問 ダイゴブックスにて経営者と顧客との取引の際に用いられる合言葉を答えなさい。
吉井明久の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
坂本雄二の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
土屋康太の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
姫路瑞希の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
島田美波の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
霧島翔子の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
久保利光の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
清水美春の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
玉野美姫の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
須川亮の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
中林宏実の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
その他Fクラス全男子生徒&一部の二学年生徒(男女とも)の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
高城雅春の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
小暮葵の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
岡崎大悟のコメント
素晴らしい。見事だ。それにしてもまさかこんなにもたくさんの人にご贔屓にしてもらえてるとは思わなかった。経営者として大変嬉しく思うぜ。今後ともどうぞ我がダイゴブックスをよろしく頼む。
船越女史の答え
『あなたの欲望、お埋めします』
岡崎大悟のコメント
うむ、正か…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………えっ?
―――side 大悟
「こりゃまた、随分と手が込んでやがるな……」
出来上がった肝試し会場を一見し、俺はそう言葉を漏らした。
罰ゲーム装置のお披露目から翌日。つまり今日は補習と夏期講習最終日を使って執り行われる二年VS三年の肝試し対決だ。
本当は俺達二年の内のみでやる予定だったのだが、急遽三年と学園側の介入により、学園全体を巻き込んでのイベントになった。その為残りの会場の設営をあっちに一任したのだが……その出来映えは予想以上だ。
ボロボロの廃墟(を模した)内装は薄暗く、じっとりとした陰鬱な気配を漂わす。べったりと生々しくつけられた血糊にお札、天井まで伸びた緑の蔦。またその嫌な雰囲気をより強く出す為なのか、エアコンをガンガンに効かせていて、そのせいで少し肌寒い。これら全てが良い塩梅で合わさっていて、まさにお化け屋敷特有の、今にも怨霊の一体や二体平気で飛び出してきそうなおどろおどろしさ。そして得体の知れない不気味さを全身で強く感じる。
よくこの短期間でこれだけのものを造り上げたものだ。そんじょそこらの遊園地にあるヤツなんて目じゃないほどの高水準な完成度だと感心せざるを得ない。
「うむ。ここまでやったとなれば、学園側だけでなく三年もかなり本気のようじゃ。よっぽどワシらを怖がらせてそれを見て楽しみたいんじゃのう」
隣に立つ秀吉も俺同様、感嘆の声をあげる。
まぁ、確かにそれもあるんだろうが、何よりも負けた方は雑用+シャルピー衝撃装置による股間粉砕というダブルパンチが待ってるからな。ここまで本気になるのも分かる。
「まあ、こんなものテキトーにやってりゃ終わんだろ。さっさと終わして帰ろうぜ」
「む? なんじゃ大悟。あまり乗り気じゃななさそうではないか」
「まぁな。肝試しなんざ全く興味ねぇし」
そう言って大きなあくびをして見せる。
補習がサボれるから仕方なく参加してるだけで、本当は家でエロゲの続きやりてぇんだ俺は。こうしてる間も画面の向こうで女の子達が今か今かと俺の選択肢を待ってるんだよ! 早くイチャラブベッドインしてぇんだよ!
「大体こんなん子供騙しの作り物に過ぎねぇ。だったらんなモンにガチに怖がる必要も理由もないじゃねぇか。馬鹿馬鹿しい」
「…………ほぅ?」
「な、なんだよ」
秀吉がニヤニヤしながら見てくる。
「違うじゃろ?」
「あ?」
「ワシには分かるぞ。大悟は肝試しにやる気がないんじゃなく、肝試しをやりたくないんじゃとな」
「な、何言ってやがんだお前」
「しらばっくれるでない。だってお主は―――生粋のビビりじゃもんなぁ?」
「うっ……」
秀吉のからかうような言い草に、俺は図星を突かれ言葉に詰まる。
そう、認めたくはないがコイツの言う通り、俺は自他共に認めるビビりだ。こんなデカい図体しておきながら、ちょっとした物音や虫を見たり聞いたりするだけで声を上げて驚いちまう。肝っ玉がクソ雑魚なのだ。
そのせいで如月ハイランドパークではひでぇ目にあったんだよな……特に優子によって。
「……ば、バカを言うなよ秀吉。確かに俺がビビりなのは不本意ながらちょっと認めるが、前よりは全然強くなったぞ。絶対に」
「強くなった、のぅ……(ニヤニヤ)」
「そ、その目は疑ってやがるな!? 言っとくがマジだぜ! たゆまぬトレーニングにより鍛え上げられた俺の心臓は、何事にも動じないまさに不撓不屈のものと成長し―――」
「あ、足元にゴキブリがおるぞ」
「おビャぁあッッ!!!?」
物凄い早さで跳躍し、壊さんばかりの勢いで壁にもたれかかる。
無理無理無理無理無理無理!! ゴキブリが虫で一番苦手なのよぉぉおおっ!!
「秀吉!! 殺虫剤だ!! 殺虫剤と新聞紙とゴミ袋を持ってこい! いいや持ってきて下さいお願いしましゅぅぅううううーーーー!!!」
「落ち着け。冗談じゃ」
「いやマジでお願……えぇ? 冗談だぁ?」
「うむ」
「な、なんだよもう……焦っちまったじゃねえか。やめろよ秀吉そういうの。寿命が縮むかと思」
「本当はそこの壁に二匹貼り付いとるぞ」
「いやぁぁあああああーーーーーッッッ!!!!(ガチャバタン!)」
悲鳴を上げながらロッカーの中に逃げ込む。もう、ロッカー大好き。
「秀吉! は、早くっ! 早くそいつらを始末しろッッ!!」
「引っ掛かったな、これも冗談じゃ」
「な、なにぃ……!? 秀吉お前ェ……一度ならず二度までも俺を騙したのか!?」
「あはははっ! やっぱり昔と何も変わっておらぬではないか。相変わらずお主のビビり時の反応は見ていて傑作じゃのう」
ロッカーの外から秀吉がこちらに向かって手を叩いて笑う姿が見える。
それに対し激しく恥辱感を覚えた。おのれ秀吉ィ、親友たる俺のことをまるでオモチャのように扱いやがって、この天使の皮を被った小悪魔めぇ……!
「中学の頃はこうしてたまにお主をからかったものじゃのう。虫のオモチャをばらまいたり、水鉄砲を首筋に当てたり、音の鳴るビックリ箱を開けさせたり……その全てでもれなくお主は今みたいな反応をしてワシを笑わせてくれたのじゃ。いやはや懐かしい」
「やめろそうやって人の恥ずかしい過去をほじくりかえすのはァ! ……ったく、にしてもよくそんな細かく覚えてるもんだなお前は」
「当たり前じゃろう? たった一人の友達……いいや相棒との思い出は一つたりとて忘れる事などあるものか」
「!」
柔和な笑顔を浮かべて言う秀吉にそうかよ、と素っ気なく返しながらロッカーを出る。でも少しだけ、気持ちが和らいだ。
中学の頃、それぞれに友達が全くおらず、本当の兄弟のように俺と秀吉は常日頃からずっと一緒に過ごしてた。見た目も性格も全く違うのにも関わらず、不思議と妙にウマが合う関係。こんなんで親友同士になれるのだから、人生というのは不思議なものだ。
特に初めて秀吉と言葉を交わした時の事は今でも鮮明に覚えている。互いに強烈なファーストコンタクトだったからな。それからの他愛の無い日常の数々。どれもこれもが俺達が紡ぎあげてきた色褪せない良い思い出だ。
『どけ、秀吉!!! コイツだけは……コイツだけは俺が!!! アイツを死ぬほど傷つけて……奪って……泣かせやがったこのクズ共を徹底的にブチのめしてやらねぇと、俺の気が治まらねぇんだよ!!!』
『いい!! もういいんじゃ……!!! お願いだからやめてくれ……! これ以上続けたら……本当に殺してしまう……! そんなこと……ワシも姉上も望まない!!!!(ポロ……ポロ……)』
―――まぁ、忘れたくても忘れられないクソッタレな記憶というのも、中にはあるんだがな。
ああ……………ありゃ本当に、文字通り俺にとっても、アイツにとっても―――“黒歴史”だったな。
(もう二度と……あんな思いは……!)
心でそう反芻し、思わず拳を握りしめる。
そんな俺を不思議に思ったのか、秀吉が俺の顔を覗き込むようにじいっ
と見てきた。
「……? どうかしたのか大悟よ。やけに難しい顔をしておるが」
「……………はは、秀吉。お前も随分と、そんな風に心から笑えるようになったんだな……良かった。本当に……」
「は? いやいや、面白かったら人は普通笑うじゃろうに。何を急に言い出すのじゃ?」
「いや、なんでもねえ。それよりもさっさと待機場所に戻ろうぜ。確か俺達はFクラスだったよな」
「う、うむ。そうじゃな」
俺は踵を返して歩き出す。
そうだ、何をもう終わった事を無駄にダラダラ考えているんだ俺は。余計に気分が悪くなるだけじゃねぇか。もう俺も秀吉も……そして優子もあの時の記憶を必死に圧し殺して今の新しく楽しい人生を一生懸命過ごしてるんだ。さすがに忘れるとまではいかないものの、無理に脳裏に意識してそれに付随した態度を見せたりして、コイツらの古傷を抉るような真似は絶対にしちゃならない。
……昔の事だから、と簡単に割り切れたら、どれだけ楽なのだろうか。この心に深くのし掛かる重荷がどのくらい外れるだろうか。……いいや、それは出来ない。そんなの無責任だ。バカな俺でもそれぐらいは理解してる。手前のケツは手前で洗わないでどうるするんだって話だ。けど、それはあくまでも俺だけに留まらせることだ。二人にはもう二度と、過去の呪縛に巻き込ませない。巻き込んじゃならない。
……この“罪”を未来永劫、背負い込むのは俺一人でいい。
そう思いながら、Fクラスに戻ろうと―――
「絶対に……許さない」
「!?」
不意に耳に響いた声。
思わず立ち止まり振り向く―――が、そこには相棒の姿のみがあるだけだった。
「なんじゃ?」
「あ、いや、今なにか妙な声が……」
「声? ワシには何も聞こえなかったが……気のせいじゃろう?」
「でも確かに……」
キョロキョロと見渡すが、さっきの言葉の主らしき姿はない。
強いて挙げるなら、ふと視線をやった教室の奥の物陰にて、黒い布のようなものがヒラリとはためく様子が見えたのだが……おそらく風で浮いたカーテンか何かだろう。大したことじゃない。
「おかしな事を言ってないで行こうぞ」
「……そ、そうだよな。変なこと言ってすまん」
首を傾げながらも、秀吉の言う通り空耳なんだと思い、歩みを再開する。
……にしてもなんだったんだ、今の……騙されてるって、聞こえたような……?
―――Fクラス。
『ね、ねぇ……。あの角、怪しくない……?』
『そ、そうだな……。なにか出てきそうだよな……』
モニターから、最初にスタートした男女ペアの不安そうな様子が見える。
手には同志が手ずから用意した高性能カメラを携えていて、そこから俺達二年に映像と音声が送られてくる仕組みだ。同志曰くカメラを使う目的はキチンとチェックポイントを通過したかどうかの証拠を見る為と、それぞれに不正行為がないかの確認をする為らしい。
そして肝心な肝試しの組み合わせだが、これはどういうワケか男女ペアという決まりになった。俺はなんでだよ、と思って立案者の雄二にその理由を問いただしたところ、
「特に深い理由はねぇよ。俺はただ地獄の鉄人補習フルコースをサボりたかっただけだからな。それに男女ペアの方がイベントとして盛り上がるだろ」
「そうか―――んで、本音は?」
「翔子にペアを組むように脅された腹いせに全員を巻き込んでやろうと思った」
との事だった。うん、なんとも雄二らしい私怨タラタラな理由だ。
まぁ、年頃の異性で組ませてキャッキャやらせた方が絵面的にはいいよな。女同士ならまだしも大の男二人が作り物のお化けにぎゃーとかうわーとか騒ぎ立てる様子とか誰得、って感じだし。オマケに吊り橋効果も期待出来るしな。
なので俺もその例に習い、ペアを組もうとしたのだが、
「おい相棒。組み合わせだがもちろん俺と組(ボキリ)―――」
「あ、うっかり力を入れすぎて大悟の肩を脱臼させちゃったわ。大悟? もちろんアタシと組んでくれるわよね? ……ね?(ギチギチギチ)」
「ふぁ、ふぁい……………も、もちろんで、ひゅ……」
「やった、嬉しい♪ さて……と、というワケで秀吉。大悟を誑かした罰よ。歯を食い縛りなさい」
「何故ワシまで!? 姉上、それはさすがに理不尽極まりな(ボキリ)―――ぐふぉ……!」
この有り様である。
クソ、優子といい霧島といいどうして俺の周りには暴力系ヤンデレしかいねぇんだ! もっとこう、ひたすら相手を敬ってベタベタ執着するだけのような正統派なヤンデレはいないのかよ!
『そ、それじゃ、俺が先に行くから』
『うん……』
古めかしい洋館の廊下を思わせる内装の曲がり角を警戒しながら進んでいく。
「み、美波ちゃん……。あの陰、何かいるように見えませんか?」
「きき気のせいよ瑞希。何も映ってないわ。ねぇ岡崎?」
「ま、まままま全くだな」
隣ではFクラスの女子勢が怖がりつつも手を取り合ってモニターを見ている。
気持ちはわかる、凄く。
「……………」
「大悟。怖かったらワシの胸に飛び込んできてもよいぞ。優しく抱き締めてやろう(ニヤニヤ)」
「……は、はっ、誰が」
嘲るような声色と表情の秀吉にそう吐き捨てた。
男の娘の慎ましく何者にも犯されてはならない胸にダイブするなど、そんな不敬で恥ずかしい真似が出来るものか。
そして意を決したように、カメラの映像が急激に向きを変える。そこには……特に道があるだけで、何者もいなかった。
「な、なによ。何もいないじゃない……」
「良かったです……」
「お、俺は全くビビッてねぇがな―――」
『『ぎゃぁぁぁあああーーっ!!!』』
「「「きゃぁぁあああーーっ!!!」」」
映像の驚きの声に俺達三人の驚きの叫びがミックスされてこだました。
うぉおい!! 急に大声あげんのやめろよ! なんだってんだよゴラァ!!
「……………失格」
「う~ん……。先発隊が一つ目の曲がり角でいきなり失格だなんて……。向こうも本気だね」
「だな。さすがは三年生といったところか」
「油断がならぬのう」
明久達が感心したように口々にそう言う。
え、なんでコイツらこんなにも冷静でいれんの? 心臓バグってんの? 驚きという感情を北極かどっかにぶん投げでもしてきたん?
その後も何組かがスタートしたのだが、全員が早い段階で失格していった。向こうは口裂け女やら生首やら貞子やらが暗闇の中から突然奇声と共に現れるという、オーソドックスながらも確実に相手を驚かせれる手法を用いてきている様だ。チクショウ、見てるコッチは心臓に悪いっつうんだよ……。
「最初は様子見と思っていたが、この感じだとそうも言っていられないな。あまり点数の高い連中が失格になりすぎるとチェックポイントが辛い」
「そうだね。向こうはチェックポイントには点数の高い人を置いてくるだろうし、僕らも出来るだけ戦力は温存しておかないと」
「んじゃ、コッチも手を打つか」
そう言うと、雄二は次の指示を出した。
そして次に出陣するは、
『行ってくるぜー』
『カメラは俺が持つぞ』
我がダイゴブックスの超常連。須川と福村の非リア充コンビだ。
雄二曰く、まずはチェックポイントまでの道のり、三年側の驚かせてくる場所とタイミングを把握するため、あまりこういったものの類いにビビらなそうな度胸のあるヤツを選定して行かせたらしい。
なるほど、確かにチェックポイントまで辿り着けないことには話にならないし、そもそもこれは俺達二年と三年の勝負で、勝つ条件が全てのチェックポイントの敵を倒してゴールすることだ。明久の言った通り、三年は当然勝つための人材をチェックポイントに置くだろう。Aクラスの常夏コンビはもちろんのこと、あとは小暮先輩……いや、最悪高城さんが待ち構えている可能性すらある。いくら明久の完全上位互換とはいえ、この学歴至上主義の文月学園において三年の首席に君臨するほどの秀才だ。苦手科目でも突かない限り、勝ち目は無いだろう。だからその為にも、こんな序盤も序盤で、ただいたずらに貴重な高得点保持者を使い続ける状況は全くもってよろしくない。雄二の考えは妥当な判断だろう。
『お。あそこだったか? 何か出るって場所』
『だな』
そんな雄二の狙い通り、須川達は何の躊躇いもなく先に進んでいく。
問題の曲がり角に到着、カメラを向けた途端、
「「きゃぁぁあああーーっ!!!」」
「ッッッッ……!!!」
生首&口裂け女のご登場。
声を出さずになんとか耐えた。
流石に何回も見せられた故、ある程度の耐性はついているみたいだ。……それでもギリギリだが。
落ち着け、落ち着くんだ岡崎大悟。急に出てくることにいつまでもビビってどうする。思い出すんだ。ドキドキ文芸部のビックリ演出でメンタルが死にかけたあの時の想像を絶するような苦行を……!
『おっ。この人、少し口は大きいけど美人じゃないか?』
『いやいや。こっちの方が美人だろ。首から下がないからスタイルはわからないけど、血を洗いながらしたら綺麗な筈だ』
が、そんな俺達とは裏腹に、須川達はなんとも無さそうな感じで相手の怪異を見定めている。す、すげぇな……あんな急に現れて身動ぎ一つしねぇとは。
その後も進んでいた先々で、須川達は似たような反応を見せる。
『お? この提灯のお化けだな。けど掴めないぞ?』
『召喚獣なら掴めるだろ。
『おお、見ろよ須川。首吊り死体だ』
『結構出来がいいんだな』
『これが噂の貞子か。目元は怖いが、スタイルと顔立ちは良さそうだな』
『後で兄貴に二次元のエロ可愛いイラストに起こして貰おうぜ』
ふむ、それについては厳正に検討するとしよう。
実際その手の怪異達をテーマにしたエロアニメやエロ漫画もあるからな。売上も見込めそうだ。
「な、なんでアイツらあんなに平気そうなのよ!? アキ達も怖くないの!? あんなにリアルなお化けなのよ!?」
青くなった島田がそう明久達に問う。
「うーん、別に命の危険があるワケじゃないからなぁ」
「グロいものはFクラスで散々見ているしな」
「……………あの程度、度々殺されかけている明久達に比べれば大したことはない」
「姉上のエスカリボルグでの拷問に比べれば可愛いもんじゃ」
「全くだ」
俺もビックリ演出がダメなだけでホラーやグロテスク自体はさほど苦手じゃない。エロゲーやアニメだってそういう表現や描写があるもの、いっぱいあるしな。Anotherとかにくにくとか。ただ夏花ちゃんのアナル浣腸液からの腹部破裂臓器ぶちまけ死亡シーン、あれはあかん……。あかんのや……。
「んむ? そういえば雄二。お主、肝試しは極力男女ペアにすると言っておらんかったかの?」
モニターを覗く秀吉が雄二に聞いた。
「だいたいそうなるようにしてあるんだがな。俺達のクラスはほとんどが男だからどうしても数が合わないんだ」
「確かに、比率が男ばっかで女子が二人、秀吉が一人だからなぁ」
「……………男があぶれまくる」
「……ワシを男の括りから省いた理由については、後で詳しく聞かせて貰うからの、大悟」
「あ?」
秀吉がそう言って俺をジト目で睨む。
ん? 俺なにか間違った事言ったか?
『あー、畜生。なんでこの俺が須川なんかと……!』
『お前がモテないのが悪いんだろ』
すると、そんな文句を交えた二人の会話が耳に入ってきた。
まあ、女子との二人きりを楽しめると思ったのに、いざ蓋を開けてみたらこのザマだからな。アイツらが不満に思うのも無理はない。
『何だと須川……? お前だって、朝から二十人くらいの女子に声をかけて全滅していただろうが』
『ち、違う! あれは別に断られたわけじゃない! 向こうには向こうの事情があっただけで、お前のような生涯童貞男と違って、俺がモテないわけじゃない!』
『お、俺だってそうだ! 須川のような永世童貞野郎と違って、俺はモテないわけじゃない! タイミングが悪いだけなんだ!』
『『あァ!? んだとこの童貞が!!』』
「お、メーターが一気に真っ赤になったぞ」
「……………失格」
「アイツらは何をやってるんだ……」
言い争いの声量が規定値を超え、須川達はあえなく脱落した。
あーあ、せっかくチェックポイント直前のところまで行ってたのにな。ったく、図星を突かれたからってあんなにも分かりやすく、かつ過剰に反応するとはなんと無様で情けない。童貞と言われて取り乱すヤツぁ、自分で童貞だと認めてる証拠だと言うのに。そんな簡単なことも分からずああして見栄っ張りに走るとは。やれやれ、これだからケツの青い童貞は……、
「いやお前も童貞だろうが」
黙れ雄二。俺の心を読むんじゃない。
「けど、須川君達のおかげで相手の仕掛けが分かったね」
「だな。後続の朝倉達もいることだし、チェックポイントまで行くのも時間の問題だろ」
雄二の言葉通り、須川達の少し後に出陣していったペアのカメラが大分先まで進んでいた。須川達同様、途中の驚かせてくる仕掛けにはあまりビビる様子を見せていない。俺だったら絶対最初の生首で一発アウトになる自信があるというのに。
さっきの須川達といいアイツらといい、今だけはアイツらのあの肝っ玉が羨ましく思うぜ。
『おお。チェックポイントか。結構余裕だったな』
『Bクラスの教室だけあって長い迷路だったけどな』
そうこうしている内にチェックポイントに到達。
そこには化学担当の布施と、三年らしき男女二人組が待ち構えていた。ようやくちゃんとした召喚獣を用いての戦いが見れるのか、そう思いながらヤツらの様子を見守る。
『『『『
布施の召喚許可の下、それぞれの召喚獣が喚び出された。
Aクラス 近藤良文 326点
化学 &
大竹喜美子 263点
まずは三年の戦力たる点数が表示される。
「おいおい。んだよありゃ。どっちも点数普通に高いじゃねぇか」
「うん。やっぱりAクラスの人をチェックポイントに置いてきたね」
「三年は予備校に通ってる連中も多いだろうからな」
表示された点数を見て、俺達は口々に言葉を漏らす。
流石に同志や姫路ほどまでイカれてるワケではいないが、それでもAクラスに在籍する生徒としては十分に相応しいであろう高得点だ。大学受験の為に相当な勉強量を増やしたが故のところもあるのだろうが、だとしても300点オーバーなんてそうそう簡単に取れる点数じゃない。改めて最上級クラスの生徒と俺らのような底辺クラスの生徒の間の格の圧倒的違い……勉学に取り組む姿勢、壁の大きさを思い知らされた瞬間だった。
「これ、アイツらじゃ絶対勝てねえだろ」
明久や雄二に比べ日頃の接点が少ないとはいえFクラスのクラスメート。テストの点数を見なくても大体予測がつく。
ハッキリ言って相手が悪すぎる。勝つどころかろくに勝負になる可能性すら見えない。一方的な虐殺になること間違いなしだ。
いや、開始と同時に瞬殺されるなんてことも十二分にあり得―――
Fクラス 朝倉正弘 59点
化学 &
有働住吉 ―――――――――――――――――――――――――
『『ぎゃぁあああっっっ!』』
モニター越しにこだまする朝倉達の断末魔の叫び。
予想より酷かったな。試合開始どころか点数が全部表示される前にお亡くなりになられるとは。
「まぁ、こんなもんだよな」
「そうだな。特に驚きはないな」
「チェックポイントは純粋な点数勝負だもんね……Fクラスじゃ到底勝てる訳がないよね」
一瞬しか見えなかったが、今の三年と朝倉達の点数差はおおよそ六倍近くあった。誰がどう見てもこちらの完全なる敗北だ。
けどこれでいい。アイツらを出陣させたのはチェックポイントの突破じゃなく、そこまでの道のりと向こう側の仕掛けを把握するためだからな。つまり仕事はキッチリとこなしてくれたってワケだ。
「よし、必要な情報は揃ったな。これで他のクラスの連中を送り込める確率は上がる筈だ」
そう言って雄二が振り向き、再び待機している連中に向かって指示を出す。
「皆! ここは一気に勝負を決めるぞ! 今の連中に対抗できそうな点数のペアはどんどん突入してくれ!」
ガタッ!
『『『俺たちに任せとけっ!』』』
「いやお前らは対抗できる点数じゃないだろ!!」
なぜか真っ先に自信満々な様子で立ち上がったFクラス連中。それに対して雄二が思わずツッコミを入れた。
……まあ、なんだ。実力の有無はどうあれ、揺るぎない自信を持つのは良いことだ―――
『やっぱりあの女、見てて鬱陶しい。×××の癖にいい子ぶって嘘ばっかり』
『本当……アンタが死ねばよかったのに』
「っ!?」
突然、俺の耳に声が聞こえた。
まるで幼い女の子のような優しくとろけるような甘く澄んだ声色だ。だがその内容はとてもそれとは不釣り合いなほどに黒く、刺激的で、憎々しさが溢れている。
「……!? ……………!」
「? どうかしましたか? 岡崎君」
「さっきからなにキョロキョロしてるのよ」
「いや、今耳元で声がしたんだよ。俺好みのキュートな幼女ボイスの罵声が……」
「こ、声ですか? 私には聞こえませんでしたけど……美波ちゃんはどうですか?」
「ウチにもそんなの聞こえなかったわ。な、なによ岡崎。まさかアンタまでウチらのこと驚かそうっていうんじゃないでしょうね」
「いやいやちげえよ。俺は本当に聞こえて……」
「やめてよねそういうの。た、ただでさえこんな時なんだから……」
「そうですっ。あまり意地悪なことはやめてください」
「いやだからよ……」
そんなつもりじゃない、そう弁明しようとしたが島田と姫路の様子からこれ以上言っても無駄だと思いやめた。
(やっぱり気のせいかなぁ)
それによくよく考えたらこんなところに幼女なんているワケないじゃないか。現実を見るんだ俺よ。あれだ。最近エロゲのやりすぎで睡眠不足な日が続いてたからな。おそらく俺の幼女に対する愛と慈しみの深さと連日の疲労感が合わさった結果、幻聴が聞こえてしまったんだろうな。
(しっかし、幻聴とはいえ物騒な事を吐くじゃねえか。幼女か……特に葉月ちゃんに死ねなんて面と向かって言われたら流石の俺でも立ち直れな……………)
『大悟お兄様、葉月のことそういうエッチな目で見てたんだぁ……うふふ、小学生相手に発情するなんて、どうしようもない変態さんなんですね……♪』
『キんモーいっ♪ ばーか♪ ロリコンで変態な大悟お兄様なんてぇ……死んじゃえ死んじゃえ、ですっ♪』
………………………………………………………………………………………。
(…………………………………………最高じゃねえかッッ!!!)
「うぇえっ!? ちょ、ちょっと岡崎、アンタ大丈夫?」
「あの、岡崎君。は、鼻血が出ちゃってますよ?」
「……………二人とも。俺と一緒に幼女愛好家の道を極めないか?」
「「は?」」
俺は笑顔で二人にサムズアップを送る。
結論:幼女(葉月ちゃん含む)の死ねは罵倒にあらず、むしろありがたいご褒美なのである。純真無垢な彼女達から発せられる棘のついた鋭い言葉の数々は、人類にとってはむしろ原動力……タンパク質やビタミン、炭水化物のように、明日を力強く生きていく為の貴重な栄養源と言っても過言ではないだろう。その言葉を一つひとつ浴びるごとに心と下半身が固く熱く滾り、雄々しく清らかに立ち上がり、体の奥底からエネルギーが濁流のように押し寄せ、漲ってくるのだ。つまりそれは、人類にとって幼女という存在が強大かつ必要不可欠であり、同時に世界秩序の維持と安寧へと導いてくれる平和の象徴を意味しており―――
「それはお前だけだロリコン」
だから心を読むな、クソ雄二コラ。
お待たせしました。最新話です。
そして今から言っておくのですが、この肝試し編で新キャラクターが登場します。とはいっても完全に私が一から考えたワケではなく、私が思い入れの深いとあるゲームのキャラを参考にし、それにバカテスの設定に準した脚色を加えるって感じですけどね。今話でちょっとだけそのキャラのヒントとなる描写が入ってるので、暇な時間にでも調べてみてください。ちなみにいうとかな~りマニアックかつ古いキャラなので、難しいと思うけど頑張ってね。
それではまた次回
感想、意見などありましたらよろしくお願いいたします。
原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?
-
入れろ、絶対に
-
別に入れなくてもいいよ