問 次のことわざを用いて、簡単な文章を作成しなさい。
『逆鱗に触れる』
姫路瑞希の答え
『取り返しのつかないいたずらをしてしまい、母親の逆鱗に触れた』
教師のコメント
正解です。ちなみにことわざの簡単な意味としては『目上の人を激しく怒らせてしまうこと』です。なので姫路さんの答えは模範解答と言えますね。
土屋康太の答え
『女性のスカートを覗いたら、お巡りさんの逆鱗に触れた』
岡崎大悟の答え
『女子小学生を影から見守っていたら、お巡りさんの逆鱗に触れた』
教師のコメント
『でしょうね』という言葉以外何もコメントが思い付きません。
吉井明久の答え
『行ってらっしゃいのチュウを拒否したら、姉の逆鱗に触れた』
教師のコメント
素晴らしい姉弟愛……という事にしておきましょうね。
―――side大悟
小一時間後、なんとか優子に解放された俺は、明久達のいる男子部屋には戻らずに、廊下の端っこで電話をしていた。
「―――ああ。今母さんが挙げたとびきり強いヤツ全部持ってきてくれ。それと
『わかった。ちょっち荷物はかさばるが車使えば問題ねぇ。飲み行くついでに寄ってやるよ』
「飲み行くって……なら車使うなよ。飲酒運転で捕まるぞ」
『大丈夫。もう既に代行頼んだから』
「ならいいんだが」
電話の相手は母さんだ。
『にしても大悟にしちゃあ珍しいじゃねぇか。お前が自分からこんな頼み事してくるなんてよ。どういった風の吹き回しだってんだ?』
「まぁな。けど今回はちょっとした事情があってな。どうしてもこの方法が必要なんだ。それに明日から土日で休みが続くから身体的負担についても懸念することはない」
『まー、お前らはある程度耐性はついてるから常人よりは平気だとは思うが……』
「それにせっかくのお泊まり会だ。記憶に残る忘れられねぇような思い出にしたいだろ? 特にアイツらには」
『ふーん……ま、いいわ。なんか後で面白い状況になったら教えてくれや。いい酒のツマミになりそうだ』
「ういよ。んじゃ待ってるから頼むな」
『おう』
そして電話を切る。
「よし、これで準備は万端だ……。あとは時を待つだけ、か」
―――雄二、明久。さっきはよくも好き勝手ボコボコにした挙げ句データまで抹消してくれたな。おかげで顧客との取引が遅れてダイゴブックスの信用を損ねるハメになったじゃねぇか! こうなりゃ手段は選ばねぇ……。テメエらが一体誰に喧嘩を売ったか……身をもって学ばせてやろうじゃねぇか。
―――岡崎家に伝わる“伝統儀式”を以てな!!
俺はそう心の中で叫ぶと、悪どい笑みを浮かべつつ、明久達の待つ部屋に戻るのであった。
え? そんなのただの八つ当たりじゃないのかって? 知らんなぁ!! 八つ当たりだろうがなんだろうが俺はこの手でヤツらに復讐してやらねぇと気が済まねぇんだよぉ!!
―――side明久
「坂本雄二から始まるっ」(雄二のコール)
「「「「イェーイ!」」」」(僕ら四人の合いの手)
「古今東西っ」
「「「「イェーイ!」」」」
「一部生徒の間で噂になっている明久の恋人の名前っ」
……へ?
パンパン(手拍子) →雄二の番
「【久保利光】!」
「ダウト! それダウト! 久保君は男だから!」
パンパン(手拍子) →ムッツリーニの番
「……………【坂本雄二】」
「嫌だぁっ! それはなんとなく出るなと思ってたけど改めて言われると凄く嫌だぁっ!」
「俺だって嫌だボケ!」
パンパン(手拍子) →大悟の番
「西村宗一」
「言ったぁぁあっ! このお題において一番名前が出てはいけないであろう人物の名前を何の躊躇もなく言ったぁぁああっ!」
「だってお前、一番鉄人と距離感近いし」
「好きで近くにいるワケじゃないっ! 第一雄二はともかく、僕と鉄人がそんな関係にあるなんて思ってる人がいるわけ」
「「「セーフ」」」
「なんでさぁぁああっ!?」
パンパン(手拍子) →秀吉の番
「え、えっとえっと……ワ、ワシじゃ!」
「……………」
「あ、明久!? そこで黙り込んで頬を染められるとワシも困るのじゃが!?」
パンパン(手拍子) →僕の番
「し、【島田美波】!」
「「「「明久、罰ゲーム決定!」」」」
「どうして!?」
久保君や雄二、果ては鉄人でさえオーケーなのに、どうしてこの前キスをした美波がアウトになるんだ!? この問題、わけがわからなすぎる!
「さぁ明久。くじを引くのじゃ」
「うぅ……。なんだか納得いかない……」
「安心しろ。お前以外の全員はきちんと納得している」
仕方がないので雄二が突き付けてくる袋の中に手を突っ込んで、その中から一枚だけ紙を掴んだ。
えっと、なになに……
『オトーリ』
……へ?
「お、俺の考えた罰ゲームが当たったな。残念残念」
「うん。それはいいんだけどさ、宴ってなに?」
大悟に罰ゲームの内容の意味を尋ねると、何故か彼はニヤニヤと不敵な笑みを浮かべ始めだ。
「よし、んじゃ来るまで少し待っとくか」
「待つ? 待つってなにを?」
「まぁ何も聞かずに大人しくしとけや。もうすぐ配達人が到着すると思うからよ」
「?」
大悟の言っている意味がわからない。
待っとくとか配達人とか、一体どんな罰ゲームをさせるつもりなんだろうか。そう思っていると、
コンコン
突然僕らの部屋の扉がノックされた。
「誰だ? 女子のヤツらか?」
「いや違うな。どうやら噂をすれば来たようだ。開いてるから入っていいぜー」
ガチャ
「うぃーす。邪魔するぜー」
「え? 凜花さん?」
扉を開けて入ってきたのは、大悟のお母さんの凜花さんだった。
「よっ明久。しっかしここが霧島の家か。大悟から金持ちだとは聞いてたがメチャクチャ広ぇなオイ。しかも使用人みてぇなヤツもいたしよー」
「いやいや、それよりも何故凜花さんがここにいるのじゃ?」
秀吉がそう訊くと、凜花さんは加えていたタバコを
「大悟から電話で頼まれてな。飲み行くついでに必要な荷物を持ってきたんだ」
「荷物?」
「ああ。アタシ厳選の最強の布陣だ、喜べ」
そう言うと凜花さんは背中に背負っていた大きなリュックサックと肩にかけていたクーラーボックスを床に置いた。
置いた時に結構な重低音がしたから、中には相当な量の物が詰め込まれているようだ。
「もしかして、さっき言ってた罰ゲームの準備ってこれのこと?」
「ご名答。その通りだ」
「おいおい。罰ゲームだなんて人聞き悪ぃぜ。これは由緒正しき伝統的な儀式なんだぞ?」
「その儀式で毎回全員揃ってゲロ吐いて酔いつぶれてるけどな」
「いいんだよ。それが醍醐味なんだから」
……え? 酔いつぶれる?
「ちょっと待って大悟。凜花さん。酔いつぶれるって一体どういう―――」
「ういしょっと」
僕の懸念をよそに、凜花さんは嬉々としてクーラーボックスとリュックを開けて中の物を並べ出す。
バーボン(アルコール度数40%)
ブランデー(アルコール度数45%)
テキーラ(アルコール度数40%)
泡盛(アルコール度数60%)
アナーキー(アルコール度数82度)
エバークリア(アルコール度数95%)
スピリタス(アルコール度数96%)
並べられたのは、程よく冷やされたお酒(全て度数40%以上)の数々と大きな壺瓶。そして人数分のジョッキグラス(明らかに日本のサイズじゃない)。
「……………」
「いいねぇ。どれもこれもキンキンに冷えてやがる。俺が頼んでおいてなんだが、よくこんなに用意出来たな」
「ちょうどまとめ買いしたばっかだからな。こんくらいなら全然構わねぇよ」
「「「……………」」」
……………。
「んじゃ用事も済んだことだし、アタシは帰るわ。楽しい夜を過ごせよ」
「おう、ありがとな母さん」
ガチャ バタン
そのまま凜花さんは部屋を去っていく。
「さ、これで準備は万端だ。待たせたな明久」
「……………」
そう僕に視線を向ける大悟。
……………フゥ。なるほど。そういうことか。度数の高いたくさんのお酒。大悟が僕にやらせようとしている事が何となくだけど理解できた。
なら、僕が取るべき行動は一つだけだ。
テクテクテク(部屋の扉に向かう僕)
キィィ(扉を開ける僕)
ガシッ(開けた方の手首を大悟に掴まれる)
ギチギチ(その腕を勢いよく大悟に捻り上げられる)
ギュゥゥウウ(そのまま裸絞めをくらう)
「おいテメェ。なにナチュラルに逃げようとしてるんだァ? 罰ゲームって約束をついさっきしたばっかだよなァ……?」
「やめろ! 放せ! 僕には分かるぞ! 貴様がやろうとしていることが罰ゲームの範疇を明らかに超えてる所業だってことに! ならそんなものにホイホイと乗っかってなるものかぁっ!」
「黙れ負け犬。よくも一週間寝ずにかけて作った力作をブチ壊してくれたなぁ……えぇ? テメェにはもう拒否権はねぇんだ。だから大人しく言うことを聞きやがれ。それとも今ここで窒息死して三途の川を泳ぎてぇか?」
「ぐぅ……! このキモオタがぁ……!」
必死に抵抗するも、大悟の豪腕にガッチリと首を固められてしまい、振りほどくどころか動かすことさえ出来ない。というかアレは大悟が100%悪いんじゃないか! おのれ……! 自分のした事を棚にあげてしかもそれを他人になすりつけるとか、なんて極悪非道なヤツなんだ! 逆恨みも甚だしいっ!
クソっ! 格なる上は……!
「……あっ! あんなところに下着姿の女子小学生がっ!」
「なにぃっ!? どこどこどこどこどこ!!?」
バカが気を反らした隙に緩んだ腕の拘束から脱出する。
「なっ!? 明久テメェ!」
「バカめ大悟! こんな幼稚かつ明らかな嘘に騙されるなんて貴様もまだまだ未熟だなっ! てことでさらば」
ガシッ
「えっ!? なになに!?」
「……ん~? どこへいくというのじゃ~。明久~?」
「……………逃げるのは、卑怯」
見ると、何故か秀吉とムッツリーニにガッチリと両腕をホールドされていた。
「え、ひ、秀吉? ムッツリーニ?」
「ダメじゃろ~? ちゃんと罰ゲームは受けなくてはのぉ~……ヒック」
「……………ルールは守るべし……ヒック(コクリ)」
「ど、どうしたの二人とも。顔がやけに赤くて喋り方も変だよ?」
「なにがじゃ~? ワシはこの通りいつもどおりピンピンしておるじゃろうに~……ヒック」
「いやいや秀吉! 明らかに様子がおかしいって! 一体何があ―――ん?」
コロコロ(空になった酒瓶)
「…………まさか」
「なんだか頭がフワフワするのぅ~……。それに気分が高ぶって止まらんなぁ~アハハハハハっ!!(ゴクゴク)」
「……………おおらかな気分(ゴクゴク)」
「秀吉ぃぃぃぃいいいいっ!!? ムッツリーニィィイイ!!?」
「逃がさねぇと……言ったよなぁ……?」
やりやがったなこのバカ!! 秀吉達の飲み物に酒を混ぜて酔わせたのか! しかもこの酔い様、相当度数の強い酒を使ったに違いない!
「貴様! いくら僕を逃がすまいとはいえ、秀吉とムッツリーニにこんな真似をして、酷いとは思わないのか!」
「上手く手篭められて良かったと思っている」
「なんて綺麗なクズ発言!!」
どうしてこんな外道畜生筋肉ダルマと僕らのアイドル的存在の秀吉が親友なんて間柄なんだ! 全く理解が出来ない!
「おーおー盛り上がってんな。んじゃ、俺ちょっとトイレ行くついでにその辺ブラブラしてくるから」
そう言って部屋を出ていこうとする雄二。
アイツ! もしかしてとばっちりを食らうのを恐れて一人で逃げようとしているな! だがそうはさせるものか!
「まぁ、待ちなよ雄二」
雄二の肩を掴んで逃走を防ぐ。
「ハハハ、放せよ明久。罰ゲームを受けたのはお前だけだろう? なら俺は関係がないじゃないか」
「何を言っているのさ雄二。僕らは運命共同体の仲じゃないか。それにあのデータを消させた件には君にだって責任があるよ」
「いいから放せよ。俺はお前の不始末に付き合うつもりはない」
「そんな寂しい事をを言わないでよ。せっかくのお泊まり会なんだから一人だけ除け者になんてなろうとしないでさ、皆で一緒に楽しもうじゃないか」
「…………いいから放せっつってんだコラ」
「…………だから逃げんなっていってんだコラ」
コイツ……是が非でもここから脱出する腹積もりか。
だが生憎そうは問屋が卸さない! どうせ僕が助からないのなら貴様もろとも道連れにしてやる!
僕はそう思い、雄二に向かって叫んだ。
「そういえば雄二は、葉月ちゃんと付き合いはじめて今日で二ヶ月目だっけかーーーっ!!?」
「はっ!? テメェ何言ってふぐぅぅううっ!!?」
「……………葉月ちゃんと……なんだってぇ……?」
さっきと同じように大悟は今度は雄二の首を絞め始めた。瞬く間に顔色が変わる雄二。
「ま、待て大悟……。今のはコイツのでっち上げた作りばなぁぁぁ……」
「大悟。僕から提案なんだけど雄二も罰ゲームに加えてくれないかな? その後で葉月ちゃんを誑かした雄二を殺すなりなんなりしていいから」
「なるほど、確かにそうだな。いいだろう。なら雄二も強制参加だ」
雄二、罰ゲーム執行決定。
「さぁ、これで雄二も状況は一緒だね。共に宴に興じようじゃないかっ」
「テメェ……後で絶対殺してやるぞクソ野郎……!」
雄二が親の仇を見るような表情で僕を睨み付ける。
ああ美しきかな僕らの友情。幸も不幸もお互いで分かち合ってこそ、本当の友達といえるだろう。
「さて、始める前にまず俺が中身についての説明をざっくりとだがしてやろう。まずお前ら……『オトーリ』っつうものを知ってるか?」
「「オトーリ?」」
聞いたことがない。
「オトーリとは沖縄の宮古島に伝わる酒宴の席で行われる風習でな。全員で輪になって口上を言い、同じ酒を飲むことで親睦を深めたり、人前で臆せず発言する技術を培うことを目的として行われるんだ」
「「へー」」
「だから今回はそのオトーリに習いつつ、岡崎家のやり方でこの同じ瓶壺の酒を飲もうと思う」
「せっかくのお泊まり会じゃからのぅ」
なるほど。同じ釜の飯を食べるみたいな感じなのか。
「だが、このオトーリというのは簡単そうにみえて案外難しい。何故なら使う酒は皆が満足できるようなものじゃないといけないからだ。そしてご存じの通り、全員の好みが一致する酒というものも中々無い。人間にはそれぞれ好き嫌いが存在するからな」
いや、ご存じも何も僕らまずお酒を飲める年齢じゃないんだけど。
「だがここで皆の感想が異なるのは寂しいだろ?」
「確かにそうじゃのぅ」
「……………思い出だから」
「そこで俺は思ったんだ。そんな状況で少しでも皆を満足させる為には―――」
「―――全員の意見が公平になるであろう、ひとまずキツい酒にしたら大丈夫だ、と!」
「「公平の取り方がおかしいだろ!!」」
大悟の妄言に思わず雄二とツッコミがハモる。
あたかも僕らが度数の高いお酒しか飲まないみたいな言い方はやめろ! いやそもそもお酒なんて飲まないし、飲めないから!
「そんで、今からこの瓶壺を回してそれぞれ酒を注いでもらうんだが、その時なんでもいいから一言述べてくれ。口上というヤツだ」
「一言?」
「オトーリはまず一言述べてからやるらしいぞい。沖縄でいうなら『海の美しさと島人の優しさに感謝を!』とかの」
「へぇ、詳しいね秀吉」
「中学の頃に大悟の家でオトーリをやった時に、凜花さんから教えて貰ったのじゃ……ヒック」
そんな前から今みたいに飲まされてたのか……。凜花さんの容赦が無さすぎる。
「さて、まずはこの俺が最初に真面目な話をさせてもらう」
そう言うと、大悟はコホン、と咳払いをしてから話を始めた。
「この何十億という人間が共存するこの星のなかで、産まれも育ちも異なる俺達がこうして出会えた事は正に奇跡に等しいことだ。そして俺は、そんなお前らとこうして同じ時に同じ場所に集い、同じ学舎に通い、同じ教室で勉学に励み、同じ壺瓶の酒を飲めることをとても嬉しく思う」
「大悟……」
「それに、こんなはみ出しものの俺と友達でいてくれてありがとうよ。明久。雄二。同士。そして俺の最高の親友の秀吉。この場にいる五人全てが同好の士であり、仲間だ」
「「「「……………」」」」
「けど、時間は止まってはくれない。いずれ俺達は卒業し、それぞれの目標や夢に向かって分かれていかなくちゃならない……だがっ! 俺達が共に過ごした時間は失くなることなく、思い出として心の中にずっと残り続ける!」
「「「「……………」」」」
「だから野郎共! 今日という日をどうかこれからの人生における青春の思い出として!! 永遠に忘れないでほしい!! 俺達の友情……そして輝ける青春に、乾杯っ!!!」
ドバドバドバ ← スピリタス投入
「「アホかぁぁぁああああああーーーっ!!!」」
思わず叫んだ。
「何が青春の思い出だコラ!!」
「思い出以前に記憶すら残す気ないだろ大悟!!」
何の躊躇いもなく度数96%の酒を笑いながらブチ込む大悟に二人でそう文句を呈す。
「う、うぅ……。ワシも、ワシもお主らと過ごした日々は絶対忘れぬからのーーーっ!!」
「……………俺達の友情は……! 未来永劫っ!」
ドバドバドバ ← スピリタス投入
ドバドバドバ ← スピリタス投入
「待て秀吉! ムッツリーニ! なら何故それを注ぐ!? 言葉と言動が全く噛み合っていないぞ!」
「無いよね!? 絶対覚えておく気なんてないよね!?」
どうやらアルコールのせいで秀吉もムッツリーニも頭がおかしくなっている様だ。
まずい。このままだとあのを飲まされる羽目になってしまう! 格なる上は……!
(なに食わぬ顔でお茶か水でも入れて!!)
(度数を下げて身体的負担を減らすっ!!)
(やるぞ明久)
(オーケー、雄二)
この場から逃げられない今、僕らが助かる道はそれしかない!
僕は雄二と互いに目配せをする。
「よし、次は明久。お前の番だ」
「分かった。今行くよ」
大悟に呼ばれたので、僕はこっそりとお茶のペットボトルを忍ばせ、酒の入っている瓶壺に近づき顔を覗かせる。
よし。この中に早速―――
シュウウウウウ!! ← 揮発したアルコール
瞬間、僕の両目に焼けるような痛みが走った。
「目が!!? 目がぁぁぁああああああーーーっ!!!」
「へぶっ!!?」
あまりの痛みに目を抑えてよろける。その際に間違えて大悟の顔面を思いっきり頭突きしてしまった。
ダラダラと鼻血を出す大悟を見て、僕は急いで謝る。
「あっ! ご、ゴメン大悟! わざとじゃないんだ!」
「お、おぉ……。あ、ああ。いやいや気にすんな」
「ハハハ。何やっとるんじゃ、大悟」
秀吉が笑いながら大悟にティッシュを渡す。
「え、お、怒らないの?」
「心配するでない。このくらいでキレるほど、大悟は短気じゃないからの。のう大悟?」
「あたぼうよ。こんなんかすり傷の内にも入らん」
そっか、それなら良かった。じゃあ気を取り直して……
「じゃあ僕のも入れさせてもらうね」
持っていたお茶のペットボトルの蓋を開けて中身を―――
「おうコラ明久……! テメエふざけた真似してんじゃねぇぞ……!」
―――入れようとしたら大悟に手首を掴まれて凄い剣幕で怒られた。
「頭突きは大丈夫なのに!?」
ちょっと待ってキレるポイントがおかしくない!? どうして頭突きはオーケーなのにコレは駄目なの!? 優先順位を絶対に間違えてるよ!
―――そんなこんなで全員に酒が行き渡り。
「よし野郎共。酒は持っているな?」
「うむ」
「……………(コクリ)」
「「……………」」
明らかに色、臭い、度数が人間の接種できるレベルじゃなくなった酒(?)がたっぷりと注がれたビールジョッキを片手に、大悟が皆にそう告げる。
「どうしてこんなに限界まで注ぐ必要があるのさ……」
「表面張力ギリギリじゃねぇか……」
こんなの飲んだら確実に五臓六腑に異常をきたす。いや、最悪命に関わるぞ……。
「こうなったら、一か八かだ」
「? 何かまだ策があるの、雄二?」
「ああ。多少強引ではあるが―――酔っ払ったフリをして全部溢しちまうんだ」
なるほど。それなら何の怪しまれもせずに危機を回避出来るってことか。さすがは雄二。頭の回転が早い。
「そし、それでいこう」
「しくじるなよ明久」
「うん。雄二もね」
よし、やるぞ。
「おっとっと。手が滑っ「おいおい(パシッ)」」
「やべー、酔っちまったぜ「溢れるぞい(パシッ)」」
「「……………」」
((ただの一滴も……、溢れていない……っ!!))
「まだ飲んでねぇだろうに」
「雰囲気に酔ってしまったのかのう?」
「……………気が早い」
雄二の立てた作戦、わずか2秒で終了。
クソっ! まさかこんなにあっさり看破されるなんて……。僕の方はもう何も思い浮かばないし、万事休すか……?
「……いやっ! 待て明久! これを見ろ!」
「え?」
雄二が驚いた様子で僕に見せてきたもの。それは携帯の画面だった。そこに映っていたのは―――『猿でも分かる正しいオトーリのやり方』という記事だった。
「正しいオトーリのやり方って……これがどうしたっていうのさ」
「分からないのか。さっき大悟は岡崎家のやり方で飲むと言っていた。つまり公式のやり方をアイツに見せてやれば、このふざけた飲み方から逃れられる可能性があるってことだ」
「可能性って……大丈夫なの?」
「分からん。だが今は方法を選り好みしてる場合じゃねえだろ。少しでも助かる道があるならそれに懸けるだけだ。俺に任せろ」
どうやら藁にもすがる思いのようだ。
成功すれば確定で回避出来る、という事ではないから不安はあるが、雄二の言う通りこの状況から解放される為には四の五の言ってはいられないのも事実。ここは彼に任せてみよう。
「おい大悟! これを見ろ!」
「ん?」
・猿でも分かる簡単なオトーリのやり方
①親が口上を述べてイッキ飲み
②その後、親以外の全員がイッキ飲み
③それを見届け、親が再びイッキ飲み
④親が後口上を述べ、次の人に親を交代
⑤①から④を人数分繰り返す
「ほー。これが正しいオトーリのやり方か」
「ちゃんと正式な手順があったんじゃのう」
「……………なるほど」
三人がまじまじと画面を見る。これは……もしかしていけるか!?
「ということは―――最低でも一人ジョッキ
「そうなるとこれでは酒が足らぬのぉ(ドポドポドポ)」
「……………持ってきた酒全部入れるか(ドポドポドポ)」
パンパンパンパンパン!!(僕が雄二を往復ビンタする音)
「ま、待て明久……っ! まさか……こうなる、とは……! 思わなか、ったんだ……!」
雄二の弁明を無視し、僕はビンタを繰り返す。
ふざけるなバカ野郎! 何が俺に任せろだ! 助かるどころか余計に状況が悪化したじゃないかこの役立たず!
「クソ……。こうなったら……………やってやるさ!」
「あ、明久……?」
逃げるのは不可能。策をいくら労しても状況は良くならない。ならもう僕らに残された道は……正々堂々戦うことだけじゃないか!
大丈夫。強い酒は学園祭の打ち上げや先日の大悟の家での勉強会で飲み慣れている。ということは僕の身体は常人よりアルコールに対する耐性が少なからずついているはずなんだ。乗り気れる可能性は……十二分にある!
いいだろう大悟。お望み通り貴様の戯れに付き合ってやろうじゃないか! だが僕は負けないぞ! 酒を飲んでも飲まれないという強い精神力で耐えて見せるからなぁあっ!
―――一方その頃、女子部屋では。
『あれ? 私の髪留め、どこにいったんでしょう? ここに置いておいたはずなのに』
『髪留めって、いつも瑞希がつけてるウサギの形をしたやつ?』
『はい』
『失くしちゃったの? 姫路さん』
『そうかもしれません』
『……捜すの、手伝う?』
『あ、いえ。また明日の朝にお布団を片付ける時にでも捜すから大丈夫です』
『……わかった』
『そういえば、瑞希っていつもあの髪留めをしてるわよね』
『……思い出の品、だとか?』
『んっふっふ~。ボクの予想だと、好きな人からの贈り物って感じなんだケド?』
『へぇ、だとしたらとってもロマンチックね』
『いえ。あれ自体は自分で買ってきた普通の髪留めです』
『あらら……。予想がハズレちゃった』
『確かに、思い入れはありますけどね』
『え? なになに? 面白そう』
『残念ながら、それはヒミツ、です。それより、私は工藤さんのお話が気になります』
『え? ボク?』
『そうね。ウチも気になるわ』
『ふふっ。二人とも、そんなにボクのHな話が聞きたいのかな?』
『違うわ。そっちじゃなくて』
『へ?』
『土屋君との関係、の方です』
『ふ、ふえぇっ!?』
『……それは私も気になる』
『そういえば二人とも随分仲が良いものね。もしかしてそういう間柄?』
『な、何を言ってるのさ四人ともっ。ボクとムッツリーニ君がどうこうだなんて、そんなことあるわけないじゃないっ』
『そうやって否定するところが怪しいですね』
『……いつもの愛子なら笑って受け流す』
『案外まんざらでも無いんじゃない? 愛子?』
『ち、違うってば! ボクもムッツリーニ君もそんな気は全然ないよっ』
『それはどうかしらね? 意外と男子部屋でも、土屋が似たようなことを言ってるかも知れないわよ?』
『……お泊まり会の定番の会話』
『そうですね。きっと向こうの部屋でもこんな話をしているんでしょうね』
『ほらほら、向こうできっと土屋も尋問されているだろうし、素直に言っちゃいなさい』
『……言えば楽になる』
『話しちゃいましょうよ。ね?』
『だから、あんな頭でっかち、ボクは全く興味がないって言ってるのに! それにムッツリーニ君だってきっとボクと同じ考えだよ!』
『……なら、確かめてみる?』
『へ? 確かめてみるってどういうコト?』
『……こっそり男子部屋に行って、何を話しているのか聞いてみる』
『へぇ、それ面白いじゃない』
『もしそれで美波ちゃんの予想が当たってたら、どうしましょうか?』
『そしたらもう相思相愛ってことだから、そのままくっついちゃえばいいんじゃないかしら』
『く、くっついちゃえばって優子! だからボクとムッツリーニ君は……』
『じゃ、そうと決まれば行ってみましょう!』
『『『おー!』』』
『ちょっとー! お願いだからボクの話を聞いてってば~!』
―――女子達。男子部屋に移動。
『じゃ、早速覗いてみましょうか』
『まるでスパイ映画みたいでドキドキしますね』
『………私も』
『この背徳感がなんとも言えないわね』
『う、うぅ……』
『じゃ、開けるわね』
ガチャ
『『『『『……………(ソーッ)』』』』』
「“
「「「「“乾杯”と呼ぶ!!!」」」」
「さぁもういっちょいくぞ野郎共!!! もう一度あの言葉を叫ぶんだ!!! せーのっ!!」
「「「「「
~♪ ~♪ ~♪ ~♪
『『『『『……………』』』』』
「「「「「
「「「「「
『『『『『……………』』』』』
「「ウェーーーイ!!! ガハハハハハ!!!」」 ←全裸
「いいぞぉ! 明久ぁ! 雄二ぃ! さすがは俺の見込んだ男達だぁ!」 ←全裸
「男らしい飲みっぷりにはまっこと惚れ惚れするのぉ!」 ←ギリギリ下着姿
「……………負けて、いられないっ!」 ←全裸
『『『『『……な、な……………』』』』』
「「「「「ん? どうした。何か用?」」」」」
『『『『『何でこうなってんのよぉぉぉぉおおおおーーーーー!!!!』』』』』
―――その後、バカ五人は飲み過ぎて吐いた。
ここんところメチャクチャ出してる気がするな……スピリタス。まぁでも面白いからいいか。
そして次回でおそらく原作5巻の内容は終了です。その後は……考えます。
感想、意見などありましたらよろしくお願いします。
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
-
入れろ、絶対に
-
別に入れなくてもいいよ