バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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バカテスト 
問 以下の問に答えなさい
『悪魔の証明』とは何か簡潔に述べなさい。またこの言葉の具体性を示した簡単な例を記入せよ。


姫路瑞希の答え
①『〜〜が無い』といった、消極的事実の存在を証明することが事実上不可能、もしくは極めて困難であることを指す法学、論理学における用語
②幽霊の存在

教師のコメント
正解です。あることを証明するには一つの証拠で済みますが、無いことを証明するのはこれまでの全宇宙の全歴史の事柄を一から探し出さなければならないというとんでもなく途方も無い理論に基づいてこの証明は存在します。
こういった普段では中々聞くことのない知識が得られるのも、論理学の面白さですね。


吉井明久の答え
①ミステリー映画か何かのタイトル

教師のコメント
おそらくその映画は一般大衆には高難易度過ぎてウケないでしょう。


土屋康太の答え
②木下秀吉の性別

教師のコメント
もういい加減彼を認めてあげてください。


岡崎大悟の答え
②二次元に行ける方法

教師のコメント
三次元にも楽しい事はいっぱいあります。ですので頑張って今を生きましょう。



第七十八問 汚れちまったゴスロリ

 

 

―――文月学園、2学年生徒。

―――あの悍ましい出来事を、後に彼、彼女らは語ってくれた。

 

『ああ、まさかあんな方法を用いてくるなんて思わなかったよ』

『完全に誤算だった』

『あのセンパイのやり方が赤子レベルに感じた』

『今でもあの光景が脳裏に焼き付いて離れねえ』

『PTSDになってもおかしくないほどのモンだよ、ありゃあ』

『改めて思う。兄貴とムッツリーニが俺たちの味方で本当に良かった』

『常人が耐えられる代物じゃない。生物兵器と言っても……過言じゃなかった……あれは、あれは……あ、ああ……う、うわああああああああああ!!!』

『おいよせ!落ち着け福村!! 早まるな!!』

『もう終わったんだ!! アイツはもう俺達の前には現れない!! だから壁に頭を打ち付けるのをやめろ!!』

『勝つためとはいえ……()()はもう二度と表舞台に姿を現しちゃあならない存在だ! 絶対に!!』

 

 

 

―――2ーF、姫路瑞希の証言。

 

『………ごめんなさい。あまりその事については話をしたくないんです。お力になれずすみません……』

『………でも、一つだけ、強いて一つだけ言うのであれば』

『本当に恐ろしいのは、お化けなんかよりも、生きている人間……』

『更に言えば、その奥底に眠る底なしの“想像力”なんだなって、思いました』

 

 

―――2―A、霧島翔子の証言。

 

『……あれを見た瞬間』

『産まれて初めて本能的な”恐怖“を覚えました』

『胸の奥。心臓を一気に鷲掴みされたようで』

『少しでも気を抜いたら真っ先に“殺される”って気持ちが心の奥底から湧いて止まりませんでした』

『肉体的苦痛よりも、精神的苦痛の方が人間はあっさりと壊れてしまう……』

『それを、身を以て学びました』

 

 

―――2―A、木下優子の証言。

 

『……まあ、大悟と土屋君の実力は知ってたわよ』

『あの二人なら、ああいうやり方で敵を倒しても不思議じゃないし』

『けど……流石に限度ってものがあるでしょう』

『アタシが言うのもなんだけど、いくらあの先輩が許せないからってあれは……ねぇ』

『得られた戦果よりも、それに付随した犠牲の方が圧倒的に多過ぎたわ』

 

 

―――2ーF、島田美波の証言。

 

『そうね……あまり難しいことは言えないけど』

『今後の人生において、アレを超えるような恐怖体験は二度と訪れない』

『この世には、決して生半可な気持ちで触れちゃいけないものがある』

『今回の事でウチはそう思ったわ』

 

 

―――2ーD、清水美春の証言。

 

 

『美春は……お姉様に嫌われる事以外に恐怖など感じない……そう信じて生きてきました』

『ですが今となっては、そんな考えはただの傲慢に過ぎなかったと猛省しています』

『救いなき絶望……そう表現してもいいでしょう』

『今でもあれを思い出すたびに手の震えが止まりません……美春はもう、汚れてしまった』

 

 

―――2―A、工藤愛子の証言。

 

『あはは、アレは完全にやり過ぎだったね』

『ボクも見た瞬間一気に血の気が引いて吐きかけたもん』

『っていうか、アレを直視して正常でいられるなんて無理な話だよ』

『その辺のホラー、スプラッター映画なんか比にならないレベルでヤバかったからね』

 

 

———3—A、小暮葵の証言

 

『油断や慢心など、しているつもりはありませんでしたわ』

『確実に仕留めるつもりで夏川君を行かせましたし、実際に多くの戦力を削りました』

『これで押し通せる、そう確信した……けれど』

『ふふっ……まさかあんな事になるなんて』

『今回のことで、私や他の生徒達も分かったでしょう』

()()の本気に比べたら、私達のその場しのぎの作戦なんて駄作……いえ、子供騙しに過ぎなかったのですわ』

 

 

 

 

 

 

 

     ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――side 明久

 

 

《よしっ! Bクラス制覇!》

《やったね真一君!》

 

 

 朝倉君達が撃破されて以降数組のペアが突入し、ギリギリ悲鳴をあげそうになったりとピンチな場面はあったものの、なんとか戦力を減らさずにチェックポイントに辿り着く事が出来ていた。

 

「随分突破出来たな」

「うむ。少しずつではあるが、ワシらに有利になってきたのう」

「ああ。事前のルールで、一度踏破したクラスは飛ばしてもいいことになっている。つまり次からスタートする時は、チェックポイントの次のクラス……今でいうとDクラスからだな」

「……………かなりのショートカット」

 

 今回の勝負はいつもの試召戦争みたいに補充テストはなく、またチェックポイントでの人員の入れ替えもない。攻め込むこちら側はいわゆる総力戦……一回の勝負で勝てなくても、何度も戦いを重ねていくことにより相手を消耗させていき、やがて倒していけばクリアという形式だ。

 要するに、いかにこちら側が優秀な戦力を温存しつつ、チェックポイントに辿り着けるかが勝負の鍵となるってわけだ。

 

「この調子で皆さんが全部クリアしてくれたらいいんですけど……」

 

 モニターを見て姫路さんがそう呟く。

 姫路さんはこちらの最高戦力ということもあり、最後の方の参加順となっている。

 

「姫路さんがいかないように僕らも頑張るよ。ね、美波」

「そ、そうねアキ。一緒に頑張りましょ」

 

 美波が複雑ながらもやる気のある様な表情を見せている。

 怖いけれども楽しみな部分もあるといったような、いくつかの感情が交じり合っている感じだ。こういったものが苦手なのかもしれないけど、それでも楽しんでくれているようでなによりだ。

 

 

 

「帰ってエロゲーしてぇ……生意気な後輩系メスガキをわからせ種付けプレスしてぇ」

 

 

 

……それに引きかえ、このキモオタは。

 

 

《それじゃあ、引き続き俺達はDクラスに向かうぞ》

《頑張ろうね、真一君》

 

 

 モニターの向こうではBクラスを突破した二人がそのままDクラスに向かっていた。

 

 

《怖かったらいつでも言えよ真美。俺が守ってやるからな》

《うん。ありがとう。頼りにしているからね真一君》

 

 

 ……………。

 

 

《なんか、こうしてるとまるでデートみたいだね》

《おいおい、何言ってんだよこんな時に》

 

 

 …………。

 

 

《ああ、赤くなってる。なになに? もしかして照れてるの?》

《バカッ! そ、そんなんじゃねぇよ》

 

 

『『『チッ…………!!』』』

 

 

 モニターから伝わる二人の会話に対して、教室中から舌打ちが聞こえてくる。

 どうやらその行動はCクラスやBクラスの男子たちによるものだった。その気持ちは痛いほど分かる。けど僕やFクラスのメンバーはこういった露骨かつ矮小なマナーの悪い行動はしない。

 

 

「坂本。次は俺にいかせろ。ヤツらに本物の敵は二年にいるってことを教えてやる」

「待てよ近藤。ここは【安心確実仲間殺し】の異名を持つこの俺、武藤啓太の出番だろう」

「いやいや。【逆恨み凄惨します】がキャッチコピーの、この原田信孝に任せておくべきだ」

 

 

 Fクラスの売りは行動力と団結力。

 舌打ち程度で済ませれるほど僕らは温くないからだ。

 

「おいおいお前ら……。ひとまず落ち着けよ」

「雄二」

「いいか。そういうことは―――クラス全員でやるべきだ」

 

 これにて全員の意見が成立。

 ああ素晴らしきかなFクラス。蔓延る悪事は見逃せど、他人の幸せは見逃さない。こうした日々の活動が僕らの連帯感を養っていると言えるだろう。  

 

 

「―――やれやれ」

 

 

 そんな状況に対し、大悟がそう小さく声を漏らした。

 その様子は他のクラスメート達のように憤ったり悪態をついたりすることなく、ただただ毅然とした態度でモニターを見つめている。

 

「大悟は何も思わないのかい? あんなあからさまな光景をまじまじと見せられてるっていうのに」

「フッ……愚かしい。俺は二次元を愛し、二次元に生きる男だ。あんなモンに一々目クジラを立てて鼻息を荒げる必要なんてあるまい」

 

 鼻で笑いつつそう僕に告げる大悟。

 コイツは基本画面の中の女の子にしか性的興味を示さない生粋の二次元オタク、更に言えばロリコンだ。そんなヤツにとって三次元、ましてやストライクゾーンでもない年齢の男女の色恋沙汰などどうでも良いことなのだろう。

 

「俺は一度二次元(ホーリーランド)に帰る。何かあったら声をかけ———」

 

 

 《絶対この手を離しちゃ駄目なんだからね……………()()()()()()()!》

 

 

「———は?」

 

《おいおい、もうその呼び方やめてくれよ》

《えー……えへへ》

 

「……………」

 

《もう俺達高校生なんだぜ?》

《だってー、子供の頃のクセでつい出ちゃうんだもん》

 

「……………」

 

《まさかこうして付き合っちゃうなんてねー》

《だってお前、久しぶりに会ったらすげー可愛くなってたからさ、スタイルもこんなに良くなっちまって》

《やだもー、真一お兄ちゃんのスケベ!》

 

「……………」

 

 モニター越しに映る2人の会話———もといイチャイチャ。

 なるほど、幼なじみという関係性だったのか。だからあんなに仲睦まじいし、必要以上にボディタッチも多いわけだ。

 

 

「……………明久」

「うん、分かってるよ大悟。君が何を言いたいのか」

 

 

 声をかけてきた大悟に僕はそう切り返す。

 

『お兄ちゃん』

『幼なじみ』

 

 この二つの単語が出てきた瞬間、彼の目の色が変わったのを僕は見た。

 うん、やはり僕らは一蓮托生。Fクラスの人間である限り、どれだけ自分を取り繕うとも、この心に滾る思いだけは決して抑え込む事など不可能なのだから。

 

 

 

「お前ら———狩るぞ」

『『『おう』』』

 

 

 

 ああなんてこの世は諸行無常。

 こうしてまた、道を違えてしまった仲間をこの手で始末しなくてはならないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———side 大悟

 

 

 

 

 結局さっきのリア充グループはあの後すぐに失格となった。どうやら何かが首筋に触れたらしくそれで思わずびっくりして声を出してしまったと。タイミング悪いなあ全くよぉ。折角俺達の絆の力を見せつけてやろうと思ったのに。

 そしてそれに触発されたかのように次々とこちらの組の失格が続く。雄二や同志が言うには今までの様に召喚獣が目の前に現れて驚かしてくるタイプではなく、死角からの直接接触による攻撃に切り替えてきたのだと言う。確かに驚かし方が1種類だけでは百人単位で存在する俺達2学年の生徒全てを下すのは不可能に近いし、何より芸が無い。肝っ玉の据わった人間や、視覚的情報に比較的疎い———いわゆる『鈍感』と呼ばれるタイプには効果が薄いだろう。人間の無意識下における自然現象———『反射』を利用した方法ならその限りでは無い。あれは脳の命令を介さずほぼ勝手に発動させてしまうものなので対策のしようがないからだ。

 『目に見える驚かし方』と『目に見えない驚かし方』を良い塩梅で使い分ける事により、『次は何が来るんだ』『どんなやり方でビビらせてくるんだ』とこちらの恐怖心と嫌疑の気持ちを植え付け、より一層増大させ足を竦ませる。その弱った所を狙い、一気に討ち取るのだ。

 なるほど……単純だが安定した効果が見込めるいい方法だ。人間の心理的要因を穴を上手く突いてやがる。まあおそらく高城さんあたりが考えただろう作戦とは思うが、こちらはその術中にドハマリしてしまったというわけだ。

 

《おわあっ!? へ、蛇!?》

《か、カエル! カエルが降ってきた!》

 

《きゃあっ!? 何か垂れてきたっ!?》

《冷たっ! これ、水だ! 水滴が頭に垂れてきてる!》

 

《いや! ゴ、ゴキブリ!!》

《うわっ! こっちに飛ばすなよっ!》

 

 そうして段々とこちらの戦力が削られていく。

 

「玩具の爬虫類に虫、垂れる水滴ねえ」

「向こうにもそれなりに考えてるみたいだな」

「……………このままだといずれジリ貧になる」

「雄二、どうするのじゃ?」

 

 雄二に視線を向ける。

 だがヤツはいつも通りの余裕の態度を見せていた。

 

「それならこっちだって手を打つだけだ。まあ見てろ」

 

 ニヤリと笑う雄二。

 

「Fクラス部隊第二陣、出撃準備だ! 形勢を立て直すぞ!」

『『『おうっ!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「…………失格」

「明久、大悟。アイツら後でシバいといてくれ」

「「わかった」」

 

 スタート早々一組目が脱落。クソが。

 出撃するなり『突然触ってくるものが恐いのはそれが何だか分からないからだ。だからそれを美少女が触ろうとしてくるのだと脳内変換してやればいい』とか意気揚々とほざいておきながらこのザマ。まじクソ。

 でもあのやり方は悪くない。なら俺はその美少女枠を葉月ちゃんに変換してしてやってみることにしよう。……どれどれ。

 

〜〜〜

 

『大悟お兄さまっ(首筋ペロッ)』

『うひゃあっ!』

『えへへ〜……ビックリしたですか? 大悟お兄さまっ!』

『こらー! そんなイタズラする悪い葉月ちゃんにはお仕置きだぞぉ!』

『きゃっ! もうっ、そんなところを触っちゃやですー! もうっ、大悟お兄さまのエッチ!』

 

〜〜〜

 

「……………(ボタボタ)」

「お、岡崎君? 鼻血が出ていますよ?」

 

 うんイケる。やはり幼女 is good。

 後でめるたんバージョンも妄想してみることにしよう。

 

「そ、それよりもこのクラスは見ているだけならそこまで怖くないので助かります……」

「そうね。これならウチも平気かも」

 

 それは確かにそう。視覚的な驚かし方じゃない分、第三者からしたら特にダメージは少ない。

 

「最初の二人はともかく、他の三組は順調そうだね」

「そうだな。多少驚きはするが悲鳴をあげるほど繊細な神経をしている連中じゃないからな」

 

 二人の言う通り、クラスのヤツラは仕掛けを次々と突破していく。

 このまま何の問題もなく進んでいけば良いのだろうが……。

 

「そろそろ何か仕掛けて来そうだな」

「ああ。向こうにもこっちの様子は筒抜けだからな。また別の方法で落としにかかってくるに違いない」

「今度はどんな方法を使ってくるんだろう」

「さぁな。皆目見当もつかん」

 

 三年は俺達と同じように現在の状況をリアルタイムで見れる分作戦も立てやすい。

 更に予想ではあるがあっちの作戦立案者はあの雄二レベルの頭の持ち主、高城さんだ。また新たな方法でこっちを引っかき回してくるに違いない。

 

 すると、

 

 

「んあ?」

 

 

 急にモニター内の様子に変化があった。

 

「雰囲気が変わったね」

「うむ、暗くてよく見えぬが……どうやら広い場所に出たようじゃの」

 

 秀吉の言う通り、迷路のような狭い空間から一転だだっ広い空間が広がっている。教室か何かだろう。

 特に仕掛けがあるようには見えず、強いて言うなら天井にぼんやりとスポットライトみてえな照明のようなものがあるぐらいだ。

 

 

「あれなら特に問題は無さそうだね」

「ああ、そうみたい———」

 

 

 ゾワッ……

 

「!?」

「? どうしたの大悟」

「あ、いや……なんでもねぇ」

 

 そう誤魔化したが、嘘だ。今ハッキリと感じた。

 何だ……? 今背中から寒気を覚えたぞ……? 心なしか手も震えていやがる。

 まるで……これから訪れるであろう“何か”に対してブルっちまう……そんな感覚だ。

 

「……………同志(チョンチョン)」

 

 急に同志が俺の服の裾をつまみ、モニターを促す。目を凝らして見てみると……人影のようなものが一つ、見えた。

 暗闇に遮られ、誰かは分からない。だが少なくともこの嫌な感覚を産み出している原因であることは間違いないだろう。

 

「……やっぱりお前も感じたか」

「……………おそらく、仕掛けてくる」

 

 同志の言葉に思わずゴクリと生唾を飲み込む。

 

「ッ……!」

 

 頬を冷や汗が伝う。

 例えるなら、それはまるで蛇に睨まれた蛙!

 初めてレナの本性を見たときの圭一ッ!

 はたまた、DIOのスタンド能力を目の当たりにした時のポルナレフっつう感じになぁ……! クソっ……! 一体あそこに何が待ち受けてるってんだよォ……!

 

 

《なんか不気味だな》

《ああ。よく分からねえけどヤバい感じがする》

《けど突っ立ってても仕方ない。先に進むぞ》

《分かった》

 

 

 モニター内のヤツらは一歩、また一歩と歩を進めていく。

 

 そして———

 

 

 バンッ!!

 

 

 スポットライトの光が照らされ———

 

 

 ドンッ!!

 

 

 ”それ“は、現れた———

 

 

 

 

 

《……………》

『『『ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーっ!!!!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———side 明久

 

 僕らの教室は悲鳴と混沌の嵐に包まれた。

 それも然り。何故ならモニターには———全身ゴシックロリータファッションの夏川先輩が映っているのだから。

 

「や、やりやがったなクソ野郎!」

「汚いっ! やり方も汚ければ映ってる絵面も汚いっ!」

「きゃあああーーっ!? お、お化けよりも怖いですぅ!」

「な、何なのよあれ……うぷっ」

「夢に見る……! ウチ、今夜は眠れないかも……!」

「……気持ち悪い」

「流石にワシも耐え切れぬ……!」

 

 突然のグロ画像に皆ノックダウン寸前。

 もちろん僕も悲鳴と激しい吐き気に襲われた。な、なんて恐ろしい真似をしてくるんだあのクソ坊主先輩め……ッ!

 

 

《ぎゃぁああー! 誰か! 誰か助け———》

《嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ! ここから出してくれぇ!》

《殺せ! 誰か俺を殺してくれェ゙!!!》

《俺のそばに近寄るなァァアアーーー!!!》

《▲♡◇■✕↙↕←★!!!》

 

 

 

 ザザーーーーーッ………!!

 

 

「……………突入部隊、全滅……ッ!」

 

 砂嵐の画面を見てムッツリーニが憎々しげに呟く。

 当然だ。モニター越しの僕らでさえこのダメージなのだから直に見た彼らが耐えられるわけがない。

 

「クソぉ! 皆っ!」

「どうするのじゃ。流石にアレを突破するとなると至難を極めるぞ……」

「…………本気で潰しにかかってきてる」

 

 一気にこちらの士気が下げられてしまった。

 けれど、どう攻略すればいい……! あんな劇薬レベルの存在にどう立ち向かえば……!

 

「…………」

「……大悟? さっきから黙りこくってるけど、大丈夫?」

「…………」

「大悟? おーい!」

 

 俯いたままうんともすんとも言わない大悟。

 あまりのショックで気を失っちゃったのか? 

 

「あんな衝撃的なものを見た上に想像力の塊みたいな男じゃ。なら意識の一つや二つ飛ばしても仕方あるまい」

 

 秀吉がそうフォローを入れる。

 ならこのままにしておくか、ちゃんと復活してくれるといいんだけど。

 

『坂本っ! 仇を……! アイツらの仇を討ってくれ……』

『このまま負けたら散っていったアイツらに申し訳がたたねぇよ……!』

 

 クラスの皆が涙ながらに訴える。

 

「わかっている! 向こうがそう来るのならこっちだって全力だ! ムッツリーニ&工藤愛子ペアを投入するぞ!!」

 

『『『おおおーーーっ!!』』』

 

 

「……………(スクッ)」

「あ、ボクの出番カナ?」

 

 名前を呼ばれたムッツリーニと工藤さんが立ち上がる。

 

「よろしくね、ムッツリーニ君」

「……………(コクリ)」

 

 二人ともいつも通りの感じで話している。す、凄い……あんなグロ画像を見ても殆ど動じていないなんて……恐ろしい肝っ玉の持ち主なんだ。

 

「頼んだぞ二人とも。なんとしてでもあの坊主を突破して、Dクラスをクリアしてくれ」

「う〜ん。約束は出来ないけど、一応頑張るよ」

 

 飄々とした態度で軽く答える工藤さん。

 

「ムッツリーニもいけるな?」

「……………問題ない」

 

 静かに、小さく頷くムッツリーニ。

 この二人ならなんとかしてくれる。そう思った時、

 

 

 

「待て」

 

 

 

 急に大悟が二人を呼び止める。

 どうやら目を覚ましたみたいだ。

 

「……………同志。無事だったか」

「ああ……あまりの気色悪さにゲロリそうになったが脳内でエンドレス葉月ちゃんボイスを流す事でなんとか耐えたぜ……!」

 

 そんなアホな方法で吐き気を抑えれるのは世界中探してもコイツしかいないだろう。さすがは生粋のロリコン。

 

「それよりも、次は同志とみるくたそが行くのか」

「……………ああ」

「うん、そうだよ♪(もう呼び方にツッコむのやめよう)」

「そうか。なら……」

 

 腕を組み何か考える様子の大悟。

 

「いよいよアレの出番かも知れねェな」

「……?」

「岡崎君。アレって?」

「ああ、この状況を打開するにうってつけのブツがあってよ。それを同志、みるくたそ。お前達二人に託したい」

 

 そう言うと、大悟は制服の内ポケットから1枚の封筒のようなものを取り出しムッツリーニに渡す。

 

「…………これは?」

「ま、見てみな」

 

 大悟に促され、封筒を空けて中の物を取り出す。中には1枚のA4サイズくらいの紙が綺麗に折り畳まれて入っていた。なんだろ?

 それを開いて中身を見た瞬間———ムッツリーニの顔がいきなり強張った。

 

「……………あ、ああ……ッ!(ワナワナ)」

「? ねえムッツリーニ君、そこに何が書いてあるの?」

「……………ダメだっ!(サッ)」

「きゃっ!」

 

 何があるのかを知る為に後ろから覗き見をしようとした工藤さんをムッツリーニは少し乱暴に払い除けた。

 そして急いでそれを封筒にしまう。

 

「厶、ムッツリーニ君? どうしたの?」

「……………すまない。でも……これはむやみやたらに見ないほうがいい」

「へっ? どういうコト?」

「どうだ、効果抜群だろう。これなら間違いなく———ヤツらを殺れるぜ」

「……………まさか本当に作りあげるとは……狂気の沙汰」

「ああ、俺自身もそう思ってる」

 

 眉間に皺を寄せ、明らかな不快感を示すムッツリーニに対し、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべる大悟。

 その様子から僕はあの封筒の中身は大悟の持ち味であり武器でもある何かのイラストが描いてあるものだろうと考えた。けれどあの坊主先輩の格好にさえ怯まなかった男があんなにも取り乱すなんて生半可な事じゃない。それだけ大悟のイラストは完成度が高く、それ故に———一般大衆にとって()()()()()()()()()()()()()()()()()という恐ろしい面も秘めているのだ。現に今までも僕や雄二はなんどコイツの()()()()()()()()の餌食になったことか。考えるだけでも吐き気を催す。

 けれど、今あそこに描いてあるであろうイラストは———これまで受けてきたものとは比にならない程のものなのだろう。じゃなきゃムッツリーニがあんなに取り乱すわけがないからね。

 

「けど無理にとは言わねえ。自分で言うのもなんだが、コレは人によっては精神を完膚なきまでに崩壊させちまう代物だ。描いてた俺でさえ途中で何度吐いたか分からん」

「……………まさに破壊兵器と呼ぶに相応しい、代物」

「後はお前次第だ、どうする?」

「……………面白い。やってやる(ニヤリ)」

「ほう……やれんのか?」

「……………逆だ。むしろ、俺にしか出来ないだろう」

「フッ……いい目だ。お前ならそう言ってくれると思ったぞ。頼んだぜ同志」

「……………任せろ、同志」

 

 拳を突きかわす大悟とムッツリーニ。

 ダイゴブックスとムッツリ商会。文月学園のエロとアングラを支配する二大組織が手を組んでしまった。

 こうなってはもう、あの坊主先輩は五体満足で無事に帰ることは不可能に近いだろう。

 

「見せてやろうぜ———」

「……………行くぞ、工藤」

「えっ? あ、うん。それじゃ、行ってくるね—」

 

 そうして二人はあの先輩が待つ戦場へと赴いて行った。

 その背中達を見届けた後、僕はこっそり大悟に耳打ちする。

 

「ねえ大悟。一体何を描いたの?」

「今は知らねェでいい」

「? なんだよそれ。そんな言い方されたら益々気になるじゃないか」

「いずれ分かる。まァ黙って見てやがれ」

 

 

 

「———神聖なるゴスロリを汚す奴は万死に値する。あのクソ坊主が誰に喧嘩を売ったのか……たっぷりとその身に叩き込んでやるからよォ」

 

 

 

 “閻魔大王”……かつて大悟が地元の不良達の間で恐怖と畏敬を込めて呼ばれていた渾名だ。 

 それを彷彿とさせるぐらい、悪意と憤怒マシマシの表情をする今の大悟を見て僕は瞬時に再認識した。

 

 ———本当に、コイツが味方で良かった、と。

 




ひっっっっっっっっっっさしぶりに戻ってきました!!! 中々リアルで忙しく気付いたら小説の存在を忘れかけるという事態に……でもなんとかこうして戻って来られて本当に良かったです!
数年ぶりの投稿なので当時読んでくれていた方には迷惑をかけっぱなしでしたが……本当にすみません。そしてただいま戻りました。これからは少しずつでもこちらに時間を使えるよう頑張りますのでどうかよろしくお願いします。

感想、意見などありましたらよろしくお願いします。

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ
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