…蟲の呼吸 蜈蚣ノ舞 百足蛇腹(ごこうのまい ひゃくそくじゃばら)…
床を踏み砕きながら、即座に裏口からの逃亡を決め込む。判断が早いね!
…雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃(へきれきいっせん)…
当然、逃がすわけがない!!
…十三連…
本体か虚像かの判断なんてまどろっこしいことはしない、全てをぶっ叩く!!
ガガガガガガガガガッガガガガガガガガガッッ!!!!!
「っ!!」
「はははっ! 速いね! 速いでしょ!?」
…蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 複眼六角(せいれいのまい ふくがんろっかく)…
…雷の呼吸 陸ノ型 電轟雷轟(でんごうらいごう)…
突き、避け、受け、払い、至近距離で目まぐるしく攻守が入れ替わる。
「あははははーーー!!!」
見える、動ける、戦える、そして…勝てる!!
…雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃…
…十九連…
「…こっの!!」
体が紫電を纏う、足が雷霆を打ち、手が雷光を放つ!
ギィィイィィン!!!!
「「!!!!!」」
蟲柱の日輪刀が、根本で折れ飛ぶ!
ドドンッ!!
「…ぅぁ…」
胸、背中、首への、峰打ち三打で、ようやく崩れ落ちる。
「…勝った!!」
…というわけで、首筋に噛みつく。
「ぅがっ! ぺっ、ぺっ!」
血を送り込むついでに、血を吸ったのだが、この子の血、ほぼほぼ毒だね。
藤の毒には慣れてるとは言え、わざわざ取り込みたくはない。
しかし、無茶苦茶するなあ。
人間への毒性がどれだけあるのかはわからないが、さすがにここまで自分の体に取り込んで、無害なんてことはありえない。
わが身を餌にした、死なば諸共の、自爆特攻に他ならないのだろう。
気狂いの鬼殺隊でも、柱ってのはそれの最たるものだね。
「…とにもかくにも、柱は捕獲した。後は珠世さんの方か…」
鴉が一羽、飛び立つ。
「ま、だーよーね」
まず間違いなく、蟲柱の鎹鴉だろう。
「カァァァアァァ!!」
上空で、一羽の鴉が四羽の鴉に取り囲まれる。
「鬼殺隊を相手にしてるんだ。鎹鴉の対策をとってないわけないよね」
鬼になったばかりの頃、鎹鴉を見逃したせいで実家から逃げることになったことは、忘れられないよ。
「カァァ、ヤメッ…」
飛ぶのを邪魔されて、まだそこにいる蟲柱の鎹鴉を…
「…よっと」
飛び上がって、あっさりと捕まえる。
「カァアッ!」
「鎹鴉の魅了はもうお手の物だから、安心して」
鴉の口の中に、指をつっこむ。
さて、ここでおさらい。
魅了の準備としては、私の血を送り込む必要があるんだけど、鎹鴉のような小さな生き物に、直接噛みついて血を送り込むと、量が多すぎるのだ。
最初にそうやって魅了した鎹鴉は、魅了が効きすぎて、完全に自由意志がなくなってしまった。状態としては、影武者にした十七子ちゃんと同じだ。
まあ、ギリギリ人語を解する能力は残ってて、なんとか命令は聞いてくれるから、それなりには使える。
それで、ちょっとづつ、送り込む血の量を減らしたんだけど、直接噛みつくのは駄目だって、四羽目くらいに気付いて、経口摂取に切り替えて…
「カァア! 他ニ鎹鴉ワ、イナイ!」
「おっ、ズィーベン、えらいえらい!」
肩にとまって、そう報告をしてきた鎹鴉を褒める。
ちゃんと魅了ができた最初の鎹鴉が、七羽目のこの子になる。
「アインス、ツヴァイ、ドライ、フィーアも、足止めご苦労様」
最初に蟲柱の鎹鴉の足止めをしてくれた四羽も褒める。返事は返してこないけど、コクリと頷いて返してくれる。
「フュンフ、ゼクスも、待機お疲れ」
他に様子をうかがっている鎹鴉がいないかを、ズィーベンと一緒に確認してくれた二羽にも声をかける。言葉を返してはくれないけど、言葉を理解していることを示すようにコクリと頷き返してくる。
うん、やっぱり鎹鴉は賢いねえ!
十羽くらいせしめたけど、雑魚鬼なんかよりもよっぽど役に立つよ。…まあ、一羽くらい解剖したくはなるんだけど、もったいないんだよなあ。
「…さてさて、お前、名前は?」
「…エン」
「いい子ね、エン。お前は本部に直接行くことができるのかな?」
「…デキナイ。デモ、オ館様ノ鴉ニ、直接報告デキル」
「なるほど、だいぶ近づいてきたね」
さすがは柱の鎹鴉だ。本部のかなり近くまで行けそうだ。
「で、どんな報告をするつもりだったのかな?」
「…例ノ鬼ノ住処ニ、上弦ノ鬼ガ襲来」
「ふむふむ」
「…ソイツハ上弦ノ零、例ノ鬼ヲ逃ガス為、シノブガ迎撃ニ出タガ、敗北」
「ほうほう」
「…上弦ノ零ハ、成宮未来ダッタ」
「ああ、そこは駄目だね。他には?」
「…以上」
「じゃあ、上弦の零の正体以外を、本部に報告して来て」
「…了解」
「アインスとツヴァイは、この子の後を追っかけて」
コクリと二羽が了承を示す。
「他のみんなは、いつものように、私の周囲で待機ね。ズィーベンの言うことをよーく聞いてね」
「任セロ」
ズィーベンが片羽を上げて請け負って、他の四羽がコクリと頷いた。
「じゃ、解散!」
私の言葉に、八羽の鴉が飛び立つ。
「さてさて、状況が動いてきたね」
ドイツ語はかっこいいねw
零余子ちゃんも、雑魚鬼よりも凝った名付けをしてますよ。
ちなみに、アインスは山田太郎君の鎹鴉でした。
ツヴァイ、ドライ、フィーア、フュンフ、ゼクスまでがコマンド待ち鎹鴉です。
ズィーベンは風の呼吸の剣士の鎹鴉で、日輪刀も奪いました。
ズィーベンを隊長にして、七羽で零余子ちゃんまわりの警戒をしてます。
アハトが今は猗窩座様にくっついていてます。
ノインが水の呼吸の剣士の鎹鴉で、日輪刀は阿修羅に行きました。今は無限城につめてます。
ツェーンは黒死牟様に貸し出してたりします。
零余子ちゃんはヌルを自分の鎹鴉の名前にしようと思ってたけど、雀だったので保留にしてます。