上弦の零、大物感が溢れてます!w
「…あなたは、一体…」
「…あれ、さっき自己紹介しましたよね?
上弦の零、零余子です。…ああっと、そしてこっちは、私の秘書の長子ちゃんです」
上弦の零の言葉を受けて、下弦の肆が少しだけ頭を下げた。
「こっちの二人は、山坊主と、阿修羅です。どっちも元下弦の壱ですよー」
つまり、元十二鬼月が二体に、現十二鬼月が一体、そして…十二鬼月より上が一体…
「…何をしに、来たのですか…」
あまりと言えばあまりにもな状況に、思わず口から出てしまった言葉は、実にわかりきったことでした。
逃れ者の私のところに、鬼が来る理由など、一つしかないではないですか。
「そうですね。簡単に言うと、勧誘ですかね」
「…は?」
「だって、珠世さんって、黒死牟様と同じくらいに、長く生きている方なんですよね。それも、無惨様から逃げ、人の世で隠れて…それもおそらく、無惨様への復讐のために…」
そこで、パンと手を打つ。
「…その知識って、とても…そう、とてもすごいものだと思うんですよ」
実に朗らかに笑いながら、そう告げてくる。そして、その視線が私の横に向かい…
「…そちらの鬼、無惨様の血の匂いが、まったくしませんね。…よもや、よもやですよ。これはすごいことですよ!」
なんだこの鬼は。…なんなんだ、この鬼は!
「あなたの話を聞いたときに、殺すのはもったいないなって思ったんですけど、そちらの鬼を見まして、確信しました。そんなことをするのは、絶対にもったいないです!」
こんな鬼がいることも驚きなのに、こんな鬼をあの鬼舞辻が重用していることが、まさにありえない。
「私と共に来てください。絶対に、悪いようにはしませんから、ね」
とてもいい提案だとでも自負しているのだろう、実に楽しそうな顔でこちらに右手を差し出してきた。
「ありえません」
「…ん? …あれぇ、なんでかな?」
私の拒絶の言葉に、己の右手を見詰めて考え込みだす。
「…ああ、無惨様に仕えるみたいなのは、イヤなんですかね?
私の直属みたいな扱いになるように、お願いしてみますから。きっと大丈夫ですよ」
名案とばかりに、そう言ってくるが、そうではない、そういうことではない。
「…いいえ、そもそもが、そちら側につくということ自体が、ありえないのです」
私の再度の拒絶に、言葉の意味がわからないというような、キョトンとした顔をしてくる。
「…なんでですか?」
「…向こうも許さないでしょうが、それは関係ない。私が鬼舞辻を許せないからです」
「…んー…」
腕を組んで悩みだす。何も悩むことなどないはずなのに。
「私、別に無惨様を許せ…とか、言ったつもりはないんですけど」
「…は?」
何を言っているんだろう? …こちらの意思など関係ない、そういうことを言っているのだろうか?
「…内心でどう思っていようが、別にいいじゃないですか。珠世さんはやりたいことはないんですか?」
「…そうね。鬼舞辻を殺したいですね」
「ああ、そういう無理なことじゃなくて…いえ、ちなみに、どうやって殺すつもりなんですか?」
「…教えるはずがありません」
その私の拒絶に、今までで一番残念そうな顔をする。
「…んー、考えられるとしたら、毒とか、薬とか? …そうだ! 鬼を人間に戻す薬とか、どうです?」
「…!」
「ふふっ、当たりですか?」
動揺するな、顔に出すな。少し考えたら、わからない答えじゃないんですから。
「鬼を人間に戻す薬、いいじゃないですか! 作りましょうよ!」
「…な、何を言って…」
「こんなところでコソコソとやっていても、研究はあまり進まないでしょう?
うちは製薬会社ですから、いろんな材料がありますし、設備も整ってますよ。それになにより、素材には困らないですよ」
その言葉に、まるで心が揺れなかった…と言えば、嘘になる。
私だけでの研究に行き詰っていたことは、まぎれもない事実。少し前までは、協力者が必要だと思っていたことも、間違いない。
それでも、さすがに、ここでこの鬼の手を取ることは、ありえない。
「…無理です。ありえません」
その最後の拒絶に、彼女が浮かべた表情は、がっかりというよりも、むしろ侮蔑に近いものでした。
「…はぁ、鬼殺隊とおんなじ。
考え方が後ろ向きで、まるで話にならない。
あなたは今、生きているんだから、ちゃんと前を向けばいいのに、あー、あほくさー、あーあー、めんどくさー」
それは、最後通牒だったのだろう。
「…もういいや、説得もめんどくさい。とりあえず、殺さなければいいや」
零余子ちゃん、頑張って説得してましたが、拒絶されてイヤになっちゃいました。