以下の状況を想像して質問に答えて下さい。
『あなたは今、独りで森の中に迷っています。
明かりもなく暗い森の中を進むと、あなたは湖のほとりに小さな小屋を見つけました。これ幸いと中に入るあなた。すると、そこには椅子とベッドと肖像画が。さて、その肖像画に描かれている人物の特徴は? 頭に浮かんだものを3つ挙げて下さい』
姫路瑞希の答え
『1.楽しげな表情
2.優しい瞳
3.明るい雰囲気』
教師のコメント
これは『あなたの好きな人の特徴』についてわかる心理テストです。暗い森はあなたの不安を表し、そんな時に見つけた小屋の中にある肖像画は『あなたの心を支えてくれる伴侶』を表します。
どうやら姫路さんの好きな人は温和で明るくて楽しい人のようですね。
清水美春の答え
『1.気の強そうな目
2.男らしい胸
3.ポニーテール』
教師のコメント
最後の一つがおかしい気がします。
島田美波の答え
『1.折れた指
2.捻じ曲げられた膝
3.外された手首』
教師のコメント
全部おかしい気がします。
木下優子の答え
『1.逞しい筋肉
2.時代遅れの髪型
3.苦痛に悶える可愛い表情』
教師のコメント
もう少し彼を労ってあげて下さい。
―――side明久
『我々Dクラスは、Fクラスに対して宣戦布告を行う!』
放課後の交渉から翌日。
朝のホームルームの終了直後にDクラスの男子がやって来て高らかにそう告げた。
「? なんじゃと?」
「おいおい、どうなってやがる秀吉。昨日電話で聞いた時には失敗だって言ってたじゃねぇか」
「う、うむ。確かにそうだったはずなのじゃが……」
近くで秀吉と大悟がそう言いながら疑問符を浮かべている。
大悟はあの場にいなかったからともかく、秀吉は僕らの一連の流れを知っているため、驚くのも無理はない。
「ムッツリーニ。状況は分かるか?」
雄二がムッツリーニに尋ねる。
「……………昨日何があったのかはわからない。ただ、今日は朝から清水が興奮していた」
「清水が? だとすると、挑発は成功していたんじゃないのか?」
「いや、昨日の結果を見る限りそんなことはあり得ないのじゃが……。明久、お主、あの後に何か話しておったのか?」
「どうなんだ? 明久」
「い、いや。別に」
「「……………」」
秀吉と大悟の探るような視線から思わず顔を逸らす。
この二人は妙なところで勘が鋭いから、下手な事を言おうものなら更に自分の首を絞めることになる。だからここは敢えて何も言わない方がいいだろう。
「……まぁいい。それよりもまずは目先の試召戦争だ。ここまでやってDクラスに負ければ何の意味もない」
「それにDクラスから宣戦布告を貰えたことでBクラスの件も一先ず解決したしな」
確かに、これでBクラスは僕らが戦争を終えるまで手出しは出来なくなった。
試召戦争のルールでは一つの戦争が終わった後に点数補充をする時間が設けられる。そうすれば仮にBクラスから宣戦布告をされたとしても万全の状態で臨むことが可能だ。まぁ、Bクラスは前に僕らによって辛酸を舐めさせられてるから、準備が整った状態の僕らに対してそう簡単には攻めてこないと思うけど。
けど、まだ全てが解決したわけじゃない。ここからは点数の少ない状態でDクラスの相手をしなくてはならないという本命作業が残っている。
「それで雄二、作戦は?」
「考えてある。だが、その前に戦力の確認だ」
そう言って、雄二は教壇に上がった。
「野郎ども、よく聞け! これより俺達FクラスはDクラスとの試召戦争に突入する!」
Dクラスの宣戦布告でザワついていた教室が静まり返る。
そのまま続けて雄二が言ったのは『全員自分の今の点数を紙に書いて持ってこい』というものだった。僕らは先日の覗き騒動のせいで補充ができていない。その為姫路さんと美波以外で戦える人材がどれほどいるのか確認しておきたいのだろう。
クラスの皆が紙とペンを取ってそれぞれ書き出していく。
「そう言えば、ワシはあまり消費しておらんな」
「え? そうなの?」
あれ? でも最後の夜には秀吉は大悟と一緒に落合先生達と戦っていた筈だけど。
「うむ。よくよく思い返せばあの時は大悟一人で全員を倒してしまったからの。ワシは殆ど見ていただけなのじゃ」
「そうだったんだ」
確か相手は教師とAクラスの女子生徒含めて五、六人はいたはずなのに……それをたった一人で倒すなんてヤバすぎる。やはり社会科目においてなら大悟は化け物レベルだと言わざるを得ない。
でも、それなら今は都合がいい。これで女子二人に加え秀吉もフルで戦える。
「よし、これで全員分揃ったな」
僕を含めたクラス皆のメモを受け取り、雄二はそれをパラパラと捲り皆に呼びかけた。最初は点数下位の十人に回復試験をそれぞれ数学、世界史、化学、保健体育と分けて受けさせるらしい。ちなみにうちの主砲の一人である大悟もここに振り分けられている。
それを疑問に思った僕は雄二に聞いた。なぜわざわざそんな細かく科目を分けるのかと。早く点数を補充するなら一括、特に採点の早い数学に揃えた方がいいのに。
「今回は勝つことよりも時間稼ぎが目的だ。戦術云々というよりは心理戦による睨み合いが必要になる」
その状況で一つの科目だけを点数補充していたら、相手にこっちは準備が整っていないと教えてやってるようなものだ、と雄二は語る。
しかし僕らが点数補充をしていないのは相手にバレている。そんなことをしても向こうは警戒なんてしないんじゃないだろうか。雄二の言いたいことは分かるけどそれで相手が二の足を踏むとは思えない。
「そこを警戒させるのが作戦ってもんだろうが。まぁいいから見ていろ」
雄二が点数の書かれたメモを見ながらノートに布陣を書いていく。それを横から覗き込んでいると、
「あれ? 僕は点数補充じゃないの?」
僕の配置は開戦直後の渡り廊下になっていた。どうやら防衛戦に参加させるようだ。
「お前はまだ点数が残っているからな。まずは戦死して点数がないやつから補充していく。ウチの最高戦力である大悟をここに入れたのもその為だ」
「そっか。僕は鉄人としか戦ってないから点数は残っているんだった」
「そういうこった。それに、お前は特別な人材だからな」
「特別って、いやぁ、そんな……」
なんだか結構な評価をされてるようで少しむずがゆい」
「今回の作戦でもお前は重要な役どころになる。キツいだろうが耐えてくれ」
「了解。そこまで言われたからには頑張るしかないね」
プレッシャーには慣れてるけど、こうやって期待されてるのも悪くない。
―――side大悟
キーンコーンカーンコーン……
戦争開始時刻である午前九時となった。
「開戦だ!! 総員! 戦闘開始!!」
『ぃよっしゃぁああーっ!!』
怒号と共に先行部隊が開幕ダッシュで現場を目指して走り出す。
雄二曰く、今回は防衛が主軸となるため、どんなに有利な状況でも決して深追いはしないでひたすら防御に撤しろとのことだ。
こっちでまともに戦えるのは女子勢と秀吉だ。ただでさえ戦力差は歴然なのに下手に深追いすればすぐに返り討ちにされてしまうだろう。妥当な作戦だと思う。
「よし、それじゃあ補充試験を始めるぞ。該当する者は筆記用具を持ってそれぞれの科目を受けてくれ」
お、呼ばれたか。
そんじゃこっちも自分の仕事をこなすとしますか。俺はお気に入りのめるたんシャープペンシル(レモンの香り)と消しゴムを取り出した。
――――――回復試験開始
「……………」
世界史のテスト問題をスラスラとテンポよく解いていく。
ふむふむ。今回の問題は中世ヨーロッパからが殆どか。丁度いい。今度描こうと思っていたオリジナル同人誌の時代設定をここら辺にしようと思って調べていたから難なく解くことができているぜ。
名前は……そうだな……『パンが無ければオトコ♂を食べればいいジャナイ♡♡♡ フランス王女様が下々の民の為に肉便器になっちゃった♡♡♡』なんていいかもな。
――――――妄想タイムスタート
『オラァ! オラァ! 王女様の処女マ○コのナカに革命すんぞオラァ!!』
『あぁっ♡ あぁん♡ らめぇぇ♡ 革命されちゃう~♡ 下々の汚ならしい極太チ○ポが奥まで入ってパンパン突いてくりゅぅぅぅうううう♡♡♡ このままじゃ落城しちゃぅのぉぉぉおおおおおお♡♡♡♡』
『とどめだっ!! 今こそ自由の為に勃ちあがれぇぇええっ!! 民衆を苦しめた王女に厳正なる裁きを与えてやるんだよォ!! 俺達の怒りを思い知れ孕めオラァァァァァアアアアア!!!!』
『ああああああああああっ♡♡♡♡ らめぇぇぇぇぇええええええええ♡♡♡♡♡』
――――――妄想タイム終了
「……売れるな(確信)」
そうニヤニヤしていると、
『もう話しかけないでって言ったでしょ! いいからこっちに来ないで! ウチのことは放っておいてよ!』
後ろから島田の怒鳴り声と乱暴に扉を開ける音が聞こえた。
どうやら明久が性懲りもなく島田に話しかけたようだ。バカかアイツは。あれだけ昨日盛大にやらかしたのにそんなすぐ怒りが治まるわけがないだろうて。全くデリカシーのない野郎だ。
――――――回復試験中
「……うし、こんなもんだろ」
そうこうしているうちに俺はキリのいいところまで問題を解き終え、担当の田中に問題用紙を渡した。
「相変わらず解き終わるのがとても速いですね。岡崎君は」
「そうすか? いつものことっすよ。んじゃ、採点の方よろしくお願いするっす」
「分かりました。ちょっと待っていて下さいね」
田中はそう言って俺の問題用紙を見始める。
この人は採点が遅いかわりに点数の付け方が他よりも全然甘い。多少のケアレスミスなら大目に見てくれるだろう。
俺は後を任せて席を立ち、雄二の所に報告に行った。丁度そこには姫路もいる。
「雄二、終わったぜ」
「お、そうか。ならお前と姫路にはしばらくここに残っていてもらう」
「おう。任せ―――え?」
「えっ?」
率直にそう言われた。
「私達は何もしなくていいんですか?」
「そうだぜ雄二。折角補充までしたんだから戦わせろよ」
姫路が首を傾げ、俺はそう反論する。
特に姫路なんかは全体的に点数も高いから、防衛戦において無敵に近い戦いが出来ると思うんだが。
「それは向こうだってそう考えるだろうな」
「「???」」
やけに回りくどい言い方だ。
「いいか? 俺達の目的は制圧じゃなくてあくまでも時間稼ぎだ。なのにわざわざそこに主戦力であるお前らを突っ込むなんて勿体無い真似はしない」
「でも、守るのが目的ならそれでもいいんじゃないですか?」
「拮抗状態を作るのには、何も戦力強化だけじゃない。向こうの戦力を少しずつ削っていくことも方法の一つだ。大悟。もしお前がDクラスの代表である平賀と同じ立場ならどう立ち回る?」
雄二が俺にそう質問してきた。
「そうだな……とりあえず姫路を警戒して自分の周りに壁をつくるかな」
前回は姫路がFクラス所属であることを知らなかったのと、俺達が近衛部隊を惹き付けていたという二つの要因があってアイツらは負けた。
なら今回は前回同様人数で攻めるよりも外堀を固め、まず不意討ちを防ぐことに重点を置くと思う。
「そうだろ? つまりそれが俺たちの狙いだ。姿の見えない姫路やお前を警戒させてクラス代表の防衛に戦力を割かせる。向こうの戦力が少なければこっちの戦力の消耗も少なくて済むからな」
「それなら、補充試験が出来ていない人達でもなんとか戦えますね」
「いざって時の防衛戦にもなるな」
「前に平賀は姫路に一杯食わされているし、大悟を侮って痛い目を見てるからな。面白いように警戒してくれてるだろうさ」
ふーん、そういうことか。
普通ならともかく、今のこの状況だからこそ使える作戦だな。最も警戒すべき姫路は姿を見せず、かつ平賀は例の覗き騒動のせいで点数があまりない。これはもう完全に自分の首を取りにきてると考えるのが自然的だ。そうなれば向こうは俺達同様戦力になる女子生徒を側に配置する筈だ。
「ま、それだけじゃなくまだ手は打ってあるんだがな」
「ふーん。んじゃ俺と姫路は……」
「まぁ、しばらく自由にしてていいぞ」
そう言って再びノートに視線を戻した雄二。
また前線で暴れられないのは残念だが、ここで俺一人文句を言っても仕方ない。言われた通りにしておこう。
「―――つまりな、明久はラブコメの主人公と同じだ。ちょっとやそっとのアピールじゃ全くヒロインの好意に気づかん鈍感野郎なのだよ」
「そ、そうだったんですかっ!? た、確かに明久君はここぞという時に限って勘違いをすることが多いですけど……」
「残念だが、そういった主人公には全くと言っていいほど、自分が女の子に好かれているという自覚が無い。だから、その典型的ともいえる明久を振り向かせるとなると、今の姫路の恋愛レベルではハッキリ言って戦力不足。困難を極めると言ってもいいだろう」
「そ、そんなぁ……」
「……だがしかぁし!! だからといって攻略法が完全に失われたわけではない! お前にはその知識量を補えるだけのヒロインとしての基礎ステータスがちゃんと備わっているのだからなぁ! だからしっかりとした手順を踏み、その場のシチュエーションに適応したアクションを適宜行えば、例え明久みたいな超絶高難易度野郎だろうといずれ堕とす事が出来るのだ!」
「お、岡崎君っ! それを是非教えて下さいっ! お願いしますっ!」
「よかろう! 大船に乗ったつもりで俺についてこい!」
「はいっ!」
姫路はメモとペンを持ち、前のめりになって俺の話を真剣な表情で聞いている。
そんな彼女に俺がこれまでの経験(二次元)とデータから編み出した明久攻略方『必殺奥義・ラブコメ主人公落城の計』を伝授していると、
ガラッ
「今帰ったよ」
「お、戻ったか明久」
丁度話題にあがっていた明久が帰ってきた。
すると、明久は俺と姫路を見つけるとこっちに向かって近づいてきた。
「あ。明久君っ!? お、おかえりなさい!」
「無事だったみてぇだな、明久」
「あれ? 二人とも教室にいたんだね」
「おう。雄二から俺達には待機命令が出てるからな」
「ふぅん。そうなんだ。それに随分楽しそうだったけど、何を話してたの?」
「ふぇ!? いえっ、その、なんでもないですよ!? ね、岡崎君!?」
「おっそうだな」
姫路が慌ててメモとペンを隠して誤魔化す。
分かってはいたが、こんな最高のヒロインである姫路にここまで好かれてるコイツは本当に幸せ者だな。まぁ勿論ムカつくことはムカつくけど。
「それで明久。首尾はどうだ?」
「ああ。うん、一応言われた通りにしてきたけど……それより、そろそろ作戦内容を教えてよ」
明久が雄二に作戦の開示を求めた。
雄二はそれを承諾し、先ほど俺と姫路に話したことをそのまま明久に伝える。
今回の目的は制圧ではなく時間稼ぎであること。
主戦力である姫路を敢えて出撃させず、クラス代表の防衛に戦力を投入させてこっちの消耗を少なくさせること。この二つだ。
それに明久がなるほどと納得していると、ここから雄二は俺達にも伝えていないことを話し始めた。
「だが、それだでは不十分かもしれないからな。更にダメ押しをしておいた」
「「「ダメ押し?」」」
雄二曰く、そのダメ押しとは同志にとある情報をDクラスに流していたということらしい。その情報とは『FクラスがDクラスとの開戦を望んでいた』というもの。
その話が伝わればDクラスは余計に俺達を警戒する。人間とは自分達に勝ち目がない限り無謀な勝負はしない生き物だ。つまりFクラスは何か自分達を討てる策があるのではないかと疑心暗鬼に陥り、手が出しづらくなると。
更に、俺が清水との話し合いを終え教室でエロゲーをしている間に明久と雄二はDクラス前をウロウロ歩いていたらしい。最初は点数補充をしていないとB、Dクラスにアピールするのが目的だったが、今となっては『どうして校舎が違うのにも関わらず吉井と坂本がいたのか。あれは本当は自分達を開戦に踏み切らせる為の芝居じゃないのか』という疑問の種になるのだと。
「偶然が二つ三つと重なるとは考えないのが人間だ。その向こうに何かあるんじゃないか、と疑問に思うのは当然だろうさ」
「「「……………(ポカーン)」」」
「ん? どうしたお前ら?」
なんていうか、凄すぎて言葉が出ねぇ。
神童未だに健在と言えばそこまでだが……少なくとも普通じゃそこまで一手二手どころか四手ぐらいまで先を読める思考は持っていない。天才どころか最早奇才の域じゃないか?
歴史上に“発明王”としてその名を残したトーマス・エジソンは『天才とは1%のひらめきと99%の努力である』という名言を残したが……コイツを見てるとその言葉の真実味がぐらつきそうになってくるぜ。
「向こうは今頃開戦を後悔し始めている頃だろうな。得られるものは何もない上に負ければ最低ランクの設備に格下げなんていうハイリスクノーリターンの戦いだ。何かきっかけがあればすぐにでも休戦に応じるだろうよ」
雄二がニヤリと白い歯を覗かせる。
「きっかけがあれば、ってことは、更にダメ押しをするんだね?」
「ああ。最後にもう一つ手を打つ。敵の頭を討つ為にな」
「敵の頭っていうと、Dクラスの平賀君? でも、そんなことができるなら休戦なんて―――」
「いや違う。お前の相手は平賀じゃない」
平賀じゃないとなると、それ以外で考えられるのは……
そう言うと、雄二は明久の目をしっかりと見て言い放った。
「明久。お前には屋上で清水との一騎討ちをしてもらう」
―――side明久
「こんなところに一人でいてくれて良かったです。貴方に話がありましたから」
僕が屋上で一人で待っていると、待ちわびていた相手の声が聞こえてきた。
良かった。本当に来てくれたみたいだ。間違いない。その姿はDクラスの清水さんだ。
「話って、何かな?」
歩み寄ってくる清水さんに問いかける。
「そう難しい話ではありません。要するに―――白黒はっきりさせましょう、というだけです。幸いにも今は試召戦争の真っ最中ですし、わかりやすく決着をつけることが出来ますから」
清水さんの後ろには落合先生の姿が見える。
どうやら準備は万端のようだ。
「わかったよ。勝負だ、清水さん」
僕がそう言うと、清水さんは落合先生の方を向いて告げた。
「先生。召喚許可をお願いします」
「うん、分かった」
落合先生の許可の下、召喚フィールドが発生した。
「「
二人同時に喚び声をあげると、僕らの足元に幾何学紋様が現れた。
その中心から僕らの分身である召喚獣が姿を見せる。
僕らはそれぞれ召喚獣に構えを取らせながら睨み合い、お互いに隙を窺う状況が続く中、
「……そう言えば、勝負を始める前に一つ確認しておきたいことがありました」
清水さんが僕に問いかけてきた。
「何かな?」
「昨日の話ですが」
「うん」
「あれは、この戦争を起こす為の狂言ですか? あの交渉も、最後の言葉も」
「それは……」
即座に答えられず、言葉につまる。
今更何を言ったところで清水さんは信用してくれないだろう。昨日の演技も交渉も全て、僕らは美波を利用してDクラスを挑発しようとしていたのは事実なのだから。
「どうなんですか?」
「……………」
「そう、ですか……」
僕は返す言葉を持たない。
召喚獣にも動きがなく、しばらく沈黙の状態が続く。
清水さんは俯いて召喚獣から目を離している。
そうしていたのは、ほんの数秒程度だっただろうか。
「……………泣いて、ました」
不意に、清水さんが震える声で呟いた。
怒りを伴う、静かな口調だ。
「……………お姉さま、昨日走り去る時に……泣いて、ました」
言われて、昨日のことを思い出す。
確かに昨日の交渉にて、美波は清水さんの言葉を聞いて涙を浮かべ走り去った。その言葉とは―――
『演技とは言え『好き』とまで言ってくれたお姉さまを放って姫路さんを追うなんて、普通は考えられません。もしかして、お姉さまのことを男だとでも思っているんじゃないですか?』
僕はその台詞を一言一句忘れていない。
「きっかけは、美春の言葉です。……でも、原因は、原因は……っっ!!」
清水さんが顔を上げた。
その顔は僕に対する烈火のごとき怒りが見て取れた。
「お前が……! お前の様な男がいるから……っ! お姉さまが―――」
「っ!」
「―――お姉さまが、泣く羽目になるんです!!」
その言葉を合図に、清水さんの召喚獣が突っ込んできた。
―――side大悟
上から何者かによる喧騒が聞こえる。
どうやら予定通り、清水と明久が一騎討ちを始めた様だ。
「アイツらがおっ始めたようだな。よし、俺達も行くぞ。大悟、姫路」
「おうよ」
「あっ、はいっ」
雄二の後に続いて俺と姫路も立ち上がり、教室を出ていく。
そして戦場となっている廊下をこっそりと通り抜け、屋上に続く階段へと向かった。
「けどよ、まさかあんな方法を考えるとはな」
「ん? なにがだ?」
その途中で、俺は雄二にそう声をかける。
「確かに雄二の考えたやり方なら確実にDクラスが休戦に動いてくれるだろうし、清水も納得してくれるに違いない。けどよ、その代わりに明久がとんでもないことになるんだぜ?」
「そりゃそうだな。けど元々この戦争の引き金を引いたのはアイツだし、俺達はいわばそれに巻き込まれた被害者といっても過言じゃない。そうだろ?」
「ふむ……それもそうか」
「ああ、だから明久には……自分のケツは自分で拭いてもらわねぇとな」
そう言う雄二の顔は、いつも通り悪い事を考えている顔をしていた。
次で本編4巻のストーリーは終わりとなります。
今回の登場人物
明久←絶賛バトル中。原作では化学なのだがこっちでは世界史。あれ? そしたら明久が勝っちゃうんじゃないかと思われるが、まぁこの時だけはそんなに点数が取れてなかったとかで大目に見てちょうだいませ。
雄二&大悟&姫路←行動開始。さぁ、行くぞ!
秀吉←なんとか戦況を持ちこたえている。
ムッツリーニ←情報操作中。
島田←秀吉と同じ。でもまだ怒ってる。
清水←明久ぜってぇ許さねぇ……!
感想、意見などありましたらよろしくお願いいたします。
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
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入れろ、絶対に
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別に入れなくてもいいよ