バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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コミックマーケット編
ようこそ、実力主義のお祭(コミケ)へ その1


 ―――side大悟

 

「待ちに待ったぜ俺ァ」

 

 期末試験も終わったある日の昼休み。

 俺は教室の一角で同志ムッツリーニにそう告げた。

 

「もうすぐだぜ同志よ。俺達ダイゴブックスとムッツリ商会にとって最も熱かりし最大最高の祭り―――同人誌即売会(コミックマーケット)がよぉ!」

「……………(コクリ)。この日を、ずっと待ちに待っていた……!」

「去年はお前は残念なことに大敗を喫したからな。今回は抜かるなよ」

「……………無論だ。今年の俺に油断はない(キリッ)」

 

 そう言って拳をギュッと握り締める同志。その目からは夏の陽射しにも負けないくらいのやる気と闘志の熱さを感じた。フッ、いい面構えをすんじゃねぇか。

 けどその気持ちは十二分に分かる。何故なら同志は去年のコミケでは初参加だった為かちゃんとした事前準備が出来ておらずコスプレイヤーを見た瞬間鼻血を出して貧血で即効救急車で運ばれちまったからな。その姿を写真に収めるどころか記憶に留めておく事すら出来なかった完全敗北。『寡黙なる性職者(エロを統べし者)』としてその悔しさと屈辱は正に筆舌に尽くしがたい程なのだ。だから今年は絶対に同じ轍は踏んでなるものかと思っているのだろう。

 

「……………去年の忘れ物は、必ずこの手でつかんでみせる」

「おう。その意気だぜ同志。俺もお前の大願が成就するよう精一杯フォローするつもりだ」

「……………ありがとう。同志」

「礼なんていらねぇ。俺達……仲間だろ?」

 

 そう言って俺と同志は拳と拳を突き合わせる。やはり持つべき者は心の友。

 俺達の絆はそんじょそこらのヤツらでは足元にも及ばないくらい強固なものだ。例えるなら、サイモンとガーファンクルのデュエット! ウッチャンに対するナンチャン! 高森朝雄の原作に対するちばてつやのあしたのジョーっつう感じっすよォ~~~~~~。

 

「んじゃ打ち合わせ始めっか」

「……………(コク)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――アイツらの言う“新時代”ってのはクソだ。

 

 ―――海賊が夢を見る時代が終わるって……?

 

 ―――人の夢は、終わらねェ!!

 

 

 

 俺がこの世で一番大好きな言葉だ。

 現在も連載が続いている超大人気漫画『ONE PIECE』。

 それに登場するマーシャル・D・ティーチこと“黒ひげ”というキャラクターが、主人公のルフィ率いる麦わらの一味に言い放った一言なのだが、これがまぁ名言中の名言なわけよ。

 

 ―――人生は、夢があってこそのもの。夢があるから日々の生活を頑張れるし、人生を楽しく謳歌することが出来る。

 そして夢に終わりはない。人の欲望に際限がないのと同じように。一個の夢を叶えたらまた新しい夢が生まれ、それを叶えたらまた別の夢が……。そうして段々と道は続いていき、いつしかその夢の連なりは自分を人間的にデカくしてくれ、新たなステージへと導き続けてくれる。

 終わりが見えないくらいデカい夢を常に持ち続けて生きる事。それが『人の夢は終わらねェ』という事―――最高にバカでカッコいい考え方じゃねぇか。

 

 けど最近の世の中は黒ひげのようなヤツがいなさすぎてマジでつまらない。夢を追えないどころか、夢を過小評価する連中が増えたからだ。

 だってそうだろう。ちょっと夢物語を語っただけで、いい歳をしてだとか、子供みたいな事をとか、フザけた事を言ってないで現実を見ろだとか、そんな具体性も根拠も無い言葉で貶めてソイツの可能性を潰そうとする。

 そのクセその夢が現実のものになった途端、今までとは打って変わって凄いだの頑張っただの、出来ると思っていただのと掌を返して媚びへつらう。なんとも胸糞が悪く、皮肉で浅ましい。  

 

 黒ひげの台詞には、そんな時代に警鐘を鳴らすという作者の目的が込められていたのかもしれない。

 

 そしてそんな時代だからこそ、俺は黒ひげのように夢を信じ、追い続けたい。

 

 人の夢は終わらねェ……つまり、人は自分自身で夢を自分で終わらせちゃいけねェんだと思う。周りの言葉にも時代の変化にも流されない。言いたいヤツには好き勝手言わせておけばいい。構ってるだけ時間の無駄だ。

 

 俺は死ぬまでその気持ちを貫き通す。例えボケまくりの老いぼれジジイになろうとも、怪我や病気で身体がボロボロに朽ち果てる寸前になろうとも。

 理解してくれる人間が誰もいなかろうとも。

 決して自分を、この夢を追う気持ちだけは忘れたくないのだ。

 

 だからこそ断言する。夢は自分を裏切らない。背を向けず夢に向かって挑み続けた者だけが勝利を手にするんだと。そう―――俺が。

 

 

 

 

 

「同志。写真集の方の進捗状況はどうだ?」

「……………既に素材は揃ってる。あとは編集して脱稿するだけ。そっちは?」

「おう。コッチは完璧……っていいてぇところだが、全然進んでねえんだ。ストーリーとかページ数とかその他諸々で色々迷っててな……すまん」

「……………気にするな。時間はかけるに越したことは無い。その苦労があってこそ、良作が産まれるのだから(フッ)」

「すまんな。期限までには間に合わせる。ちなみに部数はこれくらいを考えている(ピラッ)」

「……………かなりの量だが、いけるか?」

「前回と違って壁は使えるスペースが段違いで広いんだ。在庫もかなりの数を置くことが出来るし、人の行列が邪魔にならない分集客も見込める。それが壁サークルの大きなメリットなんだよ」

「……………なるほど。ちなみに、今年も同人誌と写真集のセットでいく?」

「いや、今回は同人誌と写真集をそれぞれ個別に。そしてその二つとキーホルダー、マグカップ、ブランケットにトートバッグをつけたスペシャルセットを販売しようと思う」 

「……………大盤振る舞い(グッ)。オーケー」  

「よし、あとは価格だな……。早く決めてツイッターで宣伝しねぇと」

「……………毎回ここが悩みどころ」

「仕方ねえさ。値段設定でミスるワケにはいかねえからな。高すぎたら買ってもらえねえし、安すぎても利益が出ない。客を金銭的にもクオリティ的にも最大限満足させる商品を提供するのが俺達の役目だ」

「……………(コクッ)。その通り……」

 

 

 壁を手に入れ、大手サークルの仲間入りを果たしたように。

 

 その後話し合いは昼休みいっぱいまで続いた。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 ―――それから時は流れ……。

 

 ―――side明久

 

「ねぇ雄二」

「なんだ?」

 

 鉄人の補習が終わった放課後。僕は教室に残っている雄二に話しかけた。

 

「なんか寂しいと思わない?」

「寂しい? お前の顔面偏差値がか?」

「一発目の答えから失礼な事を言うね」

「ならアレか。お前の霊長類としてのスペックか」

「君は逐一中傷や罵倒と挟まないと人と会話が出来ない病気か何かかい?」

 

 第一顔面偏差値なんてそっちだって似たようなものじゃないか。自分を棚にあげて他人を貶すとかなんて不躾なヤツだ!

 

「冗談だ。んで、寂しいって何がだ?」

 

 一通り僕を馬鹿にし終わったところで、雄二が尋ねてくる。

 

「何がって、最近の放課後だよ」

「教室? 放課後なんだから生徒がいないのは当たり前だろ」

「それはそうなんだけどさ。特になんだよ。見てよ。しばらく僕ら二人だけなんだよ?」

「なに?」

 

 雄二が教室を見回す。

 そう、普段なら僕と雄二以外にも秀吉、大悟、ムッツリーニの誰かしらがいて一緒に駄弁るのが日常の光景なのに、最近は僕ら以外誰も教室に残っておらず、閑散としているのだ。

 

「確かに違和感が無いとは言えないな。だが別段おかしなことでもないだろ」 

「でもさ、秀吉はまだしも大悟やムッツリーニが『じゃあね』とか挨拶もせずに帰っちゃうなんてちょっと変だなって思うんだよね」

「まぁ、確かにな」

 

 秀吉は演劇部の部活があるからそういう事もあるかもしれないけど、ムッツリーニと大悟が僕らに何も言わずに帰ってしまうというのは雄二のいう通り少し違和感がある。いつもなら用事があっても『○○があるから帰る』と一言言ってくれるのに。しかも僕らが気づかない内に、だ。

 

「先週も遊びに誘ったら二人ともに断られちゃったしね。珍しいこともあるもんだよ」

「そうか…………あ、そういやさっきな」

「? どうしたの雄二?」

 

 雄二が何かを思い出したのかポン、と手を打つ。

 

「関係あるかは分からんが、さっき姫路と翔子がアイツらと五人で話しているのを見たぞ」

「え? 姫路さんと霧島さんが?」

「ああ。あまり深くは聞いてなかったが『熱中症には気を付けろ』とか『夏だから露出は高めだな』とか言ってたぞ」

「へぇ~。露出ってことはまたコスプレでも頼んだりしてるのかな?」

「まぁ、大悟とムッツリーニが絡んでるとなりゃ十中八九そうだろうな」

 

 姫路さんと霧島さんと秀吉と大悟とムッツリーニか。随分と珍しい組み合わせだなぁ。でも熱中症ってどういうことだろう。

 

 ―――と、その中で僕も大悟とムッツリーニについてとある事を思い出した。

 

「そういえばさ、大悟とムッツリーニって最近変だよね」

「変? アイツらが変人なのは昔からずっとだろ」

「いやそういう変じゃなくて、なんかこう……様子がおかしい、みたいな」

「どういう事だ?」

 

 僕は思っている事を雄二に話す。

 

「今日、須川君と大悟が話してたんだけどね―――」

 

 

 

『兄貴。夏バテか? 随分やつれてる気がするんだが』

「……へぇ? そうか……? まぁでも、確かに最近は生活リズムが狂っちまってるがよ……(フラフラ)」

『何かあったのか?』

「まぁ、ちっとやることがあって中々寝てねえのよな……。ハハハ……(バタッ)」

『えっ!? おい兄貴! しっかりしろ! 兄貴ぃいっ!!』

 

 

「―――って事があったんだよ」

「あの体力バカが夏バテ? 珍しいこともあるもんだな」

「それだけじゃないんだよ。他にも―――」

 

 

 

『土屋聞いてくれよ! 実は昨日ネットサーフィンしてたらすげぇエロサイトを見つけたんだ!』

「…………そうか(カチカチ)」

『それでよ! そこには色んなエロ動画があってどれにしようか迷ってるんだ。だから土屋の意見を聞かせて「すまない」……え?』

「…………悪いが後にしてくれ。俺には今()()()()()に構っている余裕はない……!」

『!?』

 

 

 

「馬鹿な……、ムッツリーニがエロ動画をそんなもの扱いするだと……!?」

「ね? おかしいでしょ?」

「ああ。確かにそれはおかしいな」

 

 僕の証言に対して、雄二があり得ないといった表情を浮かべている。僕もその場にいたときはおそらく雄二と同じ顔をしていただろう。

 大悟の夏バテも不思議だが、特に後者は明白だ。あの寡黙なる性職者との異名を持つくらいエロへの執着心が強い男がそんな台詞を吐くなんて事はとんでもない事態なのだ。例えるなら地球に巨大隕石が激突するくらいに匹敵する。

 

「夏バテ疑惑の大悟。エロに食いつかないムッツリーニ。そして姫路さん達の謎の会話……。一体僕らの周りで何が起こってるんだろう?」

「情報量が多すぎて逆に判断に困るな……」

「そうだね……」

 

 そう二人で考えていると、

 

 ガラッ

 

 

「……………確か、教室にある……筈(フラフラ)」

「おいおいしっかりしてくれよなぁ。頼むぜぇ(フラフラ)」

 

 

 おっ、噂をすればなんとやら。

 教室の扉が開かれ入ってきたのは大悟とムッツリーニ―――って!?

 

「うわっ!? なんだお前ら!?」

「どうしたの二人とも!? 死人みたいな顔になってるんだけど!?」

「あ? ……ああなんだ、お前らか。死人とは随分な言い草だな……」

「……………失礼極まりない……」

 

 二人の顔を見て僕も雄二も驚きのあまり声をあげた。

 目は虚ろでその下には酷いクマ。頬は痩せこけ顔色も悪い。足取りもおぼつかず特に大悟はいつものオラオラとした覇気が全く感じられない。二人とも明らかに健常じゃないのが見てとれる。

 

「いや二人とも本当にどうしたのさ? 明らかに体調も悪そうだよ」

「まぁな。最近はイベントに向けてのサークル活動で忙しくてよ」

「イベント?」

「コミケだよ。正式名称はコミックマーケットってんだがな」

 

 そう言うと大悟は大きなあくびをした。

 コミックマーケット―――前にテレビで特集されてるのを見たことがある。確か一年に二回開催される世界最大の同人誌即売会だったっけか。

 様々なアニメの同人誌が売られたり、レベルの高いコスプレイヤーがたくさんいたり、芸能人がお忍びで訪れたり、数日間で物凄い経済効果を叩き出したりと……とにかく日本が誇る最大最強唯一無二の伝統的文化に基づいたお祭りだ、なんて中継先のアナウンサーさんは褒めちぎっていたような気がする。

 二次元信者の大悟とエロ写真収集のエキスパートであるムッツリーニにとってはコミケは絶対に外せないイベントということか。

 

「なるほどな。つまりお前らはそのコミケとやらの準備に追われてそんな調子になってるのか」

「ご名答。俺達もサークルとして出店するからな」

「じゃあ、姫路さん達と話してたっていうのも?」

「アイツらには当日コスプレをして売り子をやってもらう予定でな。それの段取りを確認していたんだ」

「……………(コクリ)」

「二人の様子が最近おかしいと思ったら、そういう事だったんだね」

「黙ってて悪かったな。けど俺も同志も今回のコミケには特に力を入れていてな。他の事なんざ気にする暇がねぇんだ」

「……………年に二度しかないチャンス。負けるわけには、いかない……」

 

 二人の今にも倒れそうな身体状態と反比例するように、その目からは情熱と活力が漲っている。 

 混じりっけの無い本気だ。この二人は。

 

「サークル出店ってことは、大悟とムッツリーニは売る側なんだね」

「おう。ダイゴブックスとムッツリ商会の連携サークル『にじとさんじ』として壁サークル参加が決まっている。なんとか倍率の壁を乗り越えたぜ。壁だけに」

「……………(コクコク)」

「へぇ、凄いじゃないか」

 

 サークル名が若干気になるとこではあるけど。

 

「ちなみにそのコミケっていつなの?」

「次の盆休みに合わせて開催されっから、あと三週間くらいだ」

「結構迫ってるんだな」

「ああ。だから寝る暇すらない」

「ふーん。でも大悟もムッツリーニも商売事には慣れてるんだしさ、そこまで無理しなくてもいいんじゃないの?」

「あ?」

「……………なに?」

 

 二人が僕をいきなり睨み付けてきた。

 

「おい明久。分かったような口を叩くんじゃねぇ。いいか、コミケは日本……いや、世界中から集まってくる何万人という客を相手にするんだぜ。年齢、性別、国籍、そして性的嗜好……全てがバラバラだ。量も客のレベルもお前らの時とは雲泥の差だ。てことはそれ相応の事前準備が必然的に求められるってことなんだよ。侮るな」

「……………あまり舐めた口を聞かれると、困る……!(ギロリ)」

「ご、ごめん」

 

 軽率な発言をした事を二人に謝る。

 寝不足などで身体的にも精神的にも負担が募っている為か、大悟もムッツリーニもピリピリしているようだ。

 

「まぁいい。そんなわけで時間がねぇってことだ」

「……………(コクコク)」

「そうか。それはご苦労なこったな」

「そうだね。わざわざ貴重な休みを返上してやるんだからさすがだよ」

「ん? 休みっていやあ、お前らはその日は暇なのか?」

「まぁそうだな」

「さすがにお盆だと鉄人の補習もないしね。僕も特に予定はないよ」

「ほー……そうか……。予定がないのか……」

「……………」

 

 

((ニヤリ………!!))

 

 

「? 何で僕らを見てニヤニヤしているの?」

「「いや別に」」

 

 すると顎に手を当てて何か考え出した大悟とムッツリーニ。

 そして少しの間の後、二人で相槌のようなものを打った後、僕らに向き直ってこう言った。

 

 

「だったらお前ら。俺達と一緒にコミケに参加してみないか?」

 

 

 突然の提案に「えっ」と変な声が出た。

 

「え、参加って……コスプレとかさせられるの?」

「んなワケあるか。参加っつってもそんな難しい事じゃない。ただ一メンバーとして売り子とかその他諸々をして欲しいだけだ」

「……………人手はいくらあっても助かる」

「売り子って?」

「店番をしたり客を呼び込んだり、金の受け渡しをする仕事だ。まぁ早い話が接客だな」

 

 大悟は続ける。

 

「もちろんタダとは言わねえ。やってくれんならバイト代も出そうじゃねえか」

「……バイト代だと?」

「おう。その日の売り上げと利益の差額によって多少変動はするが、仕事量に見合った額は出せると思うぜ」

 

 つまりバイト代は完全歩合制ってことか。

 自分が予想していた以上の額を貰える可能性もあれば、完全タダ働きになる可能性もある。大悟の『神の右手』に『無限の妄想力』とムッツリーニの写真技術ならある程度は売り上げが期待出来るけど、だとしても確実に儲けが出るとは限らない。だからまだ判断はしかねるな。

 

「ちなみに前回はどれだけ利益が出たんだ?」

 

 ちょうど気になっていたことを雄二が聞く。

 

「前回? 前回は確か午前中のうちに完売してざっと―――『ピーーー』万くらいだったな」

「「はぁ!?」」

 

 思わず二人とも声が出た。

 う、嘘でしょ!? 『ピーーー』万!? 僕の予想を遥かに上回る額が大悟の口から放たれた。

 一般的な学生のアルバイトで貰える給料なんて比較にもならない。『ピーーー』万なんて最新のゲームソフトが余裕で何個も買えるレベルの金額だよ……! 

 そういえばいつだかテレビの報道で大抵のサークルは殆どが趣味の延長線だから利益に関しては完全に赤字だって言ってたのに……。流石は二次元と三次元の申し子にして文月学園の裏経済を支配する男達。ここまでくると尊敬どころか畏怖の領域だ。

 横を見ると雄二も驚きを隠せていない顔を晒していた。

 

「勿論交通費とか食費なんかの必要経費は俺達が持つ。あとオマケってわけじゃないが色んなコスプレイヤーがたくさん見れる。噂だとコスプレ四天王? とやらも来るらしいぜ。夏だから露出も多いし、控え目に言ってもエロい人ばかりだ。どうだ、悪い条件じゃねぇだろ?」

「……………それも、夏コミの醍醐味(コクコク)」

「なるほどな……。よし、分かった。それなら俺もお前らの仲間に加えてくれ」

「え?」

 

 珍しい。かなりの厚待遇とはいえ、あの面倒臭がりな雄二が自ら志願するなんて。

 

「ホントにやるの? 雄二?」

「普段ならこんな明らかにめんどくさい事はゴメンなんだが……それだけ利益があるなら実績としては申し分ないし、バイト代も相当期待が持てるからな。それに……、ちょうど今纏まった金が必要でな」

「そうなんだ。何か欲しいものでもあるの?」

「ああ。入り用でな……自分の部屋に鍵をつけたいんだ。とびきり頑丈なヤツを」

 

 脳裏に手錠を持った才色兼備な学年首席の女の子が思い浮かぶ。

 自分の部屋に鍵をつけたい、というのは僕らの世代は誰もが一度は考えることだろうけど―――雄二と同じ理由でそう考える人はあまりいないだろう。

 

「明久はどうすんだ?」

「うーん……。じゃあ僕も行くよ。姉さんもお盆は確か仕事で帰れないって言ってたから都合もいいし」

 

 姉さんは僕に対して不純異性交遊を固く禁止している。

 ただでさえコスプレ姿の姫路さんや霧島さん、秀吉が一緒なのに、夏コミなんていう比較的えちえちな格好をした女性がいっぱいいる所に行こうだなんて知られたら大目玉だ。

 最悪五体満足では済まされないくらいの激しいお仕置きをされることだろう。本当にいなくて良かった。

 

「うし、決まりだな。じゃあ詳しい話と簡単な作業をこれから同志の家でするぞ。善は急げというからな」

「……………時間は一秒たりとも惜しい」

「わかった」

「うん」

 

 そんなわけで話も纏まったので、僕ら四人はムッツリーニの家に向かった。

 

 

 

 ((……………ん? 簡単な作業?))

 

 

 

 しかしまだ、この時の僕らは知るよしも無かった。

 印刷所に脱稿するまでの約一週間、ずっと夜遅くまでひたすら同人誌の原稿のアシスタントや写真集の画像編集作業をさせられるなんて事は。

 

 

 

 

 

 

 

 

((計画通り……!!))

 

 

 

 

 

 




今回からアンケート結果で一番多かったコミックマーケット編スタートです。
ただ作者自身はコミケには行ったことはあるのですが、サークル参加をしたことがない為、そこら辺をネットやカタログを見て調べたりしなければならず、更新スペースが下がり気味になってしまうかもなのでご了承ください。

もしよろしければコミケ、サークルあるあるや過去にあった問題や事件なんかを知ってる方がいらっしゃいましたら教えてくださると嬉しいです。
  

感想、意見などありましたらよろしくお願いします。

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ
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