悪の幹部様は推しの雑魚ヒーローを特等席で応援したい! 作:月兎耳のべる
今後も頑張って書きますゆえ
ピーン、ポーン♪
「はーい」
閑静な住宅街、とある一軒家に響いたチャイムの音に住まう人妻、佳代子が声で応じた。
そろそろ夕飯を迎えようとした矢先のインターホン、エプロンのままの彼女が玄関を開けて目にしたのは――、
「夜分遅くにすみませんスヤ~、メチャバッド団ですけれども~、いつもお世話になっておりますスヤァ~」
「あらあらメチャバッド団さん~、どうもこんばんわ~」
縦にした巨大な枕を胴体とし、そこから黒い両手両足が伸びたぞんざいな体つきの怪人であった! 頭をぺこぺこと下げ、腰の低い挨拶をした彼に、佳代子もまた優しく応じる。
「すみませんねぇ奥さん、夕飯の準備中でしたかスヤ~? 今って大丈夫でしたでしょうかスヤァ~」
「えぇ、構いませんよ~。もうすぐ料理も出来上がるので、もし良かったら一緒にどうですか? 怪人……えっと」
「あ、私怪人『低反抗マクラン』と申しますスヤ。ありがたいお言葉ですが私、枕な物で飲食物はちょっと駄目で……」
「あらぁそうよね……私ったらごめんなさいね、さ。上がって上がって」
和やかに応対を続けた彼女は、怪人マクランを警戒もなく家に上げ、お邪魔します、とこれまた丁寧なマクランは、片手にぶら下げていた手荷物を佳代子に渡した!
「いつもいつも本当にすみませんスヤ。これ、つまらない物ですが組織の方から……」
「あら~、まあまあまあまあ! 松坂牛の詰め合わせセット! いつもいつもありがとうございます~、私も家内も大好物ですわ~」
「いえいえ、毎度騒がせて頂いていますので。佳代子さんのお陰で私達もこの包丸町に驚異を知らしめる事ができるスヤぁ……」
「メチャバッド団さんも大変ねぇ毎週毎週。頑張っていらしているようですけれども……今度こそ征服出来るといいんですねぇ」
「ははは、こればっかりは簡単には行きそうにはないですが誠心誠意頑張らせて頂くスヤ~、あ、今日は寝室で大丈夫でしょうかスヤ?」
「えぇ、枕ですものね。勿論構いませんわ」
誘導される形で寝室まで移動した佳代子と怪人マクラン。寝室についた二人は、お互いに目配せをしあい、片やマクランは準備運動とばかりに両手、両足を伸ばしてストレッチ。佳代子さんは「マ゛~、マ゛~、マ゛~」と喉を震わせ、発声練習をし――そして!
「――キャアアアアアアッ!」
改めて閑静な住宅街に絹を切り裂くような声が突如広がった!
平和な一家、その主婦の和やかな一時! それはまたしても消滅しまった!
「イヤアアアアッ! 枕の質感がいつもよりふわっふわになっているわーッ、どうしてーッ!?」
「スーヤスヤスヤスヤッ、今どきそば殻枕を使う時代遅れな人間めぇっ この低反抗マクラン様が頭がずっぽり埋まってしまうような低反発の材質に変えてくれるスヤッ!!」
家事の合間合間に昼寝するのが大好きな専業主婦、佳代子は絶望した!
自宅の寝室に侵入した、枕型の謎の怪人がいきなりそんなことをのたまったのだ! これは堪った物ではない!
「これから街中の枕をふっかふかにして、ぴったりフィットした枕から一生抜け出せなくしてくれるスヤヤヤーッ! 玄関はどこだ奥さんンンッ!」
「いやあああぁっ、あふぅ……突き当りを左ですぅぅ……」
枕にすっぽりハマって気持ちよさそうに惰眠を貪り始めようとする佳代子を置いて、お邪魔しました、と礼も忘れず家を出ていく怪人『低反抗マクラン』!
そして隣の家の玄関にチャイムを押してから侵入すると、再び家から悲鳴があがった!
この怪人の目的は先述した通り住民の持つ枕の軟質化! このまま奴をのさばらせていては包丸町は全員ふわっふわの枕で眠りを強制され、硬い材質を好む住民はぐっすりと眠ることも出来ず、不眠に悩まされるだろう!
無秩序に暴れる怪人、響き渡る悲鳴の連鎖!
力無き一般人では謎怪人相手に抵抗などできる筈もなく、このまま包丸町が『ねむるまち』というキャッチフレーズの格好の例にされてしまうのを、のうのうと眺めるしか無いのかと市民が絶望しかけた――その時だった!
「っだオラァァァッ!」
「スヤヤヤァーッ!?」
突如黒い影が町中を駆ける低反抗マクラン(長いので今後マクランと略す!)に飛びかかった!
一般人か!? はたまた新たな怪人か!? いや違う!
古びた軍手に、使い古したボロッボロの緑色のジャージズボン、同じく緑色のジャージの上着! ホームセンターの安全靴に膝パッド! 以前よりも灯油缶らしき形跡がなくなりつつある、ボロッボロのヘルメット!
そんな不思議な出で立ちの謎の人物が奴に飛びかかったのだ!
「なんだぁ、貴様ァ! このマクラン様に歯向かおうと言うスヤーッ!」
「うるせえ枕野郎が!! よりによって睡眠の
ノリで飛び蹴りを見舞ったその謎の人物! 口調の悪さにあるまじき常識的な思考に、為すすべなく見守っていた一般市民が叫ぶ!
「あのあんまりなコスプレは――!」
「お、お前――クソダサ仮面……なのか!? あの学芸会みたいなコスチュームはどうした!?」
「芋ジャーだ!」「芋ジャー仮面だ!」
「うるせーッ! 芋ジャーってよぶんじゃねえ、それならまだクソダサ仮面の方がマシだ! っていうか俺はヒーローガキーンだ!」
そう毎度お馴染み。包丸町非公認ヒーロー、『ヒーローガキーン』である!
前回の激しい戦いで自作スーツが破壊された彼は、
「俺は低反発枕好きだから割と嬉しい感じだけどなぁ、買い替えずにすんでラッキーっていうか……」
「俺は硬いのが好きなんだ! あんな柔らかいのじゃ寝心地が悪いし、首が
「っていうかあのクソダサジャージ、隣街の鳥頭高校のじゃね? お前、やっぱり
「
「スヤヤヤヤーッ!! ヤーッハ!」
賛否分かれる怪人被害に首を傾げたガキーン! しかし突如振るわれた怪人マクランの不意打ち気味な『軟質右ストレート』が彼の顔を捉えた!
『もふっ』と言ういつもの攻撃より遥かに柔らかな衝撃音しか出せないその一撃に、彼は思わず声を漏らしてしまう!
「う、おぉぉ……や、柔らけえ……なんだこの材質、しかもメッチャいい匂いが……! こ、これ柔軟剤を使って……!」
「スーヤッヤッヤッ、馬鹿めが、柔軟剤など一切使っておらぬスヤーッ! この低反抗マクラン様の体は従来の低反発枕の150%以上の衝撃吸収力と、爽やかなシトラスミントの香料が含まれている! また洗剤に●ールドを使うことによって柔軟剤を使わなくてもふわっふわな質感を再現! このまま貴様を安眠に導いてやるスヤーッ!」
「うおっ、おほ……おぉっ、おっ……! おぉっ……!? おーっ……?」
もふっ、もふっ、もふんっ。
ふわっ、ふわふわっ、ふわりっ。
ぽふぽふもふもふとした間の抜けた音を響かせながら、怪人マクランの一撃一撃がガキーンに見舞われる!
一発ごとの幸せの攻撃が衝撃的過ぎて、一発を許してしまえば勝手に体がリラックス! そこに次の攻撃が更に当たって追加のリラックス! 負の連鎖によりガキーンはろくにガードをすることも出来ていない!
あぁ、服越しとは言え異常なまでの柔らかさに否応なくリラックスしてしまうガキーン、これは、これはもしやピンチの光景なのか!?
「お、おいおいおい、クソダサ! 眠るんじゃねえ!」
「なんか羨ましいな……あんな立ったままでも眠れそうになるくらいなら俺も……」
「しっかりしろ! そば殻や、パイプ系、ビーズ枕の良さを忘れるな! あの硬質枕の良さを捨てるなんてとんでもねえだろ!?
「あ、あぁ、あぁぁぁ……っ」
「スーヤッヤッヤ、トドメだ……眠れ、眠るがいい……貴様も疲れているだろう、この『マクランホールド』で我が腕の中で熟睡するがよい……っ」
怪人の見た目以上にしっかりして、かつ柔らかな腕。そして何もかもを受け止める枕の体がガキーンを包み込んで行く!
恍惚の声をあげて抵抗の出来ないガキーン、このままでは怪人の言う通り、立ったまま腕の中で安らかな眠りについてしまうという稀有な光景が目撃されてしまう! 絵面的に怪しくないか!? ヤバイぞガキーン!
「フンッ、ミネルヴァ様から聞いておったが……期待外れだな、この街のヒーローはやっぱり大した事ないスヤッ! さぁ次はどいつを寝かしつけてやろうスヤァ……?」
「ひぃっ、に、逃げろ逃げろ!」
「そ、そういえばサンダーヘッドはどうした!? どうしたっていうんだ!?」
「駄目だ、サンダーヘッドは怪我して入院中だってニュースで言ってただろ!」
「も、もうおしまいだぁ!」
高みの見物をしていた住民も大した活躍もなく眠りこけたガキーンより、頼みの綱であるサンダーヘッドが絶賛入院中である事を知って逃げ惑う!
あぁこれでは包丸町を守れる存在が居なくなってしまったではないか! 危うし包丸町! 平和の行方はいずこへ!?
――しかし安心して欲しい!
ヒーローを自称するガキーン、この程度で折れる弱い心を持っていない!
「……すやすや」
「くっくっく……深い寝息まで立ておって、このままもっと眠れるように地面に布団をつけて寝かしつけてやるス」
「――あごぼっ」
「す、スヤァァーッ!? お、おい誰だ今石を投げたのはーっ!」
「ギャハハハ! 命中ー!」
「た、たっくんまずいって、怪人だよ?」
「大丈夫だってヒロキ、お前びびりだなぁ……別に怪人じゃなくてあのダサヒーローに当たったから平気平気!」
「ぐ、おぉ、おぉぉぉぉ~~~……っ!?」
唐突に横合いから飛んできたのは小石! 近所の子供が好奇心全振りで投げたそれは怪人ではなくガキーンの頭部にクリーンヒット! 軽妙で小気味の良い金属音が反響し、寝こけていたガキーンが悶絶の声を上げ、眠りから覚めた!
時に偶然すら味方につけるとは流石ヒーローといった事か! さぁ起き上がれガキーン、平和を取り戻す時間だぞ!
「な、なななんてガキだスヤ! 寝ている奴に小石を投げちゃいけないって学校で習わなかったスヤァ!?」
「はぁ? うっせバーカ! ヒーローなのに、ぷぷっ、勝手に寝ちまってるそいつを起こしただけだろーが!」
「たっくん、ガキーンだよガキーン。ヒーローガキーン」
「うわっ、また石を投げて……貴様の両親に怒って貰うスヤ……スヤヤヤッ!?」
「ぐ、おぉぉぉっ、すっ、すまない少年。君の言う通りだった! 戦闘中に寝てしまうなんて、不覚も不覚! 助かったよ!」
怪人が気を取られている内に腕の中から暴れて脱出したガキーン! 投石のお陰で割といい感じにヘルメットが凹んで、頭部は二日酔いのように痛みを覚えているが、彼も大人だ! 怒りなんて覚える訳もない!
「ギャッハハハハッ、見ろよヒロキー! 頭凹んでるぜ頭っ、じゃがいもよりボッコボコ! 感謝しろよクソダサ仮面ー!」
「た、たっくんまずいよぉ……あのおじさんも少ない予算で頑張ってるんだからさぁ……」
「……た、助かったよ……そ、それよりも君達は早くここから逃げないと!」
「え、やだよそんなの。だって枕の怪人だろー、そんなの怖くなんかなんともねーもん。なーヒロキー」
「あ、う、うん……ま、枕だもんね、多分きっと眠くなるだけだし……」
「き、君達ねぇ……」
「大体ヒーローなんだからさっさと倒せよなーそんな奴ー、ほら早くしろよバーカ。たったかえっ、たったかえっ」
「あぁっ、はは、はははは――……っ!」
そう、ガキーンは今年で36になる大人だ、怒りなんて覚える訳がない!
手拍子と共に小学生年少の少年、タクヤが心底小馬鹿にした歌を歌っても、ただただ大きな心で許している! 流石ヒーローだぞ!
「ザーコザコザコ、ザーコザコザコ雑魚仮面~、雑魚怪人~♪ どっちも雑魚雑魚早くたおれろ~♪」
「た、たっくん、駄目だよぉ……たっくん……」
「むき、キキキキィッ……! おい貴様、共闘してあのガキに世間というものを見せてやるぞ!」
「気持ちはっ、気持ちは死ぬほど分かるがお前は、怪人! 俺はっ、ヒーローだっ、さぁやるぞっ! ――とぅァッ!」
怒り心頭の二人、しかしどうしようもなくヒーローであるガキーンはもう彼らの事は忘れて戦う事にした! その方が精神衛生的には格段に良いからだ!
まずは先手のガキーンハイキック! 空手を習っていた彼の蹴りは、そこそこに威力がある!
しかし怪人マクランはガードすらしようとせずただ無防備に
「スーヤッヤッヤッ! 効くわけがないスヤァ!」
「何ッ!?」
――それは奴が防御力に絶対の自信を持っているからである!
奴の体にめり込んだ蹴りはしかし、怪人の顔色を変える事すら叶わない!
「このマクラン様の体は全て低反発、衝撃など全部吸収してくれる、最強のボディという事よッ」
「ぐっ、打撃対策ばっちしって事か……!」
ただでさえ格闘中心スタイルのガキーン! コスチュームもない状態ではろくなダメージも与える事が出来ない! 彼は一方的な展開になることを予想してついに冷や汗を流してしまう! あぁ、一体どうすれば奴に有効打を与えられると言うのか!
「……うーん、ガキーン様のコスチューム直ってなかったかぁ……! レアな光景だけど、ちょっとこれはまずったかなぁ……」
少し離れた場所、少年らとは別に戦いを見守る少女が一人ごちる!
ガキーンの苦戦する様を三脚つきカメラで監視しながら、冷静に状況について述べている!
「流石に前回怪我したから弱めにしようとしたんだけど、まずったなぁ……ガキーン様相性悪悪じゃんね、んー。でも直近で出せる怪人であれ以下ってなるといないしなぁ……あーでも、いいね。アーマーつけてないから体のラインが良く見えるし、コレ結構いいのでは? あっ、背中からお尻のラインっ、
ボスっ、ぽふんっ、ボスッ、ぽふんっ、と全く迫力のない音が響き渡る中、いつもの黒髪お下げの少女の応援だけが町の一角に声高に響いた!
あぁ彼女だけがこの場の味方! たとえ困難な状況であれ、応援する人がいるからこそ最後まで頑張ってきたのだ、負けるなガキーン、頑張れガキーン! 彼女の目は常にガキーンを見ているぞ!
「そこのねーちゃん、何してんだ?」
「た、たっくん人の事指差しちゃ駄目だよ……多分、あの人はガキーンさんのファンじゃないかな……」
「えぇーっ!? あのクソダサヒーローのファンなんて居たのーっ!? ばーっかみてぇ!」
「……あ゛?」
――いや、今しがた彼女の目が少年を捉えたぞ!
無神経な少年の言葉に輝いた目を一気に暗闇にまで光度を変更させ、深海魚もかくやの濁った目で見つめ始める!
「あいつ、一度も怪人に勝った事ないだっせーヒーローなんだぜ、それに見た目もだせーし、弱いしー。サンダーヘッドみたいに武器もないしで駄目駄目じゃんかよー!」
「ぐぉっ、おぉっ、ぉうっ……うふぅっ!」
「な、何もしてないのに何で呻いてるスヤ!」
急に横合いから飛んできた言葉のナイフに、攻撃された訳でもないのにガキーンが呻き声を上げる! それに気づかぬ少年タクヤは朗々と自分の話をし続ける!
「やっぱサンダーヘッドが最高なんだよなー! サンダーヘッドが入院なんて信じられねー、なんでこいつが入院しなくてサンダーヘッドがしてんだよぉー、やーい、雑魚ひーろーっ、つかコスプレやろー! さっさと負けちまえーっ!」
そんな彼の話の最中、黒髪おさげの少女がゆっくりと少年らに歩み寄る!
その表情は勿論笑顔だ! まるで彼岸花を思わせるような心からの満開の笑み! 重力場を発してもおかしくない、尋常ではありえない程の強い想いを元に動く彼女が、ガキーンよりも何よりも少年らを優先しだすというのは奇跡に近く、片割れの少年ヒロキが、近づく少女を見て思わず小さく悲鳴をあげた! 彼女は一体何をするつもりなのか!?
「――ころ」
「す、すまないお嬢さん!! 唐突だがそこの少年達をどこか安全なところに保護してやってくれないか!?」
指先を今まさに少年らに向けようとしていた少女の動きがピタリと止まった!
そうしてギリギリと油をさしてない錆びた人形のようにゆっくりと振り向くと、怪人と取っ組み合いを続けるガキーンに向けてどこか悲しそうな表情を見せる!
「が、ガキーン様、もしかして……保護するというのはこのガキ共をですか……?」
「そうだ!」
「ど、どうしても、どど、どうしても保護しないと駄目ですかっ? く、くびっ、くびりころっ、ころころッ、だだ、だめですかぁっ?」
「ころころ……? そうだ、本来なら君も逃げなきゃいけないんだがね! 頼れるのが君しかいない!」
「い、いくらガキーン様でもっ、そのお願いはっ……!」
「俺の弱さのせいでこんな事になって申し訳ないが……お願いだっ、お嬢さん。君だけが頼りなんだ――!」
「――はうっ!」
最後の一言が決め手となったようだった!
思わず胸を抑えてうずくまった少女! しばし耳に残った余韻を楽しみ、口の中で発言を
「さぁ少年たちよ、お姉さんと一緒に安全な所まで行きましょうね~」
「お、おいこのやろ、何しやがんだ! 離せよ!」
「う、わわわ、早い! 早いよお姉さん!」
「ふふふ、言ったでしょ? ガキーン様の言う通りここは危ない所なんだから、ちゃんと親元まで送ってあげる♪ 早く戻りたいから秒で届けるわよっ♪」
少年らの悲鳴を残して疾風の如く曲がり角へと消えていった!
地に足がついてないような感じ、というより実際に地に足をつけずに移動していたような気がしたが、それは気の所為だろう!
何はともあれ少女らが全員避難したのをを見てほっとするガキーン――しかし、安心するのはまだ早いぞ、何故ならまだ戦いは終わっていない!
「スーヤッヤッヤッ、戦闘中によそ見とは余裕スヤねーッ!?」
「うごっ!? や、やわらけぇ、くそぉっ」
ついつい気をやってしまったガキーンの無防備な腹、頭、腕に瞬く間に右左右の軟質マクランコンビネーションが決まる!
その一撃で体から力が抜けるのを感じ取り、まずいと思ったガキーンが慌てて距離を取ろうとするが――あぁなんという不運か! ガキーンの丁度足元には小石が!
「どわぁっ!?」
「スヤヤヤヤーッ、馬鹿めーっ、自分から地面に寝転がるとはっ、今だっマクランプレス~~~~~ッ!!!」
「ぐ、おぉ、おおおぉぉぉおおぉ~~~ッ!?」
そして怪人マクランの全身ふっかふかボディが間髪入れずにガキーンの上に覆いかぶさった! 柔軟剤を使わずに再現した羽毛以上に柔らかく、突き立てのお餅のようにふんわりとした極上枕の質感にガキーンの全身から刻一刻と力が抜けてゆき、暴れようにもろくな力が入れられない!
「このマクランプレスで10秒眠らずに保った物はおらんスヤ~~~ッ、10~~9~~8~~7~~ッ」
「や、やめろーっ、
絶対絶命のピンチに、ガキーンはとうとう悲鳴を上げてしまう!
急速に失われてゆく力、増していく眠気! サンダーヘッドは来ることはなく、応援する者も居ない孤独な状態で、このままガキーンはすやすやと眠ってしまうのか!?
危うしガキーン、危うし包丸町!
過去最大のピンチ、一体どうなってしまうのか!? 次回を座して待て!