今回は少し趣向を変えた遊び心のある問題を出してみました。あまり真剣にはならず、息抜き程度な気持ちでチャレンジしてみて下さい。
問 次の質問に答えなさい
『あなたは前代未聞の大量殺人を犯した為、死刑を宣告されてしまった死刑囚です。そんな中、あなたは獄中で死刑執行人に対して一通の手紙を送ります。さて、どんな内容の手紙を送ったのでしょうか?』
姫路瑞希の答え
『私は死ぬのが怖いです。どうか殺さないでください』
教師のコメント
一般的な回答としては『死にたくない、または死刑についてのこと』であると言われているので、姫路さんの思考は正常の範囲内であるようですね。
土屋康太の答え
『君今どんなパンティー履いてるの?』
教師のコメント
まず死刑執行人が女性である前提で考えるのをやめましょう。
吉井明久の答え
『僕は死にましぇん!!』
教師のコメント
死にます。
岡崎大悟の答え
『俺の財宝か? 欲しけりゃくれてやる―――探せ!! この世の全てをそこに置いてきた!!』
教師のコメント
ひとつなぎの大秘宝のことは聞いていません。
※サイコパスの回答
『自分の方が殺す回数は上だ。だから自分の方が死刑執行人に相応しいという内容』
―――side明久
雄二と一緒に足腰立たせなくなるまで大悟を殴りつけた後、話し合いでテスト勝負はお風呂に入ってからという事になり、僕らはそれぞれ着替えの用意の為に男女別々の部屋に分かれていた。
ちなみにあの動画ファイルはもちろんその場で削除させた。あんなものが学園で広まろうものなら僕の学園生活も男としてのプライドもズタボロになるからね。
「さて、行くか」
部屋に入って待つこと数分。雄二が立ち上がった。
「了解。覗きだね?」
「……………任せておけ」
「お主らはどこまでバカなのじゃ……」
「顔面が痛ぇ……」
大悟の顔は僕らの怒りの拳によって風船の様にパンパンと腫れ上がっている。見ててとても痛々しいけど元はと言えば全部コイツの自業自得なので罪悪感とかは特に無い。
「違うぞバカどもが。俺が行こうと言っているのは翔子の部屋だ」
「え? なんで?」
「決まっている。さっきの話にあった模擬試験の問題を盗み出す為だ」
相変わらず卑劣な男だ。
「けど、別に僕らは問題を盗む必要なんて無いんだけど」
「(コクリ)……………それより、覗きが大事」
「そうだそうだ。それに俺にとって三次元版みるくたその裸より優先すべき事項などあるものか」
「お前ら、本当にそう思うか?」
雄二が得意のもったいぶった口調で確認してくる。
「何が言いたいのさ」
「まず明久。お前の家に帰ってきている姉貴は、何を禁止している?」
「え? えーっと、『ゲームは1日30分』、『不純異性交遊の全面禁止』―――ってヤバいっ!! すっかり忘れてたっ!!」
一緒に寝るなんてことになったら即死だ! 僕の一人暮らし的にも、生命的にも!
「あ。でもバレなければ」
「協力しなければ俺がバラす」
「外道っ! この外道っ!」
わかっていたことではあるんだけど。
「次に大悟。お前は俺と同じ立場にいることを忘れるな」
「どういうことだ?」
「暴徒と化した木下姉に消される。間違いなくな」
雄二の言葉に大悟以外の四人がうんうんと頷いた。
「姉上の嫉妬深さは筋金入りじゃからのぉ。他の女性の裸なんぞ見た日には恐らく骨の一本や二本では済まんじゃろうな」
「……………下手したら、再起不能にされる」
「何……?」
「よく考えるんだ。最後に見る光景が三次元の女の裸になるんだぞ? いくら推しのキャラと容姿が瓜二つといえどもお前にとっちゃ最悪だろう?」
「……………ふ、ふふふ。はっはっはっはっは! 何を馬鹿な事を抜かしやがる! いいか!? みるくたその裸体を生で直に拝むことは我々青サマ(青色スプラッシュサマーの略)ファンにとっての長年の夢なんだよ! そして俺は今、まさにその夢が現実のものとなるかどうかの瀬戸際に立っているんだぞ!? こんなビッグチャンスをよぉ! 青サマファンとして逃せるワケねぇよなぁ!? その為に死ねというのなら本望!! 喜んでこの命を捧げる所存だ!!」
声を荒げてそう力説する大悟。
よくわからないけど、取り敢えずなにがなんでも工藤さんの裸が見たいという熱意だけは伝わった。
「だから俺はみるくたその裸を覗く! 例え優子に手足をもぎ取られようとも!! 例え雄二が何をほざこうとも―――」
「そうか。それなら今の発言を木下姉だけじゃなく島田のとこのチビッ子にもバラしてやろうか」
「私の発言が不適切かつ不謹慎であったことを誠心誠意深くお詫びいたします。大変申し訳ございませんでした」
「分かればいいんだ」
雄二に向かって綺麗な土下座を披露する大悟。おお……なんて華麗かつ俊足な手のひら返しなんだ。
流石は大悟。葉月ちゃんの名前が出た途端にこうも態度を変えれるなんて、ロリコンと呼ばれるだけに相応しい身のこなしだ。
「あとはムッツリーニ。お前も危険だぞ」
「……………どうして?」
「出血多量で死ぬ。確実に」
それは確かに。
「……………この俺が、死を恐れるとでも?(フッ)」
なんだ!? 無駄にカッコいい!
「だが、予想されるテストの順位を考えろ。上位の人間から相手を選んでいくとなると」
「順位としては霧島さん、姫路さん、木下さん、工藤さん……って感じだね」
「霧島が雄二を、姫路が明久を、姉上が大悟となると、工藤愛子は誰を選ぶかのう」
「工藤はムッツリーニを選ぶだろうな」
「……………」
「大悟。そんな悲壮感漂う目でムッツリーニと俺を交互に見るな」
どれだけ工藤さんと寝たいんだこのバカは。
「……………まさか」
「おそらくムッツリーニを出血死させて、保体の王者の座を奪うつもりじゃないか?」
「……………っ! つくづく、卑怯な……っ!」
よくわからないけど、ムッツリーニと工藤さんとの間にはおかしなライバル関係があるみたいだ。
「……………あんなスパッツごときに、殺されるわけには……っ!」
死ぬことじゃなくてスパッツで死ぬことが嫌らしい。何かトラウマでもあるんだろうか。
「というワケだ。お前ら協力してくれるな?」
「わかったよ。協力するよ」
「……………やむを得ない」
「……背に腹は……、変えられん……かっ!」
これはまさに命が掛かっている。協力せざるを得ない状況と言えるだろう。
「それならワシも協力しよう」
「え? 秀吉が? どうして?」
「どうしても、じゃ」
「???」
まぁ、協力してくれるなら助かるからいいけど。
「よし。そうと決まれば行動開始だ。翔子の口ぶりから察するに、テスト問題はアイツの部屋にある。そこに忍び込むぞ」
「「「「了解」」」」
―――side大悟
姫路達の姿が見えないのを確認し、俺達は忍び足で廊下を進む。
「ここだな」
「よし、さっさと済ませようぜ」
俺達に課せられた任務は霧島が持っている模擬試験の用紙の奪取だ。そして制限時間は女子勢が風呂から上がるまでの僅か数十分程度のみ。まぁまぁ厳しい条件下だが、ここまで来た以上やるしかねぇな。
雄二がドアノブを掴んで捻る。
ガチャガチャ
「あれ? 開かないね」
「どうやら鍵をかけておるようじゃな」
「自分の家で? う~ん……。何か大事なものでもしまってあるのかな?」
「アイツが大事にしまっておくものなんて見当もつかんが……」
そう簡単にはクリアはさせてくれないってか。だがこの程度の関門ならなんの問題もあるまい。
「俺に任せな。こんなドアすぐにぶち破ってやる」
「待て待て。んな事したら音でバレるし、あとで弁償する羽目になるだろうが」
ドアを蹴破ろうと拳を構えたが、雄二に止められた。
「ムッツリーニ、いけるか?」
「……………少々時間をくれ」
すると懐からピッキング用の道具を取り出して、鍵穴に張り付き始めた同志。そのまましばらく待っていると、
カチャカチャ……、カチャリ
「……………解錠成功」
「流石だムッツリーニ」
「惚れ惚れするような手腕だぜ」
「……………この程度、大したことはない(フッ)」
微笑を浮かべてサムズアップをする同志。
そのピッキング技術を一体どこで身に付けたのかが若干気になるところではあるが、ようやくこれで中に入れるな。
「これはまた、立派な部屋じゃな……」
「ひ、広いね……」
「これでプライベートルームだってんだからヤベェよな……」
下手したらCクラスの教室ぐらいあるんじゃねぇかというくらいの広さを前にし、さすがに驚きを隠せない。
「よし、手分けして探すぞ。模擬試験の問題のようなものがあったら全て封を開けるんだ。それだけで言いがかりをつけられるからな」
「言いがかりだと?」
「つまり、霧島さんに問題を知っていたから不公平だ、なんていちゃもんをつけるワケなんだね」
「そういうことだ」
「なるほど」
相変わらずズル賢いことを考えさせたら一級品だぜ。
「俺は机の辺りを探す」
「それなら僕は棚の方から調べるよ」
「……………入り口から」
「ワシは窓の方から行こう」
「ベッド周りは俺に任せてもらおう」
そして四方八方に散り、それぞれのガサ入れが始まった。
俺の担当はベッド周り。うーむ……思春期女子の寝場所を勝手に漁るのは流石に罪悪感があるな……。いやいや! 今はそんな些細な事を気にしてる場合ではない!
許せよ霧島! あとで雄二のエロイラスト格安で売ってやるからな!
「んーと……」
まずはベッドを確認する。掛け布団を捲ったり枕を裏返したり下を覗いたりと……そこで見つけたのは、
『雄二の抱き枕』
『雄二のぬいぐるみ』
『雄二の抱き枕カバー(使用済み)』
『雄二の抱き枕カバー(未開封)』
『雄二の抱き枕カバー(未開封)』
『雄二×霧島の同人誌(60冊)』
『ウェディングプランナーの名刺』
『産婦人科医の名刺』
『調教師の名刺』
『オムツ(パ○パース)』
『お尻拭き』
『哺乳瓶(雄二の名前が書いてある)』
『よだれ掛け(雄二の名前が書いてある)』
『おしゃぶり(未使用品)』
「チッ。さっきから関係のねぇモンばっかだな」
「おい。その前にその奇々怪々なラインナップについて色々尋ねたいことがあるんだが」
「やれやれ、ここは収穫無しか。明久ー。そっちになんかあったかー?」
「待ってくれ! 俺はもう何も見なかったことにするのは不可能なんだ! せめてお前が関わっているであろう前半のヤツだけでも説明しやがれ大悟ぉぉおおっ!」
後ろでギャーギャー喚いている雄二を尻目に、俺は棚を担当している明久の所に行った。
「うーん。こっちにも模擬試験っぽいものは見当たらないよ。大悟は?」
「こっちもだ。代わりにベビー用品ならいっぱい見つけたがな」
「……………ベビー用品? えっと、なんで霧島さんがそんなの持ってるの?」
「知らん」
おそらく雄二を使って赤ちゃんプレイでもしようとしてたんだろう。
オムツや哺乳瓶まで用意するあたり、霧島の本気度の高さが伺えるな。
「……………オギャる雄二(ボソッ)」
「やめろ! 心底気持ちの悪い言い回しをするな! そして明久もそれを聞いて吐きそうになってんじゃねぇ!」
「いや……だって赤ちゃん姿の雄二とか誰得……おぇぇ」
俺も激しく同意だ。百歩譲って二次元でならまだしも、リアルでそんなものを見た暁には多大なる精神汚染によって半年間は眠れない日々が続くだろう。
「つうか余計なモン見つけてねぇで早く模擬試験を探せ! ただでさえ時間がねぇんだから!」
「へえへえ分かってますよ」
雄二に怒られてしまったので、俺は見つけた品々をそれぞれ元あった場所に戻す。
とりあえず霧島にはあとでソッチ系のエロアニメでも貸してやろう。なんて思っていると、
「……………っ!(ブバァッ)」
「ムッツリーニ!?」
「どうした、同志!?」
突然同志が鼻血を吹き出して倒れた。なんだ!? 一体何を見たってんだ!?
「…………ブービー……トラップ……か……」
「ブービートラップだと? どういう意味だ」
「……………気を、つけろ……明久……同志……。工藤愛子は……、俺達を、皆殺しに……」
そう言って同志が視線を向けた先にあったのは―――綺麗に折り畳まれた女性物のパンティーだ。
嘘だろ……? じゃあまさかあれは―――みるくたその生下着かっ!!?
「ああ、いや。それで死ぬのはきっとムッツリーニだけなんだけどさ……」
「明久、待て」
「へ?」
俺は明久を制し、同志に尋ねる。
「同志。あれは間違いなく工藤のものなのか?」
「……………(コクッ)……おそらく」
「……Really?」
「……………Really(コクッ)」
「なるほど。つまりみるくたその下着か……」
「―――では、テイスティング宜しいか?」
俺はキメ顔で手を顔に当ててそう言った。
「おぉ……なんて躊躇のない変態宣言なんだ。あんな真剣な表情で、女子の下着を食べようとするなんて」
「……………さすがは、同志。俺達には……到底思考が及ばない」
二人が感嘆の言葉をあげながら俺を見る。
「ていうか大悟。君のストライクゾーンは二次元の女の子か幼女じゃなかったのかい?」
「安心しろ。これはあくまでも一般人としてのテイスティングだ」
「いや広すぎでしょ。君の一般人カテゴリ」
何を言うか。物事を知るにはまず己の肌身で感じた方が分かりやすいだろうに。
「あ、アレは……っ!」
工藤の下着を拝借しようとした時、突然後ろから雄二の慌てたような声が聞こえた。何だ?
「雄二、問題を見つけたの?」
「おお明久! 大悟! ちょうどいいところに来てくれた! コレを取り出すのに協力してくれ!」
「なんだなんだ。何があるってんだ」
雄二が示した方には、壁に埋め込まれた分厚いガラス。その奥には一枚の婚姻届が入っていた。しかもご丁寧に霧島と名前と雄二の名前が記されている。あとは印鑑さえ押せば結婚成立な状態だ。
「いやいや、見るからに無理っぽいよ。それよりも問題を捜さないと」
「バカを言うな! 俺がどれだけこれを捜していたと……! 翔子のヤツ、弁護士に預けたなんて嘘をつきやがって……! だから鍵なんてかけていやがったのか……!」
「用意周到だな」
「くっ……! どうすれば取り出せる……! はっ、そうだ大悟! お前の自慢のパンチ力でこのガラスをブッ壊してくれ!」
「はぁ? アホかテメェは。この分厚さのガラスがたかだか人間のパンチごときで割れるワケねぇだろ。漫画やアニメじゃあるま」
「そういえば前にチビッ子は、ガラスをパンチで粉砕出来るような強い男が好きって言ってたぞ」
「任せておけ俺の本気を今見せてやる(シュッシュッ)」
その場でシャドーボクシングを始める俺。よし、力もパンチのキレも問題ないようだ。
「頼んだぞ大悟。俺はお前を信じてる」
「お安いご用よ! ハァァァァァアア……………!!」
態勢を整えて拳を固く握り締め、右腕に力を込める。
いくぞ!! 唸れ! 我が鍛えに鍛えた筋肉達よぉぉぉおおおっ!!
「オリァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
フッ……決まったぜ。文字通り完膚なきまでに粉砕されたようだ。
ガァン(拳がガラスに当たる音)
ボキバキボキ(俺の拳骨が砕ける音)
バタバタバタ(床に倒れて悶える俺)
―――俺の拳が。
「ぁぁぁああああっ!? 手が! 右手首から指先にかけての骨という骨が壮絶な痛みを伴いながら粉々にぃぃぃぁぁぁああああ!!」
「やっぱり無理だったか。翔子のヤツめ、強化ガラスとは用意周到な真似を……」
「おいコラ!! やっぱりって何だやっぱりってテメェ!! こうなるってこと始めから分かってたんか! 俺のことを信用していたんじゃねぇのかよ!」
「割れる方に信用していたワケじゃない!」
「フザけんなこのクソゲス野郎がぁぁああーー!!」
クソォッ! 同人誌作家にとって命ともいえる右手を平気で壊させるとはなんたる外道の極み! これで執筆活動に大きな支障が出たらどうしてくれるんだ畜生!
「雄二! やはりテメェとはここで決着をつけなきゃなら―――」
「あれ? 皆何をしているのかな?」
「「「「「え?」」」」」
雄二を残った左手でブン殴ろうとしたその時、背後から声が聞こえた。振り向くと、そこには工藤がいた。
「ぅわぁっ! 工藤さん!?」
「いけない人達だね。女の子の部屋に忍び込むなんて」
「ば、馬鹿な!? もう風呂から出てきたってのか!?」
「違うよ。下着、出したまま持っていくの忘れちゃったから取りに来たんだよ」
床に倒れ伏した同志の前に置いてある下着を指差して笑う工藤。
ぬかった……! まさかあの下着は単なる忘れ物だったのか……!
「マズい! 皆、ここは撤退しよう! 工藤さんが戻ってきたということは殺戮部隊も戻ってくる可能性がある!」
明久がそう言って出口へ走り出す。
確かに、もしこんな光景を優子にでも見られたりしたら右手だけでは済まされないほどの大惨事が待ち受けている。最悪もう一度天国のばあちゃんの顔を見ることになるかもしれん。
「く……っ! こいつを目の前にして退くしかないとは……!」
「畜生! 俺なんてただ右手を怪我しただけじゃねぇか……!」
苦虫を噛み潰したような嫌な気持ちになりながら、俺は同志を抱えて明久と同じように逃げ出す。
「また後でね。五人共」
―――男子部屋
「うぅ……。作戦失敗だよ……」
「おうコラ雄二。この右手の借りは必ず返すかんなクソ野郎……!」
「上等だ。こっちもあのグッズ類の件でテメェには話が山ほどあるからなカス野郎……!」
「やめんかお主ら。何があったのかは知らぬが、とりあえず胸倉を掴み合うのをやめい」
結局模擬試験は見つけられず、無駄に時間を食っただけで終わった。
だが不幸中の幸いか、俺の右拳はバリバリに負傷はしているものの、かろうじてまだ再起不能には至っていなかった。良かった~。
「これからどうしようか……」
「どうするもこうするも、一度見つかった以上は何もできないだろ」
「つまり、正々堂々テストの点数で勝つしかないのか」
「だよね。唯一助かる方法は雄二が勝って一緒に寝る相手に僕か大悟を選ぶことだけど……」
「……その瞬間、俺達三人の内の二人が社会的に死ぬがな」
「ちなみに下回っていたら?」
「俺達三人の自由な生活が終わりを告げる」
「ほぼ詰みじゃねえか」
勝てばホモのレッテルを貼られ、負ければ俺と雄二はヤンデレ達に連れ去られ、明久は不純異性交遊禁止を破ったとして玲さんにボコされる。ここまでハイリスクノーリターンな勝負があるだろうか。どうあがいても絶望とはまさにこの事だ。
こうなったらいっそのこと、この家から逃げてやろうか―――
「お主ら、安心せい」
「む? どうした秀吉」
「テスト問題ならば、それらしきものは軒並みワシが開封しておいたからの」
「「「え?」」」
間抜けな声をあげて秀吉を見る俺達。
「え? いつの間に?」
「お主らが色々騒いでおる間に、じゃ」
「マジか! よっしゃ! 流石は俺の相棒だ! やるときはしっかりやってくれるヤツだな! 俺ぁ嬉しいぜ!」
「む、むぅ……。大悟にそう素直に褒められると、少し照れるのぉ」
そう言って照れ臭そうに頬を掻く秀吉。ああもう一々仕草が可愛いじゃねえか畜生。
「でも、どうして秀吉は協力してくれたの?」
「確かに。お前にはあんまりメリットがねぇだろ」
「ワシも色々と複雑での……」
遠くを見るような目をする秀吉。
「女子と同衾して、何も無くばワシは完全に女子扱いされるじゃろうし、何かあれば問題になる。これほど割に合わん状況はあるまいて……」
「「ああ……」」
コイツもコイツで色々悩んでんだな。
ま、女子扱いに関しては仕方ないことだ。だってコイツは正真正銘の男の娘なのだから。むしろ男らしさなんて求める方が無謀というものよ。
閑話休題
「ところでお主ら。そろそろワシらも風呂に入ってこんか?」
「そうだね。そうしようか」
「霧島の家だ。風呂もさぞかし豪華なんだろうな」
下手したら天然温泉とかあったりして。
「俺は正直風呂どころじゃないんだが……」
「まぁ今は打つ手がないんでしょ? 大悟でも破壊出来ないんじゃどうしようもないし、だったらとりあえずお風呂に行こうよ」
「そうだな。風呂で何か別の策でも考えるか」
「そうしなよ。それじゃ、秀吉はまた後でね」
「一人風呂をゆっくり楽しめよー」
ガシッ
「待ていっ」
「あ?」
いきなり秀吉が俺の腕を掴んできた。
「なんだよ。早く行ってこいよ」
「うむ。勿論すぐに行く。じゃが、何故お主らはワシと別行動を取ろうとする?」
「?」
「何を言ってるのさ秀吉。だってお風呂でしょ?」
「うむ。風呂じゃ」
「だから、僕らは男湯で、秀吉は」
「ワシも男湯じゃ!」
「? 時間をずらして入ろうってこと? それなら少し待ってるけど」
「違うのじゃ! ワシもお主らと一緒に入るのじゃ!」
「「……はぁぁぁぁああ!!?」」
秀吉の発言に思わず声を出して驚く俺と明久。
「秀吉!? お前どうした! どっかで頭でも打ったのか!?」
「そうだよ秀吉! 一緒にお風呂だなんて、そんなのダメだよっ!」
「ワシは正常じゃ! 今日という今日こそは、ワシをキチンと男として見てもらうからの!」
そう言って掴む力を強くする秀吉。
参った。こうなると秀吉は頑固になり中々折れない。だがだからといって『よし、わかった』とこっちが認める訳にもいかない。
「秀吉! お前あの時の事を忘れたのか!? 昔俺とお前の二人でスーパー銭湯に行った時の事をよぉ!」
「うぐっ……! そ、それは……」
秀吉が苦虫を噛み潰したような顔になる。
「え、どういうこと?」
「あれは俺達がまだ中坊だった時の話だ。俺と秀吉は遊んだ帰りに汗を洗い流そうと地元のスーパー銭湯に行ったんだ」
「うん」
「しかしそこで秀吉が『ワシも男湯じゃ!』と言って頑なにごねてな。仕方なく俺は秀吉を男湯に入れたんだ」
「それでどうなったの?」
「二人揃って出禁になった」
「おぉ……それはなんとも災難だね」
俺は従業員や客から『女の子を無理矢理男湯に入らせようとした真性のクズ』と誠に遺憾な汚名を被せられ、秀吉は秀吉で『女の子なのに男湯に自ら入ろうとした常識知らずの痴女』という謎のレッテルを貼られた。
最終的には俺も秀吉も警察に補導されるという最悪な結末になった。あの時の屈辱と羞恥心は数年経った今でも忘れない。
「わかったか秀吉! お前が俺達と男湯に入ることは社会的にも性別的にも不可能だということが!」
「あ、あの時は皆ワシが男じゃと言うても信用してくれんかったから……。と、とにかく、お主がなんと言おうともワシは男湯に入るからのっ! 男同士の裸の付き合いじゃ!」
「だからお前は男じゃなくて男の娘だっつってんだろうが!」
「ええい! じゃからその訳の分からぬ性別にワシを入れるなと言うとろうが! そして明久は裸と聞いて顔を赤らめるでないっ!」
「は、裸……」
秀吉の裸と聞いて妄想を膨らませた明久。気持ちは分かる。
「もうよい! 話をしても埒が明かん! 実力行使じゃ! 行くぞ大悟!」
「ちょっと待てよ! だから俺とお前が一緒の風呂は―――」
「へぇ。二人で混浴だなんて随分と楽しそうな話をしてるじゃない。アタシも混ぜてよ」
ん? どうして俺と秀吉はいきなり地べたに寝かされているんだ? それに足首から鳴る骨の軋む音は一体?
「なぁ秀吉。気のせいかな俺の後ろからただならぬ妖気を感じるんだが」
「それは奇遇じゃな。実はワシも同じ気配を感じておった」
「さぁ、行きましょうか。たっぷり汗を流しておいた方がその後のお風呂はより一層気持ち良く入れるんだからね」
「いやいや、もう勉強でこれでもかってぐらい疲れは溜まってるからよ」
「そうじゃ姉上。じゃからこれ以上汗を流す必要はないかと」
「今から三人でソフトボールをしましょうか。ポジションはアタシがバッター。秀吉はキャッチャー。大悟はボール兼サンドバッグね」
「「……………」」
引き摺られながら声を殺して泣く俺と秀吉。
頼む誰か! 誰でもいい! 俺達を助けてく―――
『まったく、戻ってきてみたら、よりによって木下とお風呂だなんて……』
『工藤さんが忘れ物をしてくれてよかったです。後でお礼を言わないといけませんね』
『あは、あはは……。二人とも冗談ばっかり。本当は僕をからかっているだけでしょ? ねぇ、冗談だよね!? どうして二人ともこっちを向いてくれないの!? どうして僕の手を厳重に縛るの!? とにかく話を聞いてよ! 誰か、誰か助けっいやぁああーっ!』
『……雄二』
『しょ、翔子!? お前いつの間に戻ってきていたんだ!?』
『……婚姻届を盗もうとするなんて、許せない』
『ま、待て! 話を聞け! アレは盗難じゃなく正当な権利でぎゃぁあああーっ!』
『ムッツリーニ君、起きて起きて』
『……………う……うぅ……』
『えいっ(チラッ)』
『ぐぼぁっ!(ブババッ)』
―――ああ。やっぱり、今回もダメだったよ。
そういえば、この小説のUA数が10万を越えていました。こんなに多くの方々に見ていただいてとても嬉しく思います。これからも失踪しない程度に頑張りますのでよろしくお願いいたします。
感想、意見などありましたらよろしくお願いします。
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
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入れろ、絶対に
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別に入れなくてもいいよ