まあ、王手がかかってしまった…ということです。
「…ふぅ」
拘束を解かれたので、体を伸ばす。
正直、あぶないところでした…
「はー」
生理現象を伝えたときの、あの嬉しそうな下弦の肆の顔と…
「大丈夫です。死にはしませんよ」
あの鬼のような発言は、絶対に忘れない!
なんらかの血鬼術だとは思うのですが、ちょうど都合よく上弦の零から連絡があって良かった。
たとえ、ベッドが汚れるのを嫌ったからだとしても、本当に良かった!
…さて、気を取り直して…
意識して、右手、左手、右足、左足と、動かしてみる。
「…問題ない」
拘束されていた時からそんな感じはしていたんですが、体に異常はなさそう。
「…さて、あちらの要求は何なのか?」
生かしている以上、私に対して何か要求することがあるということで…
「…鬼殺隊の本部の場所…ではない?」
私自身がわかっていない以上、それに対しては尋問されようが、拷問されようが、答えようがないんですが…その場合、私を五体満足で置いておく必要はない。
耳が聞こえ、言葉が発せられるなら、手足の一本や二本なくても…むしろ、奪っておくに越したことはないだろう。
「…では、私にしてもらいたいことがある?」
具体的にはわからないが、五体満足であるということは、そういうことなんだろう。
「…一体何を言ってくるのかしら?」
八方ふさがりの現状、ある意味、藁にも縋る思いが、無きにしも非ず…と言った所か。
バァン!!
「へっ?」
「じのぶぢゃーーーん!!!!」
「むぎゅ…」
扉が開け放たれたかと思ったら、すごい勢いで突進してきたものに、全身をぎゅうぎゅうと締め付けられてしまった。
「うぇぇぇ、よがっだよーーー!!!」
甘い香りと、鍛えられているのに柔らかい感触、どこか緊張感が霧散してしまうような雰囲気…
「甘露寺、さん?」
「びええぇぇーーーーん!!」
なぜここに甘露寺さんが?
…そう思う間もなく…
「本当に無事なようだね」
「…時透、くん?」
視界を完全に甘露寺さんにふさがれているので見えなかったが、声の感じからあたりをつけた。
「そうですよ」
なぜここに、甘露寺さんと時透くんが…
「…まさか、助けに…?」
自分で聞きつつ、それはないな…とは思った。
「…だったら、良かったんですが」
その答えは、予想通りだった。
パンパン…
「はーい、感動の再会はそこまでー」
続けて聞こえてきた声が、私の想像が間違っていないことを示していた。
「上弦の、零」
甘露寺さんをべりっと引きはがして、視線を奴へと向ける。
「はい、そうですよー」
緊張感なく、にへらっと笑いながらこっちを見てくるのは、件の鬼…上弦の零。その後ろに付き従っているのが、ツンと澄まし顔の下弦の肆。更には、侍従のように左右を固める、元下弦の壱達。
そして…
一目で、ゾワリ…と背筋から震えが襲ってくる。
「…上弦の、壱…」
その六つの目の二つに書かれた文字を読んで、納得する。
かつて一瞬だけ刃を交えた、私の人生で最強の鬼…上弦の参をも確実に上回る圧力、上弦最強の鬼であろうことは間違いない。
こちらは柱が三人そろってはいるが、肝心要の日輪刀がない。
この状態で行動に移したところで、誰か一人だけでも逃げることができるとは、到底思えなかった。
「…それで、私に何をさせようって言うのかしら?」
細かい駆け引きはなしだ。ただ気になったことを聞いた。
「おやっ? なかなか話が早いですね。…でも、残りのお二人がついて来られてないようなので…」
その言葉通り、甘露寺さんと時透くんがポカンとした表情をしている。
状況を整理する時間もなかったのだ。仕方のないことだろう。
「…まあ、最初の大前提として、これだけは言っておきましょう」
腰に手を当てて、フフンと笑った。
「まず、鬼殺隊は潰します。…これは、希望でもなければ、予定でもありません。決定事項です」
原作でもそうですけど、蜜璃ちゃんの癒し力は半端ないですw
殺伐とした空気でもゆる~く弛緩させてくれるのは、鬼殺隊の面々も(原作者も)ありがたかったことでしょう。