しーんーどーいー。
あーあーあー、やってらんない。
私は言葉を尽くしてあげたはずだ。
これで頷いてくれないなら、どうしようもない。
まあ、もちろん、無惨様への恨みがあるのだろう。だからこそ、逃れ者になったんだろうし。
そこは無惨様だ、そういうことは多々あるだろうし、まず間違いなく無惨様の方が悪いんだろう。
そこは同情するし、その大事だった方たちのご冥福をお祈りするのも、哀悼の意を示すのもやぶさかではない。
あんたに大事な人を殺された悲しみと苦しみはわからない…とか言われたら、まあ、その通りでもある。想像はできるけど、わかるとは言えない。
…それでも、あえて言わせてもらう。
その考え方は、後ろ向きだと。
せっかく生きているのに、恨みに囚われ、後ろだけを…過去だけを見て生きていくのは、違うだろう。
今を、未来を見ないと、生きている意味なんてないだろう。
あなたを守ろうと、こちらを睨み付けながらも、隙をうかがっている、あなたの隣の鬼は、今のあなたの大事なものではないのか? …その存在はないがしろにするのか?
まあ、それはそれとして、私が信用できない…というのも、あるだろう。
それも、まあ、わからなくはない。
甘言をもって、適当なことを言って、無惨様の前に引っ立てられるという可能性は、排除できないだろう。
ああ、うん、それはあるな。
信用を得るため、信頼を勝ち取るため、ここは一度退くという選択肢もある。
諸葛孔明は、相手を見定めるために、三顧の礼を強要したって故事もある。
…でも、めんどくさい。
こちらには魅了がある。言ってしまえば、どうとでもなる。
「…阿修羅、そういうわけで、首を刎ねるのだけは禁止ね」
「わかった」
「山坊主は好きにやっちゃって。無惨様の血は薄いけど、再生はするでしょ」
「わかった」
「長子ちゃんは、二人の支援をして。めんどくさい血鬼術を持っている可能性が高いからね」
「わかりました」
「…じゃあ…」
そこで、機先を制された。
…蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 真靡き(ほうがのまい まなびき)…
それは死角から…そう、完全に思考の死角から、襲い掛かって来た一撃で…
ギィンッ!!!
なんとかそれを、愛刀で防ぐ。
「珠世さん、今のうちに裏口から!!」
「三人は玄関から出て、追いかけて!」
「「こいつは私がなんとかするから!!」」
私たちの言葉で、両陣営が即座に動く。
珠世さんたちについては、三人に任せるしかない。
「まったく、またまたあんたか、いい加減しっつこいなあ」
「それは、そっくりそのままお返ししますね」
つばぜり合いをしながら、言葉で応酬する。
「まさか、鬼殺隊が先に、珠世さんにたどり着いているとは思わなかったね」
成宮未来として、そんな話はまったく聞いていないんだけどね。
「まさかもそちらですよ。那田蜘蛛山から一年も経たないで、下弦の肆から上弦の鬼…それも上弦の零になっているなんて、思いもよりませんでした」
まあ、それは、だよねー。
「それに、前回は刀なんて…その刀っ!!」
ギャィンッッ!!
蟲柱が動揺したところを、力を込めて弾き飛ばす。
「その日輪刀! まさかっ!?」
「…まさか、何かな?」
せっかくだから、よーく見えるように、目線の高さまで刀を上げてあげる。
「…そのまさかは、どっちのまさか…なのかな?」
キラキラと輝くような黄白色の刃の中心に、ドクドクと血のような赤が脈打っている特徴的な波紋…柱にまで噂は広がっているんだねえ。
「…まさか、殺して奪い取ったのか?」
ニィィ…
「…それとも、まさか、まさか…お知り合いかも、ですかぁ?」
左目だけ、擬態をする。向こうからは、上弦の文字が消え、綺麗な真っ赤な瞳が見えるはずだ。
「…まさかっっ!!!」
「久しぶりですね、胡蝶様。最終選別試験以来ですかぁ?」
「成宮、みらいぃぃ!!!!」
感想のお返しが遅くなっておりますが、感想は非常に嬉しいので、これからも頂けますと幸いです。