零余子日記   作:須達龍也

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零余子ちゃんから、柱三人への提案です。



鬼殺隊壊滅作戦2

「そんなっ!」

 

 恋柱が思わずと言った感じで、声を上げる。

 声こそ挙げなかったが、霞柱が不満そうな顔をしている。

 

「ふっ…」

 

 鼻で笑うしかない。むしろ、何を驚くことがあるのかと聞きたいくらいだ。

 

「…まあ、あなた方の目的がそうであることに、何も驚きはしません」

 

「おっ?」

 他の二人の柱に比べて、蟲柱には何の動揺も見られない。

「冷静ね」

「我々があなた方の討滅を目的としている以上、あなた方の目的が我々の壊滅であるのも、むしろ自明のことでしょう」

 そう、やる以上やられる覚悟があるのは、当たり前のことだ。むしろ、この当たり前に気付いていない雑魚鬼が驚くほど多い。

 

「…それで、その上で、私達に何を望むのです?」

 

 一歩も怯まぬ意思をもって、こちらを見返してくる。…ある意味、これくらいのがちょうどいい。

「そうね。鬼殺隊を壊滅させるのは決定だと言いましたが、はてさて、じゃあどうすれば壊滅したと言えるかしら?」

 

 私の逆質問に、思わず浮かべたきょとんとした表情は、少し可愛くて思わず笑ってしまう。

 

「鬼殺隊の当主を討つのは、まず絶対条件よね。あとは柱を全滅? …まあ、そこまでは行かなくても、半壊くらいは必須でしょうね」

 

「…うっ」

 

 私の言葉に、そのことを想像したのか、恋柱の表情が青くなる。

 

「それで十分? それで壊滅? どう思います、黒死牟様?」

 

 私の問いに、黒死牟様が六つの目を全てつむって、考えられる。

 

 

「否… かつて… そこまでしたことは… ある…」

 

 

 再び目を開かれて、はっきりと否定した。

 

「産屋敷… 当主の首を獲った… 柱も… ほぼほぼ討ち取った…

 鬼殺隊を… 壊滅せしめた… そう… 考えた…」

 

 黒死牟様の言葉に…そこに込められた思いに、柱三人の顔から血の気が失せていく。

 

「だが… 残った… 残っている… それが答えだ…」

 

「ありがとうございます」

 私の質問に対し、十分以上の答えを返してくれたことにお礼を言う。

「さて、当主を討ち、柱を半壊させても不十分。残党が産屋敷の子供を担いで、再び鬼殺隊を立て直すだろうことは、過去の歴史が教えてくれている」

 私の言葉に、その通りだというように、黒死牟様が頷いている。

「では、どうするか? 産屋敷一族郎党をもろもろ討ち取る? …そうしても、柱や元柱を担いで再興しないかしら?」

 思考をあえて口にする。そうしながら、柱三人の様子をうかがう。

「ならば、鬼殺隊の隊士を末端に至るまで、全て殺す? …いやいや、無理でしょ。そんなことは不可能だ」

 

 そもそも、そんなことはしたくない。

 

「となると、発想自体を変えるしかない」

「…と言いますと?」

 私の言葉に、当意即妙に長子ちゃんが合いの手を入れてくれる。

「今の鬼殺隊…鬼を全滅させることを目的としている鬼殺隊を、壊滅させるということならば、どうかしら?」

 よくわかっていない顔の恋柱、あまり表情が変わらない霞柱、思い当たったという顔になる蟲柱、いいね、頭の回転が速いね。

「そもそもが、鬼が憎いかたきだからって、なら全滅させようっていうのは、発想が飛躍し過ぎてない?」

 そこで、蟲柱と視線を合わせる。

「胡蝶様は、鬼にご両親を殺されたんでしたよね?」

 役職ではなく、あえて名前で呼びかけた。

「…そうです。よくご存じですね」

「いろいろと情報通な友人が居ますので」

 硬い表情の蟲柱に、あえて笑いかける。

「ご両親を殺した鬼が憎い、復讐したい、それは遺族の正当な権利だと思います。

 …でも、それはその鬼に対してだけですよね? なんで全部の鬼になるんですか?」

「………」

「もし、人間の物盗りに殺されていたなら、どうです? かたきはそいつだけですよね? 人間を全滅させようってなりますか?」

「………」

「まあ、あなたも人間ですし、それだと難しいですよね。じゃあ、熊とか、オオカミだったらどうですか? 熊を全滅させよう、オオカミを全滅させようって、なりますか?」

「………」

 蟲柱は答えない。私の質問に言葉がないというよりは、私の考えを推し量ろうとしているようだ。

 

「それはっ! …それは、鬼が全部、悪い鬼だから…」

 

 思わずと言った感じで出た恋柱の言葉は、最後は尻すぼみになる。

「悪い鬼しか、いませんでしたか?」

 恋柱に視線は向けず、蟲柱に向けたまま、質問する。

 

「…そう、ですね…」

 

 苦笑して、否定とも肯定とも取れるような言葉を、返してきた。

 

 

「そもそも、私もいい鬼ですからね!」

 

 

「「「は?」」」

 

 三人が三人とも同じ顔をした。なんだ、その反応はっ!

 

「私、人間を一人も殺してませんし!」

 

「…まあ、直接は、なあ」

「…鬼は大量に殺したけどなあ」

「…ノーコメントで」

「……」

 

 まさかの、こちら側にも味方がいなかった!

 

 

「ともかく! 鬼にだって、いい鬼も悪い鬼もいます! …まあ、悪い鬼の方が多いのは、否定しませんが」

 

 

 一度、仕切り直す。

 

「そもそも、私も、無惨様も、今の人間の世を否定する気はありません。鬼が跳梁跋扈するような、荒廃した地獄絵図にするつもりなんて、さらさらありませんから」

 そこだけは否定しておく。

「ですから、協力できる…とまでは、さすがに言いませんが、どこかで折り合いをつける…というのは、できるはずです」

 私の話に、蟲柱が真剣に耳を傾けている。

「…ただ、今の鬼殺隊では無理です。どうやっても、相容れない。だから、今の鬼殺隊は、解体します」

 私の表現が変わったことに、柱三人の表情も変わる。

 

「次の鬼殺隊には、ある程度話が分かる…いえ、話が通るようになるといいですね」

 

「…それを、私達に…」

 その蟲柱の言葉は、質問と言うよりは、確認のようだった。

 

「あなた達の目的はなんですか? 鬼を全滅させることですか? …それとも、鬼の犠牲者を減らすことですか?」

 

 無惨様を討つ…それは、産屋敷一族の目的かもしれないが、他の鬼殺隊の…少なくとも一般の鬼殺隊士の目的ではないはずだ。

 

「もしも、後者が目的であるというならば、相容れれる…いえ、ある程度の妥協ができるはずです」

 

 蟲柱が考えこむ。霞柱がうつむく。恋柱がおろおろあわあわしている。

 

 

 

「鬼を全滅させるのではなく、鬼の犠牲者を減らすことを目的とする、そんな新しい鬼殺隊をあなた達に任せたいというのが、私からの提案です」

 

 

 

 私の言葉に、この場にいた全員が黙り込む。

 

「無惨様が… 怒りそうだな…」

 

 黒死牟様が嫌なことを言う。…うう、わかってますよぅ。

 

「…できないことはできません。そこはなんとか妥協して頂きます」

 

 そこは言い出しっぺの私が頑張りますよ。

 

「…考える時間を、いただいても?」

 

 蟲柱がそれだけを言ってきた。

 

「…いいですよ、まだ時間はありますから」

 

 

 とりあえず、そう答えてはあげるけど…

 

 

 

「…でも、あまり長い時間はないですけどね…」




スーパーネゴシエーターである零余子ちゃんの導き出した答えがこれでした。
お互いに妥協点を見出しましょうという、実に大人な意見です。
無惨様の賛同を得るのが、一番難しいかもしれませんw
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