡したら、また清水が乗り込んでくるかもしれんからな。諦めることじゃ」

「それはそうなんだけどね……」

「ざまーみろバーカ(笑)」

「殺し合いをご所望なら上等だ!! そこに直れカス野郎!」

「やめるのじゃ明久! トンカチで大悟の頭をカチ割ろうとするでない!」

 

 明久を秀吉が慌てて羽交い締めにして止める。いやぁ愉快愉快。やはり傷心中の元リア充を弄るのはとても楽しいな。

 

 

 

 ガラッ

 

「……………ただいま」

 

 そんな中、扉を開けて同志が教室に帰ってきた。どこかへ行っていたのだろうか。

 

「どうしたのムッツリーニ? また何かあったの?」

「……………(コクリ)」

「さっき言っていた情報とやらかの?」

「……………今朝よりも更によくない状況になってきている」

 

 そう告げて、同志は卓袱台の上にお得意の小型録音機を置き、再生ボタンを押した。

 

 

 Pi

 

 

『あ、あのっ、土屋君っ。岡崎君っ。明久君のセーラー服の写真とイラストを持っているって噂は本当ですかっ?』

『情報が早いな。さすがだ。だが―――(パチン)』

『…………一枚100円。二次配布は禁止』

『こっちはモノクロで200円。カラーと台詞付きなら300円だ。こっちも二次配布や無断転載は禁ずる』

『二次配布は禁止ですか……。残念です……。でも、私個人で楽しむだけでも充分に』

 

 

 Pi

 

 

「……………ファイルを間違えた」

「ねぇ何!? 今の会話は何!? 僕にとっては今の会話こそが十二分に良くない情報なんだけど!」

「安心しろ。これはひ―――お得意様とのやり取りだ。特に珍しくもない」

「そうだぞ明久。こんなつまらんことでガタガタ喚くな」

「認めない! 僕は自らの女装写真が売買されてることが日常の一コマだなんて絶対に認知しないっ!!」

 

 そう喚く明久。

 だが残念だったな。お前の女装写真は多くの顧客にかなり需要があるんだ。そう簡単に稼ぎ所を手放してたまるかってんだ。HAHAHA。

 

 

「……………こっちが本物」

 

 

 Pi

 

 

『うーし、そんじゃあ『雄二×翔子 ~獣と化した幼馴染み~ オリジナルドラマCD』の収録はじめっぞ! 次の場面は雄二と霧島がベッドの上でお互いに絶頂を迎える寸前のシーンだ。二人とも準備はいいか?』

『………うん。頑張る』

『やれやれ、気は乗らぬが演技となれば手は抜けんのう………仕方ない』

『同志。マイクや音声機材の調子はどうだ?』

『……………問題なし。いつでもいける』

『よし、じゃあ本番5秒前! 4! 3! 2! 1……っ!』

 

 カチッ

 

 

『………あぁっ♡ あっ、はっ♡ ゆ、雄二っ………そんなに激しくされたら……私……ひゃああんっ♡♡』

『くっ………! 凄いぞ翔子……!! お前の中、すげぇヌルヌルで締まりやがる。気持ちいいぞ……!』

『わ、私も……とても気持ちいい………っ♡♡♡』

『くっ、はぁっ、だ、駄目だ………! もう我慢が出来ねぇ……出すぞ翔子!』

『うん……来て♡ 私のナカに………雄二の熱くて濃厚なせ』

 

 

 

 Pi

 

 

 

「……………おかしい。また間違えた」

「おいおい同志。まだこれ完成前なんだからあまりむやみやたらに流しちゃあかんぜ」

「……………すまない」

「ちょっと待て!!! なんだ今の身の毛もよだつような会話の内容は!? 俺の知らないところでなにやってやがんだテメェら!!」

「あん? 別にただの収録だが?」

「……………どこにも変なところなんてない」

「むしろ変なところしかねぇんだよバカ野郎共!!! しかも秀吉! なんでよりにもよってお前まで参加してるんだ!」

「いやぁ………大悟に『お前のその演技力が必要なんだ!』と迫られての……断るわけにもいかずつい」

「うるさいな雄二。つまらないことで一々騒がないでよ」

「そうだ。それに霧島にもちゃんと許可は取ってある。なら文句はないだろう」

「……………契約の下に行っているから合法」

「一番大事な俺の意見が入ってねぇだろうが!! くそっ! 最近翔子が珍しく帰り道についてこないと思ったらこんなことしてやがったのか………! ならその音声ファイルをよこしやがれ!」

「ええい黙れ雄二! これを見て大人しくしてろ!!」

 

 そう言うと、明久は先程使った例の船越女史のイラストを雄二にバッと広げて見せた。

 

 

「おえぇぇぇぇえええっ!!!」

 

 

 雄二は白目を向いて吐いた。そして気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――閑話休題

 

 

「ああクソ、吐き気と頭痛が止まらねぇ………」

「しっかりしろ雄二。お前がそんなんじゃ話が進まねぇぞ」

「誰のせいだこの野郎!」

 

 気絶した雄二を蹴り飛ばして無理矢理起こし、俺達は再び話し合いに戻る。

 

 

「……………今度こそ本物」

 

 

 ポケットからまた別の盗聴機を取り出した同志。そして再生ボタンを押す。

 

 

 Pi

 

 

『Fクラスの様子はどうだ?』

『何かまたバカなことをやっていたようで午前中は点数補充もやっていないみたいだ。あの様子だと、こっちの意図に気付くこともないだろうな』

『そうか。それならいい。当面は俺達も点数補充をして、向こうにこちらの動きが気取られたら即座に宣戦布告を行おう』

『了解』

 

 

 Pi

 

 

 ここで音声は終了。しかし音質が悪くノイズがかかっており、誰の声かが分からない。

 

「おい同志。これはなんだ? Dクラスのヤツらか?」

「……………(フルフル)」

 

 首を横に振って否定の返事をする同志。じゃあ一体誰の会話だろうか。

 

「……………これはBクラスの会話」

「Bクラス!? どうして!?」

「今の会話じゃと、BクラスはワシらFクラスに試召戦争を仕掛けようとしておるようじゃな」

「てことは根本の野郎か。あのゲス野郎め、随分と姑息な手を考えてくれたもんだ」

 

 雄二が苛立たしげに舌打ちをした。

 根本か……アイツが絡んでいるということはおそらく俺達への仕返しが目的だろうな。全く、あそこまで辱しめを与えたのにまだ懲りないとは。ひょっとしてドMなのかアイツ?

 

「だが、根本の目的は多分仕返しだけじゃない」

「え? 違うの?」

「それなら他の目的は一体なんなのじゃ?」

 

「恐らくだが……自分への非難を抑えることだな」

 

 非難? それが俺達に戦争を仕掛けることとどう繋がるんだろうか。

 

 

「根本は元々人望が皆無だったが、四月の戦争で卑怯な手を使ったのにも関わらず俺達に勝てなかったことで更にクラスの中での地位は厳しいものになった。更に先週の覗き騒ぎの件もある。今や根本はBクラス内で居場所なんかないだろう」

「そりゃそうだ。だがそれがなんだというんだ?」

「そこで質問だ。国情の不安が顕著になった場合、為政者はどういった対応をすると、手っ取り早く大衆の不満を抑えられると思う?」

 

「「???」」

 

 急に雄二が変な事を言い出した。

 何を言っているのか分からず、明久と一緒に首をかしげる。

 

「二人とも理解出来ておらぬようじゃぞ、雄二よ」

「やれやれ……、つまり簡単に言うとだな『大衆の不満を抑えるにはどういった行動が適切か』ということだ」

 

 ふむふむ。なるほど、そういうことだったのか。

 つまりどうやって国民を黙らせればいいかってことだろ? それなら答えは簡単じゃないか。

 

 

 

「香水をつける」

「全員始末する」

 

 

 

「このバカどもが」

「恐ろしいほど奇抜と猟奇的な発想じゃの」

「……………度肝を抜かれた」

 

「「え? 何かおかしかった(か)?」」

 

 明久のよくわからん珍回答はともかく、俺のは別に変じゃないと思うんだが。“雷帝”と呼ばれたロシア帝国の皇帝イヴァン4世やローマ帝国の暴君ネロ・クラウディウスだってそうやって国を動かしていたんだぞ?

 と心の中で呟いていると、雄二がハァと溜息を一つつき、口を開いた。

 

「全く……いいか? その答えは『外部に共通の敵を作ること』だ。同じ敵を持つ人間というものは若干の不和があったところで結束し易いからな」

「そんじゃ、根本の狙いってのは……」

「自分へ向けられた怒りや不満を俺達に肩代わりさせて、自らの恨みも晴らす。あわよくばFクラスを完全に打倒することで発言力も取り戻したい。そんなところだろうな」

 

 雄二が分かりやすく説明してくれたおかげで、ようやく根本が戦争を仕掛けようとしてくる動機が理解できた。要は『覗き騒ぎの主犯を粛清した』という大義名分があれば発言力のない自分でもクラスを動かすのは可能になるってことか。

 なんつーか、マジでねちっこいやり方しかしてこないな。根本は。

 

「しかし、そうなるとちょっとやそっとの理由では戦争は回避できんじゃろうな。いつもならまだしも、今のワシらは点数補充ができておらん」

「その通りだ。この状況じゃDクラスならともかく、Bクラスから勝ちをもぎ取るなんて不可能だ」

「んじゃどうするってんだよ?」

 

 さっき同志が言っていたように、状況は今朝よりも酷くなっていやがる。オマケにBクラスはおよそ半数が女子であり、残った半数の男子も朝から点数補充を行っている。

 殆どが男のクラスである俺らが今更点数補充をしたところで間に合わんだろう。

 

「ならどうすんだ? なんの策もなしに勝てるほどBクラスは弱くねぇぞ?」

「大悟の言う通りだよ。一体どうするつもりなのさ?」

 

 俺と明久が問い詰めると、雄二は腕を組みながら言った。

 

 

「まずは時間を稼ぐんだ。Bクラスに宣戦布告されるまでの時間をな」

「時間稼ぎだと?」

 

 

 一体それになんの意味があるんだ、と雄二に連続で問う。

 

「いいか? Bクラスに宣戦布告されたら、俺達は戦うしかなくなる。だが、今はまだ宣戦布告を受けていない。つまり、まだ戦争を回避できる可能性があるってことだ」

「でも、根本君には戦争をする理由がたくさんあるんだよ? とてもやめてくれそうにないよ」

「ああ。だから発想を変えて、逆にBクラスが戦争を出来ない状況を作るんだ。大悟、試召戦争の大原則は分かるか?」

 

 大原則? そうだな……。

 

「一クラス同士のタイマン勝負ってところか?」

 

「大正解だ。つまりそれにのっとって俺達が他のクラスと戦っていれば、Bクラスはルール上、その間は手が出せなくなるってこった」

「なるほど。その間はBクラスから宣戦布告をされずに済むし、戦争後は点数補充をすることができる、ということじゃな」

「その通りだ」

 

 確か試召戦争のルールとして、一つの戦争が終わった後には点数補充をするというものがあった。これは連戦になった際の公平を保つ為であり、また下剋上の泥沼化を防ぐ役割がある。なので勝利したクラスは消耗した点数を回復する期間が与えられるのだ。

 もしこれが無かったらどんなに強いクラスでも容易くやられてしまうからな。

 

「そうすれば、Bクラスも簡単には攻めてこないってことか」

「ああ。現に向こうは一度痛い目を見てるからな。姫路、大悟、ムッツリーニ。そして前回壁を破壊するという想定外の行動に出た明久……そんなヤツらが万全の状態になったと知れば、よほどのことがない限りはおとなしくするはずだ」

「じゃが、その肝心な相手はどうするのじゃ?」

 

 それが一番の問題だ。

 俺達は四月にAクラスに戦争を仕掛け、結果負けている。試召戦争のルールでは負けたクラスは三ヶ月間宣戦布告が出来ないことになっている。

 そのためBクラスとの戦争を避けるためには他のクラスに攻め込んでもらうしか方法はないのだ。

 

「勿論相手はDクラスだ。ヤツらに宣戦布告をさせて、その戦争をやり過ごして点数補充を済ませる。Dクラス程度なら勝つとまではいかなくても負けない程度の戦いが出来る。幸いにもアイツらは開戦派と非開戦派の論争で点数補充を終えていないからな」

「ふむ。それなら敵はDクラスの半数の女子か。Bクラスと戦うよりはマシだな」

 

 本当ならどっちとも戦いたくねぇが。背に腹は変えられない。

 

「あれ? でもさっきの話だと、やっぱり戦争はするんだよね? だったらなんで午後も点数補充に使わないの?」

「お前の耳は飾り物か? さっきのムッツリーニの情報を思い出せ」

「情報? うーんとね―――」

 

 さっきの情報というと、根本達が話していた会話だろうか。確か動きを気取られたらどうとか―――

 

 

 

「ムッツリーニ! 大悟! 僕の写真とイラストが安すぎるよ! 秀吉はそれぞれ500円なのに!」

 

 

 

 ―――いやそっちかよ。

 

「ほほぅ。500円か……。三人とも、それらについて少々話を聞かせてはもらえんかの?」

「……………(((サッ)))」

「ええい! そうやって顔を背けるでないわー!! 大悟このぉおーっ!」

「いでででで! わがっだ! わがっだがら頬をづねるなぁ!!」

 

「お前ら全然危機感抱いてないだろ?」

 

 膨れっ面になった秀吉が俺の頬を摘んで引っ張る。やめろ、お前がそれをやっても可愛いだけだ。

 

 

「さっきの情報で根本は『こちらの動きを気取られたら即座に宣戦布告を行う』って行ってただろう?」

「ああ、そっちね。うん。確かに言っていた」

「つまり向こうは俺たちに気づかれるまで点数補充を続けるつもりだ。これは逆に言えば、俺達の動きが勘づかれなければ何もしてこないことになる」

「ふむ。なら明日までは猶予がありそうじゃな」

 

 あれ? なんで明日なんだ? と思ったが、確か今朝鉄人が『試験召喚システムのメンテナンスが遅れている』と言っていたのを思い出した。

 それならBクラスが今日中にいきなり仕掛けてくるようなことはないか。

 

「それじゃ、僕らはこれからどうするんだい?」

 

 明久がそう問いかけると、雄二は任せろ、といった余裕綽々の表情で言った。

 

「Dクラスからの宣戦布告を受ける為に工作をする。期限は今日中までだが、なんとか上手くやってみせるさ」

「具体的な案はあるのか?」

「簡単だ。今朝の一件を利用する」

 

 今朝の一件というと……島田が明久がイチャイチャして清水がぶちギレたやつか。

 なるほど、また明久と島田を恋人同士に見せつけ、清水の嫉妬心を増幅させて宣戦布告に持ち込むつもりだな。相変わらず悪いヤツよのぉ……。

 

「てことで明久。お前には島田との恋人役を演じてもらう」

「えぇぇっ!? そんなの無理だよ! 美波はあの話で思いっきりヘソ曲げちゃってるんだよ!?」

「それでもなんとかするんだ。演技に関しては秀吉。台本に関しては大悟に任せる」

 

 え? 俺が書くのか? 明久と島田のイチャイチャ展開シナリオを? めんどくせぇ~。

 

「了解じゃ。大悟もオッケーじゃろ?」

「えぇ………しゃあねぇな」

 

 秀吉に念を押され、俺はしぶしぶとそれを引き受けた。

 

「ムッツリーニは情報収集及び操作。俺は作戦が成功した時の為に対Dクラス戦の用意を始める」

「……………わかった」

 

「よし、そうと決まれば早速行動開始だ。頼んだぞお前ら」

「「「おうっ」」」

 

 

 そして俺達はとっとと飯を食い終え、それぞれの任務に移った。

 やれやれ、正直気は進まないがやるとしますかね。えーと、まずどんなシチュエーションにするかを決めるか。そしたら次はそれっぽい台詞を考えて―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――しばらくして。

 

 

 

「―――うし。こんなもんだろ」

 

 なんとか短時間で詰め込めるくらいの内容が出来上がる。所要時間はおおよそ五分。

 内容的にはまだまだ手を加えたいところがあるが、時間もないからな。

 

「おーい明久。出来たぞー」

 

 そう言って明久に原稿を見せに行こうとすると、

 

 

 

「絶対にイヤ」

 

 

 

 帰ってきていた島田が腕を組みフンッと顔を背けていた。予想通りご機嫌斜めのようだ。

 その前には困り気味の表情をした明久と秀吉、そして雄二がいる。

 

「ウチはなんと言われようとイヤ。こんなバカと恋人同士だなんて、冗談じゃないわ」

「そこをなんとか協力して欲しいのじゃ」

「み、美波ちゃん……」

 

 どうやら交渉は上手くいっていないようだ。

 やれやれ仕方ない。ここは俺が一発ガツンと言ってやりますか。

 

 

「島田。おめぇまだ今朝のこと気にしてんのか?」

「! 岡崎……当たり前じゃない。なに? まさか器の小さい野郎だなとでも言いたいのかしら?」

 

 そう半眼で俺を睨み付ける島田。

 

「そうじゃない。確かに明久はお前に大きな勘違いをさせた。その気持ちは察する。だが、それは今のこれとは別の話だ。それにムカつくんなら全てが終わってからいくらでも明久をボコるなり処刑するなりすればいいだけだろう?」

「まぁ、確かに後でアキを拷も―――折檻することは決定済みなんだけど」

 

 すると後ろでバカが騒ぎ始めた。だが無視だ。

 

「これはお前にしか出来ない役目だからこうして相棒達が頼んでいるんだぞ? それなのにお前はムカつくからやだなんていう一時の感情で無下にするつもりか?」

「それは……」

「相棒の言う通りじゃ。静観を決め込むなぞすれば必ず悔やむ時がくる。例えば―――姫路が転校してしまう、なんてことになった時、お主は自分を責めずにいられるかの?」

「うっ……」

 

 もしこの話し合いに島田が応じなければ清水を焚き付けてDクラスに宣戦布告をさせることが出来ない。そうなればやがて補充試験を終えたBクラスに攻め込まれ、確実に負ける。

 そしたら俺達の設備はまたミカン箱に逆戻りだ。そしたら再び姫路の転校話がぶり返される可能性がある。それは俺達だけでなく、姫路や島田もわかっている筈だ。

 

 

「あ、なら美波がイヤなら僕以外の誰かがやればいいんじゃないかな?」

 

 

 島田が悩んでいると、唐突に明久がそんなことを言い出した。

 

「え? それって他の誰かが美波ちゃんの恋人役になるってことですよね? でも誰がやるんですか?」

「誰って、そうだな……じゃあ雄二とか」

「ほほぅ。お前は俺に死ねと言うのか」

「なら大悟とか」

 

 PON

 

「明久……お前は忘れたのか? そんなバカな真似をしたら最後、俺の身に一体何が起こるのか……」

「……………ごめん」

「……………分かってくれたか」

 

 諭すように明久に告げる。

 不意にどこからか殺気のようなものを感じたが気のせいだ。うん、気のせい。

 

「それじゃ、ムッツリーニは?」

「……………盗聴器の操作がある」

「この三人がダメとなると……他は須川君とかかなぁ?」

「明久よ。ワシの名前が出てこなかったのじゃが、他意はないのじゃろう?」

 

 秀吉じゃ無理だ。そしたらただのガールズラブもしくは男の娘×女の子という新たな花園が拓かれることになっちまうだろうからな。

 

「というか無理だろ。いつも通りならまだしも、お前と島田がキスしてるところを見られてる以上、今更他のヤツらと付き合ってるなんて嘘に引っ掛かるワケがない」

「それか島田は誰にでも腰を振るヤリマンビ○チと思われるかもな」

 

「それだけは嫌!!」

 

「だろう? ならお前に残された道は一つだ」

 

 そう俺が言うと、急に姫路が明久と島田に頭を下げた。

 

 

「あの、美波ちゃん。気が乗らないかもしれませんけど、お願いしますっ。凄く個人的な理由で申し訳ないんですけど、私やっぱり転校なんてしたくないです」

 

 

 おおっと、ここでトドメの一発が入った。

 もしこれで断るようなら島田。お前は最早人としての良心の欠落を疑がわざるを得ないぞ?

 

 

「う……。わ、わかったわよ! とりあえず形だけでもやればいいんでしょ! けど演技の内容次第じゃ、どうするかは知らないからね!」

「美波ちゃん……ありがとうございますっ」

 

 

 島田の返事を聞いて、姫路がもう一度頭を深く下げた。

 これで第一段階はクリア。あとはコイツらの技量次第だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――明久視点。

 

 

「よし、そうと決まれば早速演技開始じゃな。大悟よ。台本は出来ておるかの?」

「お、ようやくだな。この通りバッチリだ」

 

 大悟がそれぞれ一部ずつホチキスで止められた冊子のようなものを渡してきた。

 

「台本? もう書き終えたの? いつの間に?」

「俺を誰だとおもってる? こんな簡単なもんすぐ出来る」

 

 それにしたって早すぎる。作戦会議を終えてから姫路さん達が戻ってくるまで五分程度しかなかったのに、やっぱりコイツは創作系の技能に関しては天才と言わざるを得ないだろう。

 

「おまえらはそいつを持って屋上で演技開始だ。だが下手な会話はするなよ。清水によって盗聴されている以上、バレたら元も子もないからな」

「え? もう行くの? まだ台本に目すら通してないのに」

「……………大丈夫。屋上にはカメラに映らない死角がある。そこなら読みながら演技が可能」

 

 ムッツリーニは紙を取り出すと、簡単な屋上の見取り図と死角になるポイントを描いた。

 

「読みながらでいいのならなんとかなりそうですね、美波ちゃん」

「そうね。それは助かるんだけど……せめて内容を確認させてくれない? 岡崎を疑うわけじゃないけど、変なシーンがあるかどうか気になるもの。その……キスシーンとか……」

 

 あ、それは僕も困る。そんなシーン、素人の僕らには荷が重いからね。

 

 

「心配するな。そんなベタ中のベタなシーンをわざわざこの俺が入れるワケがないだろう。ちゃんとお前らにピッタリなシチュエーションや台詞にしてある。俺を信じろ。だからさっさと行ってこい」

 

 

 そのまま取り付く島もなく、僕らは三人は教室から追い出された。

 仕方なく無言で屋上へと続く廊下を歩く。カメラがあるかも知れないので、念の為台本も見えないようにしておいた。

 

 ギィ

 

 たてつけの悪いドアを開けて屋上に出た。幸いなことに他の人は誰もいない。

 そのままムッツリーニが教えてくれた死角を伝い屋上の隅へと移動し、台本を取り出す。

 

 (よし、後はここに書いてある台詞を読むだけだ)

 

 

 美波と姫路さんも準備が整ったようだ。いよいよ演技開始。

 台本の一ページ目を開き、中の台詞に目を通す。

 

 

 

 

 

 ~~明久×島田 ウチとバカなアイツのちょっぴりオトナな仲直りっ♡ ~~

 

 島田『うふふ……ようやくこの時が来たわね、アキ……えいっ♡』

 明久『な、なにするんだ美波!? ここ屋上だよ!? もし誰かに見られたら……ああっ!』

 島田『見られたら……? そうね、ウチら、学校の屋上でセッ○スする変態カップルとして思われちゃうかもね……でも、そんなの関係ないわよ。それにアキの()()だって、もうこんなに準備万端じゃないの。いいアキ? ウチはね……ずっとこうしたかったんだからっ!』

 

 ハムッ←(島田が明久のペ○スを咥える音)

 

 明久『み、美波!? 待って―――んくぅっ!?』

 島田『んっ、いっ♡ んむぅ……♡ じゅる……ちゅぷっ、ぢゅぱっ……んふふ、あひの童貞オ○ンポ、とっても大きいわ。口に入りきらないじゃない♡ アキのクセに生意気なんだから……んれろ……ずるるっ、ちゅぱっ♡』

 明久『くっ! はっ、かっ、み、美波……そ、そんなっ、強くされたら僕―――ま、まって!』

 島田『……ぷはぁっ。なぁにアキ? ひょっとしてもうイきそうなの? 早くないかしら?』

 明久『ご、ごめん……。だって、美波のテクニックが凄くて……』

 島田『あら、アキのクセに嬉しいこと言うのね。それなら……今までにないくらい気持ちよくしてイカせてあげるわよっ! はむっ、じゅるっ、じゅるるるっ、ぬちゅ、ねちょっ』

 明久『ひぁぁああっ!? 更に激しくっ……も、もうだめだ! 出るっ! 美波の口の中に僕のせ』

 

 

 

 

 

 パタン

 

 

「……………」

 

 僕は静かに台本を閉じ、元の道を引き返す。

 そのまま再びFクラスの教室の扉を開けて、これを作った男の下へとゆっくりと向かった。

 

 

「ん? 明久? 随分お早いお帰りじゃねぇか」

「……大悟」

「どうだった? 俺の渾身の一作は。時間が足りなかった割にはなかなかいいシチュエーションを―――」

 

 バッ!

 

 

 

 

―――お前は一体何を書いとんじゃコラァ!!!!

 

―――げぶるぉぉああっ!!?

 

 

 

 

 

 大悟の顔面に僕のドロップキックがクリーンヒットした。

 

 

 




今回の話だけR指定がつきそうな気がする。

今回の登場人物
明久←恋人のフリをすることになった。ニセ○イかよコラァ!
島田←その相手役。以外と千棘と似てるとこがあるかも? 胸以外は。
姫路←Fクラスを大事に思ういい子。
雄二達←Dクラスに戦わせんぞオラァ!


感想、意見などありましたらよろしくお願いいたします。

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
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