登場初期のしのぶさんって、割とひどいですよねw
鬼相手はともかくとして、善逸への対応も、ちょっと、ねえw
下弦の肆…累と同格の十二鬼月。
それは、恐怖でしかなかった。
連れていた方々にしても、そうだ。
上弦の参…猗窩座様。
十二鬼月でも、更に別格の上弦の鬼。
こちらを見ようともされなかったが、もし目が合いでもしたら、失神もありえたので、逆にありがたかった。
元下弦の壱…阿修羅様に山坊主様。
元とは言え、累よりも位が上の十二鬼月。
当時は知らなかったが、方相氏の体だったので、鬼とは気配が違うのを…別格の存在故の気配だと思ったものだ。
秘書と紹介された…長子様。
あの当時は無位で、そんなに強い気配もなかったので、唯一ホッとしたのを覚えている。
まあ今では、零余子様の後の下弦の肆になり、京都の本拠地の取り纏め役もされており、一番お世話になっていたりするのだが。
…そして、零余子様。
その当時では…ごく最近、十二鬼月に入った鬼であり、鬼になったのですらここ数年という話だ。もしかしなくても、私よりも若い鬼なのかもしれない。
零余子様は変わった鬼だった。
強い鬼というのは、一様に変わったところがあるのだが、そういうのとはまた違った変わりようだった。
十二鬼月だというのに偉ぶるところがなく、私や母役の鬼に対して、にこやかに話題を振ってくれたりと、実に気さくな感じだった。…まあ、急に性格が激変することもありうるかもしれないと、当時はそれでもビクビクしていたのだが。
更に、零余子様と長子様は、鬼なのに寝るということで、ひどく驚いたものだ。
まあ、そのおかげで、私に対して興味を持ってくれたのだと思うと、実にありがたいことだった。
そして、運命の日がやってきた。
「…侵入者だね。鬼殺隊かも」
累が無表情にそう告げた。
「母さんは表側、補佐には姉さんが。兄さんは裏側、父さんはそっちに」
累の指示に皆がコクリと頷くと、さっさと動き出す。
「…俺たちもなんか手伝おうか?」
阿修羅様がそう尋ねてくれる。
「問題ない。…家のことは家族でなんとかする」
累がそう言って、お断りをした。
それを尻目に、母役の鬼と一緒に持ち場へと向かう。
母役の鬼…名前は知らない。…そもそもあるのかどうかもわからない。
私よりも先に、この那田蜘蛛山にやって来ていた。…どれだけ先に来ていたのかも知らない。
累の手前、母さんと呼んではいるが…もちろん、そんな思いはサラサラない。
わかっていることと言えば、だいぶ幼いうちに鬼になったようで、実際の姿は子供そのものだ。…それゆえに、よくミスをしては累や父役の鬼に折檻をされている。
…ただ、私がこれまでに会ったことのある女鬼の中では、一番強い。…あくまでも、その当時までは…となるけれど。
噂を聞いて、那田蜘蛛山にやって来た鬼は、それなりに居た。
家族の頭数も、最大で十を超えたこともあったらしいし、延べの数に至っては知らないし、知りたくもなかった。
そんな中、私の知る限りずっと母役をやっている以上、実力があるのは間違いない。
彼女が累からもらった糸の能力は、人形遣いと呼称されているものだ。
文字通り、この山に入った人間を、その生死に関わらずに糸を使って操作することができる。…それも、とても視認できないような遠くからだ。
この山中にいる蜘蛛と、張り巡らされている糸を通して、認識できているらしい。
そして、彼女の奥の手は、元父役の鬼の死体…いや、あくまでも死体のようなものを、操ることだ。今の父役の鬼よりは弱いのだろうが、それでもその辺の鬼よりもよほど力があり、とても頑丈だ。
実際、遠距離では、私も勝てないだろう。
家族の中では、最も遠距離戦闘に長けた鬼と言えるだろう。…もちろん、累は除く。
その次に遠距離が得意なのは、兄役の鬼だろう。
母役の鬼程ではないが、山中の毒を持つ蜘蛛を通して、なんとなくその場の状況を掴むことができるらしい。更には、毒蜘蛛に簡単な命令を出すこともできるそうだ。
彼が累にもらった蜘蛛の能力が、毒だ。
その毒は、人間に撃ち込むと、数刻も経たずに蜘蛛へと変える。…一番えぐい能力と言える。
そして、父役の鬼は、近接に特化している。
特段に、糸や毒などといった能力は持たず、特徴は強く、頑丈だということだ。その代わりに、知能は低い。ただただ累の命令を聞くだけだ。
彼が累に与えられた蜘蛛の能力は、脱皮だ。
大きな手傷を負わされると、より強く、より頑丈に、そして、より大きな姿へと脱皮する。
家族の中では、最も近接戦闘に長けた鬼と言えるだろう。…これももちろん、累は除く。
私はと言えば、遠距離攻撃能力は持っていない。近接戦闘に関しても、母役や兄役よりは強いが、父役には遠く及ばない。
私が累にもらった糸の能力は、糸束だ。
その糸は、硬くしなやかで、繭状にすれば、内部に溶解液を出すこともできる。
食の細い私には、非常に役立つ能力ではあるが、戦闘能力という意味では、かなり微妙なところだ。
もちろん、かつての私からすれば、格段に強くなったのは間違いないのだが…より強く、より役に立つようにならないと…と、そんな強迫観念は、いつもあった。
…どこまで強くなればいいんだろう?
…どれほど役に立てればいいんだろうか?
……その答えは、いつか出るものなのだろうか?
那田蜘蛛山って、鬼の縮図そのものな感じがします。
人間に対しては、捕食者としてふるまいますが、より上位の鬼に対しては、気まぐれに殺されないように、オドオドビクビクすることになる。
せちがれぇ…