零余子日記   作:須達龍也

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この話を書いた後、最初の部分はおさまりが悪いなと思い、前の話に追加しました。
まだの方は、前の話から読み返して下さい。


浅草の鬼11

「…ここ…は!」

 

 

 覚醒から、すぐに大体のあらましを思い出す。

 

 自分の体の様子を伺うと、白い拘束具に包まれているのがわかる。

 試しに腕や足を動かそうとしてみるが、びくともしない。ベッドの上でもぞもぞと動くのが関の山だ。

 

 それではと、周囲の様子を見回すと、全体的に白い部屋で、印象としては病室のように感じる。

 飾り気のない内装に、武骨なベッドが置かれているだけで、漂ってくる薬の匂いが病室という印象を与えているのだろう。

 

 

「…なんのつもり…」

 

 

 上弦の零…あの女の鬼に敗れたのは、覚えている。

 

 下弦の肆であった頃からの、三回目の邂逅。

 

 一度目は冬の京都。

 十二鬼月であることに驚くほどの弱さだったことが、特に印象に残っている。…ただ、まず間違いなく、偽物であったのだろう。

 

 二度目は那田蜘蛛山。

 十二鬼月がいると言われていた那田蜘蛛山に、あの女はいた。…いや、あの女もいたというのが正しい表現か。

 上弦の参、下弦の肆、下弦の伍、まさかの三体もの十二鬼月がそろっていた。何の冗談かと思ったものだ。元下弦の壱が二体いたことまで含めると、まさにありえない顔ぶれだった。

 あの時は、強さよりも不気味さを感じた。

 毒が効かないことに加え、鬼にはありえない肉体を持った元下弦の壱達をあごで使う様子に、言い知れぬ不安を覚えた…そう、成宮さんの言葉を思い出すほどに。

 

 …というか、成宮さん、ああっ! もうっ!!

 

 三度目は珠世邸。

 珠世さんとは、じわじわと距離をつめているところだった。

 彼女は鬼ではあるのだが、その心根は非常に善良で、姉さんの思い描いた仲よくなれる鬼というのは、彼女のような鬼なのではと、思わざるを得なかった。

 まだお互いに警戒感が残っていたとはいえ、その知識、経験、技術には素直に尊敬の念を覚えたものだ。

 

 そんな折での、襲撃だった。

 

 見たことのある女の鬼が、なぜか下弦の肆になっており、やりあった不可思議な鬼二体に、あの女が更に驚くべき上弦の零となって現れた。

 

 上弦の鬼…ここ百年、鬼殺隊の柱の死亡原因のトップ。

 たくさんの柱が殺されながら、上弦の鬼の一体たりとも倒せていない。…姉さんが亡くなった理由も、上弦の鬼だ。

 那田蜘蛛山で一合だけまじえた上弦の参、その強さは私、カナヲ、更に冨岡さんを加えて、三人がかりでギリギリやりあえるかといった印象だった。その場には更に下弦の肆、伍などもいたのだから、撤退の判断に間違いなかっただろう。

 

 

 そんな上弦の参を超える、上弦の零…そんな役職は聞いたことすらなかった。

 

 

 ただ正直、強いのは強いのだが、上弦の参以上だったかと言われると、それはないと思う。

 下弦ではありえない強さではあるが、上弦の上位…それも最上位の零を冠するほどの強さでは、ありえない。

 

 

 

「…ええ、わかってる。…無理やり、目をそらしているわね」

 

 

 

 あの鬼…上弦の零は、成宮未来だったんだ。

 

 

 下弦の肆の特徴を、これでもかと言わんばかりに兼ね備えていた、新人隊士。

 違和感はあった。怪しんだし、調査もした。

 

 

 …そして、問題ないと結論を出した。

 

 

 …なぜか?

 …そんなの決まっている。太陽の下で、普通に活動していたからだ。故に、人間であると、結論を下した。

 

 

 下弦の肆であった鬼が、上弦の零へとありえないほどの昇進をしていた理由。その理由も、今では明らかではないか。

 

 

「…陽光を克服したから…」

 

 

 …それだけではないだろう。

 

 …それだけのはずがないだろう。

 

 

 

「………鬼舞辻無惨に、もう陽光は通じない…」




捕らわれたしのぶさん、最悪の事態に気付きました。
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