「十二鬼月の情報を探りに来たら、元十二鬼月がいたなんて…運が良いのか悪いのか」
前に見た鬼よりは小さい。…でも、大きさなんて関係ない。
「来るがいい! 名乗るがいい! 鬼っ子!」
ビリビリと空気が震えているように感じる。
「そんなに怖い顔しないで、ね」
まっすぐに山坊主の目を見つめる。
「お話しましょうよ、出会ったばかりなんだから、ね」
ゆっくりと無造作に…震えそうになる足をまっすぐに進める。
「おじさまは、すごく強い鬼なんでしょう? いろいろお話が聞きたいなぁ」
ドキドキ…バクバクする心臓の音は、山坊主に聞こえてはいないだろうか?
「だめ?」
目と鼻の先に山坊主がいる。ツンと酸っぱいような匂いがしてくる。
…私の間合い。あとは血を吸いさえすれば…
「かぁーーーっつ!!!」
その大音声と同時に、横薙ぎに襲ってくる金棒を後ろに飛んでかわす。
「ふん! 搦手を使いおってからに、儂には通じぬわ!」
「…そうみたいね」
ドキドキ…バクバクする心臓の音が、警報音のように思えてきた。
「行くぞ!」
こちらにはお構いなしに、鉄棒を振りかぶり…
「ぬん!!」
…振り下ろす。
その動きを見て、横に移動して避ける。
ドコォッ!!
また地面が爆発する。
飛んでくる土くれを、見て、避ける。
ブオンッ!
横薙ぎに振るわれた金棒を、見て、体を傾けて、避ける。
「はぁあ!!」
少し無理な体勢になっている私の顔めがけて、金棒が突かれるのを、見て、躱す。
…いける! 魅了は通じなかったけど、私の感覚は奴の攻撃をとらえている! 避けられている!
元…とはいえ、十二鬼月と十分に渡り合える!
「はぁああっ!!」
金棒が引き戻される前に、山坊主の懐へと飛び込む。そして、その首目がけて手刀を突き入れる。
「…ぬぅっ」
浅い! …でも届く! 私の動きは十分対抗できている!
にぃ…
…奴が笑った。…まずい、何か…
コォオォォーン!
足元の石畳に、金棒をまっすぐ打ち付けたのが見えた。
砕くでもなく、爆発するでもなく、音を鳴らした?
ビクゥ…
「…っ」
…体が動かない。声も出せない。何かされた!
「…不動金縛りの術なり!」
血鬼術? あの爆発する奴だけじゃないの? 初めての体験で、頭の中がぐるぐるする。混乱している。…やばい! まずい!!
山坊主が金棒を振り上げる。…それが、驚くほどゆっくり見える。
…動け! 動け動け動け!
金棒が振り下ろされる…ギリギリ動き出す体…左へ避け…
…べしゃん…
イヤな音とともに、何かが見える…血を吹き出しながら、くるりくるりと廻っているのは…
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい…ちぎれた…いたいいたいいたい…わたしの…いたいいたいいたい…みぎうで…いたいいたいいたいいたいいたい…まだ…いたいいたいいたい…たたかい…いたいいたいいたい…おわって…いたいいたいいたい…ない…いたいいたいいたいいたいいたい…でも…いたいいたいいたい…いたくてたまらない!!!
「ああああああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!!!」
元十二鬼月は、簡単ではないです。
…あのパワハラ会議のせいで、十二鬼月の下弦は弱いってイメージが強いですけどw