零余子日記   作:須達龍也

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決めてたけど出し損ねていた設定を、ここぞとばかりに放出しますw


ある女鬼の話3

「…難しい問題ですね」

 

 

 私の愚痴にも似たその問いに、長子様は真剣な表情をされた。

「その答えは、あくまでも相手にゆだねるもの。ここまででいいやと思ってしまえば、駄目なのは間違いないでしょう」

 その答えに対して、私もうなずく。

 

「向上心は大事です。

 …大丈夫ですよ、零余子様はああ見えて、そういうところはよく見てくださいます。お互いに頑張りましょう」

 

 

 その言葉に、だいぶ救われた気になった。

 

 

 

 

 

 …話をあの日に戻そう。

 

 あの運命の日、こちらの戦果としては、鬼殺隊の一般隊士を十七人殺した。

 対して、こちらの被害は、父役及び兄役の鬼が死んだ。

 

 …被害の全ては、鬼殺隊の柱によるものだと推測される。

 

 女の柱…及びその継子の女については、実際にこの目で確認できた。

 柱の女のその軽やかな動きは、私では攻撃を当てられないだろうと理解できたし、継子の女の攻撃は、私だとたちまち頸を斬られただろうと、思わざるを得なかった。

 

 兄役父役と、私と母役の違いは…その生死を分けた運命の違いは、たまたまこちらに零余子様達が来られたかどうかの違いに過ぎない。

 

 

 零余子様達が来られたところに、鬼殺隊が攻め込んで来るなんて、なんて間の悪いと思ったものだが…どう考えても、間の悪かったのは、明らかに鬼殺隊の方だったのは間違いないだろう。

 

 

 

 …この結果、那田蜘蛛山の放棄が決定した。

 

 

 

 

 

 那田蜘蛛山という本拠地を失った私達に対し、零余子様が京都へとご招待下さった。

 三階建ての自然製薬株式会社及び、四階建ての自然研究所の建屋の間…グラウンドの下、その広大な地下が十二鬼月としての零余子様の本拠地だった。

 自然研究所の地下二階…といっても、踊り場と扉があるだけなのだが…「関係者以外立入禁止」と書かれた鉄扉をくぐると、まだ珍しいコンクリートの白壁が続く廊下へと出る。

 二階分の高さがあるためか、天井はかなり高い。5メートル程はあるだろうか。

 10メートル程廊下を進むと、突き当りに再び鉄扉が現れる。そこに書かれている文字は…

 

 警告!! 関係者以外ノ立入ヲ禁ズ! 死ンデモ知ランゾ!

 

 今度の警告は、更に直接的だった。

「まあ人間だったら、三人がかりでなんとか開く程度の重さだから、そうそう入ってくることはないんだけどね」

 そう言いながら、零余子様がその扉を軽く開く。

 

 

「…ようこそ、私の城へ」

 

 

 印象としては、すごく広いな…というものだった。

 そこは50メートル四方はあるのではないだろうか、高さも5メートルほどあるので、地下だというのに、閉塞感がまるでなかった。

 数メートル先に1メートルほどの高さの壁が、40メートル四方を覆っているようだ。壁の向こうは吹き抜けになっており、この空間も大部屋というよりは、ぐるっと回る廊下になるのだろうか?

 壁から見下ろすと、更に2階分ほど下がった空間があった。

 階段などは特になく、全員で飛び降りる。

 

「闘技場兼、稽古場って感じかな」

 

 そこは40メートル四方と広く、高さも吹き抜け分を合わせて10メートルくらいと高く…地下闘技場と言った所か。

 コンクリートの壁しかない中、更に鉄扉があった。

「その扉の向こうは浴場だよ。

 あそこを入ると下足置きのある控室があって、その奥に男女に分けた着がえ場へののれんがあるので、毎日とは言わないけど、それなりにお風呂には入ってね」

 お湯につかれるというのはありがたい。

 那田蜘蛛山では水場で洗ってはいたが…うん、本当にありがたい。

「この闘技場も猗窩座様と…それに、阿修羅山坊主の希望で作ったんだけど、もちろんみんなも自由に使ってくれていいからね」

「…みんなと言いますか、どれくらいの鬼がここにいるんですか?」

 

「あなた達を入れて、全部で十五になったかな。…そうだね、先にみんなの部屋に案内しようか」

 

 ひらりと飛び上がって、再び元の廊下へ戻る。

 闘技場をぐるりと回る逆側の壁に、ずらっと扉が並んでいるのが見える。

「8畳の部屋を30戸用意しているんだけど、想定より入居者が増えてきたら、相部屋になってもらうことになるのかな」

 そう言いながら、零余子様が手近な扉を開ける。扉脇の名札には名前が書かれてなかったから、特に使用者はいないようだ。

「間取りは全部同じで、備え付けのベッドに、机に、書棚に、箪笥に、物置にってなってる。

 日用品と衣類については、とりあえずの数用意したけど、最低限のものしか置いてないから、いるものがあったら要望書に書いて出してね。…まあ、よほど高いものでない限りは、却下しないから」

 部屋は綺麗で清潔な作り…これまでの那田蜘蛛山の廃墟と比べると、住環境のレベルが跳ね上がっている。

 

「…ずいぶんと、至れり尽くせりだけど、食事はどうなるのかな?」

 

 累が無表情に、そう聞いた。

「勝手に上で調達…というわけには、もちろん行かないんでしょ?」

 どこか挑戦的なその累の物言いに、零余子様が苦笑する。

「まあ、それだけは、絶対に却下だよ。

 この敷地内のうちの研究員や社員はもちろん、関係なさそうな赤の他人であっても、勝手に殺したり、喰ったりは禁止させてもらう」

 人里から離れた山なんかではないのだ。それはそうだろうなと思う。

 

「じゃあ、次は食堂に案内するよ」

 

 案内された食堂は、入り口があったところからは闘技場を隔てた、向かい側にあった。

 中の広さは十五畳ほどと、結構広い。テーブルと椅子が備え付けられているだけの、簡素な感じだ。

「食材の調達ルートは確保している。まあ、そのままの状態じゃなく、加工した状態で出てくるけどね。食事はここだけで済ませてもらう。

 毎日一枚食券を配るから、それをそこのカウンターで提示すれば食事が出されるシステムになってるから。

 配給される食事の量は全員同じで…もちろん、誰かのを奪い取るのは却下だよ。食券には名前を書いておくことにするから、別人だと出さないように…あっと、出された後のを奪うのも駄目だからね」

 累を見ながら、追加の決め事が増えていってるようだ。…まあ、私達は累によこせと言われたら渡すだろうから、それを考慮してくれているのだろう。

 

「食堂の隣は、図書室になってるよ」

 

 非常に重厚な木製の扉をくぐると、いくつもの書棚とそこにびっしりと収まる本が、この部屋のまさに主人だと言わんばかりに存在した。

「基本的には、この部屋にある本はそこの机と椅子で読んでね。

 仕方なく持ち出す場合は、そこのノートに本のタイトルと自分の名前と借りた日付を書いてね。返した際に、返却日を書いて完了になるから。

 持ち逃げしようだなんて考えちゃあ駄目だよ。その場合は私が敵になると覚悟するようにね」

 

 

 さすがに、それだけは、絶対にナシだ。




建築当初のでっかい地下空間を見ていたご近所の方々…
そりゃあ軍事施設だと思っても、ちかたないね!(爆)
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