以下の問に答えなさい。
『料理のさしすせそとは何か。順番に記せ』
吉井明久&岡崎大悟の答え
『さ:砂糖
し:塩
す:酢
せ:醤油
そ:味噌』
教師のコメント
正解です。二人は家庭科はかなり得意科目なようですね。
ちなみに醤油がせになる理由は、旧仮名遣いで『せうゆ』と表記された為だと言われています。折角なので覚えておくとよいでしょう。
土屋康太の答え
『さ:最後まで手を抜かない
し:失敗を恐れない
す:少しのミスもしないよう取り組む
せ:精一杯愛情を込める
そ:素材の味を活かす』
教師のコメント
先生はこの解答は嫌いではありません。
姫路瑞希の答え
『さ:酸化カリウム
し:硝酸アンモニウム
す:水酸化チタン
せ:セシウム
そ:ソルビン酸』
教師のコメント
殺人料理の出来上がり。
―――side大悟
「ああクソ……痛ぇ。あの野郎……本気で蹴ってきやがって」
「自業自得じゃろう。そもそも告白文を書けと言われたのにどこをどう解釈したらあのような文章になるのじゃ?」
先ほど明久から全力ドロップキックを食らった頬を擦る俺に、呆れ顔を浮かべた秀吉がそう尋ねてくる。あのような文章とは先程俺が書いた台本の事だろう。
明久の野郎。散々俺を罵倒した挙げ句、人が端正込めて作り上げたモンを目の前で堂々と破り捨てやがって。一体どこがどう気に入らなかったというんだ!?
「それはだな秀吉。中途半端な内容や台詞じゃ返って清水に演技臭いと思われちまう可能性があるだろ? ならこれくらいドストレートな表現の方がより信憑性があがると思ってな。それに学園モノのエロゲじゃ告白からの慰めセッ◯スは基本的なセオリー展開だからな」
「発想が極端過ぎるじゃろうが。全く……せめてもう少し表現をオブラートに包めんかったのか?」
そう溜息をつく秀吉。
どうしてそんな反応をするのだろうか。俺は何もおかしなことは言っていないというのに。まさかツンデレな女の子がちょっと弱気な主人公に精一杯ご奉仕するという素晴らしさを分かっていないのか? それはいかん。ならば後で秀吉にはみっちりレクチャーをする必要があるかも知れないな。
余談だが、さっき明久と一緒に一旦帰ってきた姫路が顔を赤くしながら俺に『あのシナリオの美波ちゃんのところを私に変えて同人小説を書くことは出来ますか?』とこっそり耳打ちしてきた。彼女だけはお気に召してくれたようで何よりだ。
「おいお前ら。そろそろ明久達の演技が始まるぞ」
「む? わかったのじゃ」
「おう」
雄二に呼ばれ、俺と秀吉はヤツの机に集まった。そこでは既に同志が盗聴器の準備をしている。
ちなみに最初の台本はボツになり、もう一度書き直しさせられた。
「大悟。今度はちゃんとまともな文章を書いたんだろうな?」
「おいコラ雄二。その言い方はさっきの内容がおふざけだと言ってるように聞こえるんだが?」
「そうだから言ってんだよバカ」
何気ない雄二の一言が、俺の心を深く傷つけた。
「……………始まった」
「「「!」」」
同志の言葉に反応し、俺達は盗聴器のスピーカーに耳を澄ませた。さてさて、明久達はどうだろうか………。
『……ねぇ、アキ』
『ん? なに、美波?』
この声は島田と明久か。どうやらちゃんと始めているようだ。
少し棒読みな所が気になるが……そこは仕方がないだろう。
『今更なんだけど……アキにきちんとウチの気持ちを伝えておこうと思うの』
『え? そんなの、今更言われなくても……』
台本通りに会話が進んでいく。
「よし、今のところ順調だな」
「うむ。それに内容もさっきのと違っておかしな所は無さそうじゃ」
「はっはっは。秀吉、俺がいつおかしな文章を書いたっていうんだ?」
「黙ってろキモオタ」
「自覚が無いのかお主は……それはさすがにバカと言わざるを得ないぞい?」
二人から更に辛辣なお言葉。俺、そろそろ泣いてもいいよね?
なんて思っていると、
『わ、わざわざこんなところに呼び出してごめんね、アキ……』
更に島田の声が聞こえる。
よし、ここの台詞まで来たら後は簡単だ。島田が明久に告白して明久がそれを受け入れる。そしたらそこに姫路が割り込んできて島田とちょっとした言い合いをして……といった感じで完了だ。
おそらく島田は恥ずかしさでかなり赤くなってるとは思うが……そこをグッと堪えるんだ! ここを乗り越えた先にこそ、ツンデレ系ヒロインは一皮剥けるというものなんだからな!
『あのね、ウチは、アキのことが―――』
さぁ、見せてやるんだ島田美波! 瑞希じゃなくウチこそがこの物語の真のヒロインなんだと、明久に思い知らせてやるん―――
『アキのことが―――嫌いなのっ!』
―――あり?
『み、美波……?』
『初めて会った時からずっとアキのことが嫌い! あれから友達として傍にいるのがずっと辛かった! 本当は友達でいるなんて、我慢できなかったのに!』
おいぃぃいい!? 島田のヤロウなにやってやがる!? そこは好きって言う場面だろうが! それなのに初めて会った時から嫌いってもうただの罵倒になってるじゃねぇか!
まさかこんな三次元どころか二次元ですら見たことない告白を聞かされ、心の中で突っ込みまくっていると、明久が台本通り彼女の言葉にこう返事をした。
『僕もずっと、同じ気持ちだった』
その後、間髪入れずに鈍い打撃音と悲鳴が聞こえてきた。おそらく明久が島田に顔面か何かを殴られたのだろう。だが今回限りは明久はドンマイとしか言いようがない。間違えてもないのに顔面パンチを見舞われるとか理不尽の極みだろ。
「……おい、どうすんだコレ」
「……どうするも何も、失敗に決まってんだろ」
「……………(コクリ)」
「これは……さすがにフォロー出来んのぅ……」
はぁ、と溜息をつく俺達四人。
なんか今となって思うと、最初の文章でも結果はさほど変わらなかったんじゃないかと思ってきた。
――――――
「……んで、何か言い訳はあるか?」
「「………返す言葉もございません」」
「まったくお主らは、なんという失態を……」
その後、演技に失敗した島田と明久がとぼとぼと教室に戻ってきやがった。
俺はそんな二人をまず眼前で正座させ、自分は仁王立ちをして見下ろしつつそう問いかけた。
「最初のヤツは嫌だっつうから折角別なのに書き直してやったってのに……あれじゃ殆どその意味ねぇじゃねぇか。あと最後明久を無駄に殴る必要はねぇだろ。なぁ島田?」
「うっ……」
俺の言葉に島田が息を詰まらせる。どうやら自分がやらかしてしまったという自覚はあるようだ。
「だ、だって仕方ないじゃない! あんな台詞言えるわけないもの! しかも録音されているかもしれないのよ!?」
「そ、そうだよっ! 確かに一番初めのよりは全然マシだけど、そもそも美波にあんな可愛い台詞が言えるわけあれ? 右手の感覚がなくなってきたような?」
明久の右肘がどえらいことになっているのはさておき、もうこの二人に恋人の演技は無理なんじゃないかと思い始めてきた。
だってあんな簡単な文章すら録に言えないのだから。
「あのな島田。お前はこの三次元において数少ないツンデレ系ヒロインなんだからそこをもっと自覚して貰わないと困る。あれじゃヒロインどころかただのアンチ製造器だぞ? それともお前はこのままメインヒロインの座を姫路に奪われちまっても構わないというのか?」
「そ、それは……確かに嫌だけど……」
「そうだろう? なら次からは気を付けてくれよ。あといい加減明久の右腕を放してやれ」
「あっ、ご、ごめん……」
慌てて明久の右手から手を放す島田。うむ、赤く腫れ上がってはいるが腕の機能はまだ失われてはいないようだ。
「やれやれ仕方ない……相棒。コイツらに演技とはなんたるかを見せてやれ」
「んむ、ワシかの? まぁ別に構わぬが」
そう言って秀吉に台本を渡すと、秀吉はしばらくじっと中身を見つめていた。
そして内容を全て暗記したのかよし、と本を閉じて明久の手を優しく握り締めた。そんな秀吉の突然の行動に明久が戸惑っていると、
「わざわざこんな所に呼び出してごめんね、アキ……。あのね、ウチは……アキのことが好きなのっ!」
「!?」
秀吉が島田ボイスと口調で明久に告白(演技)した。そのまま俺が書いた台本通りの台詞を続ける。
「初めて会った時からアキのことが好き! あれからただの友達として傍にいるだけなのがずっと辛かった! 本当はただの友達でいるなんて、我慢できなかったのに!」
矢継ぎ早に繰り出される秀吉の名演技ぶりは明久だけでなく、島田達をも黙らせかつ一瞬で魅了してしまっている。これには最早言葉など要らぬだろう。黙って脱帽だ。
だがなんだろうか……演技だと分かっている筈なのに、めちゃくちゃ明久が羨ましく思える。いいなぁ……
「アキ……。あんなことしちゃった後で今更だけど、改めて……貴方のことが好きです。ウチと、付き合ってください」
きゅうしょに当たった! 明久へのこうかはばつぐんだ!
「母さん……。今僕は、初めて貴女に心から感謝します……。僕を産んでくれて、本当に―――」
「―――とまぁ、こんな具合じゃ」
スッと明久から手を離し、いつもの秀吉に戻る。
こういうオンオフの切り替えが容易に出来てしまうのも本当に凄いと思う。さすがとしか言いようがない。
姫路と島田が秀吉の演技に感激してベタ褒めしている中、相手役だった明久は天を仰ぎ、声を殺して泣いていた。俺はそんな明久に近づき、優しく肩に手を置いた。
「………明久。今は思う存分泣け。泣いていいんだ……っ!」
「うん。ありがとう……大悟……っ!」
「? 明久君。それに岡崎君まで、どうして泣いているんですか?」
「なんでもないよ姫路さん……。ただ、少しの間だけ僕らをそっとしておいてくれないかな……?」
「???」
言っている意味が分からないのか、首を傾げる姫路。けどその気持ちが俺には痛いほど分かるぜ明久。幸せの絶頂から一気に現実を突きつけられる……それはとても悲しくて苦しくて残酷なんだよな。おっと……思わず貰い泣きしてしまったぜ。
そう俺達がお互いに肩を抱き合って泣いていると、秀吉が話を戻した。
「ムッツリーニ、先ほどの屋上での会話は清水に聞かれておったのか?」
「……………微妙。一応、途中でまた接触不良を装っておいた」
「それならまだセーフじゃな。序盤は台本通りに進んでおったから向こうも真偽を訝んでおるところじゃろう。今度こそお主らには恋人同士を演じてもらうぞい」
「「う……」」
釘をさされ、言葉を詰まらせる明久と島田。秀吉があんな迫真の演技まで見せたのだ。二人はここで断るなんて出来ないだろう。ま、仮にそんな真似をしやがったのならこっちは例の殺人兵器を使うだけなのだが。
「ここから先は姫路にもしっかり参加してもらうからの」
「は、はいっ。頑張りますっ」
「いい返事だぜ姫路。その意気だ」
姫路のやる気に満ちた返事に俺と秀吉は頷いて返した。
そして午後からの授業は自習であり、更に他のクラスでは皆テストを受けているらしい。その採点やら監督やらで教師勢は手一杯なため、こっちに来ることは殆ど無いだろう。つまり実行するのは今が絶好の機会という訳だ。
ま、その原因の大半が俺達の覗き騒動のせいなんけどな! あっはっは。
「それじゃあ大悟。次はどんな設定にしようかの?」
「そうだな……うし、なら次は島田と明久が教室を抜け出して外で逢引をしてるっつう設定でいこう! やはり皆に内緒でイチャラブ&ランデブーするのは学園ラブコメの代表的シチュエーションだからな。てことでお前ら、腕組め」
「「えっ………」」
二人がマジで? といった感じで顔を見合わせる。おいおい、まさかこんな初歩的なもんに戸惑ってんのか?
「あ、あの……岡崎君。べ、別に腕を組む必要はないんじゃ……?」
明久と島田が腕を組むことに思うところがあるのか、姫路がそう俺に異議を申し立ててきた。
だが、俺はその意見を容赦なくバッサリと切り捨てた。
「姫路、お前の考えは分からんでもない。だがこれは清水を騙してDクラスを焚き付けるための“演技”に過ぎない。ならそこまで気にすることでもないだろう?」
「で、でも……!」
「ほー、ここまで言ってもまだ文句があるか。ならさっきの話は無かったことに―――」
「ま、待ってください! ありません! ありませんからそれだけはあっ!」
「なら大人しく従え。いいな?」
「分かりました……」
姫路が折れた。うんうん、それでいいんだ。
そして明久と島田は秀吉が説得しており、それが通じたのか島田が明久の腕を取った。これで準備は万端だ。
「ごめんなさい。失礼するわね(ガラガラ)」
「「「?」」」
突如教室の前の扉が開かれた。今度は誰だ?
「む? 姉上ではないか」
「ええ。お邪魔するわね秀吉。大悟はいるかしら?」
そう言って俺達の所にやって来たのは、Aクラスの秀才にして秀吉の双子の姉、木下優子だ。二卵性双生児であるため秀吉に瓜二つな見た目をしており、学力や運動神経も優れているまさにエリート女子なのだが、その本性はドがつくほどのヤンデレ、そして腐女子という残念系美人なのだ。
「どうしたの木下さん? Aクラスはテストを受けてる筈じゃ……」
明久が優子に尋ねる。確かにその通りだ。
「それは男子だけよ吉井君。アタシ達女子はその間はずっと自習になっているから時間があるの。だからこうして来れたってこと」
「へぇ、そうだったんだ。それで大悟になにか用事?」
「うん。ちょっとね」
と言って、俺の前にトコトコと歩いてくる優子。
だがおかしい。どうして俺の背筋は氷の様にカチカチに凍りついている? どうして手がブルブル震えている? そしてどうしてアイツから異常な程の殺気を感じているんだ俺は!?
「大悟」
「な、なんだ優子?」
「アタシね。さっきDクラスにいる友達に用があってここの廊下を通ってたの」
「うん」
「そしたらね、その途中である光景を見かけちゃったの。もうビックリして声も出なかったわ」
「ほうほう、それで?」
「………大悟、聞かせて。―――さっき親しげに喋ってた女は誰なの?」
ダッ(身を翻し走り出す俺)
ガッ(その手を掴む優子)
「大悟。どこに行こうとしてるのカシラ?」
「まぁ待つんだ優子。話せば分かる。だからそんな喧嘩腰になるのは勘弁してくれ。それにあの人はただの知り合いでお前の考えているような関係などでは一切なく」
「大丈夫ヨ? 言い訳ならキチンと聞いてあげるし、お仕置きもたっぷりシテアゲルカラネ?」
「……た、助けてくれ明久っ! 相棒っ! このままじゃ俺は優子によって挽き肉にされちまうんだ!」
「……すまぬ相棒。ワシらにはどうすることも出来ん……!」
「……せめて、残った骨は拾いにいくよ。大悟……」
「そ、そんなっ!!? 嫌だ! 俺はまだ死にたくねぇ! 誰かっ! 弁護士をっ! 弁護士を呼んで俺の無実を証明し―――」
ピシャッ
―――side明久
木下さんが大悟をズルズルと引きずって教室を出ていった。
最後まで助けを求められたけど、僕らではどうすることも出来ないので、そのまま無言で二人のことを見送った。
大悟。君のことは永遠に忘れない。せめて安らかにあの世に逝ってくれ……。
「それじゃあ、行こうか美波」
「……一応腕は組むけど、他のところに触ったりしたら殺すからね」
「りょ、了解。気を付けるよ」
気を取り直し、大悟の案に従って美波と腕を組み廊下に出る。とてもギスギスした雰囲気になってしまっているが、これはもう仕方がないだろう。
そのまま屋上へと続く廊下を歩きながら、美波とにこやかに会話をする。
「あはは。美波ってば、そんなに腕をギュってされたら歩きにくいよ」
「ふふっ。別にいいでしょ? ウチらは付き合っているんだから、これくらい」
「でも美波、そのせいでさっきから肘に当たってるんだけど」
「え!? こ、この、スケベっ!」
「―――アバラ骨が」
ゴツゴツしていてとても痛い。
「うふふふ。アキってば、冗談が好きなんだから。本当に可愛いわね」
ギュゥゥウウウ……ミシッ
「あはは。やだなぁ美波。さっきよりも更にくっつくなんて」
「いいじゃない。思いっきり強く抱き締めていたいんだもの」
「まったく、美波は甘えん坊だなぁ」
肘から先がドス黒く変色しているのは気のせいだと自分に言い聞かせる。
そのまま指先の感覚がない状態で廊下を歩く。さて、何を話そうか。恋人同士の会話、恋人同士の会話っと……。
「やめろぉ! 死にたくなぁい! 死にたくなぁい! 死にたくな―――あぎゃああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ!!!」
そんな中、悪友の汚ならしい悲鳴が聞こえたような気がした。
―――side大悟
「……あ、あり。ここは……?」
目が覚めると、さっきまで優子に連れてかれた空き教室の天井が視界に入った。
何故だかは知らないがとてつもない恐怖体験をした気がする。そして死んだじいちゃんとばあちゃんに出会ったような気もする。まさかまた臨死体験でもしたか俺?
「あら、ようやくお目覚めになりましたか? 岡崎君」
「んあ? って、小暮先輩……?」
近くから聞いたことのある声が聞こえてくる。見るとさっきまで俺と話していた三年の小暮先輩が、心配そうな顔で俺をしゃがんで見つめていた。
そして俺の身体には包帯やガーゼ、絆創膏などで綺麗に応急処置がなされている。
「どうされたのですか? 偶然先ほど通りかかってみれば、岡崎君がまるで誰かに散々嬲られた後に全身の関節という関節を折られたような大怪我をして倒れていたのですから」
「ああ……それ多分正解っすね」
というより、大怪我で済んだのならむしろありがたい。殺されないだけマシだっただろう。
床に横たわっていた身体を起こす。全身の骨がバキバキと変な音を鳴らしているが、辛うじて人体機能は失われていないようだ。
「大丈夫ですか? そんなに痛々しい身体で起きあがって……」
「問題ないっすよ。ちょっと臨死体験しただけです」
「世間一般では、臨死体験を『問題ない』とは言わないと思いますわよ?」
確かにな。
「そういや、なんで小暮先輩がここに? さっき授業だって言ってたじゃないすか」
「それが、担当の先生が急に来られなくなってしまったようで、午後の授業は全て自習になりましたの。ですから先ほどまで教室で勉強をしていたのですが、少し休憩がてらここまで……ということですわ」
「あー、そういうことね。完全に理解した」
自習になってまで勉強をするとはさすがはAクラスの先輩だ。俺達じゃ絶対そんなことはしない。え? だって自習=お遊びタイムでしょ?
「そういや、この応急処置は先輩がやってくれたんすよね? それなら本当にありがとうございます」
「お気になさらず。岡崎君が無事でなによりですわ」
軽く頭を下げて礼を言う。それに対して小暮先輩はクスリとわずかに笑みを浮かべて返してくれた。勿論相変わらず妖艶な雰囲気は出ている。
しかし、出会ってまだあまり時間も経っていないのにここまでしてくれるなんて、この先輩はなんて後輩思いな人なんだろうか。あの常夏コンビや
「なら小暮先輩。後で何かお礼をしたいんだが、なにか要望はあるか?」
「ふふっ、お礼など必要ありませんわ。私は岡崎君から見返りを得る為に手当てをしたわけではありませんの。ただ単純に―――貴方が心配になったからやったのです。それに私はこれでも貴方の先輩ですわ。なら困っている後輩を助けるのは先輩として当然のことでしょう?」
「……もしアンタが二次元の女性だったら一発で惚れてましたよ先輩」
「あら? それは残念ですわ。私は岡崎君にプロポーズされたら受け入れてもいいと思っていますのに」
「あっはっは。またまたご冗談を。それに俺は二次元を愛する男だって言ったじゃないすかもぉ~」
「……うふふっ……、そんな事を言うなんて、罪なお人ですこと」
「ん? なんすか?」
「あっ、いいえ。なんでもありませんわ」
「そうすか。んじゃ、俺はもう行きますね。こっちで野暮用があるんで。また何かあったらいつでもお声がけ下さい。ダイゴブックスはいつでもお客様からの依頼をお待ちしていますよ」
「ええ。それではまた。岡崎君」
俺はそのまま空き教室を出ていく。
ふふ、小暮先輩はなんて素晴らしいお方だ。やはり俺の目に狂いはなかった。姫路、島田、霧島、工藤に続く新たなジャンル―――ちょっとエッチな小悪魔お姉さん系先輩キャラ! まさかこんな所であの伝説の存在に会えるなんて思ってもみなかったが……なんて俺はラッキーなんだ! これはまた執筆活動が捗るぞーひゃっほう!!
―――
「……行きましたか。さて、もうそろそろ姿をお見せになってもよろしいのではなくて?」
「……いつから気づいていたんですか。先輩」
「私、人の気配には人一倍敏感なものでして。それで、そうして潜んでいたということは、私
「……………!!」
――――――Fクラス
「うぃーす」
「おお、戻ったか大悟。こっちだ」
Fクラスの教室に戻ると、雄二がそう言って俺を手招きする。秀吉と同志も一緒だ。だが何故か皆浮かない顔をしていたが、何かあったのか?
「大悟、身体は平気かの?」
「おう。この通り手当てもバッチリよ」
「それは良かった。あの状態の姉上に連れ去られた時はもうダメかと思ったが、無事で本当に何よりじゃ」
「……………同志が生きていてくれて嬉しい」
なんて友達思いの心暖まる言葉なんだ。大悟さん泣きそうだよ。
「あり? そういや明久はどうした? それに演技は成功したのか?」
「………それがな、実は―――」
「どうして瑞希ばっかりいつもお姫様扱いなのよ! じゃあウチはなんなの!? 男だとでも思ってるの!? どうしてウチにはいつもそんな態度なのよ!」
「べ、別にそんなつもりは!」
「瑞希が転校させられそうになったら、ウチが瑞希の両親に話をしに行くわ。だから、もう話しかけないで! アンタの顔なんて見たくもない!」
物凄い剣幕でそう明久にまくしたてた島田。それを見て『ああいうこった』とアイコンタクトを送ってくる雄二。
はぁ……やれやれ。こりゃしばらくゴールは程遠そうだ。
一応補足しておきます。小暮先輩はメインヒロインにはならないからな!
今回の登場人物
明久←原作通り島田を怒らせた。右手はなんとか無事。
雄二達←また失敗かよ壊れるなぁ……(呆れ)
大悟←人生で二度目の臨死体験。
姫路←やだ、私の出番、少なすぎ……!?
島田←激おこファイナルティックぷんぷんドリームなう。え、もうこれ死語なん?
優子←相変わらずのヤンデレ可愛い
小暮←ちょっとだけ大悟とお近づき。うふふっ。え、高城? 知らない子ですね。
それではまた次回。
感想、意見などよろしくお願いいたします。
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
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入れろ、絶対に
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別に入れなくてもいいよ