バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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ようこそ、実力主義のお祭(コミケ)へ その2

 ―――side明久

 

 

「おはようございます。明久君」

「おはようじゃ。寝坊せずにちゃんと来たようじゃな、明久よ」

 

 

 現在時刻は午前四時半。

 朝方にも関わらず蒸すような暑さ漂う中、僕は待ち合わせ場所である最寄り駅のホームに向かった。すると先に姫路さんと秀吉が到着しており、僕に気づいて手を振ってきた。

 

「明久、こっちじゃ」

「おはよう姫路さん、秀吉。二人とも体調は大丈夫?」

「はい。今日の為に昨晩はいつもよりも早めに寝ましたからバッチリです」

「右に同じじゃ。それにワシは売り子として何度もコミケには足を運んでおるからの。もう慣れたものじゃわい」

「そっか。それならよかった」

 

 いつもと変わらない様子の姫路さんと秀吉。

 本当は二人ともまだ寝ていたいだろう時間帯。ましてや姫路さんなんて早起きが苦手云々の前に身体があまり強くない。多少なりとも無理はしている筈だ。それをわざわざ大悟とムッツリーニの為に嫌な顔一つせず付き合ってあげているのだから本当に二人とも友達思いで優しい人だと思う。

 高時給と女性コスプレイヤー見放題という下心タラタラな僕や雄二とは大違いだ。

 

「さて、これであと来てないのは……」

「雄二と霧島だけじゃの」

「え? 雄二と霧島さんだけって、岡崎兄妹とムッツリーニがまだ来てないよ?」

「いえ、岡崎君達ならもう来ていますよ。今は皆の分の切符を買いに行ってくれています」

 

 ということは今日のメンバーは僕ら男子5人に姫路さんと霧島さん、天ちゃんを加えた8人か。いつものメンバーが勢揃いで―――ってあれ?

 

「それだけ? 他にも美波とか工藤さんとか木下さんはいないの?」

「はい。さっき木下君が挙げたメンバーで全員ですよ。お姉さんは分かりませんけど、美波ちゃんと愛子ちゃんは家の用事があって来れないそうです」

 

 僕の質問に即座に姫路さんが答えてくれる。

 

「そっか、二人とも来れないのは残念だね。なら秀吉はお姉さんについて何か聞いてる?」

「え? あ、いや、その……、姉上は……。あ、あれじゃ! こっちもどうしても外せない用事があって来れないそうじゃ!」

「用事? 何かあるの?」 

「それはちょっと言えぬな。姉上にもほら、プライベートというものがあるからの。アハハ、ハ……」

 

 

(言えない……。姉上も別の日にサークルで参加するなんて口が裂けても……)

 

 

「へ? 何か言った?」

「い、いや! 何でもないぞい!」

 

 やけにぎこちない口調でそう言う秀吉。

 なんだろう。これ以上の追及はしたらいけないような気がする。

 

 その後は三人で他愛のない雑談なんかをして時間を潰した。

 

「……おはよう」

「ようお前ら。ふぁぁ……。ねみぃ……」

 

 すると少しして霧島さんと雄二もやって来た。

 こんな朝早くに起きる事に慣れていないのか、姿を見せるなり大きなあくびをする雄二はとても眠そうだ。まあその気持ちは分かるけど。

 

「待たせたな野郎共。切符買ってきたぞ」 

 

 と、今度は後ろから聞きなれた野太い声。

 今回のコミケ参加の発起人である岡崎大悟とその妹の天ちゃん。そしてムッツリーニがいた。

 

「おはよう大悟、ムッツリーニ、天ちゃん」

「おう明久。それに雄二も霧島も来たか。うし、どうやら全員揃ったみてぇだな」

「……………全員集合、遅刻欠席者なし(コクリ)」

「おはようございます皆さん。今日は1日よろしくお願いしますねっ」

 

 ペコリと僕らに挨拶をする天ちゃん。

 その外見は大悟と血が繋がった実の妹とは思えないほど小柄で可愛らしい。美形で兄思い、性格も朗らかで優しいから非の打ち所がないように思えるのだが……残念な事に思考が兄と丸々一緒で現実世界の恋愛にほとんど興味が無く、二次元しか愛せないという大きな欠点がある。なので一度も彼氏がいたことがないらしい。宝の持ち腐れとはまさにこの事だろう。

 

「霧島さんとは会うのは文化祭以来ですね。初めてのコミケは色々大変だと思いますけど、あたしも大悟兄もムッツリーニさんもいますから一緒に頑張りましょうね。わからないことがあったら遠慮なく聞いてください」

 

 そう言って優しく霧島さんの手を握る天ちゃん。

 

「……うん。こちらこそよろしく。天ちゃん」 

「はいっ♪」

 

 そんな天ちゃんに対し、少しだけ霧島さんの表情が解れた(気がした)。

 面識も少なく、かつ霧島さんの様に喜怒哀楽がわかりづらい人にあそこまで気さくに話しかけるなんてこと、僕には中々出来ない。かなりのコミュニケーション能力の高さだと思う。

 

「んじゃ、集まったところでさっさと出発するか。大悟、切符をくれ」

「おうよ。他のヤツらの分もちゃんとあるからな」

 

 そして僕らは大悟から切符を受け取り、駅の改札を通ってホームへと向かい、乗る予定の電車を待つ。

 まだ時間が早い為か、駅の構内はもちろんのこと、ホームで電車を待っている人はあまり見当たらない。ほとんど僕らの貸し切りのような状態だった。

 

「いつもは人混みで当たり前な場所なので、なんだか不思議と新鮮味を感じますね」

「あはは、確かにそうだね」

「……………(コクリ)」

「俺らもこんなゆっくりな出発は初めてじゃねえかな」

「確かに。今回は初めての人に合わせてるから大分遅めだね」

「え……じゃあ二人は普段はもっと早い時間なの?」

 

「「前泊」」

 

「まさかの前日スタート!?」

「たりめーだろ。ただでさえ作業に終われて寝不足だってのに、夜明け前に早起きなんて出来るかよ」

「ホテル代とかで費用はかかっちゃいますけど、遅刻とか準備漏れのリスクが大幅に減らせるので、先に泊まっちゃった方が都合がいいんですよ」

 

 さ、さすがは岡崎兄妹。二次元関連の事となると普段以上に本気のようだ。

 

『間も無く、電車が参ります。お乗りの方は白線の内側までお下がりください-』

 

 そうこうしている内に案内のアナウンスが流れ、電車がホームに到着した。

 

「うし、乗るぞ野郎共」

「うん」

 

 大悟に続き、続々と乗り込む。

 中は駅のホーム同様にほぼ閑古鳥状態で、空いている席の方が断然に多かった。さっきまで外が蒸し暑かった分、キンキンに冷えたエアコンの風が心地よい。 

 

 ちょうど対面式の四人掛けの席が二つ空いていたので、前に僕と姫路さん、大悟、天ちゃんが、その後ろに雄二、霧島さん、秀吉、ムッツリーニが座った。

 

「岡崎君、しばらくはこのままですよね?」

「おう。乗り換えの駅につくまでそこそこ時間あるからな」

「各自適当にしていていいですよ~」

 

 椅子に深くもたれかかる大悟と天ちゃん。

 よく見ると二人とも目の下に酷いクマがあった。また徹夜で何かやってたんだろうか。元々ブサイクな大悟はどうでもいいんだけど、天ちゃんは折角の可愛い顔がそのせいで勿体無くなっちゃってる。

 

「眠くもないし、何をしていようかな」

 

 狭い車内で出来ることなんて限られている。携帯ゲーム機をするって気分じゃないし、意外とすることがない。

 向かい側に座っている雄二を見ると、僕と同じように

 

「雄二、何か面白いものはない?」

「鏡がトイレにあったぞ。存分に見てくるといい」

 

 おいちょっと待てやコラ。

 

「それは僕の顔が面白いと言いたいのかな?」

「いや、違う。お前の顔は割と―――笑えない」

「笑えないほど何!? 笑えないほど酷い状態なの!?」

「面白いと言ったのはお前の守護霊の事だ」

「守護霊? そんなものが見えるの?」

「ああ、見えるぞ。血みどろで黒髪を振り回している珍しい守護霊が」

「そいつはどう考えても僕を護っていないよね」

 

 きっとそれは世間一般でいうところの背後霊と呼ばれる存在だろう。

 

「安心しろ。半分冗談だ」

「あ、なんだ。ビックリしたよ」

「本当は茶髪だ」

「そこは一番どうでもいいよね!?」

 

 多分、というか間違いなく冗談だろうけど、少し怖い。え、いやいやそんなまさか。本当に霊なんて憑いてるはずないよね。

 ……一応あとで塩でもかぶっておこう。

 

「大悟、何やってるの?」

「ん?」

 

 目の前に座ってる大悟が、さっきからずっとひたすらにノートパソコンを弄っている。

 

「参加者とのメールでやり取りだ」

「やり取り?」

「私達のサークルは業界内で大手の扱いを受けているので、その影響なのか沢山他の参加者から連絡が来るんですよ。挨拶とか新刊の出来がどうとかそんな感じのが」

「へえ、そうなんだ」

 

 確かにこれまででかなりの売上をあげてると聞いてるし、現にこの二人の画力と物語を作る構成力、そしてムッツリーニの撮影技術の高さは僕も身をもって体感している。どちらもアマチュアの括りから完全に逸脱しているプロ顔負けの実力の持ち主達なのだ。人気になるのにも全然納得がいく。

 

「どんな感じで来てるの?」

「うわっ、凄い。沢山メッセージが来てるんですね」

 

 隣で見ていた姫路さんが画面に映ってるメッセージの量に驚く。

 

 

『今回はよろしくお願いします!』

『あのダイゴブックス先生と隣の配置になれるなんて嬉しいです!』

『今回は絶対負けないわよぉ』

『ドスケベイラスト期待してます』

『先生のイラストが尊すぎて孕まされました。責任取ってください』

『天ちゃんください』

『死んでも絶対行きますからね先生!!!!』

『夫がオオアリクイに殺されて体をもて余している人妻です。是非会いたいので連絡先を教えてください』

 

 

 といった様々な内容の文章が並んでいた。

 

 

「でもそうやって一つ一つにちゃんと返してるなんてマメだね」

「当たり前だろう。同業者とのコミュニケーションはコミケ関係なくまず必要だからな。それに……」

「それに?」

「こうしてパソコンで先にやっちまえばいざ対面したときに必要最低限の会話で済むだろう」 

「そ、そうなんだ」

 

 そういえば大悟はこんな見た目なのにかなりの人見知りだったっけ。

 いくら共通の目的を持つ人とはいえ、いきなり初対面の人と話すのは彼にとってかなり高難易度なんだろう。

 

「大悟兄は生粋のコミュ障だもんね、昔から」

「私も岡崎君が転校してきたばかりの頃はかなり警戒されていたのを覚えてます。懐かしいですね~」

「僕も最初は秀吉を介さないと目すら合わせてくれなかったよね」

「いやいや、得体の知れないヤツと目線合わせて素面で喋れるお前らのほうが異常だろうよ。それに姫路の時だって俺ァ―――」

 

 

Verdammt(この野郎)!!!」

 

 

「ん?」

 

 

Sie wäre ein perfektes Magical Girl!(あの子達には魔法少女が似合う!)

Sei kein Idiot!Sie muss einen HaKama tragen!(バカを言うな! 絶対に羽織袴だ!)

 

 

 急に後ろの方から大声で言い争うような声が聞こえてきた。

 

「何だろ、喧嘩かな?」

「かもな。だが外国語っぽいから何言ってるのかさっぱりわからん」

「随分熱くなってるみたいですけど……?」

 

 まあしばらくすればおさまんだろ、と大悟が言う。

 しかしその声達はおさまるどころか更に大きく激しく、罵倒らしき応酬を繰り返していく。また他のお客さん達も僕ら同様に気になっているようだった。

 

「ったく、朝からなに騒いでやがるんだ」

 

 隣の雄二がチッ、と舌打ちを鳴らす。

 

「このままだと周りの人の迷惑になるし、軽く注意でもしておくか。行くぞ明久」

「うん、もちろん」

「えっ? 大丈夫なんですか? もし仮に危ない人達だったら……」

「大丈夫だ姫路。そうだったらそうだったで駅員にでも突き出してやりゃいいし、万が一暴力でもふるってきたら最悪俺と明久と大悟でなんとかするさ」

「そうだよ姫路さん。だから任せておいて」

 

 そして僕らは席を立ち、その声のする方に向き直る。

 僕らだってある程度の修羅場はくぐり抜けているつもりだ。喧嘩している外国人を仲裁するなんてのはそんな僕らにとっては些事に等しい。造作もないことだと―――

 

 

 

Sie wird uns hassen!(そんなものを進めて嫌われたらどうする!!)←魔法少女のコスプレをした筋骨隆々のおじさん

Du nimmst mir die Worte aus dem Mund!(それはこっちの台詞だ!)Du weißt nichts über Frauen!(女性のエスコートも知らんクセに!)←女勇者っぽいコスプレをした筋骨隆々のおじさん

 

「「Warum fragen wir sie dann nicht einfach?(なら、やってみせようじゃねえか!!)」」←コスプレ姿の筋骨隆々おじさんズ

 

 

 

 

「「……………」」

 

 

 無言で席に戻る。

 

「どうしたお前ら」

「言及するな。アレは関わらない方がいい」

「僕も同感だ。アレは僕らの手に負えるような相手じゃないよ」

「は?」

 

 驕っていた。まさかあんな強大な存在が僕らの前に立ちはだかるだなんて。

 楽勝だなんて思っていた自分を恥じる。勝てるわけがない。所詮僕らはまだまだ井の中の蛙ということか。

 

「なんだよ。一体なにを見ブホッ!」

「よせ大悟。お前が見たら帰ってこれなくなる」

 

 アレの方を見ようとした大悟に雄二がいち早く手で制した。

 

「何しやがる」

「いいから黙って俺についてこい。行くぞ明久」

「うん」

 

 大悟を連れて僕らは一旦席を離れる。

 何のことだか大悟はわかっていない様子だけどそれでいい。世の中には知らない方が幸せな事だってあるんだから。

 

「おい、なんのつもりだ」

「黙ってろ。とりあえずここで息をひそめて静かにしてればヤツらは大人しくなる」

「そうだね。僕もその判断が一番正しいと思うよ」

「そうなのか」

 

 大悟をそう納得させ、僕らは車両の隅に身を隠す。流石に残ったメンバーの中であの奇々怪々な格好をした連中に首を突っ込めれる胆力の持ち主はいないはずだ……多分。

 そうしてしばらくたったのち、

 

 シーン……

 

 

「お?」

「声がしなくなったね」

「どうやら本当に大人しくなったようだな」

 

 問題が解決したのを見計らい、席に戻ろうと立ち上がる。

 

「何で揉めてたんだろうね」

「さあな、だがこういうのは周りがどうこうするよりもひたすら耐えていた方がいいみたいだ―――」

 

 

「……………」←跪くマッチョ魔法少女(♂)

「……………」←跪くマッチョ女勇者(♂)

 

「「「「……………」」」」←ドン引きする女子s&秀吉

 

 

「「……………」」

 

 

 再び席に戻る。

 

「どうした」

「……大悟、明久」

「あん?」

「今日俺達は三人でコミケに参加する。他にツレはいない。いいな?」

「了解」

「了解じゃねえよ。本当に何が起きてるんだ」

 

 

 チクショウ! 何なんだよアレは! 彼らは一体さっきの喧嘩でなにをどう整理した挙句に、あんな摩訶不思議な行動に至ってしまったというんだ!

 あれじゃあ解決どころか益々状況が悪化してるじゃないか……っ! 

 

「よしお前ら、一旦車両を移動しようじゃないか」

「そうだね。この問題は解決にかなりの時間を有するみたいだか―――」

 

 ガシッ

 

「「「ん?」」」

 

「……………(ニコニコ)」←僕の手を掴んで微笑む姫路さん

「……………(ニコニコ)」←大悟の手を掴んで微笑む秀吉

「……………」←雄二の掴んで微笑む(ように見える)霧島さん

 

 

 何故か僕らの手を取って放さない女子達。そしてそのニコニコとした顔つきのまま、あの二人に

 

 

 

「「「THIS IS MY LOVER」」」

 

「「AHH!?」」

「「「!!?」」」

 

 

 そう言ってしまった。

 

Das kann nicht ihr Freund sein,oder?(まさか彼女らに手を出してないだろうな!!)

  Wenn sie keine Jungfrau mehr ist,(処女じゃなきゃ魔法が) kann sie keine Magie mehr wirken!(使えなくなってしまうだろうが!!)

 

「ちょっ! 待って待って待って!!」

 

 鬼気迫る顔と声量で僕ら三人に詰め寄るおっさんズ。

 外国語で何を言っているのかさっぱりわからないけど、少なくともメチャクチャ怒っていることだけは確かだ。だとしたらまずは一旦頭を冷やしてもらわなければならない。

 

「お、落ち着いてください! ス、ストップ!」

「「???」」

「よくわかりませんが一応話は聞きます。聞きますから―――」

 

 くるり

 

「―――ここにいる岡崎大悟が」

「なんでだッッ!!?」

 

 ―――まあ、僕がやるとは一言も言ってないけど。

 

「頼んだよ大悟。君の力であの二人をなんとかしてくれ」

「いやいやいやいや無茶言うんじゃねぇよ!? 俺にそんな芸当が出来るわけねえだろうが!」

「どうして?」

「相手は初対面でしかも外国人だぞ!? 俺のゴミカスコミュ力じゃあんなのどうしようもな―――」

 

 

「……………」←めるたんピンバッジ

「……………」←めるたんストラップ

 

「……………」

「「……………」」

 

 

 ガシッ!

 

 

 

 

 

 ―――

 

 

「「「HAHAHA!」」」

 

 

 大悟はその外国人二人と楽しそうに談笑を交わしている。

 

「これでよし」

「あの、岡崎君はあのままでいいんですか?」

「大丈夫じゃないかな。楽しそうだし」

「は、はぁ……」

 

 元々の席に戻り、平和の訪れにひと段落する。

 あの様子だとどうやら完全に意気投合したみたいだ。類は友を呼ぶとは正にこの光景を指すんだろうな。一時はどうなるかと思ったけれど、何事もなく終わってくれてよかったよかった……、

 

 

「「……………」」

「ん?」

「あ?」

 

 すると、外国人二人が僕と雄二をそれぞれ交互に見つめてきた。何かな?

 

「Wir müssen ihn loswerden, oder?(チッ)」

「ふむふむ、なるほど」

 

 グッ

 

「OK.OK. I think so.(ニコニコ)」

「oh……(ニコニコ)」

「oh……(ニコニコ)」

 

「Go for it!」

「「OK!!(ジャキッ)」」

 

「待て待て待て!!?」

「何の為の意気投合だったの!!?」

 

 再び僕らに向けられる二つの殺気。

 さっきまで仲睦まじい様子で朗らかに会話していたじゃないか! チクショウ! あのキモオタ何を吹き込みやがったんだ!

 

「Giaubst du nicht, dass sie zu gut für dich ist?」

「Uud du denkst du bist gut genug für sie?」

「いや、その、えっと……ど、どうしよう雄二」

「ダメだ。俺も何を言ってるのかサッパリ分からねえ……」

 

 ひ、ひとまず彼らの誤解を解かないと……!

 

(雄二、ここは大悟と同じ

(そ、そうだな。下手な事言って更にややこしくするよりはその方が賢明か)

 

 そう耳元で囁き、彼らに向き直る。

 

「お……OK.OK」

「「?」」

 

「「I think so!」」

「「!」」

 

「OK.OK(ニコニコ)」

 

 よ、よかった。どうやら僕らの気持ちが通じ―――

 

 

 ドンッ

 

「「Trinken!(飲め)」」

 

 

 ―――ませんでしたよコンチクショウ。

 ていうか大悟に比べて扱いの差が酷すぎる!

 

「おい大悟。頼む、通訳してくれ」

「ああ?」

「僕らに敵意は無いとあの二人に伝えてほしいんだ」

 

 もう僕らで何を言っても無理みたいなので大悟に全てを委ねることにした。

 

「馬鹿か。そんなこと俺が出来るわけがねえだろ」

「どうして?」

「内容どころかアイツらが何語かも分かんねえのに」

「「お前どうやって意気投合した!?」」

 

 じゃあさっきまでのは全部ノリと雰囲気だけで会話してたってことなの!? 二次元が絡んでるとはいえ、流石にコミュ障とは思えない程に適応能力が凄まじすぎるんだけど……。

 

(ど、どうしよう雄二。このままじゃ僕らあのお酒を飲まされる羽目になるよ)

(……しょうがねぇ。こうなりゃ力ずくで黙らせるか―――ん?)

(どうしたの雄二―――ん?)

 

「……………(ニヤニヤ)」

「……………(ニヤニヤ)」

 

 何故か僕らのことをまるで小馬鹿にするような視線を向けてくる。

 そしてフゥ、と息を吐き、言った。

 

Er hat die Alkoholverträglichkeit eines Japanese!(所詮は日本人の酒の強さだな)

Ich kann nicht mal so Alkohol trinken(この程度の酒も飲めないとは)

 

 

「「……………は?」」

 

ブチッ!!

 

 ん? 今何か張りつめた糸が切れたような音がした気が、

 

 ガタッ

 

「ハッ、さっきから何ほざいてるのか分かんねえが……上等じゃねえか」

「うん。今のはアタシもムカついた。少なくともアタシ達が()()で喧嘩を売られたのは分かったよ」

 

 だ、大悟? 天ちゃん?

 

「「……………!」」

 

「いいか外人さん共。一つ教えといてやる。俺達岡崎家の人間は何があろうが―――(パシッ)」

「私達岡崎家の人間は何があろうと―――(パシッ)」

 

 

 グビッグビッ……ドンッ!

 

 

「「酒の喧嘩で負けるわけにはいかねぇんだよ!!!」」

「「YEAAAAAAAAAA!!!」」」

 

 

「「いやなんでだあああッッ!!?」」

 

「ちょ、二人とも落ち着くのじゃ! 一旦冷静になれ!」

「そうですよ岡崎君、天ちゃん! それに今からお酒なんて飲んだらこの後が……!!」

「……こんな所で流石にそれはダメ」

「残念だが相棒、姫路、霧島。それは出来ねえ」

「ごめんなさい。このまま舐められっぱなしでいられるのも非常に癪なので、ここで白黒ハッキリつけさせてもらいます! ですので手出しは無用です!」

「いや、手出しがどうとかそう言う場合じゃなくて!」 

 

「「かかってこいや!! この青二才風情がああああ!!!」」

 

 

 

 

 

 その後、目的の駅につくまでの間、見知らぬコスプレ姿の外人達VS岡崎兄妹による熾烈な酒飲み対決が行われることとなり、最終的に四人全員がスピリタスをがぶ飲みして電車内で吐くという最悪の結末で終わりを迎えた。

 

 こんな調子でコミケ、上手くいくのだろうか……?

 

 




お久しぶりです。前回の投稿から半年以上開いてしまいましたが、なんとか失踪せずにやってます。
次回から会場入りです。多分。

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ
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