東京喰種主要キャラ全員救済RTA   作:宗方

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初投稿です。
過去編その1




皆さんどうもこんにちは!

主人公に優しくない世界に定評のある東京喰種RPGのRTAはぁじまぁるよ~!

 

というわけでですね。

今回走っていくゲームはこちらの『東京喰種』!

 

原作は知っていましたが少々2部からの駆け足感が気になっていたのと、そもそも漫画のゲーム化は苦手だったので少し不安でしたがやってみてびっくり!

ダークな雰囲気そのままのイラストやBGMにクオリティの高いゲーオリシナリオの数々が原作キャラRPでもオリキャラRPでも楽しめてしかもフルボイス!!

あぁ^~本当にこれ8100円(税込)でいいのかよって質で。うp主、堕ちちゃいましたね(確信)

 

とまあ、前置きはこの辺にしておいて本RTAの説明に入りますよー。

今回は、このゲームに登場する主要キャラたち(一部除く)を全員生存させた状態でゲームクリアすることで手に入る称号『偽善者』を最速で手に入れるRTAとなっております。

ここでいうゲームクリアの条件は『一部を除くVと和修の撃破』ですね。一部ってのは政とか旧多とか有馬とか。

 

 

ヨシ!では早速キャラクリに入ります!

種族は喰種。人間だとステータス上限が喰種以下な上、CCGに入るのが確定で自由行動がほぼ無いので恐ろしくRTAに向いてないです。人間くんさぁ…そんな性能で大丈夫?恥ずかしくない?

 

男女の差は無いんでどちらでも好きにしていいんですが、どっちでもいいと言われたら男にするしかないんだよなあ。

 

続いてRCtypeは鱗赫。

界隈では常識ですが(隙あらばマウント取り)速度を求めるRTAにおいて鈍重な甲赫や、決め手に欠ける尾赫はオススメできないです。瞬間火力の高い羽赫か鱗赫を選んで戦闘はビャッ!と済ますのがセオリー。今回は回収するイベント的に鱗赫の方が良いと判断しました。

 

お次に原作開始時年齢ですが39歳でいきます。これにもちゃんと意味があるので後程。諦めてイケおじをすこれ。

 

名前は蓬莱 守。略してホモくんとします。

 

その他諸々の設定は飛ばして、ラストの異能設定にGO。

異能ってのは他のゲームでいうところのスキルやアビリティみたいなやつで、キャラクリのときに一個だけ選択式で貰えるんですが、今回は『驚異的な回復力』を選択。

これは一部イベントで有効なのと、戦闘での安全性を考慮してます。

裂いても潰しても死なないホモルディカイくん目指してやっていきましょう。

 

てことでキャラクリ終わったので早速始めちゃいましょう。

ゲームスタートのボタンを押して画面が暗転したと同時にタイマースタート、タイマーストップはエンディング終了後に称号獲得のテロップが出た瞬間とします。

はい、よーいスタート。

 

 

 

 

 

さて、始まりました『東京喰種RTA』

ただいま画面にはスキップできないOPが流れております。和修の歴史がつらつらと語られてますね。はぁ~(クソでか溜め息)諸悪の根元さっさと滅べよ。

 

それはそうと、ちょうどいいのでこの画面を背景にしつつ今回のRTAについて、さっきの年齢設定についても説明しときたいと思いまスゥー

 

とりまこの称号取得RTAについて。先駆者様はいらっしゃいますが少ないです。

だってこのRTAめっちゃ時間かかるもん…ゲーム内年数で50年近くかかるとかイカれてますね。現実時間でも3日くらいかかるのでやっぱイカれてるんじゃないですかね(諦め)

まあ、某鬼ヌッ殺す刃RPGのパワハラワカメ原作再現ロールプレイとか某うずまき忍者RPGの六道ジジイロールプレイとかよりはマシです(確信)

お前ら(のやってるゲーム)人間(のやるもん)じゃねぇ!

 

…っとと、脱線しちゃいました。

話を戻しますが、このRTAはさっきも言った通り本ゲームのRTAの中でも屈指の所用時間を強いてきます。

 

なぜかと言いますと、それはずばりアオギリの喰種『ノロ』のせいです。

大きな口だけが象られた不気味なマスクにオールバックの髪の毛が特徴的な彼なんですが…実は原作開始時において、死んでる人扱いなんですよね……

 

彼、原作でははっきりとしてませんが本ゲーム、エトのサブイベより

赤子のエトを功善から譲り受けた喰種、ノロことノロイは24区に逃げ込みますが何らかの形で死亡。

その後、成長したエトによって赫胞を埋め込まれ、自立駆動式の赫子の化け物、いわゆるゾンビの様なものと化した。

ということになってたらしいです。

 

察しがいい人は気づいたかも。

そんな彼、主要キャラの一員なので彼が死んでると称号、取れません。無慈悲ィ!

よって、称号獲得の為にはノロイが死ぬ前にどうにかしないといけないんですねぇ。

ノロイが功善からエトを託されるのが原作開始の22年前、このゲームのオリキャラプレイ開始時年齢は15歳で固定なので原作開始時年齢を39歳とすると22年前には17歳となる。

ゲームスタートしてから2年間で準備してエト託される前にノロイどうにかしようぜということです。その為の39歳だったんですね。

 

具体的にどうするかというのはこの後のお楽しみということで。とはいえ、割と想像つきやすいとは思いますけど。

 

長いOPも終わりTKも聞き終わったところで本編スタートですね。

 

開幕ですが喰種の場合は親族無しの20区浮浪児スタートです。人間だと家族構成はランダムなんですが、喰種は固定です。

 

さて、とりあえずこの一年の目標としてはモブ喰種と戦闘をして経験値を稼ぐのと倒した喰種を食らって赫者になることがメインになってきますので早速20区近辺のCレート狩りから始めちゃいましょう。見所はないから倍速ダオラ。

てことで、イクゾー!!デッ…(カーン)

 

 

 

 

 

高速移動ホモくんを垂れ流しつつ、そろそろ三ヶ月ほど経ったでしょうか。

今ではBレート相当なら捻れる程でAレートにもまあ勝てるくらいには仕上がって来たかなと思います。

え、成長速度が速すぎる?いや、このゲームの難易度的には妥当です。

赫者は…まだまだですね。やっぱ覚醒してからあの短期間で半赫者まで持ってったカネキってすごいですよ。

 

 

 

 

 

えー、そろそろ11ヶ月が経つくらいですかね。

ホモくんはというと相も変わらず触手使ってモブをぷちぷちしてます。大体1年も経てばSレート程度なら瞬殺ですしSS相当にも対して苦労しなくなってきたので狩り場を24区メインにし始めました。赫者に関しては半分越えたくらいでしょうか。3/4赫者くらいかな。

 

あ、そういえば喰種ばっか食べてて人間は月1くらいでしか殺してない筈なんですが流石に強くなってきたせいかCCGにも認知されちゃいましたね。確かレートはS+とかでした。実力はSSクラスだけど被害がほぼないからどうたら……高いほど差し向けられる捜査官の質が上がるからあまり高いのは嫌なんですが…

 

というか、私が操作してるから当たり前ですけど、余りにもすぐ強くなっちゃうので、自分のことな○う系主人公か何かと勘違いしちゃいますね…

 

誤って車道に飛び出してしまったノロイを助けた代わりにトラックにぶつかったホモ。気づいたら神様と名乗る緑髪包帯ぐるぐる巻き痴女がいて……って感じですかね。愉快だ。

 

 

と、無駄話はこの辺で。もうすぐこのRTA最初の山場が来ますので気を引き締めましょう。

現在ホモくんはとある喫茶を訪れています。その名も『antique』

そうです。功善と憂那が初めて出会った場所ですね。

というか、実際ホモくんの目の前には功善と憂那がいます。

しばらく彼らの談笑を眺めるだけなので色々と説明しようと思いやーす。けっ!イチャイチャしやがって!

 

まず、これからホモくんにはVに入って功善の好感度上げに勤しんでイタダキャス…功善はこの段階で好感度がMAXまでいくと、ルート分岐が発生するんですが、それを狙います。

Vに入るのは功善と知り合いになるためには不可抗力ですね。この時代のVに所属するのに大した害はないですし、普通にVでやりたいこともあるので喜んで芥子に尻尾振っちゃいましょう。わんわん。

 

で、功善と接触する為にはこの喫茶『antique』に来るしかないんです。他の所では絶対に彼とは遭遇しません。

だからホモくんこんなリア充ムーブを見せつけられなきゃならないんですね。あの温厚なホモくんが怒りに震えてますよ。え、それ主だろって?そうかもね。

 

ところで、まだ話してんのかなコイツら。功善ニキ憂那さんとの話遮って話しかけたらホモくんと初対面の癖に好感度最低点まで下がって丸一年棒に振っても好感度MAXいきませんからね(1敗)

さながら下落の様はオウルショックってか。笑えん。

 

あ、店出た。追いかけなきゃやくめでしょ。

 

 

 

 

 

功善を絶妙な速さで追いかけること数分。

止まりましたね。それと喋りましたね。

 

「……最近は大分と顔が売れてきたのか喧嘩を売ってくる馬鹿も減ってきた、と思っていたんだが」

 

「まだお前の様な命知らずがいたとはな。死ね」

 

はい、戦闘開始ですね。

あの後功善を追っかけていくとこんな感じで有無を言わさず戦闘が始まります。無慈悲ィ!(2回目)

ちなみにですが功善ニキ死ぬほど強いです。というか死ぬから強いんです(7敗)

 

何が強いって距離取ったら爆弾みたいな羽赫飛んできますし、距離詰めたら詰めたでカッチカチの赫子で攻守共にこなしやがります。

やっとこさ一撃入れても再生力レベチ。並みの鱗赫は超えてます。

 

普通はねぇ…羽赫に巨大なブレードなんて羽赫の利点であるスピード潰しちゃって器用貧乏になるんですけどねぇ…

なーんでスピード保ちながらそのブレード振り回せるのかなあ!くっそ重いよ!?

まあでも、この戦いに関しては5分たったら強制終了だし、異能で多少無茶できるので気楽に、回避に専念しつつチクチク殴っていきませう。

 

 

 

 

 

「そこらへんにしておけ…ニチャ」

 

はい。先程も言ったように、5分経過するとこんな感じでニチャリストが乱入してきて強制的に戦闘終了となります。あのままやってたら死んでたのホモくんだしありがとナス!

そんでもって今は芥子がホモくんをVに勧誘してますね。

なんでも功善に用があって来た芥子さんがホモくんの戦いぶりを見て、お前強いからとりま、ウチ来ない?って思ったらしいです。

若干のご都合主義を感じますが断る理由もないので『はい』を選択しましょう。

 

「ふむ……ニチャ…良い返事が聞けて嬉しいよ。これからは君も目的を共とする同志だ…ニチャ……がんばろうではないか…ニチャ」

 

うーん…きしょい!でもVって強くなるだけならめちゃくちゃ効率良いですからね。

功善とも一緒に殺し合いという名の最高効率のレベリング出来ますし、上司以外は良い職場ですよね。ニチャ野郎これで強いんだから腹、たちますねぇ!

とまあ一年の我慢ですしがんばって自己研鑽に努めましょうか。

 

 

 

 

 

というわけで一年程経ちまして。

早すぎる?え、お前ら延々とVの命令通り喰種も人も殺し続けて休みの日は功善とかいうおっさんの好感度を上げるだけのプレイ動画見たい?見たいなら後で音無しで動画上げますけど。ちょっと作業用BGMにしても難易度高いんじゃないすかね…

あ、でもエトしゃん誕生イベは神でしたねぇ!幼いエトしゃんも可愛かったですが憂那さんも人妻力高くてたまらんかったです。久々の女性らしい女性に視細胞が尊すぎて悲鳴あげてましたね。おめめとけちゃ^~↑う。

 

 

ところで今何をしているかというと功善に呼び出されたので素直に彼のもとへ向かってます。

いや、(告白じゃ)ないです。ルート分岐です。

 

到着しました。功善さんエトしゃん抱きながら思い詰めた感じで立ってます。まあ妻ヌっ殺した後なんで仕方ないんでしょうが。

はい。この功善さん、原作通り憂那さんを殺すハメになりました。憂那さんを助ける方法は有りはしますが、主要キャラ扱いじゃないので完全に無駄な努力です。今回は諦めましょう。

それで、憂那さんのことはVにバレた訳ですけど子供のことまではまだバレてないのでそのエトさんをなんとかして逃がそうとしているところです。

もう分かりましたかね。

 

「……娘と共に生きてやってくれないか」

 

そう言って頭を下げる功善ニキ。勿論選択肢は『はい』で。

よし、勝ちました。

好感度MAXの状態で憂那殺害イベントが起こるとこんな感じでエトをホモくんに託してきます。これによってノロイさんの死亡フラグが折れます。

そもそもノロイさん24区の喰種だしエト託されるくらいだから絶対弱くないんですよね。守りながら戦うって難しいことだってはっきりわかんだね。

ホモくんがフラグ折ったおかげで守るものが無いノロイさんですが、やっぱりつおい。ゲームクリアまで何もしなくても生き残り続けます。

というか、最終盤で登場します。アレはちょっと主が初見時興奮したアツいゲーオリ展開なので楽しみですねぇ…

 

と、赤子のエトしゃん受け取ったところで今回はここらへんで!さよ~なら~!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼い頃から生きるために仕方のないことだと、人も喰種も構わずに喰らった。私に元々素質があったのか、それとも無我夢中で生にしがみついたからか。

私はいつの間にか同種の中でも別格と呼ばれる存在…赫者の域にまで至った。

周りに私の相手になる敵は居なかった。『V』と呼ばれる組織にも所属し、穏やかな生活も手にいれた。何の不自由もなかった。

しかし、それと引き換えに、いつまでたっても孤独という名の大きな洞穴が埋められることはなかった。

 

そんなとき、出会ったのが後の伴侶である憂那と……彼だった。

憂那は不思議な人間だった。好奇心が旺盛で勘が鋭い…それでいてどこか抜けていて愛くるしい女性であった。

心のどこかではやめた方がいいとは分かっていた。彼女は人間で私は喰種。それも特別凶悪な殺人鬼。碌なことにはならぬと知っていた。

しかし、日毎増す思いは際限を知らなかったのだ。

私も憂那も、逢瀬を繰り返すうちに惹かれ合っていった。彼女といる間だけは殺戮の日々も、一人の夜も忘れられた。

 

 

 

 

 

ある日。

私はいつも通り、憂那が勤めている喫茶店に訪れては穏やかな時間を過ごしていた。少し客足が落ち着いてきて、此方にやって来る憂那に頬が緩むのを感じながら、談笑などに花を咲かせるこの時間が日々の癒しだった。

 

だがその日、その時は突如として消え去ることとなる。

 

 

 

 

 

冷たい殺気を感じる。

どこからだ、と顔は動かさず、平静を保ちながら目線だけをさりげなく動かす。

意外なことに、その犯人はまだあどけなさの残る青年であった。珈琲を喉に通しながら、しかしその野獣の如き眼光は確かに私を貫いていた。

本物だ、と思った。彼は間違いなく強者だと本能が察知する。

私も伊達に掃除屋をやっていない。相手の力量も解らずに喧嘩を売る馬鹿とそれを知った上で本気で殺しに来る者との差くらい簡単に理解できる。彼は紛れもなく後者だった。

で、あればその覚悟を受け取らないのは野暮というものだろう。

 

 

どうしたの、と顔色を窺う憂那に用事が出来た、また来る、とだけ告げて店を後にする。

彼女を心配させてしまったことに対して気の利いた言葉一つかけられない自らを情けなく思いながらも、意識は常に後ろをつけてくる彼。

しばらく歩いて、人気の無い高架下まで行くと振り返る。

そこには、待ってましたと言わんばかりに瞳をぎらつかせた青年の姿があった。この様子では前置きは要らないだろう。

 

 

「……最近は大分と顔が売れてきたのか喧嘩を売ってくる馬鹿も減ってきた、と思っていたんだが」

 

「まだお前の様な命知らずがいたとはな。死ね」

 

 

そう言い切って、赫子を展開しながら突進する。

無論、彼が猛者なのは解っている。ありきたりな挑発というやつだ。

しかし、彼はそんな言葉に全く動じる素振りを見せず。

 

振るわれた私の赫子を、粉砕した。

 

「……ッ!!」

 

「甲赫ね…それ、得意だ」

 

不敵な笑みを浮かべる彼の腰の辺りから伸びるのは巨大な二又の触手……すなわち、鱗赫。

私の赫子はアレに巻き取られ、握り潰されたのだった。確かに彼の言う通り、鱗赫は甲赫に相性が良い。

 

__だが、私の赫子は『甲赫』ではない。

 

 

バキキッ…という赫子独特の展開音と共にソレは振るわれた。まるで一つ一つがミサイルの様に強大なエネルギーの塊。

羽赫の一斉掃射だ。

 

相手は甲赫である、と思い込んでいたその致命的な勘違い。それから単純に振るわれた羽赫の質の高さ。それらが相まって青年は避ける間もなく直撃した。

咄嗟に赫子で防いだとしても半身は吹き飛ぶだろう。これで終わったと思った、その瞬間だった。

 

 

「………は…」

 

羽赫による煙幕が晴れ、気づいたときには__彼の赫子が私の腹を貫いていた。

 

「……ッハハ、やっぱおっさん強いよ!!24区からわざわざ出張ってきた甲斐あったぜ……体吹っ飛ばされたのなんか久しぶりだ!!」

 

口から血を垂れ流し、右の胸から腕にかけて千切れ飛んでいながらも彼は笑っていた。

 

……そして私はそんな彼を見て、いつの日か落とした『恐れ』という感情を拾い上げた。

 

 

 

 

 

血を流しすぎたのか、それから先のことはあまり覚えていない。

後からその戦いを諫めた芥子に聞いてみると、あのままいけばどちらとも死んでいたかもしれなかったらしい。

お前に死なれては困る。しっかり頼む、等とあの芥子に釘まで刺される始末と散々であった。

 

 

あれから、私と同じくVに入った彼とは、雨降って地固まる…とは少し意味合いが違うかもしれないが、そこそこの仲になっていった。

彼は物心ついた時から親族が誰一人も居らず、生きるために人も喰種も構わず食い続け、いつの日か力を付けた彼は、生きる意味を闘争へと落とし込み、強者を求め各区をさ迷っていたらしい。

 

それを聞いて私は、何から何まで私の生き写しの様だと思った。愚かにも、罪を重ね続けた過去の私に酷く似ていたのだ。そして、だからこそ、私は彼の孤独を知ることが出来た。

やがて、私は憂那が私にしてくれたように彼に色々なことを教えた。

文字の読み書きや言葉、美味しい珈琲の淹れ方など。受け売りではあるが、新たな知識を得て、日に日に色を帯びる彼の瞳を見ていると何故か自分まで嬉しくなっていった。

路頭に迷う喰種たちを導く。そんな人生も良いかもな、と夢想したりもした。

 

彼は、善さん善さんと、私を慕っていた。

 

 

 

 

 

「はえー…やっぱ善さんの赫者ってゴツいっすね…なんか、アレみたい!あの……ガ、ガム?ガムなんとかみたいな名前の!」

 

「…ガム?………ガンダム?」

 

「あ、そうそう!それです!いっそのこと俺の鱗赫クインケにして善さん装備します??」

 

「…絶対嫌だね」

 

 

 

 

「善さんの赫子ってめっちゃうるさいから暗殺とか無理そうっすね」

 

「お前は口がうるさいから暗殺無理そうだな」

 

「ハハッ、辛辣」

 

 

 

 

 

「お、おぉー!これが赤ちゃんっすか!初めて見ました!可愛いっすねぇ……触っても?」

 

「力加減解らなさそうだからダメ」

 

「え、えぇ……」

 

「フッ…冗談だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで……なんでぇ!!」

 

「なんで憂那さんを殺したんですか…!」

 

青年は絶叫する。

まだ年若いその顔をぐしゃぐしゃに歪めて。

 

「……憂那は、Vを調べていたジャーナリストだった。組織の為に、殺すしか、なかった」

 

「そんなこと、聞きたくない……善さんの力でVから逃げることくらい出来なかったんですか!」

 

青年はかぶりを振る。

しかし、内心ではそのような事実はわかっているのだ。生まれてからずっと戦いに明け暮れた彼であっても、この組織に1年と身を置けばどれ程組織が強大か、など簡単に理解できた。

それでも彼は認められないと否定する。自らの矛盾に気がつきながらも否定する。

 

「……無理だよ」

 

たった四文字の言葉は、心身共に憔悴しきった功善が絞り出した悔恨と諦めの結晶であり。

昂った青年の牙を抜くのには十分であった。

 

「じゃあ、俺なら……俺と善さんなら…」

 

少し落ち着いた、というよりは肩を落としたような様子で青年は尋ねる。

 

「……そうかもな。だけど、お前を危険に晒したくはなかった」

 

否定はしない。

確かにそれは、功善の考えていた一つのシナリオだったからだ。

この青年とは少ない時間ではあったが深い信頼関係で結ばれていた。そして、強い。

相談すれば応と頷くことは想像できた。

だが、それを功善は選ばなかった。

なぜなら__

 

「それは…体裁の良い言い訳だ!逃げているだけだ!その結果憂那さんが死ぬことくらい予想ついたでしょう…!何で俺に言わなかったんですか……俺は…頼って欲しかったのに…俺なら……」

 

功善の意図が読み取れない青年は、ただただ功善を責める。

なぜ頼らなかったのかと。頼って欲しかったと。

力はある。なぜ信用してくれなかったのか、と吠えた。

 

 

「頼る。頼る、か……頼りたかったさ。救いたかったさ。憂那と、君と、エトと…生きたかったに、決まっている。だがな、他でもない憂那の最期の望みを潰えさせるわけにはいかなんだ」

 

そう、功善は独白の様に吐き捨てた。

 

「憂那は…最後に、こう言っていた。エトと一緒に生きて、と。意味が解るか?もう、彼女は自らの生を諦めていたんだよ。ただ、私と娘とを案じていた」

 

「それは……」

 

言葉が詰まる。

 

 

「私は、私が下した結果について、彼女を都合の良い言い訳にしているのかもしれない。あのとき君を頼らなかった根拠にしたいだけかもしれない」

 

「……だが、もう過ぎたことだ。今更後には退けない。君にも、エトにも恨まれることになっても、情けないと思われようとも…止まれないんだよ」

 

「これが私の決めた道だ。私は憂那の言葉を、そういうものと解釈した。私一人生き延びるくらい造作もないが、エトは私と共に居ればすぐにVに目をつけられるだろう。まともな生活を送れる筈もない。最悪殺されるかもしれない。奴等は臆病だ…隻眼というだけで排斥される可能性は十二分にある」

 

 

暫しの沈黙。少しの躊躇いを振り払って功善は切り出した。

 

「私はせめて憂那の願いを叶えなければいけない。しかし、私には直接的には叶えられそうもない」

 

「だから、あの時君には何も言わなかった。情けない話だが、直に君に頼る以外の方法が無くなると分かっていたから」

 

そう言って功善は自らの手元に抱いている娘を一瞥し、天を仰ぐ。

暗闇の中でも、彼の目元の光るのは見間違いではない。

 

「……長々とすまなかった。頼みたいことは一つだ」

 

 

 

 

 

__どうか、娘と共に生きてやってくれないか。




功善とV時代を共にしたつよつよおじさんが書きたかった。
つづくかも

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