零余子日記   作:須達龍也

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部署異動くらって、実際の忙しさ以上に、心から余裕が奪われてます。
しーんーどーいー。


浅草の鬼6

 あーあーあー、やってらんない。

 

 私は言葉を尽くしてあげたはずだ。

 これで頷いてくれないなら、どうしようもない。

 

 まあ、もちろん、無惨様への恨みがあるのだろう。だからこそ、逃れ者になったんだろうし。

 そこは無惨様だ、そういうことは多々あるだろうし、まず間違いなく無惨様の方が悪いんだろう。

 そこは同情するし、その大事だった方たちのご冥福をお祈りするのも、哀悼の意を示すのもやぶさかではない。

 

 あんたに大事な人を殺された悲しみと苦しみはわからない…とか言われたら、まあ、その通りでもある。想像はできるけど、わかるとは言えない。

 

 …それでも、あえて言わせてもらう。

 

 

 その考え方は、後ろ向きだと。

 

 

 せっかく生きているのに、恨みに囚われ、後ろだけを…過去だけを見て生きていくのは、違うだろう。

 今を、未来を見ないと、生きている意味なんてないだろう。

 

 あなたを守ろうと、こちらを睨み付けながらも、隙をうかがっている、あなたの隣の鬼は、今のあなたの大事なものではないのか? …その存在はないがしろにするのか?

 

 

 まあ、それはそれとして、私が信用できない…というのも、あるだろう。

 

 

 それも、まあ、わからなくはない。

 甘言をもって、適当なことを言って、無惨様の前に引っ立てられるという可能性は、排除できないだろう。

 ああ、うん、それはあるな。

 

 信用を得るため、信頼を勝ち取るため、ここは一度退くという選択肢もある。

 

 諸葛孔明は、相手を見定めるために、三顧の礼を強要したって故事もある。

 

 

 …でも、めんどくさい。

 

 

 こちらには魅了がある。言ってしまえば、どうとでもなる。

 

「…阿修羅、そういうわけで、首を刎ねるのだけは禁止ね」

「わかった」

「山坊主は好きにやっちゃって。無惨様の血は薄いけど、再生はするでしょ」

「わかった」

「長子ちゃんは、二人の支援をして。めんどくさい血鬼術を持っている可能性が高いからね」

「わかりました」

 

 

 

「…じゃあ…」

 

 

 

 そこで、機先を制された。

 

 

 

 …蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 真靡き(ほうがのまい まなびき)…

 

 

 

 それは死角から…そう、完全に思考の死角から、襲い掛かって来た一撃で…

 

 

 

 ギィンッ!!!

 

 

 なんとかそれを、愛刀で防ぐ。

 

 

「珠世さん、今のうちに裏口から!!」

「三人は玄関から出て、追いかけて!」

 

 

 

「「こいつは私がなんとかするから!!」」

 

 

 

 私たちの言葉で、両陣営が即座に動く。

 珠世さんたちについては、三人に任せるしかない。

 

「まったく、またまたあんたか、いい加減しっつこいなあ」

「それは、そっくりそのままお返ししますね」

 

 つばぜり合いをしながら、言葉で応酬する。

 

「まさか、鬼殺隊が先に、珠世さんにたどり着いているとは思わなかったね」

 成宮未来として、そんな話はまったく聞いていないんだけどね。

「まさかもそちらですよ。那田蜘蛛山から一年も経たないで、下弦の肆から上弦の鬼…それも上弦の零になっているなんて、思いもよりませんでした」

 

 まあ、それは、だよねー。

 

「それに、前回は刀なんて…その刀っ!!」

 

 

 ギャィンッッ!!

 

 

 蟲柱が動揺したところを、力を込めて弾き飛ばす。

 

「その日輪刀! まさかっ!?」

 

「…まさか、何かな?」

 せっかくだから、よーく見えるように、目線の高さまで刀を上げてあげる。

「…そのまさかは、どっちのまさか…なのかな?」

 

 キラキラと輝くような黄白色の刃の中心に、ドクドクと血のような赤が脈打っている特徴的な波紋…柱にまで噂は広がっているんだねえ。

 

「…まさか、殺して奪い取ったのか?」

 

 ニィィ…

 

「…それとも、まさか、まさか…お知り合いかも、ですかぁ?」

 

 

 左目だけ、擬態をする。向こうからは、上弦の文字が消え、綺麗な真っ赤な瞳が見えるはずだ。

 

 

「…まさかっっ!!!」

 

 

 

「久しぶりですね、胡蝶様。最終選別試験以来ですかぁ?」

 

 

 

「成宮、みらいぃぃ!!!!」




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