すれ違いの結末   作:ビールは至高の飲料

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訣別

 皇帝ルルーシュの肉体がコクピットごと潰された。

 戦いの終わりに突如乱入してきたS4U(フィアラ)に。

 巨体差を活かして蜃気楼のコクピットを機体の手で叩き潰したのだ。

 あまりにも突然で呆気ないルルーシュの最期に、ZEXISの面々は僅かな時間、思考が停止した。

 

『フィ、アラ……?』

 

 その呟きは誰のモノだったか。

 誰が口にしたか分からない呟きはフィアラに届くわけもなく、彼女はコクピット内で潰したコクピットに目を細める。

 

「さすがにここまでやれば死ぬだろうけど、念には念の為……」

 

 蜃気楼のコクピットを潰した手から高密度の次元エネルギーが集まる。

 

「肉片ひとつ残さずに消滅させる」

 

 万が一にも復活されないようにここで希望を完全に断つ。

 すると、紅月カレンの駆る紅蓮が超高速で突っ込んできた。

 

『アンタはぁああァアアあぁああっ!!』

 

 フルスピードでS4Uを破壊しようと動くも、距離が離れていた事もあり、あっさりと上空に逃げる。

 

『逃げるなっ!』

 

 カレンの怒声にフィアラは煩わしそうな声で返す。

 

「私から言わせれば、こうなったのはあなた達がゼロだかルルーシュだかに対してなぁなぁで問題を先送りにしてきたツケなんだけどねぇ?」

 

 彼が実施していた作戦には明らかに普通では考えられない手品の種があり、それに勘づいていながら放置した。

 結局は自分達に不利益が無いからと見て見ぬ振りをしてきたツケ。

 ゼロを切るにせよ抱え込むにせよ、あまりにも対応が中途半端だった。

 

「大体、今更あの男を生かしておいてどうするつもり? ギアスによる洗脳でゼロに都合の良い奴隷の量産を許す気?」

 

 ブリタニア・ユニオンの皇族貴族の大半をギアスで自分に隷属させた男だ。

 どこの組織に身を置こうが、必ずギアスの犠牲者は出る。

 そしてその犠牲者を判別するのは極めて困難ときた。

 結果の良し悪しじゃない。人の意思を強制的に捻じ曲げて好き勝手に操るなんて真似を許すなら、そのしっぺ返しは何処かで必ず払う事になる。

 ルルーシュは今回それを支払っただけの話。

 

「何度も言うけど、結果は全てにおいて優先されると言っていたのはゼロ本人だよ。そして彼が積み上げてきた結果がコレだっただけでしょ。ま、それが気に食わないって言うならば……」

 

 S4Uが右手で剣の柄を握り、次元エネルギーが実体剣となる。

 

「貴方達の報復ごっこに少しだけ付き合ってあげる」

 

 今回の件でフィアラから謝罪する気はない。

 これに関しては何処まで行ってもきっと平行線だ。決して交わらない。

 彼らも内心ではゼロを仲間と認めていたが故に。

 

「来い。いい加減お互いに、この中途半端な関係もうんざりしてきたでしょうよ」

 

 フィアラ自身、ZEXISとは味方ではないが、敵にも回らない立ち位置で動いていた。

 それはキラやラクスが所属しているのも理由だが、彼女の目的とZEXISの目的に敵対する理由がなかったからだ。

 それもここまで。

 離反したとはいえ、彼らの仲間を殺した以上、黒の騎士団を中心にフィアラを許しはしないだろう。

 明確に敵対意思を見せたフィアラに困惑している者が大半。残りはゼロを殺した事で許せないと思う者というところか。

 フィアラもZEXISも動けずに居ると、半壊していたピンク色のランスロットが動く。

 

『C.C.!?』

 

 ピンク色のランスロットが蜃気楼のコクピットを回収し、離脱を試みている。

 

「逃がすか!」

 

 ここで完全にゼロを消滅させておきたいフィアラはピンクのランスロットを攻撃しようとするが、ZEXIS側からの介入が入る。

 威嚇射撃でC.C.への攻撃を遮ってくる。

 回避に集中してる間に飛び去っていくピンクのランスロット。

 舌打ちして射程距離の外へ逃げた機体を睨む。

 

(確実に肉体は潰したから、万が一は無いと思うけど……)

 

 ギアスを持っていると、ある可能性が浮上するので確実に始末したかったのだが。

 

「まぁ、仕方ないか……」

 

 正直、これ以上ゼロにかまけてる余裕はない。

 フィアラにはフィアラの目的がある。

 

(なにより私自身も時間が無い、か……)

 

 ゼロの件はもう完全に諦める事にした。

 左手を操縦桿から手を離し、前髪を掻き上げる。

 どちらにせよ、ゼロはもう何も出来はしない。

 ここに用も無いので立ち去ろうと動く。

 が。

 

『逃げるなって言ってるだろっ!』

 

「チッ」

 

 紅蓮がS4Uを追い込んでくる。

 ここまで接近されると転移で逃げるのは難しい。

 黒の騎士団を筆頭に()()を殺られたZEXISは大なり小なり怒りが沸き上がっているだろう。

 

「付き合うって言ったしな。仕方ないか……」

 

 紅蓮の猛攻を捌きながら他の機体から徐々に距離を取ろうと動く。

 流石にこの世界で最高峰の実力を持つ部隊だけあり、簡単にはいかないが。

 機体の損耗もあるが、大半は現状に戸惑っているからなんとかなっているだけだ。

 

(逃げ一択ね)

 

 付き合うとは言ったが流石に袋叩き(リンチ)にされる趣味はない。

 適当なところで切り上げるつもりで距離を取るように意識する。

 とはいえやはり歴戦の戦士の揃うZEXIS相手にそれも難しい。

 紅蓮の猛攻を捌きつつも辟易していると、ラクス通信が入る。

 それと同時に紅蓮を含めたZEXISの攻撃が緩くなる。

 

『フィアラ!』

 

「後にして! こっちが殺られる!」

 

 ラクスの言葉を遮って通信を強制終了した。

 多少勢いが落ちたと言っても数の差が違い過ぎて少しでも集中力を割くと本気で撃墜されかねない。

 この後に話す機会があるかは知らないが。

 回避と離脱に専念していると、セツコがフィアラとZEXISの間を遮るように牽制射撃する。

 

『フィアラちゃん、止まって!』

 

「自分の仲間に言ってよ!」

 

 攻撃してきてるのはZEXIS側だ。

 バルゴラが間に入っているうちに距離を稼ごうとするとクロウが足留めをしてくる。

 ブレード同士がぶつかり合い火花が散った。

 

『つい最近一緒に戦った仲間なんだ。あまり手荒な真似はしたくねぇ! 大人しく話し合いの場についちゃくれねぇか!』

 

「誰が仲間だ図々しい! 大体、ZEUTHとZEXIS(あなた達)が私の味方だったことがあるのかよ!!」

 

 ZEXISの中に個人で仲の良い相手は居るが、間違ってもZEXISの仲間になった覚えはない。

 前回はあくまでもエルガンをイノベイドから救出という共通の目的があったから協力しただけ。

 それにいつだってZEUTHもZEXISもフィアラ・フィレスの願いを聞いてくれた事はない。

 

(っていうかそっちが先ず攻撃をやめるように身内を諌めろよ!)

 

 特に紅蓮を始めとする黒の騎士団からの猛攻がヤバい。

 一瞬気を抜いたら本気で撃墜される。

 この機体を失う=フィアラも自分の目的を達成出来なくなるのだ。

 逃げる方法を頭の中で全力で模索する。

 するとガンレオンが接近する。

 手にしている武器でS4Uを狙っていた攻撃を防ぐ。

 

『ダーリン、フィアラもZEXISもやらせちゃダメだよ!』

 

『わーってるよ! クソ、なんでこんなことに!』

 

 状況が混沌としていく。

 ZEXISに対するフィアラの立ち位置の微妙さとPMに唯一対抗出来る彼女の貴重性からどうするべきか決められずにいるのだ。

 

(でも、これだけ隙が出来れば……!)

 

 離脱も可能かもしれないとチャンスを窺う。

 そこでフリーダムが近付いてきた。

 

『フィアラ!』

 

「邪魔しないでったら!」

 

 足留めのつもりなのかやはりこちらの逃げ道を塞いでくる。

 

『どうして君は!』

 

「ゼロに関しては、貴方だって否定しなきゃいけない立場でしょうがっ!」

 

 ラクスがギアスをかけられて利用された。

 それを仕方がないと許すのか。

 それとも、あんな殺され方をする程の罪じゃないと思うのか。

 

「とにかく邪魔っ!!」

 

 シールドブレイドで払うように振るう。

 それがフリーダムの腹部に当たり、一瞬キラがシンに撃墜された時の記憶がフラッシュバックして小さな掠れた声が出た。

 

(今は、あの時のことを思い出してる場合じゃ……!)

 

 僅かに鈍った動きを見計らったかのように紅蓮がその小さい身体を活かして隙間を縫って接近し、長い腕が触れてきた。

 

「終わりだ!」

 

 S4Uを破壊しようと輻射波動が撃たれようとする。

 フィアラもそのエネルギーを相殺しようと手を打つ。

 

「私の歌は、世界を────!」

 

『アァアアアアッ!?』

 

 突然密着していた紅蓮が弾き飛ばされた。

 フィアラではない。

 紅蓮を弾き飛ばした人物がS4Uの肩に乗る。

 

「わりぃな。コイツは貰っていくぜ」

 

「ガイオウ……!」

 

 破界の王、ガイオウがS4Uの肩に腰を下ろす。

 

「ヴァイシュラバ……」

 

「今はガイオウって呼べっつってんだろ。ダチから貰った名で気に入ってるからな」

 

 フィアラの言葉にガイオウが戯けた調子で返す。

 

「どういうつもり? お互いのやることに干渉しない約束でしょう?」

 

 ガイオウとは互いに協力はしないが邪魔もしないと話しがついていた。

 

「ま、そう言うな。お前もこの状況を抜けるのはちょいと厳しいだろ。先祖からの縁だ。少しばかり手を貸してやる」

 

 するとガイオウが今度はZEXISの方を見る。

 

「という訳だ。コイツのことは見逃しとけ。追うってんなら構わねぇが、俺とここで決着をつけることになるぜ」

 

 ボキボキと指を鳴らすガイオウ。

 ZEXISも消耗しており、今の状況でガイオウと戦うのはキツイ状態だ。

 

「賢明だな。俺もお前に用がある。適当に人気の無い場所にでも跳べ」

 

「人使い荒いなもう……!」

 

 空間を跳躍する準備にはいる。

 

「待ちなさい!」

 

 止めるのも聞かずにフィアラはガイオウと共にこの戦場から消え去った。

 

 

 

 

 

 

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