そして、ついには書いてしまった。
私は忌み子だ。
全身の色素が薄く、肌は青白く、髪は白銀、瞳は血の色で真っ赤だった。
外国の言葉で、アルビノと言うらしい。…だいぶ後で知ったことではあるが。
私が生まれたのは、文明開化に乗り遅れたど田舎だった。
古くからの因習が、何の裏付けもなく残っている。そんな処だった。
父はそんな村の豪農の跡取り息子だった。
母は美しかったが体が弱く、私を生んで間もなく亡くなったらしい。
そして、私は因習に倣い、処分された…ということになった。
広い家屋の奥の奥、日の光がまるで当たらない部屋で育った。
家族以外の誰にも知られずに生き、そして死んでいくのだろう。
それでも、最悪ではない。
私は生きているし、食事も、本も、欲しいものは大体与えられた。
読書と思索の日々。
そうだ。日記を書こう。
徒然なるままに、思ったことを書き残そう。
私がここに生きた証として。
転機があった。…良くない転機だろうが。
裏の山に、鬼が出たらしい。人喰いの鬼だ。
村の猟師が数人喰われたらしい。命からがら生き残った猟師が、そう証言した。
ここでも、古い因習に倣われた。
生贄を捧げ、山から出て行ってもらう。
道理に合わない。愚かとしか思えない。
わざわざ食事を与えられて、何で出ていくと考えられるのか? …毒饅頭ならともかく。…まあ、鬼に毒が効くかもわからないのだが。
贄に選ばれたのは私だった。
父は反対したらしいが、反対したのは父だけだったようだ。
山のふもとに、簡素な祭壇が作られた。
その上には、綺麗な着物を着せられ、目隠しをされ、口枷をはめられ、手足を縛られ、逃げられないようにされた私が置かれた。
そこでも、最悪にはならなかった。
「哀れだな、小娘」
日が暮れ、フクロウの鳴く声のみが聞こえる中、男の声がした。
「他の人間と見た目が違うだけで、こんな意味のない生贄にされる。哀れとしか言いようがないな」
口枷をはめられている為、私は返事ができない。だが、その男には私の返事など必要ないのだろう。
「しかし、本当に意味がないな。獣であっても、野盗であっても、無論、人喰いの鬼であっても、生贄を捧げられたからと、ここを出ていくわけがあるまい」
確かに愚かな話だが、いざ当事者になると、嗤われるのは腹が立った。
「むーむー」
何かを言ってやりたかったが、何も言えなかった。
「くくく、何か言いたいのか?」
男が指をならすと、何故か口枷が外れた。
「わかってるわよ、そんなの。せいぜい、村にはまだたくさん食いものが残ってるって、鬼に教えてやるわ」
「ほう」
「あんたも食われろ、ばーか」
「くくく」
「んぐっ」
その男は笑ったと思うと、口に指を突っ込んできた。
…血の味がした。
「私の血を与えてやる。せいぜい足掻いて見せろ」
息切れする前に、完結できるように頑張ります。