零余子日記   作:須達龍也

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Q.もしも、父蜘蛛、兄蜘蛛にも名前をつけるとしたら?

零余子「…えー、いらないんだけど」

Q.もしも、もしもの話です。

零余子「…んー、大蜘蛛と……臭蜘蛛(くさぐも)?」

そこに、愛はなかった。



ある女鬼の話5

 長子様の秘書…的なものになってから、一番最初に渡されたのが…

「…紫色の薬?」

 …瓶に入った紫色の液体だった。

「紫色の彼岸花から抽出した薬です。飲むよりは、直接血管に注射したほうが効果が出るのは早いから」

「…はあ? どんな効果が?」

 結が瓶を電灯に透かしながら、そう聞いた。

 

「太陽の下でも、問題なく行動できるようになるわ」

 

 

「「ぶっ…」」

 

 

「…ああ、二時間って制限はあるけど」

 

 長子様が追加で注意事項を言ってくれたけど、とんでもない薬だった。

「追加の青い彼岸花の薬は、さすがにまだできてないし…まあ、できていても…まだあなた達にまでは、回せないからね」

 

 なんだか、サラリと超重要事項が語られてる気がする!

 

「…じゅ、重要なものなのでは?」

 先ほどまでと違い、結が両手で落とさないように大事に抱えながら、そう聞いた。

「まあ、貴重品ではあるけど、私の仕事の手伝いには必須だからね。隣でいきなり燃えられても困るし」

「仕事は屋内だけかと、思ってました」

「…基本はね。京都市内くらいは普通に回ることもあるから…まあ、移動も基本は車なんで、一日で1時間も太陽の下にでることはないとは思うけど。

 …正直、仕事中にそんなことを計算できる気はしないので、自分たちで把握しておいてね。あとで注射器を渡すけど、その瓶の量で十回分になるわ。一度に全部使っても二十時間分にはならないから」

 

「…え、えっと、いくらくらい…いえ、なんでもないです」

 

 結が値段を聞こうとして、やっぱりやめた。うん、正解だよ。聞いたら多分使えなくなる気がする。間違いない。

 

 

 …なんだか、ここに来て…いや、零余子様に会ってから、驚いてばかりだ。

 

 

「…さすがに、もうこれ以上は驚くことはない…よね?」

 

 

 

 

 

「ばっばーん! 鬼殺隊に入隊したよ。これは隊服で、こっちが待望の日輪刀!!」

 

 久しぶりにお会いした零余子様は、前に那田蜘蛛山で見たことがある、鬼殺隊の人間のような恰好をしていた。

「…えっと、おめでとうござい…ます?」

 どう言うのが正解なのだろうか?

「ふっふーん、ありがと」

 にぱーと笑顔でお礼を言ってくれたので、間違いではなかったようだ。

「…目的は果たされたということで、今後はこちらに戻っていただけるのですよね」

 長子様の問いかけ…というか、確認は、割と圧があった。

「うーん、当初の目的は果たしたんだけど、鬼殺隊の本拠地の場所はまだわかってないから、もうちょっとかかるかな」

「…そうですか」

 その零余子様の答えに、長子様が肩を落とされる。

「…え、えーと、うん。そんな長子ちゃんに朗報です!」

 あからさまにシュンとなってしまった長子様を励ますかのように、零余子様がそう言った。

 

「長子ちゃんの十二鬼月入りが決まりました! わー! おめでとー! ぱちぱちぱち!」

 

 かなり重要なことを、割と軽くおっしゃられる。…そういう性格…というか、性質だと理解してはいても、心臓と胃に悪い。

「…え、えっと、下弦の陸…でしょうか?」

 長子様がそう質問…というか、確認をする。

 そこには、そうであってくれという願いが込められていた。

 下弦の伍の累は、零余子様の後ろに平然と突っ立っているし、下弦の肆は零余子様で…つまりは、下弦の壱から参であるならば、形の上では零余子様よりも上位の鬼となってしまう。

 さすがにそれは避けたいという気持ちは、痛いほどよくわかる。

「あっはっは! 釜鵺くんは生きてるよ。勝手に殺しちゃあ駄目だよ。めっ!」

 何がおかしいのか、零余子様が笑って否定する。

 笑い事じゃないよ、長子様の顔色が真っ青だよ。

 

「長子ちゃんには、私の後の下弦の肆になってもらいました。ちゃんと無惨様の許可も取ってるよ」

 

 そう言って、答え合わせをしてくれる。

 私たちはそろってホッとして、それから、んっ?…となる。

 

「…あの、それは零余子様が下弦の上位…あるいは、上弦の鬼になられるということですよね?

 …でしたら、その代わられた方が下弦の肆になられるのでは?」

 

 代表して、私がそう聞いた。

 

 

 

「ううん、私は上弦の零ってのになるから、下弦の肆は空いちゃうんだ。問題なし!」

 

 

 

「「「……………」」」

 

 そろって絶句する私たちを、累が生暖かい目で見ている。

 気持ちはわかる…そう言っていると理解できたよ。

 とにもかくにも…

 

 

 

「「「それが一番、重大な報告ですっっ!!!」」」

 

 

 

「お、おう…」

 

 私達が綺麗にそろって突っ込んだので、零余子様がびっくりした顔をされる。

 いえいえ、驚いたのはこっちですよ。

 

 上弦の零…つまりは、現在の十二鬼月より上の役職を、あの方が作られたということで、あの方の次に偉い鬼に、零余子様がなられたということで! とにかく、これはすごいことで!!

 

 

 …本当に、零余子様には驚かされてばかりだ。

 

 

 

 …でも、今後もそんな生活が続けばいいな…なんて、私もすっかり毒されたものだな。




これにて、ある女鬼の話は終了です。
おまけ的に挿入したエピソードでしたが、思ったよりも長くなりました。
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