零余子日記   作:須達龍也

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場面は再び、無限城へ戻ります。



それぞれの決着1

「あっと、最初に決着が着きそうなのは、ここかな」

 

 うん、意外なようでもあり、順当なところでもあるかな。

「無惨様、ちょっと行ってきますね」

「ふむ、何をしにだ?」

 どこへとは聞かず、用件の方を聞かれた。

「一言で言いますと、勧誘…になりますかね?」

「…ふん、好きにしろ」

 そうして、無惨様の許可を得る。

「では胡蝶様、行きましょうか?」

「えっ? …で、ですが…」

 私が誘うと、蟲柱が躊躇する。

 いろいろと思うところがあるのはわかるが、躊躇っている場合ではないだろうに。

 

「…正直、私だけでは話はうまく転がらないでしょう。そうなると、彼はただ死ぬだけですが…それでいいんですか?」

 

 私のその言葉に、覚悟を決めたようで…

 

 

「…わかりました。お願いします」

 

 

 …そう、頭を下げて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 …月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り(えんきづき・つがり)…

 

 

 

 …岩の呼吸 伍ノ型 瓦輪刑部(がりんぎょうぶ)…

 

 

 

 無造作に振るわれた二連撃…そこから放たれる斬撃に対し、右足で跳躍し、鉄球と手斧にてなんとかいなす。

 

 打つ手が限られてきている。

 天秤は既に大きく傾いているのは、間違いない。

 

 

 

 …月の呼吸 陸ノ型 常世孤月・無間(とこよこげつ・むけん)…

 

 

 

 …岩の呼吸 伍ノ型 瓦輪刑部…

 

 

 

 ただの一振り。

 

 だが、そこから放たれる無数の斬撃を、馬鹿の一つ覚えのように、跳躍して、鉄球と手斧の重量を以て、なんとかさばききる。

 

 攻め手に回れない。

 向こうの放つ技を、なんとか致命傷を避けるようにさばくのがやっとになっている。

 

 

 筋肉の収縮で、なんとか止血はできているが、左足を失ってしまったことが、どうしようもなく厳しい。

 

 

 踏ん張りが効かない。

 

 距離を取れない。あるいは詰めれない。

 

 

「…だが、まだ生きている。動けるし、振るえる」

 

 

「ふふ… 見事だ… 技の冴えに… 乱れなし…」

 

 

 

 チャキ…

 

 

 

 鬼気が巨大になる。

 奴の持つ刀が長く、大きく、禍々しくなる。

 

「もったいないが… しまいにしようか…… ぬ…」

 

 途端、気が霧散するのを感じる。

 

 

 

「はーい! ちょぉーっと、お待ちを!」

 

 

 

 突如として現れたのは、地上にて感じたものと、そして…

 

「さて… 何用かな…」

「はい、勧誘に来ました」

 

 …勧誘、か…

 

「なるほど… 確かに… 惜しいな…」

「ですです。ご理解いただいて嬉しいです」

 

 …鬼への勧誘ならば、一顧だにしないのだが…

 

 

 

「…久しいな、胡蝶。生きていたか」

 

 

 

「…お久しぶりです、悲鳴嶼さん」

 

 

 

 …死んでしまったと思っていた胡蝶の気配を感じたからこそ、話をしようと思った。

 

「………」

「…………」

 

 だが、互いに次の言葉は出なかった。

 

 

「んー? 私から言いますか」

 

 

 見かねた上弦の零が、助け船を出す。…実に皮肉な話ではあるが。

 

「勧誘と言っても、鬼になれってことではないです。…ああ、別に鬼になってもいいって言うんなら、それはそれでありですけどね」

「そんな気は毛頭ないな」

「ま、でしょうね。だから、それとは別の勧誘です。

 実は新しい鬼殺隊を作ろうと思ってます。そちらの胡蝶様を中心にした、今までとは違う新しい組織です」

 

 その言葉に、胡蝶がビクッと震えた。

 

「正当な後継組織であると周囲に示すには、柱の数が多い方が説得力ありますからね。だから、こうやって勧誘に来たんですよ」

 

 …何ともはや、勧誘する気があるとは思えない言いぶりだ。

 

 

「…裏切りだと、…そう思われても仕方ありません」

 

 

 胡蝶が重い口を開いた。

 

 

「…鬼の口車に乗せられ、体よく利用されているだけ…それも、そうなのでしょう」

 

 

 その言葉には、強い苦悩が伺えた。

 

 

 

「ですがっ!! …ですが、鬼の犠牲になる人を、できるだけ少なくなるように、全力をつくします!

 それだけはっ! …それだけは、今ここに、誓います!」

 

 

 

 …鬼殺隊の初志、それだけは必ず貫くと、誓ってくれた…

 

 

「…そうか。…信じるとも」

 

「…悲鳴嶼さん…」

 

 

「…おー、纏まりました?

 足は残念ですけど、まあ相談役みたいなので、…あー、鬼になれば治りますよ。やっぱり鬼になります?」

 

 

「…一つ、聞いてもいいだろうか」

 

「…なんですかね?」

 

 

 

「お館様は、どうなるのだろうか」

 

 

 

「………無理ですね。どうあっても、無理です。…旧鬼殺隊の象徴として、これまでの鬼殺隊の全てを背負って、死んでもらいます」

 

 

 

「…そうか」

 

「……子供たちは生かしてあげても良いです。

 まだ年端もいかないようですし、正当な後継組織であるとの説得力にもなりますし、それに、これまでの協力者の協力も得やすいでしょうから」

 

 …それが、最大限の譲歩なのであろう。

 

「…そうか、それはありがたいな」

 

 …どうだろう、信じられるだろうか? …ああ、だが、信じたいな…

 

 

 

「…私は、お館様に命を救われた。お館様が死ぬと言うならば、私だけでも供をしたいと思う」

 

 

 

「…悲鳴嶼さん…」

 

「…供は私だけでいい。そう伝えてくれ」

 

「…わかり、ました」

 

 

 

「…最後に話ができて良かった。我々の心は残る、これからも続いていく、それだけで十分だ…」




悲鳴嶼さんは、状況把握能力は高いと思ってます。

太陽の下に、上弦四体を連れて、鬼舞辻無惨が現れた。
いろいろと、悟った部分がありました。

しのぶさんの新しい鬼殺隊を、裏切りというよりも、希望と見ました。
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