「カァァ、成宮未来ィ、次ハ東京府浅草ァ、鬼ガ潜ンデイルトノ噂アリ!!」
「…は?」
「…俺の鎹鴉」
綺麗にお別れしたと思ったところを、獪岳の鎹鴉に次の任務を告げられたよ!
「…お前、鎹鴉、いねえの?」
「……鴉は、…いないかな…」
なんで雀なんだよーーーーー!!!
「私、夜行列車って初めて乗りました」
子犬のような笑顔で、雪がそう言った。
「…私は、売られた時の記憶がよみがえりそうで…」
苦笑しながら言う薫の言葉に、私は絶句するしかないよ。
「へー、薫ちゃんは、東北の出身だったの?」
雪も、そこはあんまり深掘りするなよ。
「私の出身は、これから行くような漁村ではなく、農村でしたけどね」
鬼殺隊のほとんどが関東近郊の出身なので、薫のように東北出身というのは珍しい方だ。
「でも、初任務が東北の方とは思わなかったねえ」
雪の興味はころころと変わるね、もう話が飛ぶんだ。薫のことを深掘りする気は、本当になかったみたいだ。
「確かに、基本的に関東近郊が多いって聞いてたんだけどね」
そんな鬼殺隊の柱の中でも、師匠は一番全国を飛び回ってたって話だけど。
「聞いた話ですと、関東近郊の鬼は、ずいぶんと大人しくなったようで、鬼の事件がだいぶ減ってきているようですね」
薫はどういう情報源を持っているのか、かなりの事情通だ。
「それでも、初任務でいきなり遠方になるとは思わなかったね」
その雪の言葉通り、今回の任務では三人全員が初任務の新人のみで、先輩の一人もいない。
「関東近郊での事件は減っていますが、それでも主要な隊士は関東から出したくないみたいですね。
未来さんだけが東京っていうのは、そういうことなんじゃないんですか」
薫のその言葉で、未来がひとりだけ外されてがっかりしていたのを思い出す。
「それはちょっと穿ち過ぎじゃないかな。…未来じゃあるまいし」
たまにコソコソと真剣な顔で、未来が鬼殺隊のことをまるで悪の組織のように語ってくるが、いやいや、あんたもその組織の一員だからね。
「そうだよ、そんな言い方は鳴ちゃんに失礼だよ」
「あっ、いえ、鳴さんが主要な隊士じゃないってわけでは」
「いやいや、そこに引っかかったわけじゃないんで」
気心が知れた三人なので、夜行列車の中でも和気あいあいとしている。
…ひとり外れた未来は、先輩隊士とうまくやれているだろうか?
誰とでもすぐに仲良くなれる子なので、心配ないとは思うんだけど…ああ、でも、初対面ですごく失礼なことをしていないだろうか、あの子は天才肌で上下関係なんて屁とも思ってないところがあるので、その辺がすごく心配になる。
獪岳と言うのは、どんな人なんだろうか。
師匠が言うには、礼儀正しい子だったということだが、それは上下関係に厳しいってことにもならないだろうか、ああ、未来とは相性が悪いような気もする。
「…ああ、心配だなあ」
「何がです?」
思わず出た言葉を、雪に拾われる。
「いや、未来がさ、先輩に失礼なことをしたり言ったりしてないか、心配で」
「ああー…」
「…言うかも」
二人とも否定してくれない。
「でも、大丈夫ですよ、未来ちゃんなら勝ちます!」
「いや、勝てばいいってもんじゃあ…むしろ、勝つ方がまずい気がするんだけど」
「きっと、うまいこと丸め込むと思います」
未来が先輩隊士に無礼を働くのは、決定事項みたいになってるよ。…否定できないんだけど。
「未来さんも心配ですけど、こっちも厳しいですよ」
「鳴ちゃんがいるし、大丈夫でしょ」
雪の期待が重いなあ。
「でも、薫の言う通り、東京の未来よりも、こちらの方が大変だね」
「ええ、一番近い藤の花の家紋の家も、目的の漁村からだいぶ離れています。支援や応援を頼んでも、だいぶ時間がかかるでしょう」
「隠の人が、先乗りしてるんだよね?」
「一応の拠点は用意してくれているはずですけど、組織的な協力は期待できないと思っていた方がいいです」
さてさて、鬼が出るか蛇が出るか。
いや、鬼なんだろうけどさ!
原作で善逸の雀が手紙を届けてたシーンがありましたけど、雀のサイズに対して手紙はキツイと思うんですよねー。
岩柱の修行場は、本部内で近かったから、頑張って運んできたのかなあ。