20年以上続いて、それもトップの人気でいるって、とんでもないですね。
「さてさて! それではついにお待ちかねのあのお方の登場です!!」
私がそうやって煽っているというのに、蟲柱は二の池に夢中だし、無惨様に至っては目をつぶっておられる。
まあ、蟲柱の因縁もわかるし、無惨様は別に池を見なくても、鳴女さんの視覚を共有すればまだ映していない場面だって見ることが可能なのは、まあわかるんですけど、ここは乗って欲しい!
「ええぇい! 鳴女さん、お願いします!」
べべんっ!
三つ目の池に映し出されたのは…
「上弦の参、猗窩座様でーす!! きゃーー、かっこいいーー!!!」
私のその言葉に、長子ちゃんと山坊主阿修羅が拍手をしてくれる。うん、呼んでおいて良かったよ。
「対する柱は…風柱とどっちが強いかは、個人の感性によります。あくまでも私の独断と偏見であることを改めて言っておきます。
というわけで、発表します!」
画面の端っこに登場したのは、日本人ではまず見ない、燃えるような赤毛を靡かした男だった。
…まあ、私が言うのもなんですけど、恋柱の髪に比べたら、まだ全然あり得るんですけどね。
桜餅の食べ過ぎでそうなったとか言っているけど、…ねーよ! ありえねーよ!! 科学に喧嘩売っているのか!?
…おっと、話がそれた。
「コホン! 三つ目の池にてお見せするのは、上弦の参…猗窩座様対、炎柱…煉獄杏寿郎となります!」
「…さて、また会ったな!」
東北にて相まみえた上弦の参に、そう声をかける。
「…上弦の参、猗窩座だ」
「炎柱、煉獄杏寿郎だ!」
名乗られたので、名乗り返す。
「杏寿郎、ここはあの時の東北の漁村とは違う。ここでは互いに守るものはない。つまり、互いに相手に集中できるというものだ」
ふむ、互いに…と来たか。
確かにあの場では、新人三人娘が俺の守るべき対象だった。上弦の参は、上弦の伍がそうだったということか?
「少し意外だな! 鬼にも仲間意識が…守るという認識があったんだな!」
俺のその言葉に、実に不本意そうな顔をする。…何か間違っただろうか!?
「あれは行きがかり上、たまたまだ。そう捉えられるのは、不本意極まりない」
「では、何を守る? それに、守るべきものがいてこそ、発揮できる強さもあるだろう!」
俺がそう言うと、奴もまた真面目な顔になる。
「認めよう、杏寿郎。そういった部分は確かにある。
守るべきものがあってこそ、強さに意味がある。それは確かに真実だ」
ますます意外だ! この手の話で、鬼と意見があうとは思わなかった!
「そうだ! 弱き者を助けるのが強き者の責務だ!」
それは、俺の指針に他ならない。それこそが俺の生きる道だ!
「…お前の手は、ずいぶんと長く、大きいのだな…いや、あるいは、自信過剰なんだろうか?」
…?
「俺の守るべき大事なものは、一つ、二つ、三つ…そう、それだけでいい。それだけ守れれば、それで十分だ」
奴の…猗窩座の言葉には重みがあった。これまでの軽い上っ面ばかりの、他の鬼共の言葉とはまるで違う。
「…だが、困難であることは、やらない理由にはならない!」
「訂正しろ、杏寿郎!! 守る数が少なくても、簡単なわけではない!!」
その言葉には、怒りがあった。悲しみがあった。苦しみがあった。心の籠った、重みがあった。
「そうだな! 訂正しよう! 数の大小は問題ではなかった!
たった一つの大事なものを守る…そのことが如何に困難であるか、忘れるなど愚かなことだった!!」
反射的に反論してしまったが、考えなしの言葉だったと言われても仕方がない!
大事なものを守ることの困難さ、それは知っていたはずだろうに!
「ははっ! 鬼の言葉を受け入れるか、お前はおかしな柱だな、杏寿郎」
「うむ、よく言われる!
だが俺は、誰が言ったかよりも、その言葉の内容を…いや、その言葉の重みで判断したいと、そう思っている!」
「…一応聞いておこう。杏寿郎、鬼にならないか?」
「ならない!」
瞬時に答えると、苦笑だろうか、かすかに笑顔を浮かべた。
「…わかった。
鬼になることで守れるものもあれば、鬼になることで守れなくなるものもある。
お前の意思を、尊重しよう」
猗窩座がそう言うと、静かに構えた。
「さあ、ここからは言葉はいらない。全力でぶつかり合おうぞ!」
映画とは違って、ここでの猗窩座様と煉獄さんは、話が噛み合いますw
立場は大きく違いますが、本来の心根はとても良く似ているのではないか…そんな風に思います。