バカとオタクとリーゼント   作:あんどぅーサンシャイン

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バカテスト 歴史

問 以下の( )に正しい人物名を入れなさい。

『15世紀頃のフランス王国の軍人であり、イングランドとの王位をめぐる戦い『百年戦争』で活躍したが、その後「不服従と異端」の疑いで異端審問にかけられ、最終的には19歳の若さで火炙りの刑に処せられた「オルレアンの乙女」とも呼ばれる女性の名は(    )である。』



岡崎大悟の答え

『ジャンヌ・ダルク』

教師のコメント

正解です。社会科目が得意な岡崎君にとっては簡単な問題だったかも知れませんね。


土屋康太の答え

『キリスト』

教師のコメント

確かに両者とも磔にされてますが不正解です。


吉井明久の答え

『罪人』

教師の答え

そもそも名前じゃないですよね?


第七問 終わりは新たな始まりの糧となる

 

―――side大悟

 

 

Dクラス代表 平賀源二 討死

 

 

『うぉぉーーっ!』

 

その報せは瞬く間に戦場にいる生徒達の間を駆け巡り、Fクラスの勝鬨とDクラスの悲鳴が混じりあった大音声が耳を襲う。

 

FクラスとDクラスの試召戦争。誰もがDクラスの勝利を思っていただろう。俺も正直に言えば勝てるとは思ってなかった。

この文月学園では学力が全てを左右する。学力こそが力であり、弱い奴は何もかも失う。絶対的格差社会の縮図なのだ。

勝ちたければ勉学に励み、それだけの戦力を身につける事が必要。

だが、それは不利とは言えども負けではない。馬鹿には馬鹿なりの戦い方次第でどうにもでなる。それが今回Dクラスに勝った事で証明されただろう。

 

「凄ぇよ! 本当にDクラスに勝てるなんて!」

「これで畳や卓袱台ともおさらばだな!」

「ああ。あれはDクラスの連中の物になるからな」

「坂本雄二サマサマだな!」

「それに、やっぱ兄貴はすげえよ! あんなAクラス並の点数を取るなんて!」

「俺、これから一生兄貴についていくぜ!」

「やっぱりアイツらは凄い奴だったんだな!」

「坂本万歳!」

「姫路さん愛してます!」

 

Fクラスの奴等が俺と雄二を褒め称える。だが今回は姫路が相手の総大将を討ち取った事は確実だが、その全ての作戦は雄二によるものだ。

奴の知恵や言動。クラスを纏め上げる指導力、カリスマ性。それらが無ければ今回の勝利は無かっただろう。それはクラス全員が分かっているようだ。俺はただそれに従っただけ。

全く、神童というのは恐ろしいな‥‥‥

 

「あー、まぁ。何だ。そう手放しで褒められると、なんつーか」

「なんだ? 照れてんのか?」

「べっ、別に照れてなんかねえよ!」

「坂本! 兄貴! 握手してくれ!」

「俺も!」

「待て! 俺が先だ!」

 

はは、もう英雄扱いだな。流石の雄二も大人数に褒められるのは慣れてないのか頬をぽりぽりと掻いている。しかしアイツが照れるなんて意外だな。

すると、その人混みを押し退けて明久が入ってきた。

 

「雄二! 大悟!」

「ん? 明久か」

「僕も二人と握手をーーーぬぉぉっ!?雄二‥‥大悟‥‥! どうして握手なのに手首を押さえるのかな‥‥‥!」

「押さえるに‥‥‥決まってるだろうが‥‥‥! フンッ!」

「ぐあっ!」

 

俺は雄二と明久の両手首を捻り上げる。するとそこから包丁が一本ずつ落ちた。

やっぱり殺しにかかってきたか。普通握手は両手同時に求めたりしねぇからな。

 

「お前の考えなんざ、お見通しなんだよ明久ぁ‥‥‥!」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

「雄二、大悟。皆で何かをやり遂げるって、素晴らしいね」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

「僕、仲間との達成感がこんなにいいものだなんて、今まで知らな間接が折れるように痛いぃぃっ!」

「今、何をしようとした」

「も、勿論喜びを分かち合う為に握手を手首がもげるほどに痛いぃぃぃっ!!」

「おーい、誰かペンチを持ってきてくれー」

「後そこにつける塩もたっぷりなー」

「ス、ストップ! 僕が悪かった! だから僕の生爪を剥いでそこに塩を塗りたくるのはやめてほしいっ!」

 

仕方ない、と俺と雄二は手首を離した。

 

「チッ、あと少しだったのに‥‥‥」

「俺も参考資料として明久が爪を剥がれる所を見たかったんだがな」

「大悟! 君は一体何てグロテスクなものを参考にしようとしてるんだ!」

 

何を言う。生爪剥ぎなんてリョナものの拷問プレイに必要なんだぞ?

 

「まさか姫路さんがFクラスだなんて‥‥‥信じられん」

 

声がしたので振り向くと、そこには愕然とした表情の平賀がいた。

 

「あ、その、さっきはすいません‥‥‥」

 

別の所から姫路も駆け寄ってくる。どうやら彼女には不意討ちをしたという罪悪感があるのだろう。

 

「いや、姫路さんが謝ることはない。全てはFクラスを甘く見ていた俺達が悪いんだ。それに、まさか岡崎があれほどの点数を取っていたのも驚きだよ」

「そ、そうだよ! 大悟、なんだよあの点数は!? あんな点数、姫路さんレベルじゃないか!」

「落ち着け明久。ま、そこは俺も知りたいところではあるけどな」

「何言ってやがる。いいか? 二次元界じゃあ歴史上の人物を起用するのは珍しい事じゃないんだぜ? それにアニメじゃ実在する街や土地をモチーフにしてるのも結構あるんだ。それで実際モデルとなった人物は場所はどうなのか?そう思ったら勝手に興味が沸いてきた。それだけだ」

 

つまり、俺は最初から社会科目が得意なのでは無く、歴史上の人物や場所を二次創作したりモデルとしたアニメや漫画から知識を得て、そこから原物を調べに調べてたら知識がついていたという訳だ。

だって二次創作なら史実はオッサンでも性別転換して可愛いロリ顔巨乳の女の子になったりツンデレ貧乳の同級生キャラの女の子にしたり出来るんだぜ!

だがその為には本質を隅々まで理解しなきゃならねえ。アニメの二次創作だってまずはそのアニメを見て情報を得てから作るだろ? つまりそういうことだ。

 

 

「じゃ、じゃあ‥‥‥大悟は二次元が好きすぎて逆に勉強しまくってあの高得点をとったってこと‥‥!?」

「二次元オタクもここまでくると尊敬に値するな‥‥」

「おいおい、そう持ち上げるな。三次元の男に褒められても全然嬉しくねぇ」

 

 

どうせならめるたんに『大悟お兄ちゃんはとってもがんばったのでご褒美になでなでしてあげちゃいますっ!』ってならねぇかなぁ。

 

 

「成る程‥‥‥流石『兄貴』と言われるだけはあるな。よし、約束通り俺達はルールに則ってクラスを明け渡そう。ただ、今日はこんな時間だから、作業は明日でも良いか?」

「うん、僕は構わないよ。雄二も大悟もそれで良いよね?」

「おう、俺は良いぞ、雄二もーー」

 

 

「いや、その必要は無い」

 

 

俺の言葉を断ち切り、雄二は平賀の提案をバッサリと断った。

 

 

「え? なんでだよ、雄二?」

「Dクラスを奪う気は無いからだ」

「どういうことだよ? 折角Dクラスの設備を貰えるんだぜ? 断る理由なんか無ぇだろ?」

「二人とも忘れたのか? 俺達の目標はあくまでもAクラスだろう?」

「それならなんでわざわざDクラスを相手にしたのさ?」

「少しは自分で考えろ。そんなんだからお前は近所の中学生に『馬鹿なお兄ちゃん』なんて愛称をつけられるんだ」

「なっ! そんな半端にリアルな嘘をつかないでよ!」

「なんだ? それとも小学生だったか?」

 

 

 

シーン‥‥‥

 

 

 

「‥‥‥人違いです」

「まさか、本当に呼ばれたことあるのか‥‥‥?」

「貴方‥‥怠惰ですねぇ‥‥?」

「なんだよ! 大悟だって小学生に『オタクのお兄ちゃん』って呼ばれてる癖に!」

「なっ!? 明久テメェなんでその事知って‥‥あっ」

 

 

 

シーン‥‥‥

 

 

 

「大悟‥‥‥お前もか?」

「‥‥‥誤解だ」

「お主ら一体何をしたら小学生にそういう風に呼ばれるのじゃ?」

「‥‥‥‥同類(コクコク)」

 

「オイオイ、ムッツリーニ。俺をこんな馬鹿の代名詞の明久と一緒にされちゃあ困るぜ」

「全くだよ。こんな二次元キモオタの大悟と僕が同列なんて失礼極まりないじゃないか」

 

「「‥‥‥‥」」

 

「お前ら、とりあえずその互いに持ってる包丁を置け。とにかく俺達は、Dクラスの設備には一切手を出すつもりはない。その代わりに、一つ条件があるんだ。」

 

ううむ‥‥仕方ない。明久の始末は後回しにして、雄二は一体何を条件にするんだ?

 

「一応聞かせてくれないか?」

「なに、そんなに大したことじゃない。俺が指示を出したら、窓の外にあるあれを動かなくして貰いたい」

 

雄二がそう言って指差したのはDクラスの窓の外に設置されてるエアコン室外機だった。でもあれはDクラスの物じゃなくて別クラスの物だった気がする。なんだかスペースが足りないとかそんな理由でここを間借りしているんじゃなかっただろうか。

 

「Bクラスの室外機か」

「おい雄二。あれをぶっ壊そうってのか? なんでわざわざそんな事を?」

「次のBクラス戦の作戦に必要なんだ。当然学校の設備を壊すわけだから、教師陣にある程度は睨まれるかも知れないが、そう悪い取引じゃないだろう?」

 

雄二はそう怪しく笑う。コイツ、今さっき戦いが終わったばかりだというのにもう次の戦争の事をかんがえているとは‥‥流石神童だな。

 

「‥‥‥分かった。それで設備を交換しなくて済むなら、こちらはありがたくその提案を呑ませて貰おう」

「タイミングについては後日詳しく話す。今日はもう行っていいぞ」

「ああ。ありがとう。お前らがAクラスに勝てるよう願っているよ」

 

 

そして平賀はその場から去っていった。平賀のやつ‥‥本当はそんなこと思ってない癖にな。

 

 

「さて、皆! 今日はご苦労だった! 明日は消費した点数の補給を行うから、今日のところは帰ってゆっくり休んでくれ! そして皆が期待している大悟のエロイラストは完成次第俺の方から報告する! それじゃあ解散!」

 

 

雄二が号令をかけるとクラスの奴等は雑談をしながらFクラスへと戻っていった。

 

 

「大悟、儂らも帰るとしようかの」

「あー‥‥‥秀吉。悪いが校門の前でちょっと待っててくれ。俺はちっと用事がある」

「なんじゃ、また生徒の誰かに本を売る約束でもしとったのか。了解じゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

俺は誰もいなくなった教室で、とある人物と二人きりでいた。

目の前には座布団に行儀よく正座をして座るクラスメート‥‥‥姫路がいる。

 

「ごめんなさい、岡崎君。わざわざ私の為に帰りが遅くなってしまって‥‥‥」

「別に姫路が謝る必要はねぇ。時間を指定したのはこっちだし、これなら他の奴等に見られる事もないからな。」

 

既に時刻は午後の4時過ぎ。校舎にはもう殆どの生徒はおらず、新学期というのもあってか普段なら聞こえてくる部活動中のグラウンドからの生徒の声もない。

俺と姫路が放課後まで残っている理由はただ一つ、契約の満了の為だ。

 

「ほれ、これが今回の例のブツだ。」

「あ、ありがとうございますっ!」

 

俺は鞄から一冊の本と抱き枕カバー、そしてクリアファイルのセットを取り出して姫路に手渡す。そこには明久(を限りなく再現した二次元風イラスト)が制服を着崩してエロい表情で何かによがっている姿がでかでかと描いてあった。

 

「う、うわぁぁ‥‥‥明久君が‥‥こ、今回も素晴らしい出来映えですね。」

「当たり前だ。俺は仕事に関しては一切の妥協も許さない。受けた仕事はどんな内容だろうと全力で取り組む。『全てはお客様の笑顔と二次元の貢献の為に』それがダイゴブックスの経営理念だからな。最新作『姫路×明久 ~お馬鹿な恋人にお勉強のお時間ですっ♪~ vol.13』、おきに召すと嬉しい」

「は、はい! こちらこそ、いつも私のお願いを聞いてくれてありがとうございます。じゃあ、これは約束のお金です」

 

そして、俺は姫路から報酬金を受け取った。

渡した時の姫路はとても嬉しそうな顔をしていて、三次元には興味の無い俺でもそんな姫路の表情は可愛いとさえ思わせるのだから他の奴等が見たら一撃だろう。

ただ、姫路の要求する内容が段々とアブノーマル化しているのはどうしてだろうか。

 

「‥‥‥なぁ姫路? いい加減行動してみたらどうだ?」

「え‥‥‥? どういう事ですか?岡崎君」

「何言ってやがる。明久の事だよ。姫路、明久の事好きなんだろ?」

「ふえぇっ!?」

 

俺がそう切り出すと姫路は分かりやすいくらい狼狽えていた。

 

「や、やっぱり岡崎君には見抜かれていたんですね‥‥‥」

「そりゃあこんなに明久関係の注文を受けりゃあ嫌でもわかる。それに前から姫路は明久の話をすると態度が変わるからな。あの野郎‥‥‥メインヒロイン属性の姫路に好かれるなんて羨ましい限りだぜ」

「う、うぅ‥‥‥恥ずかしいです。」

「ま、向こうは全然その事には気づいてないっぽいけどな。」

「そ、そうなんですか!? それはそれで少し残念です‥‥‥」

 

明久は見る限り学園ものに出てくる主人公男性キャラの典型的存在だ。誰もが憧れる学園のマドンナ級の女子の方からは好意を持たれる癖に当の本人は全く自覚が無い。あくまでも『仲の良い友人』として接している。そして最終回辺りで告白されて‥‥‥その後は想像に任せる。

悪い奴じゃないのは分かってるけど明久は一回死ねばいいと思う。

 

「けど、アイツも少なからずは姫路の事を考えてるみたいだけどな」

「え? それってどういう‥‥‥」

「後で雄二から聞いたんだがな。今回の試召戦争は明久が持ちかけた話なんだとよ」

 

流石にこの戦争の発端の原因について何も知らないというのは姫路が気の毒だ。ま、俺にとっちゃ理由なんてどうでもいいことなんだけどな。

 

「まあ、雄二は初めから試験召喚戦争に興味があったみたいで、いずれは自分から行動を起こすつもりだったみたいだが、新学期初日からやる気は無かったらしい。けど明久がいきなりAクラスに戦争をやろうと言い出してきたんだとよ。」

「なら、吉井君がそんな事を提案した理由って‥‥‥」

「オイオイ、なんでもかんでも俺に聞くなよ。姫路は頭が良い。なんで明久がそんな無謀ともいえる事を言い出したのか‥‥‥その理由は姫路、お前が一番分かっている筈だ」

「‥‥‥振り分け試験」

「ご名答。だがアイツは振り分け試験の結果に納得がいかないからって勝ち目の低い戦争を起こそうとか、あの豪華な設備が欲しいからなんて簡単で浅はかな考えをする程、小せぇ器の人間じゃねぇ。つまりは『自分以外の誰かの為』なんだ。後は分かるだろ?」

「‥‥‥っ!」

 

姫路はどうやらその真実に気づいた様で、顔を真っ赤に染めた。そして目尻には涙を浮かべていた。姫路にとっては『自分が好意を抱いている人が自分の為に戦ってくれている』のだから。嬉しかったんだろうな。

そう、明久は姫路の為に試験召喚戦争を持ちかけたのだ。姫路は振り分け試験を体調不良で途中退席してしまったことでFクラスになってしまった。本当なら、姫路はAクラスの整った設備でのびのびと学校生活を送れる筈だったのに。でも自分の体調というのは自分で管理しなくてはならない。それを怠ってしまったから姫路はこうなった。だからこれは誰のせいでもないし、姫路の自業自得とも言える。

けどそれで、はいそうですかとなるほど明久は非情な男じゃない。現にアイツは振り分け試験で必死に教師に対して『いくら試験とはいえ途中退席で0点扱いなんて酷い』と抗議したみたいだからな。成績がかかった中で普通ならそんな真似は中々出来ない。

 

アイツはたった一人の女の子の為に自らを擲ってでも行動できる優しさと誰もが不可能と諦める事にも決して折れず立ち向かう芯の太さを持っている。だからこそ姫路は、そんな明久の強さに惚れたんだろうと思ってる。

 

「アイツはな、俺みたいに喧嘩が強くもねえし、雄二みたいに頭が切れる訳でも無い。秀吉の様な特技もムッツリーニの様な並外れた行動力もないただの馬鹿だ。だが‥‥‥アイツは自分よりも他人の為に体を張れる事の出来る男の中の男だ。だから姫路。お前の気持ちは‥‥‥間違いじゃないと思うぜ」

 

そう言って、俺は立ち上がる。ここまで言えば後は当人達次第だ。流石にそこまで踏み込む義理も資格も俺には無いからな。

 

「岡崎君‥‥‥私、書きます。吉井君に‥‥‥手紙を書きます」

「‥‥‥ラブレターってことか?」

 

俺が聞くと、姫路ははい、と頷いた。

 

「私‥‥‥今まではずっとこうして吉井君の事を影でずっと見ているだけでした。でも‥‥‥吉井君が私の事を想って頑張ってくれているのを知って、私も頑張ろうって思うんです。だからこの気持ちを形にして吉井君に伝えます。嘘偽りの無い‥‥‥この気持ちを」

 

そういう姫路の表情は、彼女らしい照れさや純粋さを見せながらも何かを決心したような晴れやかなものだった。

うん、俺も明久に対してこの沸き上がる気持ちを伝えようと思ったぜ。心底ムカつくから殺ってやりたいっていう気持ちを。

 

「そうか。ま、精々頑張るこったな。じゃ、俺は帰るわ。今後もダイゴブックスを御贔屓に」

 

そう言って、俺が帰ろうとした時だった。

 

 

「あ、岡崎君! ちょっと待ってください。」

「ん? まだなにかーーーって、なんだそれ?」

「実は、いつも岡崎君にこうして本を作って貰っているお礼として、ドーナツを作ってきたんです。でも失敗しちゃって、一個しか作れなかったんですけど‥‥‥」

「え、マジで? 貰っていいのか?」

「はいっ! 勿論ですっ。」

「ははっ。なら遠慮なく貰っておくぜ。後で明久に自慢してやるとするか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――side明久

 

 

「ど、どうして姫路さんと大悟が‥‥‥」

 

僕は雄二と帰宅中、教科書を忘れた事に気づき、急いでFクラスへと戻ってきた。

そしたら、教室内で姫路さんと大悟が親しげに喋っている姿を目撃してしまったのだ。

 

「ほ、放課後二人っきりなんてまるで恋人同士‥‥い、いや!大悟と姫路さんは同じクラスだったみたいだし、仲の良い友達だよね!」 

 

僕はそう自分に言い聞かせて教室へと入った。

 

「たっだいまー」

「よ、吉井君!? どどどどうしたんですか!?」

「やあ、姫路さん。ちょっと忘れ物をしちゃってね。姫路さんこそこんな遅くまでどうしたの?」

 

なにやら慌てている様子の姫路さん。どうしてだろうか?

姫路さんが座っている席(?)を見ると、卓袱台の上には可愛らしい便箋と封筒が置いてあった。あとなにか小さなバスケットがある。何も入ってないけど、大悟に中身をあげたのだろうか。

 

「あ、あのっ、これはっ」

 

何をしているんだろう。まるで大悟に対してのラブレターに使うような便箋と大悟に対してのラブレターに使うような封筒を用意しているみたいだけど、使い道がわからない。

 

『現実を見ろ。明らかにラブレターだ』

 

黙れ僕の中の悪魔! 僕はそんな虚言に騙されはしない! だいたいそこまで言うならこれがラブレターだという証拠はーー

 

「これはですね、そのっ、えっとーーふあっ」

 

コテン、と卓袱台につまずいて転ける姫路さん。

その拍子に隠そうとしていた手紙が僕の前に飛んできて、その一文が目に入る。

 

 

《あなたのことが好きです》

 

 

「‥‥‥‥‥」

 

『‥‥‥これ以上ない物的証拠だと思うが』

 

「‥‥‥‥‥」

 

『わかっただろう? これが現実だよ。さ、諦めて認めようぜ?』

 

「ち、違うんですっ。これは、その‥‥‥なんていうか‥‥‥」

 

僕は飛んできた手紙を綺麗にたたみ、姫路さんに返してあげる。

そして笑顔で一言。

 

「変わった不幸の手紙だね」

 

『コイツ認めない気だ!』

 

いい加減にしろこの悪魔め! お前の言葉は僕をいつも不幸にする! もう騙されない!

 

「あの、それはそれで凄く困る勘違いなんですけど‥‥‥」

「そんなことをしないでも、言ってくれたら僕が直接手を下してあげるのに。ああ大丈夫。スタンガンなら隣のクラスの山下君に借りてくるから」

「吉井君。これは不幸の手紙じゃないですから」

「嘘だ! それは不幸の手紙だ! 実際に僕はこんなにも不幸になっているじゃないか!」

 

クソ! 百歩譲って雄二ならまだしもどうして大悟なんだ! ゲームセンターで女の子にアーケードゲームのカードを交換してもらうために土下座までした挙げ句防犯ブザーを鳴らされたあんな奴のどこに魅力を感じるんというんだ‥‥‥!

 

「その手紙、やっぱりウチのクラスのーー」

「はい。クラスメートです」

「‥‥‥そっか。でも、そいつのどこがいいの? そりゃ確かに、外見はそれなりだとは思うけど」

「あ、いえ。外見じゃなくて、あっ、勿論外見も好きですけど!」

「憎い! あれ(大悟)が心底憎いっ!」

「そうですか‥‥‥?」

「うん、外見に自信のない僕には羨ましくて」

「え? どうしてですか!? とっても格好良いですよ! 私の友達も結構騒いでましたし!」

「え? 本当?」

「はい。よく分からないですけど、坂本君と二人でいる姿を見ては『たくましい坂本君と美少年の吉井君が歩いているのって絵になるよね』ってよく言っていました」

「良い友達だね。仲良くしてあげてね」

「『明久が受け、雄二は攻め、これ前提』って言ってました」 

「前言撤回。すぐに距離を置くべきだ」

「そう言ってたんです。岡崎君が」

「大悟ぉぉおお!!」

 

後でアイツの上靴に画鋲を仕込んでおいてやろう。

 

「それにしても、外見もってことは、中身が良いの?」

「あ、えーっと‥‥‥はい‥‥‥」

「そうだね。肝臓とか頑丈そうだもんね」

 

大悟はオタクの癖に鉄人に匹敵する程の筋肉の持ち主だから、肝臓も高く売れそうだ。

 

「それは身体の中身です」

「じゃ、まさかあり得ないとは思うけど、そいつの性格が?」

「あり得なくありませんっ」

 

姫路さんにしては珍しく大きな声。ちょっとびっくり。そこまで大悟に好意を寄せていたなんて。

 

「‥‥‥そいつの性格のどこがいいの?」

「や、優しいところとか‥‥‥」

 

優しい?

雄二と組んで僕を騙してDクラスにボコらせて、生爪を剥いだ後に塩を塗ろうとして、僕と雄二が絡んでいる成人向けの同人誌を秘密裏に売って、小学生に平気で土下座したあの二次元にしか興味のないキモオタ糞野郎が優しいと?

 

「今から番号を教えるから、メモの準備はいい? 大丈夫、とっても腕の良い脳外科医だから」

「別に気が変になったわけじゃありません!」

 

な、何だって!? あんな大悟の性格を優しいと評するなんて、姫路さんは一体大悟にどんな弱味をにぎられたっていうんだ!? まさかそれを盾に交際を迫ろうとしているのでは!?

 

「優しくて、明るくて、いつも楽しそうで‥‥‥私の憧れなんです」

 

そんな真剣な口調からは、茶化すなんてできそうにもない程の強い想いが感じられた。

 

「その手紙」

「は、はい」

「良い結果に繋がるといいね」

 

これじゃあ、とても邪魔なんて出来るわけがない。そこまで好きになった相手なら、クラスメートとして応援してあげよう。

 

「はいっ!」

 

嬉しそうに笑う姫路さんは本当に魅力的で、僕は大悟を心の底から羨ましいと思った。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

でも‥‥‥

 

 

「それじゃあ、僕は先に帰るね」

「はい、それではまた明日」

 

ガラガラ‥‥‥バタンッ

 

テクテクテク‥‥‥

 

 

『職員室』

 

 

「失礼します」

「あら、吉井君じゃない。どうしたの?こんな遅くまで?」

「いえ、実はーーー」

 

 

 

「船越先生に、大悟と雄二から預かった伝言を伝えに来たんです」

 

 

 

その前に大悟、ついでに雄二。お前達二人には僕と同じ気持ちを味わって貰うからな!

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

「おい大悟! 急にどうしたのじゃ!? しっかりするのじゃ!! 大悟!!」

「‥‥‥来世は‥‥‥ギャルゲーのハーレム系主人公として、生まれ変わりたい‥‥‥」

「何を馬鹿な事を言っておるのじゃお主は!?」

「そして‥‥‥二次元の女の子達とイチャラブドキドキ学園生活を、遅れますように‥‥‥‥」

「大悟!! 気をしっかり持つのじゃ!! 目を覚ますのじゃ!! 大悟ーー!!」

 

 

 




いやー、なんかバカテスって改めて見ると面白いですね。


それではまた

原作七巻の野球大会編、入れるかどうか迷ってるんですけどどうしましょう?

  • 入れろ、絶対に
  • 別に入れなくてもいいよ
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