いつも、大したことしてないうちに、終わってしまうなあ。
「あーあ、一人で歩いてても、つまんないなー」
ぶらぶらと夜の浅草を歩きながら、ぶーぶーと文句を言う。
さすがは東京、夜とはいえ、人通りはかなり多い。田舎とは大違いだね。
くんくんと鼻を働かせながら、とりあえず鬼を探しながら歩く。
無惨様の拠点だからなのか、街全体にうっすらと無惨様の血の匂いがする気がする。
まあ、特に血の匂いの濃い鬼はいないってことで。
自分の拠点で雑魚鬼が粋がっているなんて許すお方ではないから、いないのは知っていたけどね。もちろん雑魚鬼の方も、無惨様のおひざ元で粋がれる奴なんていないわけで、そんな鬼がいたら、逆にすごいわ。
「どっかの店に入るにも、お酒とかお蕎麦とか、そんなんしかないしなあ。つまんねーのー」
鳴ちゃんはいいなあ、三人でさ。
「…今日はあの村に入らない方がいいでしょう」
漁村近くの大きな町に入って、一足早く来ていた隠の方と合流したところ、あいさつもそこそこにそう言われた。
「大事件になっていますからね」
薫もそれに賛成のようだ。
「はい。村全体がピリピリしていますからね。特によそ者には厳しい目が向けられています。
我々も、身の危険を感じたので、この町に避難してきたくらいですから」
もともと人口の少ない漁村で起きた、連続殺人事件なんだ。地元の人間が疑うのは、知り合いよりもよそ者になるのは、理解できる話だ。
「事件の調査の方は?」
「この町から、十人規模で警察が向かいました。とりあえずは警察の方が動くことになると思います」
当たり前だが、たとえよそ者でも警察だったら受け入れるだろう。
「…それでも、鬼が相手だと」
雪がやりきれない思いを口にする。
「もちろん、鬼相手には対処できないでしょう。
…正直、このあたりの警察とは、かなり細いつながりしかありません。捜査状況をギリギリ聞けるくらいで、捜査協力を申し出ることも難しいです」
これが関東近郊、あるいは西の方だったなら、まだなんとかなったかもしれないんだけど…つながりの薄い東北で、政府公認の組織ではないことが響いている。
「今、上の方には問い合わせています」
「どうなるんでしょう?」
「…わかりません。政府関係者に働きかけてくれるとは思うのですが、応援が来るのか、とりあえず一時撤退になるのかも、定かではないです」
しばらくは様子見ということになりそうだ。
「…はい。浅草に到着しました」
到着の連絡を入れる。
「…はい。阿修羅さんと山坊主さんも一緒です」
浅草の夜の人波は、京都の夜の人波よりも多いように感じる。
「…はい。合流は無理そうですね。まずは我らだけで探ってみます」
すれ違った人間の男に、ギョッとした顔を向けられる。
傍から見れば、ただの独り言にしか見えないのだから、それも致し方ないだろう。
「…はい。大丈夫です。あのお方の力との違いは、十分に感じ取れています」
周囲から…ただの人間から、どう見られようが、関係ない。
私はもう既に、全てを賭けたのだから。
「…はい。十分です。もう痕跡は、なんとなくですが、見つけています」
故に、私の能力は、不足を埋めるようなものを選び取った。
「…はい。そうですね、詳しくは明日の朝から探りたいと思います」
こちらを気遣うような言葉を頂き、少しだけ笑みを浮かべる。
左目を覆うように、そっと手を当てて、告げる。
「…大丈夫です。お任せください」
長子ちゃんは零余子ちゃんのフォローをするような能力を得たようです。
鬼の血鬼術って、割とその望みを叶えるような方向で得ている気がします。
無惨様も、もうちょっと捜索向きな能力を持つ鬼を増やす努力してればって思わざるを得ないです。