バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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バカテスト 化学

問 次の文章を読み、それが示す正しい道具の名称を答えなさい。
『液体の体積を量るために用いられる縦に細長い円筒形の容器。ガラスやプラスチックで作られており、転倒を防ぐ広い底板と目盛り、注ぎ口をもつ』


姫路瑞希の答え
『メスシリンダー』

教師のコメント
正解です。実験器具の名称や使用法は基礎知識としてとても重要なので、正しく覚えておいて損はありません。目盛りを読む際の基準や注意点についても同様に覚えておくと良いでしょう。


土屋康太の答え
『メス シリ』

教師のコメント
いかに君が自分の興味のある部分しか見ていないのか、ということがよくわかりました。できればあと3文字『ンダー』も覚えて欲しかったところです。  


吉井明久の答え
『目盛り付きガラス筒』

教師のコメント
君にはガッカリです。


岡崎大悟の答え
『オトナの実験用具』

教師のコメント
後で職員室に来なさい。




期末試験&吉井玲襲来編
第六十二問 男の携帯電話はプライバシーの宝庫だ! 誰も触れてはならぬ!!


――――――side 岡崎大悟

 

 

 

【ねぇ……どうして? どうしてお兄ちゃんは私の言うことを訊いてくれないの……? そんなにあのアバズレ女の方が良いっていうの……? もしそうなら……絶対に赦さない】

 

 ―――脈が加速する。呼吸が酷く乱れる。全身がとてつもない悪寒と恐怖感で蝕まれている。

 かつての可愛らしかった妹の姿はどこにも無い。代わりに俺の目の前にいるのは―――彼女と同じ姿形をした、狂気に取り憑かれし虚だ。

 

 

【違うよね……? お兄ちゃんはあんな淫乱アバズレ女なんかに惚れてないよね……私……信じてるから】

 

 

 

 →『妹に賛同する』

  『否定して本心を伝える』

 

 

 

「クソッタレ……! ここで唐突な選択肢だと……っ!?」

「ヤバイよ大悟兄……私の第六感が告げている。ここでミスればバッドエンドどころかデッドエンドまっしぐらだよっ! 死に戻り確定だよっ!」

「……………どうする、同志……?(ゴクッ)」

「分かってる。これまでの苦労を水の泡にするわけにはいかねぇ。だからここは慎重に考えなきゃぁな……!」

 

 

 そう言ってコントローラーを強く握りしめる。

 大量の聖書(漫画&同人誌)偶像(フィギュア)に囲まれた我がマイルームにて俺と妹の天。そして盟友にして同志こと土屋康太、通称ムッツリーニは窮地に立たされていた。

 目の前にはデスクトップ型のパソコンがあり、画面の奥では返り血を纏い鉄パイプを持った女の子がこちらを無表情で見詰めている。そしてその下には二つの選択肢が表示されていた。

 

 

 そう、俺達三人は今、エロゲーの攻略の真っ最中なのである。

 

 

「やっぱりここは賛同じゃないかな……馬鹿正直に本心を言うよりは生存確率は高いと思う」

「……………いや、そうとも限らない(フルフル)」

「同志の言う通りだ。ヤンデレの実妹ってぇのは他に比べてやけに勘が冴えてるからな……主人公の虚言くらい簡単に見破っちまうかも知れん」

「……………もしそれで嘘がバレれば、こちらに勝ち目は無い……」

「逆効果の可能性も考えられるってこと?」

「……………(コクリ)」

「僅かな判断の過ちが時に命取りとなる事もある……気を付けろ、天」

「……むぅ、分かった」

「分かってくれりゃいい。だがしかし……相変わらずここのメーカーの作品は攻略難易度が高いぜ……。だが、そうでなきゃクリアし応えがねぇってモンよ……!」

「……………右に同じ(コクコク)」

 

 

 今日は待ちに待っていたエロゲーの発売日。その日は丁度日曜で学校が休みだったので俺と天は朝早くに家を出て店に並び、なんとか初回限定版(オリジナルグッズセット)を買うことが出来た。本当なら通常盤でもなんら問題は無いのだが、俺も天も二次元に関しては一切の妥協を許さない。常に全力であれ……それがオタクとしての当然の礼儀であり、またモットーなのだ。 

 そしていざ帰ろうとしたところで偶然にも同志に出くわした。奴もいつもの朝の“活動”を終えて帰宅する所だったらしく、聞くとこのあとは暇との事だったのでどうせならと思い誘った。すると二つ返事でオッケーしてくれ、今に至る。

 だがこの最新作のエロゲー。従来の作品に比べて難易度が尋常じゃないほど難しくなっている様で、ありとあらゆるエロゲーの女性達を堕としてきた俺でさえも手を焼いている。

 これまでのテンプレを完全に無視したストーリー構成に細かく散りばめられた伏線の数々、そして一度選択肢をミスれば最初からやり直しという鬼畜仕様。どれをとってもこれまでのものとは一線を画していたのだ。

 ちなみにスタートしてからもうかれこれ二十回以上は死んでいる。包丁で刺されたり学校の屋上から突き落とされたり口移しで毒薬を飲まされたり首を切られてボートでヒロインと心中したりと……殺害方法のレパートリーも中々に豊富だ。ヤンデレ検定一級(自称)の俺から見ても中々に悪くない品数と言えよう。

  

 

「だからよ、まずは嘘偽りなく全てをさらけ出して妹の懐疑を解くべき―――(ペラペラ)」

「でも、そしたらメインヒロインの幼馴染みの命まで―――(ペラペラ)」

「……………間違いなく、ただでは済まない」

「ヤンデレにとって隠し事や嘘は禁忌だぞ。それをするということは―――(ペラペラ)」

「大悟兄は少しヤンデレに対しての既成概念に囚われすぎだよ。もうちょっと見方を変えたり視野を広く―――(ペラペラ)」

「……………このゲームのクリア条件は、まず主人公が生き残らなければ達成されない。本質を見誤るな、同志……」

「ぐっ……そりゃあそうだがよ……だがしかし―――」

「いやそこは―――」

「……………敢えて俺は―――」

 

 

 中々意見がまとまらず、画面をストップさせたまま三人で熱い議論を交わしていると、突然俺の腹の虫が鳴る音がした。

 

 

「(グゥゥウウ~)にしても腹減ったなぁ……そういやもう夜か」

「え? もうそんなにプレイしてたっけか?」

「……………気づかなかった」

 

 

 時計を見ると午後の八時を少し過ぎた頃。確か家に帰ってきたのは朝の十時頃だったから、どうやら半日近くをエロゲー攻略に費やしていたらしい。我ながら恐ろしい集中力だ。

 まぁこんなのはいつもの事だから特にどうということは無いんだが。

 

「うし、そんじゃあ飯にするか。同志も食っていくだろ?」

「……………いいのか?」

「遠慮するな。二人も三人も作る量は大して変わらん」

「……………なら、お言葉に甘える」

「おう、任せろ。てことで天は手伝いな」

「りょーかい」

 

 そう言って天と同志を連れて一階のリビングに向かう。

 さて……食材は何があっただろうか。確か昨日は買い物には行ってないからそこまで量は入ってはいないとは思うんだが。

 

「何作るの? 大悟兄」

「そうだな。同志を長く待たせる訳にはいかんし、手軽に作れるモンでいいだろ」

 

 頭の中で簡単かつすぐに食べられる料理を思い浮かべる。そうなると……焼きそばやパスタといった麺料理あたりにするか……?

 そんなことを考えながらリビングのドアを開けようとする。その時、

 

 

「……? おい、なんでリビングの電気点いてんだ……?」

「あ、ホントだ。お母さん消し忘れたまま出掛けたのかな?」

 

  

 俺達の母さんは今日の様に店が定休日の場合、基本的にリビングでグダグダしているか寝ているか酒を飲んでいるかの三択で過ごしている。

 しかし母さんは昨日の夜からずっと出掛けている。まぁいつもの通り地元のオッサン連中と居酒屋で飲んだくれてるんだろうが、そしたらその間にリビングに立ち入った人間は誰もいない筈なんだがな。俺達も帰ってからそのまま俺の部屋に向かったし。  

 

「ったく、出掛けるならこれくらい忘れんなっての」 

「そうだね」

 

 微かに違和感を感じたものの、特に気にする事も無く扉を開けた。

 

 

 

 ――――――ガチャリ。

 

 

「………………♪♪♪(トントントントン)」

 

 

 ――――――ガチャッ。

 

 

 

 すぐに扉を閉めた。

 うん、どうやら俺はかなり疲れが溜まっているようだ。だってキッチンで親友の姉らしき人物がエプロンをつけて鼻唄を歌いながら料理をしているという幻覚を見てしまったのだから。

 

「……だ、大悟兄……? 今のって……もしかして優子ね―――」

「違う。あれは俺達のゲームのやりすぎによる心労状態が作り出した幻だ。そうに違いない。なにせ戸締まりはしっかりしてる筈だからな」

「でも、なんか美味しそうな匂いまでする―――」

「それはいわゆる幻臭というものだ。天、お前もかなり疲れているようだな」

「…………しかし、同志―――」

「やめろ! 俺は信じない! 俺はこんなおぞましい光景が現実だなんて絶対に信じないぞ!」

 

 そう自分に言い聞かせながら、念のために携帯を取り出して110番通報をしようとすると、

 

『もうすぐ出来上がりね。ならそろそろ大悟達を呼びに行こうかしら』

 

 何も聞こえない、幻聴だ。

 

『あ、でもその前に仕上げをしなくちゃね。えっと……』

 

 幻聴だ。これは幻聴なんだ。

 

『あ、あった。これが無いと完成じゃないものね』

 

 やめろ、何も聞こえない。これはただの幻聴で―――

 

 

 

『大悟の分だけにこのアタシ特性の《自主規制》を入れて……♪』

 

「それだけはやめろぉぉおおーーーっ!!!」

 

 

 

 誤魔化しきれなくなり、俺は勢いよく扉を開けて中に踏み込んだ。

 

「あら大悟。丁度良かったわ。ご飯が今出来たわよ」

「出来たわよ、じゃねぇよ!! なんでテメェが俺ん家にいやがる!? 玄関も窓も鍵が掛かってた筈だろ!?」

「それなら前に凜花さんがくれた合鍵を使ったのよ。ほら」

「あ……ホントだ。確かにうちの鍵っぽいね」

「ふざけんなあの酒飲みババァ!!」

 

 母さん。俺は今生まれて初めて貴方に心からの憎しみを抱いているよ。

 

「こら大悟。そうやってお義母さ―――凜花さんをババァ呼ばわりしちゃ駄目よ。失礼じゃない」

「うるせぇ! 勝手に人の家に不法侵入するヤツに失礼呼ばわりされる覚えはねぇぞコラ!」

「それならアタシ達、相思相愛って事ね♪ 嬉しい♪」

「図々しい程ポジティブ思考回路!? お前のそのあり得ない発想はどっから湧いてくるんだ!?」

「あら? 確か貴方は土屋君だったかしら? 来てたのね」

「……………(コクリ)」

「話を聞けコラ!」

 

 この野郎……! いつもは至極真っ当な立ち振舞いをするくせになんでこういう時だけこんなんなるんだ……! 料理の中に《自主規制》とかあの霧島でもやらねぇぞ……猫被るのもホントいい加減にしてくれ! そんなんだから弟の秀吉に可愛い女子生徒ランキングで負けるんだよバーカ!!」 

 

「そんなふざけた事を言うのはこの口かしら?(ギュゥゥウウ)」

「ずびばぜんでじだ……!」

 

 もげる! もげる! 唇がピンチ力によって千切り取られるぅぅううっ!

 

「……ホント、優子姉と大悟兄って良くも悪くも似た者同士だよね」

「……………(コクコク)」

「そ、そうかしら? ふふっ……ありがとう二人とも♪」

……お世辞に決まってんだろバカ(ボソッ)

 

 

 バキッ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

「……うん、美味しいっ! 優子姉前より料理が上手くなったね!」

「……………相当な腕前」

「でしょう? これでもかなり練習してるんだから。まぁ、まだ大悟や凜花さんには及ばないけどね……はいダーリン、あーん♪」

「一人で食えるからそれは要らん。そしてダーリンと呼ぶな!!」

「……………同志……裏切りか?(ギロッ)」

「馬鹿を言うな同志! 俺はずっと二次元一筋だぞ!」

「……………ならいい」

 

 結局、優子が作った晩飯を皆で馳走になることになった。

 メニューは鳥の唐揚げや豚肉の生姜焼き、卵スープ、サラダといった特になんの変哲も無いものだが……確かに旨い。

 唐揚げは衣がサクッと揚がっているし、生姜焼きは豚肉が柔らかくジューシーに仕上がっている。スープも卵はふわふわかつ出汁もしっかり出ていて、どこか優しい味わいだ。サラダもレタスやトマト、クルトン等でカラフルに仕上げ、見た目でも楽しませてくれる。

 コイツ……マジで料理の腕あげやがった。下手したら店で出せるかも知れん……。

 

「んで……わざわざ何しに来たんだ」

 

 唐揚げを白米と共に頬張りながら、俺は優子にそう尋ねる。

 コイツの事だ。ただ手料理を作りにわざわざ出向いてきたではあるまい。何か他に目的がある筈だ。

 

「うん。実はちょっと大悟に頼みごとがあって来たのよ」

「頼みごとだと? それだけか?」

「それだけよ?」

 

 なんだそんな事か。

 てっきりまた何か俺が知らぬうちにやらかしてお仕置きされるんじゃないかと思ったぜ。

 

「でもそれならわざわざ直接じゃなくてもいいんじゃないの? 優子姉」

「それじゃ駄目よ。事前にアポを入れたら意味が無いもの」

「???」

 

 どういう事だ? 話があるならそっちの方が効率が良いだろうに……まぁいい。一先ず聞いてみるとするか。  

 そう思っていると、優子がこちらの方を向いて掌を差し出しながらこう言った。

 

 

 

「大悟。携帯電話を見せて?」

 

「は?」

 

 

 

 思わず声が漏れる。

 そんな事言われるとは思ってなかったからだ。なので一応聞き返す。  

 

「なんでいきなりそんなこと言い出すんだ?」

「実は今日、代表と一緒に遊んでたんだけどね、その時丁度テレビを見てた時に気になる話題があったの」

「何だそれ?」

「浮気の痕跡は相手の携帯電話に残ってる事が多いんだって」

「そうか」

 

 なるほど、そういうことか。つまり俺の浮気を確かめるためにその方法を使ってみようって魂胆か。相変わらずそんな大した根拠の無い安っぽい情報に感化されやすいヤツだ。まだまだ子供だな。

 全く、優子が珍しく改まって頼みごとなんて言うから身構えていたのが馬鹿馬鹿しいな。答え? んなもん決まってらぁ。

 

 

「だから大悟。携帯電話を貸して♪」

「死んでも嫌だね(ブスリ)」

 

 箸で目を刺された。

 

「あぁぁああーーっ!!? 目が、目がいつもの二割増しで痛ぇええっ!」

「大悟。もう一度言うわね。携帯電話を貸して♪」

「フザけんな優子テメェ! またいつもの実力行使かコラァ!!」

 

 目を押さえてのたうち回りながら優子にそう抗議する俺。

 この野郎! 一切の躊躇い無く突きやがって! 俺の目玉を何だと思ってるんだ畜生! 悲しいやら痛いやらで涙が止まらない。

 

「だって、大悟が言うこと聞かないからつい……」

「にしてもいきなり箸で目ぇ突くバカがいるか! 危うく失明するところだったじゃねぇか!」

「心配しないで? アタシは愛する人が例え盲目になっても全然大丈夫だから♪」

「こっちは全く大丈夫じゃねぇ!!」

 

 前言撤回、やはりコイツは秀吉の皮を被った精神異常者(サイコパス)だ!

 

「そこまで嫌がるなら仕方無いわね。無理矢理持っていくわ」

 

 そう言って優子が俺のズボンに手をかけた。 

 最悪だ! 今日はよりによって朝出掛けたままの格好だから携帯がポケットにそのまま入りっぱなしになってやがる! 

 

「そ、そうはさせん! ようやく修理が終わって戻ってきたばかりなのに、そう易々と取られるかってんだ!」

「そう。ならズボンごと奪ってやろうじゃない。いや、むしろズボンもアタシに寄越しなさい」

「なんでだ!? 携帯はまだしもズボンは要らんだろう!」

「そんな事無いわ。だってそのズボンには大悟の匂いがたっぷりと染み付いてるもの。それだけでアタシにとっては値打ちものなのよ?」

「全く理解出来んなぁ! 第一、俺のズボンなんか持ってって何するつもりなんだ!?」

「そんなの……恥ずかしくて言える訳無いじゃない(ポッ)」

「コイツ変態だーっ!?」

 

 おのれ! 三次元のヤンデレとはここまで恐ろしいものだったのか! もしこれが二次元か葉月ちゃんの様な純真無垢なロリッ子が相手ならお安いご用だったのに……っ!

 そして隣では同志が鼻血を出して倒れてやがるしなぁ! 

 

「なら選びなさい。このまま携帯ごとズボンを奪われるか、大人しく携帯をアタシに見せてからズボンを渡すか」

「テメェ俺の事を明久レベルのバカだと思ってるだろ! ちょっと言い方を変えただけで内容は全く一緒って事ぐらいすぐに分かるからな!」

「ああもう抵抗しないで! ベルトが外れないでしょう!」

「それをさせない為に抵抗してるんだろうが!」

 

 そのまま軽い揉み合いになった。

 優子はその華奢な身体(一部分含む)からは想像もつかない程の腕力で俺のズボンを脱がせようとしてくる。最早当初と目的が完全に変わっていた。

 オマケに目も軽くイッていて、まるで気に入ったショタを犯す直前の女みたいなヤバい目つきになっていた。え? 例えが分かりにくい? そんなバカな。

 

「も、もうちょっとで外れるわね……! ハァ、ハァ……、ようやく大悟の匂いが手に入る……うふふふふ……っ!」

「っておい!? お前なんでパンツまで脱がそうとしやがる!?」

「大悟の匂い……癖になりそう……♪ はぁっ、うぅんっ、しゅきぃ……♪」

「や、やめろ! 分かった分かった! 携帯電話は渡すから! だからズボンとパンツだけは勘弁してくれぇぇええっ!!」

「大悟兄っ! ムッツリーニさんの出血が止まらないよぉおおっ!!」

「……………ッ! ッッッ!!(ドバドバドバ)」

 

 

 

 閑話休題

 

 

 

 

「ほらよ。好きなだけ見とけ」

「ありがと♪」

 

 大人しく降伏し、俺は優子に携帯電話を渡した。

 流石の俺でも妹とダチの前でフル○ン姿は晒せないからな。苦肉の策だ。

 

「……………」  

 

 優子は慣れた手つきで俺の携帯を弄っている。

 どうやらメールや通話履歴、入っている画像なんかを見回っている様だ。プライバシーもへったくれも無い。

 

「……まぁ、二次元のエッチな画像くらいなら見逃してあげるわ。ただこの女騎士×スライムってのはどうかと思うけど」

「わざわざ口にしないでくれ……」

 

 性癖ダダ漏れじゃねぇかコンチクショウ。

 

「……アタシよりも吉井君や坂本君との方が通話もメールも多いわね」

「それがどうした?」

「つまり、大悟の浮気相手はこの二人ということになるのかしら?」

「んなワケあるか!」

 

 よりにもよってあのカス共が浮気相手だと!? 気持ち悪いこと抜かすな!! 俺はずっと二次元一筋って言ってるだろうがこのアホゥが!!

 

 

「……まぁ、でもこの二人なら特に問題は無さそうね……そうなるとやっぱり大悟と坂本君が攻めで吉井君が受けかしら……?(ブツブツ)

 

 

 今何かとんでもない発言が聞こえたような気がするが聞かなかったことにしておこう。

 その後もしばらく中身をチェックしていたが、結局浮気が疑わしき証拠は一つとして見つからなかった様だ。

 

「良かった♪ これで安心したわ♪」

「当たり前だろう。第一浮気も何も俺は三次元の女に興味は無い。ましてやそれを写真に残すなんて愚行をする筈が―――」

 

 すると、突然俺の携帯の着信音が鳴った。 

 

「あ、メールが来たわよ」

「そうか。なら返してくれ―――ってもう読んでるのかよ」

 

 こんな時間にメールとは何だろうか。ダイゴブックスへの依頼は基本的には対面もしくは電話でしか受け付けてねぇし、秀吉はそもそも携帯を持たないし、ひょっとして迷惑メールあたりだろうか?  

 

「ほれ、もういいだろ。さっさと携帯電話を返し―――ん? 優子。急に能面のような顔になっているがどうした?」

「……大悟。今こんなメールが来たんだけど……何これ……?」

「?」

 

 

 

 

【Message From 小暮先輩】

 岡崎くん。この前は初めてのお誘いありがとうございます。あのような日常では中々味わえないような刺激的な経験をさせて頂けて、私もとても楽しかったです。

 またの機会がありましたら、是非また私を連れていってくださいませ♡ 

 

 

 

 

 

「ファッ!?」

「へぇ……小暮先輩って一体誰なのかしら? この文面からして女であることは間違い無さそうだけど……(ゴゴゴゴゴ)」

「待て、違う!! 確かにこの人は女性だがお前の思っているような間柄ではない! ただイベントの売り子としてコスプレをして貰ったというだけで」

「問答無用よ。アタシに内緒で他の女と仲良くするなんて……絶対に赦さない……(ポキポキ)」

 

 あれ、おかしいな? これと似たような光景をさっきまで見ていたような気がするぞ?

 

「そ、天! 同志! 助けてくれ! このままじゃ俺がバッドエンドどころかデッドエンドを迎えてしま―――ってアイツらどこ行きやがったぁぁああっ!」

 

 気がつくとリビングから二人の姿が消えていた。どうやら逃げられたようだ。

 

「大悟……それならアタシも今から刺激的な経験をさせてあげようじゃない……それも朝までたっぷりとね……(スッ)」

「おお……! おお……っ! ダメだ! 落ち着け優子! それ以上気を高めるなぁっ! やめろ優子! 落ち着けぇっ!」

「とりあえずまずは他の女を見るその両目からいくわね」

「やめろぉぉおっ! 死にたくなぁい! 死にたくなぁぁあい! 死にたくなぁぁあい! 死にた―――」

 

 

 

「えい♪(ブスリ)」

 

「あああああああああああああああああああ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 PiPiPiPiPi

 

【Message From 吉井明久】

 明日、大悟の家に泊まってもいいかな? 明日の夜はちょっと……家に帰りたくないんだ。君と一緒にいさせてくれ。

 

 

 

 

 




お久しぶりです。前回の投稿からもう数ヶ月は経ってしまったでしょうか。待っていた方には大変申し訳ありません。

そして本来ならば逃走中編の続きを書こうと思ったのですが、中々ネタが思い浮かばず、急遽本編の方に戻らせて頂きました。しかし途中でやめるワケではないのでちゃんと完結はさせたいと思っています。なので長い目で見てくれると嬉しいです。

今回の登場人物
大悟→久しぶりにボッコボコにされる。
優子→愛する人の為に積極的に行動するヒロインの鏡。
天→ほぼオマケ扱い。ごめん 
ムッツリーニ→天同様。 


次回もよろしくお願いいたします。



原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ
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